みんなでレッツ犯罪!? バビフェス開催!
リアクション公開中!
リアクション
1.狂わせるNOISE、解きほぐせPALS
ノイズが溢れ、犯罪者たちが騒ぐライブ会場――。
ステージを務めるアイドルたちと共に、犯罪そのものを止めに動いた者たち、そして犯罪とはなにかについて考えた者たちの姿があった。
(受容がない世界……拒絶する力はいっそう強くなる)
千夏 水希は乱れ騒ぐ犯罪者達を前に、1人自問自答していた。
(今まで見てきた異世界の全てがそう。悪いのはイドラじゃなかった。抑圧されて居場所をなくした人達が、自分の居場所を作るために力を求め、イドラはそれに応えただけ。全部人間が悪いんだ)
受容することができない人間――自分「達」、意見の強い者が正義だと思ってる人間の塊がいけないんだ。
水希はそう感じていた。
(だから……少数者の意見を潰しちゃいけない、犯罪を無くしちゃだめなんだ。もちろん目に余るものはダメだけど、制圧は調和を崩すんだ)
自分は「犯罪者」――すなわち圧倒的多数を拒絶する人達を受容せねばならない、受容する存在としてあり続けなければならないと水希は思う。
だが――。
(でも私は……率先して犯罪を促進できるような性格でもない、そんな力もない。アイツが……わたしがこの世界を守るために必要だと思った調和を守らないといけない)
この世界を守る理由、かつての悪友、大好きだった恋人を水希は思い出す。
アイツがいたなら付き合ってくれただろうし、犯罪ごっこも楽しくできたと思う
だけど、もうここにはいない――思い出の中にしか。
(戦わないといけない……だけど、どうやって? 1人で? 自分なんかに何ができるの?)
水希の目から涙が溢れた。
(どうしていなくなったの? 一緒にできなかったこと、やりたかったこと、たくさんあるのに…! アイツのいない芸能界で、私が戦う必要なんてあるの…?)
――今日はだめっぽい、寂しい。
水希は1人その場を後にした。
「うわ、大変だ……これはきっと、ステージだけじゃ止められないね!」
黒瀬 心美はミニ飛空艇の上から下を見下ろしていた。
バビプロのノイズに影響され、多くの犯罪者達が生まれている。
暴動を止めなければ――心美はミニ飛行艇の高度を下げ、思い切って飛び降りた。
「さぁ、捕まえた! 武器も没収させてもらうよ!」
シクレシィエンブレイスの影を伸ばし、心美は暴れている犯罪者たちを拘束した。
そして、誰かから奪い取ったと思われる財布を拾い上げると、「駿!」と声を上げた。
「これ! ピンクの財布の持ち主を探して! きっと困ってるはずだから!」
『分かった…財布を無くした君に~♪ 今すぐ届けたい想いは桃色~♪ たとえ中には180円しか入っていなくても~♪』
橘 駿はトラックの荷台に設けられたステージの上から即興で歌い、財布の持ち主を探す。
その間に心美は窃盗犯と化した者たちを悪意の北風で吹き飛ばし、盗んだものをどんどん取り返した。
「駿、次はスマホお願い! 猿のストラップついてるのと、緑のカエルのカバーのやつ!」
『スマホの猿が泣いている~♪ 君に会いたくて切ない思い~♪ 緑のカエルが叫んでる~♪ 彼からの着信が12件~♪』
「怪我した人は治療するよ! ノイズにやられただけなんだから、正気に戻ったらみんな家に帰ろうね!」
取り返したものを駿に託すと、心美はふっ飛ばされて怪我をした者たちの治療に回った。
そんな中、ミニスカ婦警の衣装を着た世良 延寿は暴徒の中に飛び込み、制圧に乗り出していた。
「犯罪は、こうやって取り締まっちゃうからね! 暴力を振るう人には、容赦しないよ!」
延寿は逃げ惑う人々を庇い、立ち塞がる。
