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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

世界のどん底で愛をさけぶ神獣

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世界のどん底で愛をさけぶ神獣

リアクション

■サラマンダー、真の姿をいま再び、ここに!

 戦場が収束を見せたことで、各地に散っていた【睡奏楽団】の皆が一堂に会する。
「ここからが本番、ですね。もう一息、頑張りましょう」
「はい、行きましょう。……ヒトと神獣の架け橋となるプリーストとして」
「……私も、皆さんと一緒に、頑張ります。神獣と人が一緒に歩む道を、サラマンダーさんにも見てもらいたいから」
 甘味 恋歌藍屋 あみかルティア・オルコットがそれぞれ思いを告げ、ライブへの意気込みを確かなものとする。
「たぶん、語り合いが足りなかったから。……だからいま、この時から、ぼくたちと神獣の、サラマンダーとの語り合いをはじめよう」
「そうだ、私達から始めなくっちゃ。最初は怖い気持ちもあったけど、もう大丈夫! 私にできることをしなきゃな!」
「そうですね、僕らは僕らに出来ることを、ですね。
 ……認識の違いから生まれた大きなずれを取り戻して、新しい道を。ネムさん、お願いします」
 ノーラ・レツェルイシュタム・カウィル天草 燧、この場に集う者たちの視線を受けて、合歓季 風華がコホン、とひとつ息をついて、始まりの言葉を口にする。

「それでは、【睡奏楽団】のライブ……どうか、お聞きください」

 風華が神獣オキエルの身体を撫で力を与え、風華から力を受けたオキエルが空に鳴けば、優しくあたたかな雨が降る。僅かに残っていた熱気がスッ、と冷めていき、舞台が引き締まったところで、イシュタムが化粧を施すように舞台にスモークを起こし、地底でありながら辺りが光に包まれた。
「誰もが失敗する。サラマンダーだって、もちろん、ぼくだって。
 でも、挑戦することを止めたりはしないよ。今のぼくにはこんなに、頼もしい仲間が居るんだから」
 光が膨れ上がる舞台の上で、ノーラ、恋歌とあみか、ルティアがウタを紡ぐ。その深い水底を思わせるウタは聞く者の心を落ち着かせ、己と向き合う決意をそっと促す。
「さあ、この声を聞いて。心ある者をウタで、繋げて」
 燧が羽を広げて飛び立ち、小さな羽根を振りまく。ゆっくりと落ちる羽根はノーラ達のウタと、燧が紡ぐウタを繋いで深く、広げていく。
「む……声が、聞こえる。私を呼ぶその声は……あぁ、お前たちか」
 目を閉じ、ウタに聞き入るサラマンダーには、かつて神獣として人々に慕われていた頃の記憶が優しく、蘇っているようだった。
「お互い、願うものがあるはずです。私達と一緒に、探しませんか?」
 あみかがサラマンダーに呼びかけ、それを合図として恋歌が新たなウタを紡ぐ。サラマンダーに残っていた記憶が再現され、促されるようにサラマンダーが目を開けば、昔のままのアーディバルが現れた。
「これは幻……先程もそうであった。やがて何もかも崩れ、消え去ってしまうだろう――」
「確かに仰られる通り、サラマンダーさんが見ているこの風景は、幻。
 ですが、サラマンダーさんと私達が手を取り合い、共に歩むことで、また作り出せる風景でもあるのです」
 神獣ティラミスの背中に乗り、サラマンダーの傍に降り立った恋歌がそっと、手を差し出す。恋歌のウタに彩りを添えるべく、風華が外側にネムノキをモチーフとした装飾模様、内側に鍵盤模様が描かれた巻物状の楽器を広げ、力を込める。オキエルのウタによって力を増した演奏はサラマンダーに強く働きかけ、やがてサラマンダーは意を決したように、恋歌の手を取った。

