ディアグラータの異界回廊
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■心ある者を、ウタで繋ごう
ステージから歓声が聞こえてくる。【睡奏楽団】の出番が近付きつつあった。
(……うん、よかった。試練と言うけど、楽しく歌えばみんな一緒になって、歌ってくれる)
聞こえてくる楽しげな演奏と声に、ノーラ・レツェルがホッとして顔を上げれば、今日のライブを共にする天草 燧とイシュタム・カウィルの姿があった。
「大穴の調査……そこにはきっと、大きな謎が待っているのでしょうね。
謎の解明と平和な日常を目指して……イシュタムさん、素敵な舞台にしましょう」
「ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいな。……おっと、フルートバードもすっかりやる気十分みたいだ。
セブンスでの初めての舞台、一緒に成功させよう!」
燧とイシュタムが互いにエールを送り合い、二人の頭上で小鳥の姿をした星獣フルートバードが元気よく飛び回る。
「ノーラさん。空を飛ぶのは、楽しいですよ」
言って微笑む燧の胸元で、元は古く光を失っていたアミュレットがいまは光を発し、煌めく。
「大丈夫。覚悟は決めてきたよぉ」
その煌めきに呼応するように、ノーラの胸元でもアミュレットが瞬いた。
「……よし」
今日のライブのために用意したドレスを纏い、ルティア・オルコットが鏡の前で深呼吸する。
(試練とはいえ、緊張しすぎず……リラックス――)
「ルティアさん、その衣装とてもよく似合ってますよ」
「ええ。まさにルティアさんのために用意されたものですね」
と、ルティアの右から藍屋 あみかが、左から合歓季 風華がぴょこ、と顔を覗かせた。
「あみかさん、風華さん。……ありがとう、ございます。二人もその……とても、素敵……です」
振り返り、あみかと風華に視線をそれぞれ向けて、エールを送る。どちらの衣装にも蔦や葉が絡み合っているのが見え、衣装から暖かな気を感じられた。神獣ドリアディナの加護が込められているとのことで、いま感じたのはそれなのだろう、と納得する。
「動き出す物語、セブンスフォールのこれからを象徴できる舞台を、私達で」
「ええ。新しい朝の目覚めを、みんなと」
「よろしく、お願いします。皆さんとなら、きっと……上手く、歌えると思います」
三人のそれぞれ身に着けていた勲章が、光を受けてキラリ、と煌めいた。
「命が幸に向かう朝へ。水底より響かせましょう」
聞く者の心へより深く、風華が語りかけたのを合図に、あみかがステージに涼やかな霧霞を発生させる。差し込む光で爽やかな朝の訪れを表現し、竪琴の奏でと神獣ファーブラとのウタで観客に聞きやすく綺麗なハーモニーを意識させる。
朝の光が ここからでも感じられる
そのハーモニーに、ノーラがまるで水底にあるような――いまの場合、ベッドの中でスヤスヤと寝息を立てているような――イメージをもたらすウタを合わせる。ステージが落ち着いた雰囲気で満たされ、ノーラ自身も落ち着きを得たところで、次のフレーズを口にする。
行こう 今日という日を はじめよう
ノーラが大きく翼を広げ、霧の中から抜け出して空へと舞い上がる。小さな羽根が観客席に降り、流れるウタを反響して音色をより美しく際立たせる。加えて赤に青、黄色から紫と七色の花びらが降り、場を幻想的に彩る。
地上ではピクシーが現れ、霧の中でも実に楽しげに歌い、踊る。
「私も混ぜてくれないか? フルートの二重奏を披露しよう」
そこにイシュタムのフルートと、フルートバードのフルートが重なる。霧の世界に目覚めを促すウタが流れ、ウタの浸透と共にステージを覆っていた霧が晴れていった。
「歌いましょう。厳かなる水の器の目覚めを。命の音色響く目覚めの朝を……!」
風華がオキエルに触れ、力を受けたオキエルが成長した姿へと変じ、翼で風を起こして霧を晴らしていく。その晴らした空間へ、風華の祈りを込めたウタの力によって光の道が生み出される。そして光の道を進む風華の傍らを、翼を広げた燧とオキエルが先導するように、螺旋を描きながら宙を舞う。
進もう この道を 一緒に歌おう 目覚めのウタを
傍らの神獣と共に、ルティアが光の道を賛美するウタを響かせる。イシュタムも傍らに降りてきたフルートバードの力を解放し、光の道がそのまま光の舞台へと組み上げられる。
