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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

世界のどん底で愛をさけぶ神獣

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世界のどん底で愛をさけぶ神獣

リアクション

■纏う鎧を剥がし、今の姿をさらけ出せ!(3)

 戦場が収束を見せたことで、【リトルフルール】の面々も一堂に会することができた。
「サラマンダーちゃんは、変化が欲しかったんだよね? 予想外のビックリ、ワクワク。
 そういうの、ボクたち得意だよ!」
「うんうん! サラマンダーさんが『人々を守りたい』と思っていた頃の気持ち、わたしたちのライブで思い出させてあげる!
 ウィルさんも一緒に、ねっ!」
「ああ。……気高き神獣であっても、弱さを持つのは人と変わりない、か。
 人々のために己が使命を全うすることこそ、騎士の本懐。誰が何を思おうが関係あるまい……説教するつもりはないが、今の言葉、片隅にでも留めておいてもらえるよう、全力を尽くそう」
 シャーロット・フルール虹村 歌音ウィリアム・ヘルツハフトがそれぞれ意気込みを語りライブへの意欲を高め、アレクス・エメロードがいつもの口調で開始を促す。
「お前ら準備いいかー、始めるぞー」
 ただその姿は、滑らかなシルクの衣装によって光が満ちていた。
「はーい。シャロちゃんと主役、がんばってね!」
「うるせぇ茶化すな! シャロがやる気出してっから付き合ってるだけだ!」
「主人のことをよく見ているな」
「ウィリアムもかよ! おら始めるぞ、祈りを捧げやがれ!」
 からかわれたアレクスに急かされつつ、歌音とウィリアムが祈りを捧げるポーズを取る。

 天舞う空に 朝日が昇る

 その歌い出しと共に、実際に朝日が昇るような幻が現れる。二人の『翼ある者』、シャーロットとアレクスが祈りを捧げる歌音とウィリアムの前に現れ、翼を広げて空へと舞い上がる。
「アルカちゃん、おいで! 一緒に歌お!」
 シャーロットが神獣アルカを呼び寄せ、共にウタを紡ぐ。伴奏をアレクスが務め、祈りを捧げていた歌音とウィリアムも、それぞれ翼と魔機という『空を飛ぶ手段』を用いて空へと舞い、パフォーマンスを披露する。

 今日もハレハレ 時に雨♪
 虹の光が 地上を照らし 小さき者を 映し出す


 シャーロットのウタに合わせて、アレクスが霧の雨を降らせて魔法の虹を描く。
「サラマンダーのヤツ、すっかり大人しくなっちまったから、自由にお絵かきできるな。
 描くのはそうだな、シャロの顔、リトルフルールの文字、ってところか」
 描いた魔法の虹を自由に操り、見事なシャーロットの顔と『リトルフルール』の文字を空に描き出す。その描かれた虹に沿うようにして歌音が踊れば、虹が幾層にも重なってより多くの光を生み出す。その光に照らされて、小さな妖精の幻が多数出現し賑やかに踊り出した。

 歌に 踊りに 空飛ぶ機械
 彼らは 弱き故に 知恵を磨き 体を鍛え 勇気をもって 天を目指す


「よし、歌詞に相応しい演出を見せてやろう」
 ウィリアムが搭乗する魔機を操作し、動きに合わせて光のラインが描かれるように出力を調整しながら、空にまるで夜空の星々が浮かび上がったかのような光景を見せる。さらに魔機に組み込まれた楽器の出力を上げていけば、ウィリアムですら自分の声と疑わない音というか声というか、が生み出された。
「これがシャーロットが作ったものでなければ、素晴らしいものなのだがな。いつまた暴走して不利益をもたらすか」
 Dマテリアルの際にはなかなか苦労させられた記憶を持つウィリアムが苦笑しつつ、舞台のウタにコーラスを添える。
「ウィルさんの声、いつもよりもイケてる……うっとり」
 不利益かどうかはわからないが、歌音がウィリアムに向ける眼差しはいつもより熱っぽかった。

