ディアグラータの異界回廊
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■エピローグ
ゾロールが討ちとられたのち、その四振りの剣は、大地に刺さったまま残された。
「取れよ。そいつは強力な“ドラグトゥース”だ。
選ばれたテメェらには、わかるはずだぜ」
不意に、アーヴェント・ゾネンウンターガング、白川 郷太郎、槍沢 兵一郎、黒瀬 心美の四人の胸に、強い声が響いた。
――『我が暴剣を振るうがよい』と。
そして彼らは剣を取り……“暴剣の獅子”の名を分かち合うものとなった。
「さて……来たな」
ゾロールを討ち、残心していたクロシェルはそれを解いて振り向く。
“異界の剣”なしには固く閉じられたままだった異界回廊の門は、白い結界を伴いながら、しかし確かに押し開かれていた。
そしてまばゆい輝きは、その向こう――悪魔の領域までも伸びていき、そして不意に途切れたのであった。
「よくやった、と言いてぇところだが……
何か、据わりが悪いな」
門の向こうを見やり、クロシェルは呟いた。
そして、大悪魔ゾロールたちとの戦いに疲弊したフェスタ生を伴い、地上へと戻っていくのだった。
自分でも気づいていなかったようだが――クロシェルはどこか、焦りのようなものを、感じていた。
◆ ◇ ◆
――かくて、地上。
ドリアディナのステージでは。
「――――!」
高らかに歌うリンアレルの声にあわせて、神獣たちも声をそろえる。
その歌声はもろとも“ヴェリオン”に吸い込まれ――そして、宝石となって散っていった。
神獣たちの祝福が籠められたそれは、合歓季 風華、ノーラ・レツェル、リーニャ・クラフレット、龍造寺 八玖斗の四人に授けられたのだった。
……だが、神獣たちが歌い終えたその直後。
「リ、リンアレル!」
グラスハープ型の神器“ヴェリオン”に満ちた輝きは、少女王リンアレルを通して異界回廊を押し開いた。
響き渡る喝采――だが、それと同時に、リンアレルは力なく倒れてしまったのだ。
「疲れ……ではないようじゃぞ」
「外的要因ってこと? でも、一体……」
ハコダテからの助っ人はくまも、魔術師ファラムートでさえ計り知れない「なにか」の力が、リンアレルを弱らせた――。
その痛ましい姿に、神獣たちも知らずおののく。2000年前、自分たちを脅かした力の存在を感じ取ったのかもしれない。
そして、彼は姿を現したのだった。
「カミサマだよ。僕ら悪魔の、ね――くひひ」
「ノーマ……貴様、なぜここに!?」
ノーマ・シュナイダー。
カンタレーヴェと、そしてカラハリを恐怖と混乱に陥れた悪魔である。
それが、平然とここにいるのだ。
「おー、こわいこわい。そんな風に噛みつかないでよぉ。
ボクは今回、無知蒙昧なキミたちの味方をしに来てやったんだぜ?」
「貴様どの口で……!」
「まあ、話を聞きなよ。
リンアレルはボクらの神から“啓示”を受けた。
『どうせなんの意味もないから、好きにやっちゃえばいいじゃん』ってさ」
ノーマの口ぶりからするに、悪魔たちはその啓示に従って行動してきたらしい。
かの“大戦禍”も、その根底にある“翼ある人々”の堕転も、あるいは人の裏切りも――
その啓示が、根底にあるのかもしれない。
そんな予感が、ファラムートやはくまの中によぎった。
「陰気なくせにメチャクチャに強いその“啓示”と、王様は心の中で戦うことになったのさ。
だから、身体は動かなくなるし、心もだんだん冷えていく」
「……神の、啓示……」
「難しい話はあとにしようか。
その王様を助けたければ、神様を止めるしかない。
そのためには、ディアグラータの向こう側へ行くしかない」
終始おどけて、ノーマはファラムートたちに語っていたが、ふと、唐突に真剣な面持ちになり、まっすぐ二人を見据えて口を開いた。
「……実を言うと、ボクはあそこをぶっ潰したいんだ。
あそこは自堕落な掃き溜めだ、もうウンザリなのさ。
だからキミたちの手を借りてそれができるなら、喜んでそうする。
どうだい、ボクと手を組まないか?」
ノーマらしからぬ所作に、ファラムートは一瞬たじろいだが――