そしてこちらに突っ込んできた暴徒の頭をクライムキックで蹴り飛ばした。
「見てて、みんな! 犯罪ムーブメントになんか乗らないで! みんなが支持するべきなのは、犯罪を取り締まるアイドルだよ!」
格闘の動きにダンスを取り入れながら、延寿は自分の気持ちを人々にアピールした。
その足には昇竜雷が纏い、襲い来る暴徒たちを次々に無力化していった。
「暴力が楽しいことなんて、絶対におかしいよ! ほら見て! わかるでしょ?!」
延寿はノイズに侵された暴徒たちに向かって声を上げる。
「だって……! あなたに暴力を振るわれてる人は、みんな楽しそうな顔をしてないじゃない!」
暴力を振るって楽しむ人が増えれば、暴力を振るわれて傷つく人も増える。
物を盗んで楽しむ人が増えれば、物を盗まれて悲しむ人も増える。
そんなことを、心やさしい延寿は絶対に見過ごせないと思っていた。
犯罪を「刺激的で楽しいこと」として広めようとしているバビプロは絶対に許してはならない――延寿はそう、人々に訴え続けた。
「ふええっ……ひ、ひかりちゃん、お願い、早く助けに来てよ~!!」
露出度の高い、大胆なデザインの衣装を身に纏った、猫耳少女――川村 萌夏は涙目で犯罪者たちに取り囲まれていた。
ノイズに侵された者たちを惹きつけ、制圧するという囮作戦だったのだが……。
それが例え自分が周囲に色気を振り撒き、色目を使ったアピールをした結果だったとしても怖いものは怖いのである。
「ナイス、萌夏! その調子で、犯罪者共をガンガン惹き付けてちょーだい♪」
八上 ひかりは遠くで様子をうかがいながら、自分が出ていくタイミングを見計らっていた。
ノイズに侵された犯罪者や犯罪者予備軍は探すまでもなく見つかったし、誘惑すればすぐに寄ってきた。
しかし、ひかりは当初の打ち合わせと違い、「2~3人惹きつけてすぐ対処する」ではなく、「どーせなら、一度に大勢しょっ引いてやろう」と欲を出してしまったらしい。
「うぇへへへへ、かわいいねぇ君ぃ~」
「お、おじさんと一緒に悪いことしようよぉ~」
「いやぁああ! キスはやめて~!」
変質者、ロリコン、コスプレ愛好家、痴漢、そして、盗撮マニア、下着ドロ、露出狂もいたかもしれない。
大勢のへんた……いや、犯罪者たちに迫られ、萌夏はもう既に泣いている。
「ううっ……これは、いくら何でも集まり過ぎちゃったかも……ごめん、萌夏!」
流石にもうこれはダメだろう。
ひかりは満を持して、群がる犯罪者の中に突入した。
「ええーい、萌夏から離れなさいっ!」
建物の屋根からサングラスをかけ、探偵風のコートに身を包んだ狐耳少女が空中で一回転して飛び降りる。
その周囲には金銀の紙吹雪や紙テープが舞う。
「ひかりちゃん、遅~い! 一体、今まで何やってたのよ~!」
「泣かない、泣かない! もう大丈夫だから!」
ひかりは周囲の犯罪者たちに向かってアンチテーゼ・ノイズを繰り出しながら萌夏を相手から遠ざける。
だが、ちょっと遅かったらしく……。
「け、ケモミミ……! ケモミミ、萌えええええ~!!」
「きゃーっ?! なんでわたしまでー!!」
「さ、触らせてくれ! こ、小指の先っちょ、先っちょだけでいいから!!」
「いやぁあああ! 絶対だめー!」
「ひかりちゃん、逃げよう! もうこれじゃ無理だよー!」
高まりすぎた犯罪者達の欲求はひかりと萌夏の2人だけではもはや払いきれないレベルになっていたらしい。
萌えを求める大勢の犯罪者たちに追いかけられ、ひかりは萌夏とともに会場を逃げ回ることになった。
「やっべーークソ寝坊した!! ってか、会場大騒ぎじゃねえか! 今からできることって何かあっかな!?」
