ディアグラータの異界回廊
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■ウタの輪を、大きく繋げていこう 2
(クロシェルさんを心配するリンアレルさんの真摯な気持ち……よく理解できます。
微力な身ですが、ディアグラータの門をひらくことが出来るよう、私も精一杯お手伝いさせていただきますね)
ステージに上がった空花 凛菜が、観客の一人としてステージを見守るリンアレルへ祈るように言葉を送った後、傍らの神獣ミグラテールに呼びかけ、成長した姿の背に乗って空へと舞い上がる。
「まずは、神獣と私たちの結んだ絆を讃えるウタを」
そう口にしてから、神獣と一緒になって歌う。この場にはかつての出来事を知る神獣が多く、ウタを聞いて懐かしむ者もあれば、ただ話に聞くだけだった者にはそこに含まれているドラマを想起させ、ワクワク感を感じさせた。
ひとしきり観客席をぐるりと周回してから、ステージに神獣と降り立った凛菜は続けて、自身の持ち歌を披露する。先のウタでステージは温まっており、素朴で心地よさを感じさせる凛菜のウタに合わせて、歌い出す者が多く現れた。
(ひとりのウタを、大勢のウタに。心地よい調べを、羽ばたくように響かせて――)
その、歌う輪をさらに広げる凛菜の歌うワンフレーズに、観客の想いがひとつになっていく。ひとつになった想いは光を生み、曲の終わりと共に光の柱を生み出すまでになったヴェリオンへと吸い込まれていった。
「お聞きくださり、ありがとうございました。……ミグラテールも、お疲れさまです」
観客に礼儀正しいお辞儀をして、凛菜は相棒であるミグラテールを労い、ミグラテールは一声鳴いて応えた。
(ライブなら楽しくやるのが一番、だけど『試練』と言うからには、やっぱりこっちの覚悟を見せる必要もあると思うのぜ。
だから俺は、相棒を信じて歌えることを証明してみせる!)
そんな思いを胸に、天導寺 朱が螺旋階段状に作り出した光の道を歩きながら歌う。初めは低い位置から、徐々に高い位置へ歩いていき、そして屈強な戦士であっても落ちたらケガを負うような高さまで来たところで、それがまるでウタの演出であるかのように、ダン、と床を踏み抜いて道を砕いた。
道が砕ける音が響き、キラキラと光る道の欠片に混じって落ちていく朱――。
あっ、と悲鳴をあげたのも束の間、次の瞬間には成長した神獣が朱を背中でキャッチし、ステージに激突することなく浮上から浮遊へと移行する。人と神獣の絆を信じたパフォーマンスにステージが湧き、光で満たされていった。
(この調子で、これからの困難も相棒と乗り越えていく!)
そんな思いをメッセージとして、朱は神獣と共に歌い、周りの観客に伝えていく。思いを感じ取った神獣はその決意に敬意を払い、自身の持てる手段でもって祝福の言葉を送ったのだった。
(ドラグリウス、あなたが導いた人と神獣はいま、ひとつになろうとしている。
あなたが願った、人と神獣が共に歩む世界。それは決して間違いなどではなく、受け継がれ、そして永遠に在るべきものだ)
ステージに立ち、一呼吸置いてから、堀田 小十郎は少し前に対峙した一人の英雄の言葉を思い浮かべる。
『人々を守る力を持つものを決して絶やしてはならぬ』
『ありがとう、名も知らぬ戦士よ』
それはとても重く、並大抵のことでは留めておけないもの。……しかしそうであるからこそ、言葉の裏に秘められた思いを引き継ぎ、彼に代わって彼が願った世界の成就のために力を魅せよう、と思わせてくれるもの。
見つめていた手を握り、よし、と頷いてから、振り返り睡蓮寺 陽介、睡蓮寺 小夜とそれぞれ視線を交わす。
「剣の試練でなく、翼の試練にて英雄の想いを示す。へっ、お前らしいな!
神獣たちも「その気にしろ」と言ってんだ、望むところだぜ……! 盛大に行こうぜ小十郎、小夜!」
「うん……! 十くんも一緒に歌ってくれるから、小狼丸も嬉しがってる。
見てくれる神獣さん達が一緒に歌いたくなるくらい……思いっきり楽しもう……!」
二人の決意を感じ取り、それに応えるべく頷いてから、抜いた剣を地面に突き刺し、マイクスタンドとする。
「剣を振るうが如く……この声に、心を込めよう」
そして、セットしたマイクを通して、散った仲間の安息を祈る曲を心を込めて歌い上げる。それはもちろん、二千年もの間、亡霊に変じてまで力を託す者を待ち続けたドラグリウスへの鎮魂歌。
「十くんが受け継ぎ、届けたい想い……わたしも、届けます」
小夜が小狼丸を撫でると、力を受けた小狼丸が成長した姿へと変じ、小夜を背に乗せて羽ばたく。空中からウタと、晴雨と虹の幻で小十郎のウタに彩りを付与する。
「今日は、得意の炎はお預けだ。代わりに始まるは氷で表す勇者の物語、ってな!