しかしリンアレルを救うためには、彼の提案を無下にすることはできない。
「その言葉を、決して信用はしない。
……じゃがリンアレルのため、利用できるものはしてやろう」
「くひひ。大人なお姉さん、嫌いじゃないよ」
「その口を閉じんか、外道め」
いたずらめかしたその言葉に、思わず顔をしかめるファラムート。
ともあれここに、カンタレーヴェを脅かしたものと守ったものによる、奇妙な共戦関係が結ばれたのであった。
――その世界は暗く、闇を放つ黒い太陽のもとに広がっていた。
黒い太陽の真下には塔がそびえており、その頂上では、一人の少女が大きな砂時計に腰かけている。
そして大きな時計のついた杖は、彼女が時間をつかさどる存在であることを示していた。
だが腰かけた砂時計の砂は落ち切ったまま、もはや返されることもないまま、長い時を経ていることが、見て取れた。
「クロノス様、ゾロールが討たれました。
地上より、何者かが攻め入ってまいります」
「ふーん、あそ」
赤々と燃える炎の身体に、骸骨を模した鎧。
背中にはためく炎のマントは、翼の残滓であろうか。
武人然としたその悪魔は、かつての“翼ある人々”の一人であったことを思わせた。
しかし物憂げに無関心に、クロノスと呼ばれたその少女は答えるのであった。
「かくなる上はこのサラマンダー、命を賭して迎え撃つ所存。
貴女にささげる我が戦い、とくとご覧くださいませ」
「まあ好きにして。別にきょーみないから。
それより知ってる? ミミズって雨が降ると、土の中で酸欠になって出てくるらしいよ」
出ていくサラマンダーを見送ることなく、クロノスは青白く光る四角い枠――カメラ付きのタブレット型スクロールに向かって、何事かを喋りはじめた。
大体はくだらないムダ知識だが、それに無数のコメントが返ってくる。
それを見て、クロノスはほの暗い承認欲求が満たされるのを感じ、薄笑いを浮かべるのだった。
ゾロールが討ちとられたのち、その四振りの剣は、大地に刺さったまま残された。
「取れよ。そいつは強力な“ドラグトゥース”だ。
選ばれたテメェらには、わかるはずだぜ」
不意に、アーヴェント・ゾネンウンターガング、白川 郷太郎、槍沢 兵一郎、黒瀬 心美の四人の胸に、強い声が響いた。
――『我が暴剣を振るうがよい』と。
そして彼らは剣を取り……“暴剣の獅子”の名を分かち合うものとなった。
「さて……来たな」
ゾロールを討ち、残心していたクロシェルはそれを解いて振り向く。
“異界の剣”なしには固く閉じられたままだった異界回廊の門は、白い結界を伴いながら、しかし確かに押し開かれていた。
そしてまばゆい輝きは、その向こう――悪魔の領域までも伸びていき、そして不意に途切れたのであった。
「よくやった、と言いてぇところだが……
何か、据わりが悪いな」
門の向こうを見やり、クロシェルは呟いた。
そして、大悪魔ゾロールたちとの戦いに疲弊したフェスタ生を伴い、地上へと戻っていくのだった。
自分でも気づいていなかったようだが――クロシェルはどこか、焦りのようなものを、感じていた。
◆ ◇ ◆
――かくて、地上。
ドリアディナのステージでは。
「――――!」
高らかに歌うリンアレルの声にあわせて、神獣たちも声をそろえる。
その歌声はもろとも“ヴェリオン”に吸い込まれ――そして、宝石となって散っていった。
神獣たちの祝福が籠められたそれは、合歓季 風華、ノーラ・レツェル、リーニャ・クラフレット、龍造寺 八玖斗の四人に授けられたのだった。
……だが、神獣たちが歌い終えたその直後。
「リ、リンアレル!」
グラスハープ型の神器“ヴェリオン”に満ちた輝きは、少女王リンアレルを通して異界回廊を押し開いた。
響き渡る喝采――だが、それと同時に、リンアレルは力なく倒れてしまったのだ。
「疲れ……ではないようじゃぞ」
「外的要因ってこと? でも、一体……」
ハコダテからの助っ人はくまも、魔術師ファラムートでさえ計り知れない「なにか」の力が、リンアレルを弱らせた――。
その痛ましい姿に、神獣たちも知らずおののく。2000年前、自分たちを脅かした力の存在を感じ取ったのかもしれない。
そして、彼は姿を現したのだった。