「さあ、光の頂点で集いましょう。二人もご一緒に」
燧が連れてきたオキエルの背にルティアとイシュタムを導き、再び空へと舞い上がる。
「わたし達も行きましょう、ファーブラ。
やさしいウタ、あかるいウタ……みんなで響かせましょう……!」
一声鳴いたファーブラの背に乗ったあみかが、ノーラ、燧とオキエルと合流し、光の舞台でウタを観客席に向けて届ける。
――この道は、セブンスフォールの新たな朝を描くもの
集った神獣とヒトを繋ぎ、幸を祈り歩みだす道――
前後左右、各方面を向き歌いかけながら進んだ先、光の道の終点で風華はそこに集った仲間たちと手を合わせる。
「今日のライブは、ねむねむさんが集めてくれてからできたライブです。この場で歌うことができて、嬉しいです」
あみかの言葉に、ノーラ、ルティアとイシュタム、燧が同意の頷きで続く。笑顔で応えた風華があみかと共にファーブラの背に乗り、光の道がスッ、と消えるのと同時に七色の光を持つ虹が出現する。
「共に歌いましょう。今日という一日が皆に、伝わるよう」
風と樹と水つなぐ
新たな朝と新たな記憶
この地に命に幸あれと
ウタ響く未来に幸あれと
短くも心に響くフレーズが、観客の心を光で満たす。その光は宙に放たれ、ヴェリオンに吸い込まれるまでの間、演者たちの周りをくるくると舞った。それぞれが笑顔を見せる中、ノーラが虹の向こうを見つめて口を開く。
「一人では為せぬことも、手に手を取って協力することで出来ることがある。単純に増えただけではない、1+1が2どころか3や4になる事がありえるんだ」
くるり、と振り返り、ライブを共にした仲間たちを見つめて、続きを口にする。
「今回のライブにも言えることだけど……本当にいつもありがとう。この光景は決してぼく一人では見られなかったもの。
みんなで創り出せたから、感動するし、素晴らしいものに成り得たよぉ」
――ちょっと語りすぎたかもしれないけど……
けれど、ずっと言いたかったことだから――
たくさんの光に囲まれた中で、それぞれが抱いた感謝の気持ちを、「ありがとう」を伝え合う。
やがて光はひとつに集まり、ヴェリオンへと吸い込まれていく。見るからに光を強めたヴェリオンからはかすかにウタのようなものが聞こえ始め、ヴェリオンにも目覚めが近付いていることを思わせたのだった。
ステージから歓声が聞こえてくる。【睡奏楽団】の出番が近付きつつあった。
(……うん、よかった。試練と言うけど、楽しく歌えばみんな一緒になって、歌ってくれる)
聞こえてくる楽しげな演奏と声に、ノーラ・レツェルがホッとして顔を上げれば、今日のライブを共にする天草 燧とイシュタム・カウィルの姿があった。
「大穴の調査……そこにはきっと、大きな謎が待っているのでしょうね。
謎の解明と平和な日常を目指して……イシュタムさん、素敵な舞台にしましょう」
「ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいな。……おっと、フルートバードもすっかりやる気十分みたいだ。
セブンスでの初めての舞台、一緒に成功させよう!」
燧とイシュタムが互いにエールを送り合い、二人の頭上で小鳥の姿をした星獣フルートバードが元気よく飛び回る。
「ノーラさん。空を飛ぶのは、楽しいですよ」
言って微笑む燧の胸元で、元は古く光を失っていたアミュレットがいまは光を発し、煌めく。
「大丈夫。覚悟は決めてきたよぉ」
その煌めきに呼応するように、ノーラの胸元でもアミュレットが瞬いた。
「……よし」
今日のライブのために用意したドレスを纏い、ルティア・オルコットが鏡の前で深呼吸する。
(試練とはいえ、緊張しすぎず……リラックス――)
「ルティアさん、その衣装とてもよく似合ってますよ」
「ええ。まさにルティアさんのために用意されたものですね」
と、ルティアの右から藍屋 あみかが、左から合歓季 風華がぴょこ、と顔を覗かせた。
「あみかさん、風華さん。……ありがとう、ございます。二人もその……とても、素敵……です」
振り返り、あみかと風華に視線をそれぞれ向けて、エールを送る。どちらの衣装にも蔦や葉が絡み合っているのが見え、衣装から暖かな気を感じられた。神獣ドリアディナの加護が込められているとのことで、いま感じたのはそれなのだろう、と納得する。
「動き出す物語、セブンスフォールのこれからを象徴できる舞台を、私達で」
「ええ。新しい朝の目覚めを、みんなと」