ジュン・ガルハーツは慌てていた。
どうやら何らかの事情で直前まで寝ていたらしく、他のアイドルたちに遅れを取っていた。
「ステージのあれ、トラックまだ借りれる!? 借りらんない!? えーーーどうしよ! なぁ、イザークさん代わりに肩車して走ってくんね!?」
「……無茶をいわないでくれ」
ジュンに袖をつかまれ、イザークが呆れ顔をした。
だが、ジュンも食い下がる
「頼むよイザークさん! なあなあおねがい! オレの芸能界デビューが寝坊で幕を開けちまう!!! なあなあなあ」
「落ち着け! お前はどこに向かってるんだ? 今ここで何か始めればいいだろう!」
「んんんー? じゃ、あのトラックが安全走行できるように交通整理でもすっかぁ!? よーしやってやるやってやるっ!」
そう言うと、ジュンは駿のトラックの前に行き、交通整理を始めた。
妨害に近づく犯罪者たちは容赦なくクライムキックを食らわせ……。
「あっ、違うぜ? オレは暴力してないぜ? ほら、見ろ花火花火!」
維新の乱撃を織り交ぜた動きで誤魔化しながら、ジュンは犯罪者たちを蹴散らしていく。
幸い、後で何か誰かに咎められることはなかったようだ。
加賀 ノイはホークアイを駆使し、怪しい素振りをする人物の警戒にあたっていた。
ステージではライブが続いているが、ノイズを払いきれない間は常に油断できなかった。
「今、ステージ右前列でもみ合いになっています! 至急、そちらに向かって下さい!」
ノイは一緒に犯罪者達の対処に当たっているアイドルたちに向かって応援を要請する。
その向こうでは、界塚 ツカサは盗撮犯らしき人物を捕まえていた。
「すみません。ちょっと右手に持っている物を見せて頂けませんか?」
データやフィルムだけ抜き取ってしらばっくれようとする者も見逃さない。
ツカサは逃しはしないと威嚇し、凄みを利かせた。
「逃げたら次は当てるからね? 大人しくしてくれるかな?」
「つ、捕まるもんか!」
その場から一目散に逃げ出した犯罪者が人混みに紛れて逃走を図る。
ノイは即座に反応し、ツカサにそちらの方向を示した。
「犯人は出入り口の方へ逃げました! トイレの前です!」
「分かった! 逃さないよ……!」
ツカサは犯人の前に先回りすると、その目の前にすばやく立ちふさがった。
そして股間めがけて思い切り昇竜雷を食らわせた。
「うわぁ……痛そう」
激痛に気絶した犯罪者を見て、ノイが思わず手で顔を覆った。
キラキラオーラで回復してあげたほうがいいんだろうか……。
しかし、ノイがそう思っている間にツカサは新たな犯罪者へと向かっていく。
「そっちの人はおまかせしていいかな?! この人は、ボクが捕まえるから!」
逆上して迫ってくる犯罪者のみぞおちにビートスタンパーを一発食らわせ、気絶させ……。
さらに、逃亡を図ったりこちらに暴力を振るおうとしてくる者には昇竜雷を纏ったキックで足元への攻撃を食らわせる。
ノイはその後について、倒れた者たちの回復を行った。
(僕たちも取り締まる側ですが……このまま放置しては、他のお客様への印象が悪くなってしまいますので、その辺はきちんとしないとね)
観客がパニックを起こしたり、要らぬ混乱がおきてはいないかと周囲に気を配りながらノイが怪我人に対処していると……不意に思わぬものが目に入った。
容赦なくキックを食らわせるツカサはスカートが捲れ、パンツが丸見えだったのである。
「つ、ツカサー……! あの、その、それはちょっと……!」
「えっ、何……、きゃああ!」
何が起きているかに気づき、慌ててスカートを押さえるツカサ。