「カミサマだよ。僕ら悪魔の、ね――くひひ」
「ノーマ……貴様、なぜここに!?」
ノーマ・シュナイダー。
カンタレーヴェと、そしてカラハリを恐怖と混乱に陥れた悪魔である。
それが、平然とここにいるのだ。
「おー、こわいこわい。そんな風に噛みつかないでよぉ。
ボクは今回、無知蒙昧なキミたちの味方をしに来てやったんだぜ?」
「貴様どの口で……!」
「まあ、話を聞きなよ。
リンアレルはボクらの神から“啓示”を受けた。
『どうせなんの意味もないから、好きにやっちゃえばいいじゃん』ってさ」
ノーマの口ぶりからするに、悪魔たちはその啓示に従って行動してきたらしい。
かの“大戦禍”も、その根底にある“翼ある人々”の堕転も、あるいは人の裏切りも――
その啓示が、根底にあるのかもしれない。
そんな予感が、ファラムートやはくまの中によぎった。
「陰気なくせにメチャクチャに強いその“啓示”と、王様は心の中で戦うことになったのさ。
だから、身体は動かなくなるし、心もだんだん冷えていく」
「……神の、啓示……」
「難しい話はあとにしようか。
その王様を助けたければ、神様を止めるしかない。
そのためには、ディアグラータの向こう側へ行くしかない」
終始おどけて、ノーマはファラムートたちに語っていたが、ふと、唐突に真剣な面持ちになり、まっすぐ二人を見据えて口を開いた。
「……実を言うと、ボクはあそこをぶっ潰したいんだ。
あそこは自堕落な掃き溜めだ、もうウンザリなのさ。
だからキミたちの手を借りてそれができるなら、喜んでそうする。
どうだい、ボクと手を組まないか?」
ノーマらしからぬ所作に、ファラムートは一瞬たじろいだが――
しかしリンアレルを救うためには、彼の提案を無下にすることはできない。
「その言葉を、決して信用はしない。
……じゃがリンアレルのため、利用できるものはしてやろう」
「くひひ。大人なお姉さん、嫌いじゃないよ」
「その口を閉じんか、外道め」
いたずらめかしたその言葉に、思わず顔をしかめるファラムート。
ともあれここに、カンタレーヴェを脅かしたものと守ったものによる、奇妙な共戦関係が結ばれたのであった。
◆ ◇ ◆
――その世界は暗く、闇を放つ黒い太陽のもとに広がっていた。
黒い太陽の真下には塔がそびえており、その頂上では、一人の少女が大きな砂時計に腰かけている。
そして大きな時計のついた杖は、彼女が時間をつかさどる存在であることを示していた。
だが腰かけた砂時計の砂は落ち切ったまま、もはや返されることもないまま、長い時を経ていることが、見て取れた。
「クロノス様、ゾロールが討たれました。
地上より、何者かが攻め入ってまいります」
「ふーん、あそ」
赤々と燃える炎の身体に、骸骨を模した鎧。
背中にはためく炎のマントは、翼の残滓であろうか。
武人然としたその悪魔は、かつての“翼ある人々”の一人であったことを思わせた。
しかし物憂げに無関心に、クロノスと呼ばれたその少女は答えるのであった。
「かくなる上はこのサラマンダー、命を賭して迎え撃つ所存。
貴女にささげる我が戦い、とくとご覧くださいませ」
「まあ好きにして。別にきょーみないから。
それより知ってる? ミミズって雨が降ると、土の中で酸欠になって出てくるらしいよ」
出ていくサラマンダーを見送ることなく、クロノスは青白く光る四角い枠――カメラ付きのタブレット型スクロールに向かって、何事かを喋りはじめた。
大体はくだらないムダ知識だが、それに無数のコメントが返ってくる。
それを見て、クロノスはほの暗い承認欲求が満たされるのを感じ、薄笑いを浮かべるのだった。
担当マスター:ヒロイックソングス!運営チーム
担当マスターより
「ヒロイックソングス!」運営チームです。
「ディアグラータの異界回廊」リアクションをお送りいたします。
トリガーシナリオは、アクションを投稿しているか、
アクションを投稿していなくても「・アクション投稿しなくても登場を希望」の項目にチェックを入れた場合、基本的にリアクションに登場しています。