 その変化 生み出すものの 何と楽しいことか♪

 ウタはフィナーレへと向かい、シャーロットとアレクスが大きく翼を広げ、光に満ちた羽根を周囲に散らす。ゆっくりと落ちる羽根は二人の指揮を受けて、まるでそれ自身が意思を持っているかのように自由に空を飛び、歌音とウィリアムを祝福するように舞った。

 どこまでいくのか 空(ここ)まで来るか
 我らは その可能性を 見守ろう!


「意味ならあるよ、クロノスちゃん! サラマンダーちゃんは多くの人やモノの可能性を、未来に残した!
 みんなを、大戦禍から守ったんだ!」
 こっそりと様子を伺っていたクロノスへも、シャーロットは羽根を飛ばして気持ちを伝える。クロノスは即座に中へ引っ込んでしまったが、今のシャーロットの声はしっかりと聞いていただろう。


「はーびっくりした。ちょくちょく私に話しかけてくるから心臓に悪いよー」
 はぁ、と息をついたクロノスがベッドに身を投げ出す。これまでこっそりと地上の様子を見てきて、彼らにも他人の注目を集め、また自分を注目してくれる他人を導く力があるのだとわかった。
「……ま、どうでもいいけどね」
 深い考えに陥るのが面倒で、そんなことを口にして一眠りしようか、と目を閉じる。

「おーい! わたくしと少しお話ししてもらえませんかー?
 手土産も持って参りましたのでご一緒にいかがでしょうかー?」


「ぶはっ」
 自分を呼ぶ声に、たまらずクロノスは飛び起きた。地上を見ると一人の女性――エルトナ・マレリーアがこちらに手を振っていた。隣の男性――キング・デイヴィソンがエルトナを嗜め、マイクを通した声を響かせる。

「あー、急な申し出ですまない。だが話だけでも聞いてもらえたら嬉しい。
 ちゃんと貢物も持ってきた。……どうした、早く返事をしてくれ。アイスが溶けてしまうぞ。
 だらけて食べるアイス、どれほどか君なら分かるだろう」


「なんなんだよもー」
 クロノスがベッドの上でジタバタともがく。
「わかったよー、アイス食べるだけだからねー」
 観念したように呟いて、クロノスは二人の要望に応えたのだった――。

「ここがクロノス様のお住まいですのね! ……コホン、失礼いたしました。まずはこちらをどうぞ」
 キラキラと目を輝かせたエルトナがまたもキングに嗜められ、かしこまった態度でクロノスに貢物のアイスを差し出す。
「ん、ありがとー」
 アイスを受け取り、口に入れる。
「あ、美味しい」
「そうだろう、満を持して発売されたフェスアイスだ。一部の者は「こんなのフェスアイスじゃない!」と文句を言っていたがね」
「私はどれも美味しくいただきます」
「君の舌は特別だからね。クロノス君、興味を持ったとしても食べる際には十分覚悟をしてからにするんだよ」
「まぁ! それってどういう意味ですの!?」
 ふん、とそっぽを向くエルトナ、そしてそれまで淡々とアイスを食べていたクロノスから、くすり、と笑いが漏れた。
「あなたたち、よくわからない。何をしに来たのかと思えば、どうでもいい話してさ」
「……私も、クロノス様のこと、何も知りません。だからこうして、交流を深めに来たのです!」
「君の言葉を借りるなら、やりたいようにやった結果さ。違うことと言えば、私もエルトナもこの場を持てたことに意味があると思っている点かな」
「むー。そういうもの?」
「そういうものさ。……おっと、おかわりもあるぞ。どうする?」
「……もらう」

 二つ目のアイスを受け取ったクロノスが、口に入れる。
「……美味しい」
 その顔は、先程よりちょっとだけ笑顔だった。
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