ノイは1人「アレを見た男性とはちょっと『話し合い』が必要になるかもしれないな」と思っていたのだった。
ノイズが溢れ、犯罪者たちが騒ぐライブ会場――。
ステージを務めるアイドルたちと共に、犯罪そのものを止めに動いた者たち、そして犯罪とはなにかについて考えた者たちの姿があった。
(受容がない世界……拒絶する力はいっそう強くなる)
千夏 水希は乱れ騒ぐ犯罪者達を前に、1人自問自答していた。
(今まで見てきた異世界の全てがそう。悪いのはイドラじゃなかった。抑圧されて居場所をなくした人達が、自分の居場所を作るために力を求め、イドラはそれに応えただけ。全部人間が悪いんだ)
受容することができない人間――自分「達」、意見の強い者が正義だと思ってる人間の塊がいけないんだ。
水希はそう感じていた。
(だから……少数者の意見を潰しちゃいけない、犯罪を無くしちゃだめなんだ。もちろん目に余るものはダメだけど、制圧は調和を崩すんだ)
自分は「犯罪者」――すなわち圧倒的多数を拒絶する人達を受容せねばならない、受容する存在としてあり続けなければならないと水希は思う。
だが――。
(でも私は……率先して犯罪を促進できるような性格でもない、そんな力もない。アイツが……わたしがこの世界を守るために必要だと思った調和を守らないといけない)
この世界を守る理由、かつての悪友、大好きだった恋人を水希は思い出す。
アイツがいたなら付き合ってくれただろうし、犯罪ごっこも楽しくできたと思う
だけど、もうここにはいない――思い出の中にしか。
(戦わないといけない……だけど、どうやって? 1人で? 自分なんかに何ができるの?)
水希の目から涙が溢れた。
(どうしていなくなったの? 一緒にできなかったこと、やりたかったこと、たくさんあるのに…! アイツのいない芸能界で、私が戦う必要なんてあるの…?)
――今日はだめっぽい、寂しい。
水希は1人その場を後にした。
「うわ、大変だ……これはきっと、ステージだけじゃ止められないね!」
黒瀬 心美はミニ飛空艇の上から下を見下ろしていた。
バビプロのノイズに影響され、多くの犯罪者達が生まれている。
暴動を止めなければ――心美はミニ飛行艇の高度を下げ、思い切って飛び降りた。
「さぁ、捕まえた! 武器も没収させてもらうよ!」
シクレシィエンブレイスの影を伸ばし、心美は暴れている犯罪者たちを拘束した。
そして、誰かから奪い取ったと思われる財布を拾い上げると、「駿!」と声を上げた。
「これ! ピンクの財布の持ち主を探して! きっと困ってるはずだから!」
『分かった…財布を無くした君に~♪ 今すぐ届けたい想いは桃色~♪ たとえ中には180円しか入っていなくても~♪』
橘 駿はトラックの荷台に設けられたステージの上から即興で歌い、財布の持ち主を探す。
その間に心美は窃盗犯と化した者たちを悪意の北風で吹き飛ばし、盗んだものをどんどん取り返した。
「駿、次はスマホお願い! 猿のストラップついてるのと、緑のカエルのカバーのやつ!」
『スマホの猿が泣いている~♪ 君に会いたくて切ない思い~♪ 緑のカエルが叫んでる~♪ 彼からの着信が12件~♪』
「怪我した人は治療するよ! ノイズにやられただけなんだから、正気に戻ったらみんな家に帰ろうね!」
取り返したものを駿に託すと、心美はふっ飛ばされて怪我をした者たちの治療に回った。
そんな中、ミニスカ婦警の衣装を着た世良 延寿は暴徒の中に飛び込み、制圧に乗り出していた。
「犯罪は、こうやって取り締まっちゃうからね! 暴力を振るう人には、容赦しないよ!」
延寿は逃げ惑う人々を庇い、立ち塞がる。
そしてこちらに突っ込んできた暴徒の頭をクライムキックで蹴り飛ばした。
