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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ディアグラータの異界回廊

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ディアグラータの異界回廊

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■『門』の向こうで待ち構える悪魔、ゾロール

「……さて、この先が『門』だ。準備はいいか?」
 回廊の奥の奥、『門』と呼んだ場所――中心で二つに分かれた、金属のようなそうでないような物体がそびえ立つ――で、クロシェル・シングラントがフェスタ生に呼びかける。ここまでは敵の襲撃を協力して退けてきたが、この先はいわば敵のホームだ。
「ま、この先のゾロールを倒さねぇと、帰らせてくれねぇだろうけどな。……覚悟決めろ」
 一呼吸置いて、クロシェルが二振りの剣の片方を『門』に向けて突き出し――。
「ふん!」
 力を入れて突けば、グワン、と響く音が駆け上がり、やがて中心の隙間が人一人入れるだろうかというところまで開いた。
「俺が最後に『門』を閉める。てめぇらが先に行け」
 クロシェルに促され、フェスタ生は『門』の向こう側へと歩を進めていく――。

「むぅ……魔の瘴気に満ちておるの。ここがディアグラータ、悪魔の住処……」
 呟いたファラムート・エイジニア、そしてフェスタ生の視界の先、周囲を赤く輝かせる洞穴が見えてきた。

「……来たか」

 入り口に足を踏み入れたところで、地を震わせるような声が響く。声の主は洞穴の中央、赤く滾る溶岩の河の手前に鎮座していた。

「俺はゾロール。門を守る悪魔の長である!
 門を開き踏み入った愚か者どもめ! 四肢を裂いて胴体を溶岩に放り込んでくれるわ!」

 四本の腕に一本ずつ剣を握り、獅子の頭から魂をも震わせる咆哮を放つ。
「この前は逃げるだけだったが、今日は違うぜ? こっちがてめぇの腕をもいで頭を溶岩に放り込んでやる」
 クロシェルは涼しい顔で、ゾロールの咆哮をはねのけ、剣を握り締め迎撃の構えを取る。

 ここに『剣の試練』、悪魔ゾロールとの決戦が幕を開けた――。


 小羽根 ふゆの起こした風の刃が、黒いただれた狼の身体を二度、三度と斬りつける。狼は動きが速く、鋭い牙での噛みつきはかなりの威力を秘めていそうだが、攻撃を当てることができさえすれば強力な威力を必要としなくて済みそうだった。
「ヴェリオンのウタが解放されるまでは、悪魔は倒しても復活を繰り返す……か。
 だったら、完全に倒しきる必要はあまりないよね。今の魔法で狼は追い払えるってわかったから、このままいってみよう」
 悪魔は他にも、六つ足の燃える大蟲が居たが、そちらは硬い殻を持っており、遠距離から有効打を与えるには苦労しそうだった。なのでそちらは仲間に任せ、ふゆは数の多い狼を一匹でも多く追いやるように戦う。
「ほらほら、こっちだよっ!」
 狼が自分の方に向かってくるように声を発し、時折氷の矢を放って注意を引く。小さな氷の矢であってもそれが四肢に当たれば狼は走れなくなり効果が見込め、引きつけてからの竜巻は先程の通り、身体に無数の傷をつけて逃げ帰らせるのに十分だった。
「よしよし、この調子。あとはみんながゾロールをやっつけてくれたら、私達の勝ち、だねっ」
 仲間へのエールを送りつつ、続々と湧いてくる狼に邪魔されないよう、ふゆは迎撃を続ける。