「よろしく、お願いします。皆さんとなら、きっと……上手く、歌えると思います」
三人のそれぞれ身に着けていた勲章が、光を受けてキラリ、と煌めいた。
「命が幸に向かう朝へ。水底より響かせましょう」
聞く者の心へより深く、風華が語りかけたのを合図に、あみかがステージに涼やかな霧霞を発生させる。差し込む光で爽やかな朝の訪れを表現し、竪琴の奏でと神獣ファーブラとのウタで観客に聞きやすく綺麗なハーモニーを意識させる。
朝の光が ここからでも感じられる
そのハーモニーに、ノーラがまるで水底にあるような――いまの場合、ベッドの中でスヤスヤと寝息を立てているような――イメージをもたらすウタを合わせる。ステージが落ち着いた雰囲気で満たされ、ノーラ自身も落ち着きを得たところで、次のフレーズを口にする。
行こう 今日という日を はじめよう
ノーラが大きく翼を広げ、霧の中から抜け出して空へと舞い上がる。小さな羽根が観客席に降り、流れるウタを反響して音色をより美しく際立たせる。加えて赤に青、黄色から紫と七色の花びらが降り、場を幻想的に彩る。
地上ではピクシーが現れ、霧の中でも実に楽しげに歌い、踊る。
「私も混ぜてくれないか? フルートの二重奏を披露しよう」
そこにイシュタムのフルートと、フルートバードのフルートが重なる。霧の世界に目覚めを促すウタが流れ、ウタの浸透と共にステージを覆っていた霧が晴れていった。
「歌いましょう。厳かなる水の器の目覚めを。命の音色響く目覚めの朝を……!」
風華がオキエルに触れ、力を受けたオキエルが成長した姿へと変じ、翼で風を起こして霧を晴らしていく。その晴らした空間へ、風華の祈りを込めたウタの力によって光の道が生み出される。そして光の道を進む風華の傍らを、翼を広げた燧とオキエルが先導するように、螺旋を描きながら宙を舞う。
進もう この道を 一緒に歌おう 目覚めのウタを
傍らの神獣と共に、ルティアが光の道を賛美するウタを響かせる。イシュタムも傍らに降りてきたフルートバードの力を解放し、光の道がそのまま光の舞台へと組み上げられる。
「さあ、光の頂点で集いましょう。二人もご一緒に」
燧が連れてきたオキエルの背にルティアとイシュタムを導き、再び空へと舞い上がる。
「わたし達も行きましょう、ファーブラ。
やさしいウタ、あかるいウタ……みんなで響かせましょう……!」
一声鳴いたファーブラの背に乗ったあみかが、ノーラ、燧とオキエルと合流し、光の舞台でウタを観客席に向けて届ける。
――この道は、セブンスフォールの新たな朝を描くもの
集った神獣とヒトを繋ぎ、幸を祈り歩みだす道――
前後左右、各方面を向き歌いかけながら進んだ先、光の道の終点で風華はそこに集った仲間たちと手を合わせる。
「今日のライブは、ねむねむさんが集めてくれてからできたライブです。この場で歌うことができて、嬉しいです」
あみかの言葉に、ノーラ、ルティアとイシュタム、燧が同意の頷きで続く。笑顔で応えた風華があみかと共にファーブラの背に乗り、光の道がスッ、と消えるのと同時に七色の光を持つ虹が出現する。
「共に歌いましょう。今日という一日が皆に、伝わるよう」
風と樹と水つなぐ
新たな朝と新たな記憶
この地に命に幸あれと
ウタ響く未来に幸あれと
短くも心に響くフレーズが、観客の心を光で満たす。その光は宙に放たれ、ヴェリオンに吸い込まれるまでの間、演者たちの周りをくるくると舞った。それぞれが笑顔を見せる中、ノーラが虹の向こうを見つめて口を開く。
「一人では為せぬことも、手に手を取って協力することで出来ることがある。単純に増えただけではない、1+1が2どころか3や4になる事がありえるんだ」
くるり、と振り返り、ライブを共にした仲間たちを見つめて、続きを口にする。
「今回のライブにも言えることだけど……本当にいつもありがとう。この光景は決してぼく一人では見られなかったもの。
みんなで創り出せたから、感動するし、素晴らしいものに成り得たよぉ」
――ちょっと語りすぎたかもしれないけど……
けれど、ずっと言いたかったことだから――
たくさんの光に囲まれた中で、それぞれが抱いた感謝の気持ちを、「ありがとう」を伝え合う。
やがて光はひとつに集まり、ヴェリオンへと吸い込まれていく。見るからに光を強めたヴェリオンからはかすかにウタのようなものが聞こえ始め、ヴェリオンにも目覚めが近付いていることを思わせたのだった。