リンアレル、はくま、一緒に盛り上げていこうぜ!」
陽介が箒の力で空を飛び、オルガンの音色を響かせながら、リンアレルとはくまにも参加を呼びかける。そしてちょうど人の大きさの、鎧と兜を身に着けた氷像をステージに作り出す。それはかつてのドラグリウスであり、ウタの進行に合わせて儚く砕け散り、見る者に大きな感動をもたらした。
しばしの沈黙。鎮まった魂が空に昇り、残された者たちを見守る――そう観客に想起させたところで、小十郎が剣を抜き、目の前に小夜が降りてきて光の道を生み出した。
「一緒に歌う、その為に……光の道を貴方に送ります……」
小夜が作った光の道を、剣を手にした小十郎が進む。その立ち姿は神々しい雰囲気に満ちており、彼の背後には後光と、共に輝く光の翼が現れていた。小夜の紡ぐウタが、かつての英雄の想いを受け継いだ新しい勇者の誕生を祝福し、背中を押す。
「これからは、託された俺達が先人達に魅せる番だ!」
陽介の決意を秘めた声に呼応するように、空中に七つの光球が出現する。光球はしばらくステージ上空を駆け回ってから、地上に向かって降り注ごうとするが、そのうちの二つは小十郎と小夜の先に落ちようとしていた。
「共に歌い、共に歩もう……その為ならば、人は空にだって駆けだそう」
小十郎が駆け、小夜もその隣を小狼丸と駆ける。そして道の終わりで飛び上がり、落ちてきた光球を小十郎は剣で斬り、小夜は小狼丸と触れることで弾けさせ、ステージに光を降らせる。
ゆっくりと浮遊しながらステージに降りた小十郎の元に、陽介、小夜と小狼丸が合流する。
彼らの頭上にはひときわ大きな光が集まり、それはヴェリオンに吸い込まれると光の柱をより大きくしたのだった――。
(クロシェルさんを心配するリンアレルさんの真摯な気持ち……よく理解できます。
微力な身ですが、ディアグラータの門をひらくことが出来るよう、私も精一杯お手伝いさせていただきますね)
ステージに上がった空花 凛菜が、観客の一人としてステージを見守るリンアレルへ祈るように言葉を送った後、傍らの神獣ミグラテールに呼びかけ、成長した姿の背に乗って空へと舞い上がる。
「まずは、神獣と私たちの結んだ絆を讃えるウタを」
そう口にしてから、神獣と一緒になって歌う。この場にはかつての出来事を知る神獣が多く、ウタを聞いて懐かしむ者もあれば、ただ話に聞くだけだった者にはそこに含まれているドラマを想起させ、ワクワク感を感じさせた。
ひとしきり観客席をぐるりと周回してから、ステージに神獣と降り立った凛菜は続けて、自身の持ち歌を披露する。先のウタでステージは温まっており、素朴で心地よさを感じさせる凛菜のウタに合わせて、歌い出す者が多く現れた。
(ひとりのウタを、大勢のウタに。心地よい調べを、羽ばたくように響かせて――)
その、歌う輪をさらに広げる凛菜の歌うワンフレーズに、観客の想いがひとつになっていく。ひとつになった想いは光を生み、曲の終わりと共に光の柱を生み出すまでになったヴェリオンへと吸い込まれていった。
「お聞きくださり、ありがとうございました。……ミグラテールも、お疲れさまです」
観客に礼儀正しいお辞儀をして、凛菜は相棒であるミグラテールを労い、ミグラテールは一声鳴いて応えた。
(ライブなら楽しくやるのが一番、だけど『試練』と言うからには、やっぱりこっちの覚悟を見せる必要もあると思うのぜ。
だから俺は、相棒を信じて歌えることを証明してみせる!)
そんな思いを胸に、天導寺 朱が螺旋階段状に作り出した光の道を歩きながら歌う。初めは低い位置から、徐々に高い位置へ歩いていき、そして屈強な戦士であっても落ちたらケガを負うような高さまで来たところで、それがまるでウタの演出であるかのように、ダン、と床を踏み抜いて道を砕いた。
道が砕ける音が響き、キラキラと光る道の欠片に混じって落ちていく朱――。
あっ、と悲鳴をあげたのも束の間、次の瞬間には成長した神獣が朱を背中でキャッチし、ステージに激突することなく浮上から浮遊へと移行する。人と神獣の絆を信じたパフォーマンスにステージが湧き、光で満たされていった。
(この調子で、これからの困難も相棒と乗り越えていく!)