(ゾロールには十分な数の生徒が向かっているようだ。けど、その他の悪魔の数に対して、迎撃する生徒が少ない)
 一旦距離を取り、戦況を分析した行坂 貫が標的をゾロール以外の悪魔に向ける。
「まずはこれかな」
 複数のジェムを取り出し、共鳴させることで突き方向の衝撃波を生み出す。敵の布陣は機動力に優れた狼が先頭を行き、六本足の大蟲が後方から迫る形だったが、衝撃波はそのどちらをも貫いてダメージを与えた。
「狼はこれで十分か。大蟲の方が耐久に優れているな……ならば、これはどうだろう」
 動物型の魔機に装備してきた、圧縮した空気を射出する砲台を大蟲に向け、発射する。耐久に優れてはいるが重さはそうでもないようで、空気の弾を浴びた大蟲は耐えきれず後ろに吹き飛ばされる。
「よし、大蟲はこれを繰り返せば、こちらに攻撃できないはずだ。
 ……となると、数が多く足の速い狼に懐に飛び込まれないようにするべきだな」
 言った矢先、狼の集団が足の速さを活かして飛び込みつつあった。
「もちろん、対策は考えてある。これだ」
 屑ジェムを次々に爆発させ、狼の集団を混乱させる。その中でも足を止めた狼に対し、魔機で飛び込んでから装備した剣で胴体を切り裂く。強力な一撃に狼は悲鳴をあげて倒れ、肉体が地面に染み入るように消えていった。


「てかまぁ、セブンスフォールにこんなとこがあるなんてな。……ま、関係ねーか。仲間の邪魔するならはっ倒すだけ、っと。
 相手は見たこともねぇ悪魔だ、こいつは油断はできねーなリオノーラ……リオノーラ?」
 後ろに居たはずの狩屋 リオノーラから返事が聞こえてこないのを訝しんだ狩屋 海翔が振り返れば、そこにリオノーラの姿はなかった。
「まさかあいつ……!」
 慌てて前方に注意を向ければ、そこには一筋の道ができていた。周りには斬り伏せられた狼や大蟲の死骸が、地面に消えていく最中であった。
「テメェコラ! 話は聞け!」
 なにかあったら大変だと、海翔が後を追う――。

「うーん、かいとさんがなにか言っていた気がするけど……」
 海翔が追いかける少し前、既に数体の悪魔を屠っていたリオノーラが首を傾げ、しかし新たな敵の出現に意識を振り向ける。
「ん……皆の、かいとさんの邪魔、しないで……!」
 刀身に炎を宿す剣と、刀身に雷を迸らせる剣を振るい、飛びかかってきた狼を一体、二体と斬りつける。視線の向こうで大蟲がうごめくのを先んじて飛び込み、剣先に強い炎を宿らせるとそれを叩き込む。
「……ふぅ。ちょっと疲れた、かも……」
 斬撃を受け、さらに生じた爆風に巻き込まれる大蟲を見守っていたリオノーラは、その間に別の狼が接近しているのに気付くのが遅れた。あっ、と気付いた時には既に、狼は飛びかかる姿勢に移行していた――。
「よっと!」
 そこに間一髪、海翔がリオノーラと狼の間に割って入る。大剣で狼の噛みつきを防ぎ、そのまま押して弾くと同時に魔法の水弾を狼に向かって弾けさせる。弾けた水弾は釘状の水弾となって狼を襲い、無数の釘を打たれた狼が地面に倒れた。
「かいとさん、えっと」
「説教は後だリオノーラ、下がってろ」
 謝罪を口にしたそうなリオノーラに下がるように言い、起き上がった狼がなおも飛びかかろうとする。
「やってくれたな、くそ悪魔。食らいやがれ!」
 大剣を渾身の力で振り抜けるよう身体の位置を変え、そして駆けてきた狼へ大剣を叩きつける。剣先が地面を打ち、打たれた地面が抉れるほどの威力を受けて、狼が無事でいるはずがなかった。
「じゃあな、すぐに仲間も送ってやるよ……消え失せろ!」
 別れの言葉を吐き捨て、周囲に即座の脅威となる敵が消えたのを見て、海翔がリオノーラに向き直る。
「…………」
 先程叱られたショックで震えているリオノーラへ、手を伸ばす。さらに縮こまって目を閉じたリオノーラの頭を、こつん、と叩く。
「気をつけろよ。……ほら、まだ戦いは終わってねーぞ」
「う、ご、ごめんなさい……今度は気をつけて、がんばるね」
 とりあえず許されたことにホッとするリオノーラから海翔は視線を外して、そして次の標的へと二人で向かっていく――。
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