基本的にPCは1シーンに登場していますが、シーン分割の関係で数ページに渡って名前がある場合もございますので、リアクションを読み進めてご確認頂ければと思います。
また、称号やマスターからのコメントがある場合、最終ページ下にお知らせが表示されますので、併せてご確認下さい。
今回のリアクションを受け、神獣たちからの祝福を受けたのは、以下の皆様です。
神獣の祝福たる特別なアイテムを付与させていただいておりますので、ご確認ください。
合歓季 風華(HSM0002545)様
ノーラ・レツェル(HSM0000117)様
リーニャ・クラフレット(HSM0003427)様
龍造寺 八玖斗(HSM0004342)様
そして今回、“暴剣の獅子”の二つ名を継いだのは、以下の皆さまです。
ゾロールの所持していた特別なアイテムを付与させていただいておりますので、ご確認ください。
アーヴェント・ゾネンウンターガング(HSM0001901)様
白川 郷太郎(HSM0000090)様
槍沢 兵一郎(HSM0001126)様
黒瀬 心美(HSM0001329)様
それでは最後に、今回のシナリオを担当したマスターからのコメントをお送りいたします。
担当:猫宮烈
『ディアグラータの異界回廊』【1】【2】【3】パートを担当しました、猫宮 烈です。
皆さま、ご参加いただきどうもありがとうございました(ぺこり
セブンスフォールはグランドシナリオ以来の舞台でした。
いろいろと資料を漁りながら、それぞれ皆さまのドラマを作り、見せ場を作り、魅力的なリアクションとなるようがんばってみました。
この話は第一弾ということで、次もまた担当するかどうかは不明ですが、ぜひ第二弾があればやってみたいなぁと思いますし、皆さまにも続けて参加していただけたら嬉しく思います。
皆さまにとって少しでも、楽しかった、と思ってもらえるリアクションであったなら、とても嬉しく思います。
それでは、また。
「ディアグラータの異界回廊」リアクションをお送りいたします。
トリガーシナリオは、アクションを投稿しているか、
アクションを投稿していなくても「・アクション投稿しなくても登場を希望」の項目にチェックを入れた場合、基本的にリアクションに登場しています。
基本的にPCは1シーンに登場していますが、シーン分割の関係で数ページに渡って名前がある場合もございますので、リアクションを読み進めてご確認頂ければと思います。
また、称号やマスターからのコメントがある場合、最終ページ下にお知らせが表示されますので、併せてご確認下さい。
今回のリアクションを受け、神獣たちからの祝福を受けたのは、以下の皆様です。
神獣の祝福たる特別なアイテムを付与させていただいておりますので、ご確認ください。
合歓季 風華(HSM0002545)様
ノーラ・レツェル(HSM0000117)様
リーニャ・クラフレット(HSM0003427)様
龍造寺 八玖斗(HSM0004342)様
そして今回、“暴剣の獅子”の二つ名を継いだのは、以下の皆さまです。
ゾロールの所持していた特別なアイテムを付与させていただいておりますので、ご確認ください。
アーヴェント・ゾネンウンターガング(HSM0001901)様
白川 郷太郎(HSM0000090)様
槍沢 兵一郎(HSM0001126)様
黒瀬 心美(HSM0001329)様
それでは最後に、今回のシナリオを担当したマスターからのコメントをお送りいたします。
担当:猫宮烈
『ディアグラータの異界回廊』【1】【2】【3】パートを担当しました、猫宮 烈です。
皆さま、ご参加いただきどうもありがとうございました(ぺこり
セブンスフォールはグランドシナリオ以来の舞台でした。
いろいろと資料を漁りながら、それぞれ皆さまのドラマを作り、見せ場を作り、魅力的なリアクションとなるようがんばってみました。
この話は第一弾ということで、次もまた担当するかどうかは不明ですが、ぜひ第二弾があればやってみたいなぁと思いますし、皆さまにも続けて参加していただけたら嬉しく思います。
皆さまにとって少しでも、楽しかった、と思ってもらえるリアクションであったなら、とても嬉しく思います。
それでは、また。