「見てて、みんな! 犯罪ムーブメントになんか乗らないで! みんなが支持するべきなのは、犯罪を取り締まるアイドルだよ!」
格闘の動きにダンスを取り入れながら、延寿は自分の気持ちを人々にアピールした。
その足には昇竜雷が纏い、襲い来る暴徒たちを次々に無力化していった。
「暴力が楽しいことなんて、絶対におかしいよ! ほら見て! わかるでしょ?!」
延寿はノイズに侵された暴徒たちに向かって声を上げる。
「だって……! あなたに暴力を振るわれてる人は、みんな楽しそうな顔をしてないじゃない!」
暴力を振るって楽しむ人が増えれば、暴力を振るわれて傷つく人も増える。
物を盗んで楽しむ人が増えれば、物を盗まれて悲しむ人も増える。
そんなことを、心やさしい延寿は絶対に見過ごせないと思っていた。
犯罪を「刺激的で楽しいこと」として広めようとしているバビプロは絶対に許してはならない――延寿はそう、人々に訴え続けた。
「ふええっ……ひ、ひかりちゃん、お願い、早く助けに来てよ~!!」
露出度の高い、大胆なデザインの衣装を身に纏った、猫耳少女――川村 萌夏は涙目で犯罪者たちに取り囲まれていた。
ノイズに侵された者たちを惹きつけ、制圧するという囮作戦だったのだが……。
それが例え自分が周囲に色気を振り撒き、色目を使ったアピールをした結果だったとしても怖いものは怖いのである。
「ナイス、萌夏! その調子で、犯罪者共をガンガン惹き付けてちょーだい♪」
八上 ひかりは遠くで様子をうかがいながら、自分が出ていくタイミングを見計らっていた。
ノイズに侵された犯罪者や犯罪者予備軍は探すまでもなく見つかったし、誘惑すればすぐに寄ってきた。
しかし、ひかりは当初の打ち合わせと違い、「2~3人惹きつけてすぐ対処する」ではなく、「どーせなら、一度に大勢しょっ引いてやろう」と欲を出してしまったらしい。
「うぇへへへへ、かわいいねぇ君ぃ~」
「お、おじさんと一緒に悪いことしようよぉ~」
「いやぁああ! キスはやめて~!」
変質者、ロリコン、コスプレ愛好家、痴漢、そして、盗撮マニア、下着ドロ、露出狂もいたかもしれない。
大勢のへんた……いや、犯罪者たちに迫られ、萌夏はもう既に泣いている。
「ううっ……これは、いくら何でも集まり過ぎちゃったかも……ごめん、萌夏!」
流石にもうこれはダメだろう。
ひかりは満を持して、群がる犯罪者の中に突入した。
「ええーい、萌夏から離れなさいっ!」
建物の屋根からサングラスをかけ、探偵風のコートに身を包んだ狐耳少女が空中で一回転して飛び降りる。
その周囲には金銀の紙吹雪や紙テープが舞う。
「ひかりちゃん、遅~い! 一体、今まで何やってたのよ~!」
「泣かない、泣かない! もう大丈夫だから!」
ひかりは周囲の犯罪者たちに向かってアンチテーゼ・ノイズを繰り出しながら萌夏を相手から遠ざける。
だが、ちょっと遅かったらしく……。
「け、ケモミミ……! ケモミミ、萌えええええ~!!」
「きゃーっ?! なんでわたしまでー!!」
「さ、触らせてくれ! こ、小指の先っちょ、先っちょだけでいいから!!」
「いやぁあああ! 絶対だめー!」
「ひかりちゃん、逃げよう! もうこれじゃ無理だよー!」
高まりすぎた犯罪者達の欲求はひかりと萌夏の2人だけではもはや払いきれないレベルになっていたらしい。
萌えを求める大勢の犯罪者たちに追いかけられ、ひかりは萌夏とともに会場を逃げ回ることになった。
「やっべーークソ寝坊した!! ってか、会場大騒ぎじゃねえか! 今からできることって何かあっかな!?」
ジュン・ガルハーツは慌てていた。