 千数百年の間、止まっていたサラマンダーの時間がいま、カチリ、と音を立てて再び動き出す――。

 幻で再現された森の中を、サラマンダーと恋歌、ティラミスが歩く。空を見上げれば神獣ファーブラに乗ったあみかが演奏を送り、心の奥底に置き去りになっていた記憶を揺り起こしていく。幻に人の姿が追加され、皆、サラマンダーへの感謝の気持ちを伝えてはスッ、と消えていった。
「いつからだろう……この者たちの声を、倦むようになったのは。感謝されることを力に思わなくなったのは」
 神に連なる者にとって、慕われること、感謝されること、信仰されることは力になる。神はその得た力を振るい、自らを慕う者を守り、導く。それが本来正しいはずの在り方なのだが、サラマンダーの場合は自身も力を持っていたが故に、得られる力を不要なものと思うようになってしまったのだ。――余談だがこれはクロノスにも言えることだが、彼女の場合は力の振るい方、慕う者の導き方が特殊であるが故に今まで数々の問題を引き起こしているのだった。
「いい感じに進行してるみたいだね。私達も演奏に加わろう!」
「はい……一緒に歌いましょう」
 イシュタムがルティアを誘い、幻の世界にさらなる彩りを添える。軽やかな、思わず足を進めたくなるような演奏を纏ってサラマンダーのすぐ上空までやって来た燧が手を前方へ指し示し、サラマンダーがそちらへ顔を向ければ。
「これは……思い出した。私はここで、人々の感謝の下、生を過ごしていた」
 すぐ近くに見えるかつての住処へ、案内を受けながら歩を進める。花びらが舞い散り、遠くにノーラと神獣ソフィのウタが響く。

 何も出来ないぼくだった
 眺めているだけのぼくだった
 感謝を忘れないぼくだった

 でも、それだけじゃ駄目だった

 今、進むべき時
 手に手を取って一緒に歩む時が来た


 ノーラが顔を上げ、手に握っていたペンダントの力を解放する。幻に変化が生まれ、老若男女に囲まれる半人半獣――燃え盛る炎の尾、背中と腕、脚を覆う鱗は恐ろしくとも、浮かべる笑顔は人々を引きつける魅力に溢れていた――がサラマンダーの前に現れた。
「……私にも、こんな顔ができたのだな。忘れていた……何もかも」
 サラマンダーが一歩を踏み出したところで、老若男女の姿が消え、過去のサラマンダーも姿がぶれ、今にも消えそうになる。
「……行かないでくれ!」
 泣きそうな声でサラマンダーが叫び、手を伸ばす。その手を、ソフィの背に乗ってきたノーラが取って、そして告げる。

「感謝が嫌だと言うけれど、感謝を忘れたら……人はその存在も忘れてしまう。
 人は忘れる生き物で、そして目先のことに精一杯なんだ。

 だから、これからはこのライブのように……一緒に、世界を守っていこう?」

 新たな光が生じ、過去のサラマンダーの足元から今のサラマンダーの足元を繋ぐ、光の道が生まれる。オキエルの背から降りた風華が光の道をつたい、サラマンダーの下へと歩み寄って告げる。

「幻を取り戻すことはかないません。命は何者の代わりにもなれません。
 だからこそ大切な思い出は胸に。……今を生きる私達と、話をしませんか?」

 私達のウタは解り合い、赦し合い、歩み寄るためのもの――。そう信じる風華の伸ばす手を、サラマンダーがじっと見つめる。
「今どんな言い伝えより近くにいる貴方と、手を取り合いたいのです。ここまで聞いてくださった貴方と」
 声が最後の鍵となって、サラマンダーの心を解す。サラマンダーが風華の手を取り、光の道を並んで進む。ここまでライブを共にしてきた恋歌、ノーラ、ルティア、イシュタム、燧、そしてあみかが光の道を彩り、サラマンダーが今の世界をよりよく歩めるよう、祈りを込める。

 そして、今のサラマンダーと過去のサラマンダーが対峙する。
「もう、この姿に戻ることはないと思っていた。……だが今再び、私は自らの使命に従い、真なる姿を取り戻そう」
 サラマンダーが手を伸ばし、かつての自分を引き寄せる。光の道が縮んでいき、過去のサラマンダーが完全に引き寄せられるのと同時に、光の道が今のサラマンダーの足元で消える。

『――――』

 直後、サラマンダーから熱量が――しかしまったく熱くない、だが途方もない生命の力を滾らせた炎が噴き上がった――。
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