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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

世界のどん底で愛をさけぶ神獣

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世界のどん底で愛をさけぶ神獣

リアクション

■歪められた使命に燃える『獄炎の騎士』を鎮めよう!(1)

「我が剣と鎧に賭けて、クロノス様の元へ行かせるわけにはゆかぬ!!」

 かつて悪魔と戦い、長きに渡って人々を守り続けていた大いなる神獣の一柱、サラマンダー
 しかし一方で、彼の心は感謝されること、崇められることへの倦怠に冒されていた。

 そしてある時、彼は『啓示』を受けてしまう。
 クロノス――彼が守る塔の頂上に居る、芸能神――の、『どうせ何の意味もないから、好きにやっちゃいなよ』というネガティブな啓示は、彼を『決して感謝されない相手への献身』へと駆らせた。

 サラマンダーは強者である。であるが故に、長い間感謝されなくとも生きていられた。
 だがやはり、感謝されないことは悪影響をもたらしていた。今や彼は、自分の意思で自身の行動を止められなくなっていた。
 そう、決して彼はファラムートが叫んだようにただのマゾ野郎というわけではない……少なくとも真の姿ではない。

 ある意味今が一番幸せなのかもしれないサラマンダーを、それでも真の姿によみがえらせるため、フェスタ生たちの戦いが幕を開ける――。


 界塚 ツカサ加賀 ノイの前方、サラマンダーを守るように火の悪魔――彼らもまたかつては神獣であり、悪魔の身になっても未だサラマンダーに付き従う誇りある者たちである――が立ちふさがる。数は十程度、一人ひとりが相当の力を有しているように見えた。
「サラマンダーさえ元に戻れば、彼らもまた真の姿を取り戻すかもしれませんね」
「それなら、ボクたちで火の悪魔を相手して、その間にサラマンダーの下へ行ってもらおう。
 ノイは後方から魔法でお願い。ボクは前に出て、彼らを引きつけられるように戦う」
「わかりました。お気をつけて」
 後方へ下がったノイに頷き、ツカサが二刀を構える。纏う防具は炎への耐性を有し、攻撃の際には氷の刃を纏わせ薙ぎ払うことができる。
(サラマンダーは騎士スタイルだけど、周りの悪魔が全員そうとは限らない)
 ツカサの目が、他とは異なる戦闘スタイルを取っている悪魔を捉えた。他の悪魔が剣や槌、槍といった近接用武器を手にしているのに対し、彼だけは弓を番えていた。背中に槌の柄が見えるが、メイン武器は弓で間違いないだろう。
(彼の位置取りには十分、注意する必要があるね)
 振り返り、視線でノイにも注意するよう促せば、ノイが「わかりました」と言いたげに頷いた。
 視線を戻したところで、前方に動きが生じた。火の悪魔たちがフェスタ生の排除に動き出したのだ。
「我ら、サラマンダー様と志を共にする者なり!」
 剣を振り上げた火の悪魔の一体が、ツカサに向けて剣を振り下ろす。十分見ていたこともあって回避に成功したツカサは二刀に氷の刃を纏わせ、続けざまの攻撃を繰り出す。
「ぐわぁ!」
「やってくれる!」
 火の悪魔に対し一撃を与えるが、後方から射撃の気配を感じ取ったツカサは追撃を行わず身を引く。直後、自分が進もうとしていた場所を炎を纏った矢が飛び過ぎた。
「一つ一つは小さくとも、無視するには痛いですよ?」
 ノイの放った無数の小さな氷の刃が、火の悪魔のそれ以上の追撃を拒む。その間に剣に氷の刃を纏い直したツカサが、氷の刃が晴れた先に踏み込んでいく。先程ダメージを与えた相手が近くにいれば、との思いだったが、相手は仲間と共に退いていた。
(……大丈夫。落ち着いて戦えば、負ける相手じゃない)
 氷の刃を解除し、ツカサが周囲への警戒を密にする。いつか突破口が開ける時を信じて――。