そんな思いをメッセージとして、朱は神獣と共に歌い、周りの観客に伝えていく。思いを感じ取った神獣はその決意に敬意を払い、自身の持てる手段でもって祝福の言葉を送ったのだった。
(ドラグリウス、あなたが導いた人と神獣はいま、ひとつになろうとしている。
あなたが願った、人と神獣が共に歩む世界。それは決して間違いなどではなく、受け継がれ、そして永遠に在るべきものだ)
ステージに立ち、一呼吸置いてから、堀田 小十郎は少し前に対峙した一人の英雄の言葉を思い浮かべる。
『人々を守る力を持つものを決して絶やしてはならぬ』
『ありがとう、名も知らぬ戦士よ』
それはとても重く、並大抵のことでは留めておけないもの。……しかしそうであるからこそ、言葉の裏に秘められた思いを引き継ぎ、彼に代わって彼が願った世界の成就のために力を魅せよう、と思わせてくれるもの。
見つめていた手を握り、よし、と頷いてから、振り返り睡蓮寺 陽介、睡蓮寺 小夜とそれぞれ視線を交わす。
「剣の試練でなく、翼の試練にて英雄の想いを示す。へっ、お前らしいな!
神獣たちも「その気にしろ」と言ってんだ、望むところだぜ……! 盛大に行こうぜ小十郎、小夜!」
「うん……! 十くんも一緒に歌ってくれるから、小狼丸も嬉しがってる。
見てくれる神獣さん達が一緒に歌いたくなるくらい……思いっきり楽しもう……!」
二人の決意を感じ取り、それに応えるべく頷いてから、抜いた剣を地面に突き刺し、マイクスタンドとする。
「剣を振るうが如く……この声に、心を込めよう」
そして、セットしたマイクを通して、散った仲間の安息を祈る曲を心を込めて歌い上げる。それはもちろん、二千年もの間、亡霊に変じてまで力を託す者を待ち続けたドラグリウスへの鎮魂歌。
「十くんが受け継ぎ、届けたい想い……わたしも、届けます」
小夜が小狼丸を撫でると、力を受けた小狼丸が成長した姿へと変じ、小夜を背に乗せて羽ばたく。空中からウタと、晴雨と虹の幻で小十郎のウタに彩りを付与する。
「今日は、得意の炎はお預けだ。代わりに始まるは氷で表す勇者の物語、ってな!
リンアレル、はくま、一緒に盛り上げていこうぜ!」
陽介が箒の力で空を飛び、オルガンの音色を響かせながら、リンアレルとはくまにも参加を呼びかける。そしてちょうど人の大きさの、鎧と兜を身に着けた氷像をステージに作り出す。それはかつてのドラグリウスであり、ウタの進行に合わせて儚く砕け散り、見る者に大きな感動をもたらした。
しばしの沈黙。鎮まった魂が空に昇り、残された者たちを見守る――そう観客に想起させたところで、小十郎が剣を抜き、目の前に小夜が降りてきて光の道を生み出した。
「一緒に歌う、その為に……光の道を貴方に送ります……」
小夜が作った光の道を、剣を手にした小十郎が進む。その立ち姿は神々しい雰囲気に満ちており、彼の背後には後光と、共に輝く光の翼が現れていた。小夜の紡ぐウタが、かつての英雄の想いを受け継いだ新しい勇者の誕生を祝福し、背中を押す。
「これからは、託された俺達が先人達に魅せる番だ!」
陽介の決意を秘めた声に呼応するように、空中に七つの光球が出現する。光球はしばらくステージ上空を駆け回ってから、地上に向かって降り注ごうとするが、そのうちの二つは小十郎と小夜の先に落ちようとしていた。
「共に歌い、共に歩もう……その為ならば、人は空にだって駆けだそう」
小十郎が駆け、小夜もその隣を小狼丸と駆ける。そして道の終わりで飛び上がり、落ちてきた光球を小十郎は剣で斬り、小夜は小狼丸と触れることで弾けさせ、ステージに光を降らせる。
ゆっくりと浮遊しながらステージに降りた小十郎の元に、陽介、小夜と小狼丸が合流する。
彼らの頭上にはひときわ大きな光が集まり、それはヴェリオンに吸い込まれると光の柱をより大きくしたのだった――。