どうやら何らかの事情で直前まで寝ていたらしく、他のアイドルたちに遅れを取っていた。
「ステージのあれ、トラックまだ借りれる!? 借りらんない!? えーーーどうしよ! なぁ、イザークさん代わりに肩車して走ってくんね!?」
「……無茶をいわないでくれ」
ジュンに袖をつかまれ、イザークが呆れ顔をした。
だが、ジュンも食い下がる
「頼むよイザークさん! なあなあおねがい! オレの芸能界デビューが寝坊で幕を開けちまう!!! なあなあなあ」
「落ち着け! お前はどこに向かってるんだ? 今ここで何か始めればいいだろう!」
「んんんー? じゃ、あのトラックが安全走行できるように交通整理でもすっかぁ!? よーしやってやるやってやるっ!」
そう言うと、ジュンは駿のトラックの前に行き、交通整理を始めた。
妨害に近づく犯罪者たちは容赦なくクライムキックを食らわせ……。
「あっ、違うぜ? オレは暴力してないぜ? ほら、見ろ花火花火!」
維新の乱撃を織り交ぜた動きで誤魔化しながら、ジュンは犯罪者たちを蹴散らしていく。
幸い、後で何か誰かに咎められることはなかったようだ。
加賀 ノイはホークアイを駆使し、怪しい素振りをする人物の警戒にあたっていた。
ステージではライブが続いているが、ノイズを払いきれない間は常に油断できなかった。
「今、ステージ右前列でもみ合いになっています! 至急、そちらに向かって下さい!」
ノイは一緒に犯罪者達の対処に当たっているアイドルたちに向かって応援を要請する。
その向こうでは、界塚 ツカサは盗撮犯らしき人物を捕まえていた。
「すみません。ちょっと右手に持っている物を見せて頂けませんか?」
データやフィルムだけ抜き取ってしらばっくれようとする者も見逃さない。
ツカサは逃しはしないと威嚇し、凄みを利かせた。
「逃げたら次は当てるからね? 大人しくしてくれるかな?」
「つ、捕まるもんか!」
その場から一目散に逃げ出した犯罪者が人混みに紛れて逃走を図る。
ノイは即座に反応し、ツカサにそちらの方向を示した。
「犯人は出入り口の方へ逃げました! トイレの前です!」
「分かった! 逃さないよ……!」
ツカサは犯人の前に先回りすると、その目の前にすばやく立ちふさがった。
そして股間めがけて思い切り昇竜雷を食らわせた。
「うわぁ……痛そう」
激痛に気絶した犯罪者を見て、ノイが思わず手で顔を覆った。
キラキラオーラで回復してあげたほうがいいんだろうか……。
しかし、ノイがそう思っている間にツカサは新たな犯罪者へと向かっていく。
「そっちの人はおまかせしていいかな?! この人は、ボクが捕まえるから!」
逆上して迫ってくる犯罪者のみぞおちにビートスタンパーを一発食らわせ、気絶させ……。
さらに、逃亡を図ったりこちらに暴力を振るおうとしてくる者には昇竜雷を纏ったキックで足元への攻撃を食らわせる。
ノイはその後について、倒れた者たちの回復を行った。
(僕たちも取り締まる側ですが……このまま放置しては、他のお客様への印象が悪くなってしまいますので、その辺はきちんとしないとね)
観客がパニックを起こしたり、要らぬ混乱がおきてはいないかと周囲に気を配りながらノイが怪我人に対処していると……不意に思わぬものが目に入った。
容赦なくキックを食らわせるツカサはスカートが捲れ、パンツが丸見えだったのである。
「つ、ツカサー……! あの、その、それはちょっと……!」
「えっ、何……、きゃああ!」
何が起きているかに気づき、慌ててスカートを押さえるツカサ。
ノイは1人「アレを見た男性とはちょっと『話し合い』が必要になるかもしれないな」と思っていたのだった。