「サラマンダーさんの従者さん。私と一対一の勝負、受けてもらえるかな?」
 小羽根 ふゆが挑戦状代わりに放った小さな氷の矢を、従者の一人が炎のマントをかざして受け止めた。
「よかろう。その勝負……受けて立つ!」
 炎の粉を背後に残し、真っ直ぐに飛び込んできた従者が手にした剣を振り上げ、間合いに入ると同時に振り下ろす。その攻撃をふゆは躱すことはできたが、そこから反撃するまでには至れず、手番を従者に握られ続けていた。
(わかってたことだけど、近距離での打ち合いでは不利だよね……。
 でも、焦っちゃダメ。時間をかけてでも、相手を焦らせるよ)
 従者の再度の踏み込みからの攻撃を、身体を柔らかくくねらせて回避したふゆは、従者の引き戻す動きが先程と比べ鈍っているのに気付いた。
「えい!」
 ならばとばかり、反撃に転じる。杖による殴打は強固な鎧に阻まれ有効打とはならなかったが、ダメージを与えることが目的ではなかった。
「おのれ、ちょこまかと!」
 攻撃回数では明らかに上回っているのに、なかなか有効打を与えられないことと、連続で攻撃を繰り出したことで蓄積した疲労が、従者から冷静さを奪っていった。
「おおおぉぉ!!」
 咆哮をあげ、従者が両腕で剣を振り上げる。――しかしその動作は既に剣の間合いに入ってからであり、多大な隙を晒す結果となった。
「いっけー!」
 ガラ空きとなった腹部に、氷の矢の連続射出を浴びせる。一発は小さなものでも十、二十と放たれた矢は従者の熱量を奪い、退かせる結果となった。
「ぐぅ……私としたことが我を見失っていた。勇敢な魔法使いよ、次は同じ轍は踏まぬ!」
 一撃を受けたことで一旦は冷静さを取り戻した従者と再び打ち合いつつ、ふゆはちゃんとサラマンダーのための時間稼ぎができていることに、うんうん、と満足げに頷いた。


「聞こえます、聞こえます。地球様の声が、アイドルのサポートをしてあげなさいと」
 目を閉じ両手を広げ、そう口にした天鹿児 神子が早速、火の悪魔目掛けて風の衝撃波を見舞うも、火の悪魔は一歩も動くことなくマントのように炎をなびかせ、衝撃波を打ち消してしまう。風をうまく使えば炎をかき消せると考えての行動だったが、風では火に不利であった。そして神子が使える魔法に、水属性のものはない。
「……地球様のお力をもってしても、わたくし一人では少々、荷が勝ちすぎるようですね」
 一旦戦場を離れ、神子が周囲を伺う。――と、次の瞬間、二人の少女と火の悪魔の交戦が目に入った。

「ふぁらむーと氏の言った『まぞ野郎』とは一体……?」
「う、うーん。いいことをしたのに感謝されなかった、けどそれが心地いい……って思っちゃう人のこと、かな」
 緑青 木賊の問いに、世良 延寿が苦笑混じりに、サラマンダーへの配慮が見られる言葉を選んで答えた。感謝されることが当たり前になっていたサラマンダーにとって、クロノスと出会ってしまったことは幸運であったかもしれないが、それがいまの結果であることを思えば、やはり劇薬であったと言う他ないだろう。
「サラマンダーって、やっぱりかわいそうだよね、いろいろな意味で……」
 延寿がサラマンダーを憐れむ視線を送り、そしてすぐに視線を、仲間と戦っている火の悪魔へと向けた。
「みんながサラマンダーを元に戻してあげられるように、私達で援護してあげよう!」
「承知したっす! さらまんだ氏の記憶が戻れば皆も元に戻るのであれば、それが最善っすからね!」
 頷いた木賊が目を凝らし、現状フリーになっている火の悪魔を探す。彼らにライブの妨害をされれば仲間が十分な力を発揮できず、試みが失敗に終わりかねない。
「延寿氏、彼が見えるっすか?」
「……うん、見えたよ! それじゃまずは、この魔法で……!」
 延寿が、吹雪の魔術が封じられた球体を起動させ、機を伺っていた火の悪魔に氷柱の刃を撒き散らす。
「ぐはっ!」
 不意を突かれた火の悪魔が悲鳴をあげ、身を捩って突風の範囲から逃れる。
「氷の魔法か!」
「警戒しろ! 出処を探れ!」
 周囲に展開していた火の悪魔たちが、途端に警戒心を露わにして敵の攻撃に備え始める。こうなれば彼らは自由に行動することができず、それは二人にとって好都合な展開であった。
「散開っす! 危ない時は駆けつけるっすよ!」
「ありがと! 木賊も手伝ってほしい時は言ってね!」
 二人頷きあってその場を離れ、動き回りながら高圧の水流を発射して攻撃する。散発的ながら決して無視のできない威力の攻撃の応酬がしばらく続き、やがて焦れた一体の火の悪魔が水流を強引に突破して接近戦を仕掛けてきた。

「……なるほど。地球様、今が好機というわけですね」
 その様子を見ていた神子が納得したように頷き、火の悪魔の視界の外から風の衝撃波を浴びせる。ちょうど着地したところにそれは襲いかかり、次の行動に移ろうとしていた火の悪魔の体勢を崩した。
「くっ、こんな時に風が――ぐはっ!」
 体勢を立て直そうと試みるも、即座に放たれた強力な水流に押し負け、火の悪魔は後退を余儀なくされる。
「これでよいのですよね、地球様」
 自分も貢献できていることにちょっとした喜びを覚えつつ、神子は地球様への感謝を捧げた後、引き続き火の悪魔を引きつけるために行動を開始したのであった――。
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