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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ディアグラータの異界回廊

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ディアグラータの異界回廊

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■“暴剣の獅子” 2

「大悪魔ゾロール、勝負!!」
 背中に光の翼を生やした水鏡 彰が、高く飛び上がってからの渾身の一撃を繰り出す。
「ふんっ!!」
 ゾロールは背中の二刀も合わせ、四刀でもって彰の一撃を防ぐ。ダメージは与えていないが、すべての剣をもってしてようやく防いだということはそれだけ、彰の一撃に威力が乗っていたことの証。
(俺は勝つ! 騎士は敵に背を向けない!
 それに……ここで互角に戦えなきゃ、こいつより上位の存在に立ち向かえないからな!)
 ゾロールの反撃が来る前に、光の翼を生やしての移動で離脱する。願わくば腕の一本でも使用不能にできればと思いながら、次の攻勢に準備を整える。

「……思えば、こうして貴方様と肩を並べるのは初めてですわね」
「言われてみれば確かに。……足を引っ張るんじゃないぞ?」
「ふん! こちらこそお金持ちの運動不足が心配ですわ!」
 キング・デイヴィソンの冗談交じりの言葉に、エルトナ・マレリーアがプイ、と顔をそむけながら返す。ここまでたどり着く前に何度か剣を交えてきたことで身体にあった緊張が適度に解れたところで、キングが二本の剣を握り直し、未だ猛威を振るうゾロールに駆け寄っていく。
「大悪魔ゾロール。是非、この未熟者に教えをいただきたい」
 言いながら、刀身から烈火の炎を迸らせる剣を振るう。ゾロールが一刀をもってその攻撃を弾き、もう一刀で反撃の刃を見舞う。キングはもう一刀の、水の激流を放つ剣で防ぎ、激流を放ってゾロールの腕を押し返す。
「どこまでも忌々しい奴らめ!!」
 キングの戦術がドラグリウスのと同じであったため、ゾロールはさらに激昂して攻撃を繰り出す。そして四刀攻撃、“暴剣”でもって葬ろうとするその予兆を、冷静に挙動を伺っていたキングは見切った。
(倒れなければ安いものだ!)
 ある程度のダメージは覚悟しつつ、キングはゾロールの四刀のうち二刀に自らの二刀をぶつけ、相殺する。残りの二刀の攻撃はただ剣を当てる程度になり到底防ぎ切れないが、相殺分の威力がマイナス方向に働き、結果としてキングの肉体に損傷を与える攻撃にはならなかった。
「癒やしと敏捷の恩恵を!」
 即座にエルトナのウタがキングを癒やし、キングは次の攻撃が来る前に距離を取って離脱に成功する。ゾロールの攻撃は空振りに終わり、剣を振り回していたのを止めるところに隙が生じた。
「ここしかない! 突撃だ!」
 隙に乗じて、彰が再び飛翔からの突撃を敢行する。胸の傷を狙った渾身の一撃はまたもゾロールに防がれるが、今度は先程のような素早い反撃はやって来なかった。それが今回は結果として彰に有利に働く。
「まだまだ! その腕、もらった!」
 離脱するのではなく距離を詰めたまま、地面に足を着けてからの斬撃を放つ。軌道がどこを狙っているのか直前までわからない斬撃は、ゾロールの背中から生えていた腕に確かな傷を刻んだ。
「吹き飛びやがれ!」
 さらに、神獣の怒りを宿した一撃を放って、ゾロールをその場から吹き飛ばす。ゾロールは脚の力で自身にブレーキをかけ体勢を整えるが、一息つく間もなく回復したキングが地面を蹴って迫ってきていた。
「力を解放する……二刀の攻撃、受けてみろ!」
 水と炎、相反する属性がいまはひとつとなって、ゾロールを襲う。
「否!」
 拒絶の意思を込めた剣が、二刀一対の攻撃を防ぎ切った。――だがその時、後方ではエルトナが準備を完了しており、それにゾロールは気付いていない。
「光よ貫け!」
 光の波動が放たれ、キングが伏せたその上をゾロールの腹部目掛けて飛ぶ。それでもゾロールは残る二刀で直撃を防いだ。一瞬ニヤリ、とゾロールが笑みを浮かべ――直後、驚愕に顔を歪める。
「何っ!? ……ぐおおぉぉ!!」
 一旦防いだはずの光が増幅され、ついにゾロールの剣を弾いて肉体に有効打を与える。大きく吹き飛ばされたゾロールは踏みとどまるが、光に焼かれた腹部は黒くただれ、煙が立ち上っていた。
「一人じゃなく、二人」「二人ではありません、二人と一匹です」
 キングの声にエルトナが声を被せ、一瞬振り返ったキングがそうだったな、と苦笑して頷いた。


 黒瀬 心美がゾロールの周囲を駆け巡りながら、激流の剣、烈火の剣それぞれから水の激流と烈火の炎で牽制する。
「ゾロール、アンタは胸に傷を受けて「プライドを傷つけられた」そうだが。
 戦士にとって、戦いで受けた傷は勲章のような物。誇りこそすれ、恥じる物じゃない。アンタはそれが理解できないか?」
 激流と炎を剣で弾いたゾロールに、心美の言葉が突き刺さる。それまで誰の言葉にも耳を貸さなかったゾロールが一瞬、考え込む素振りを見せたが、それもほんの一瞬のことで、次の瞬間には心美へ距離を詰めての一斉攻撃を振るわんとしていた
「おっと、横入りですまねぇが、ゾロールさんよォ。俺に付き合ってもらうぜェ!」
 しかしそこに、黒鉄でできた無骨な形の大盾を構えた槍沢 兵一郎が割り込んでくる。
「ふん! たかが盾一枚で、俺の四刀を防げるとでも思ったか!」
「そう思っているから俺はここに居る! ゴチャゴチャ言う前に試してみろォ!」
 『Taten statt Worte!』の意味を、ゾロールにぶつける。その声にゾロールが一瞬、笑って――そして嵐のような必殺の“暴剣”を繰り出す。

「己が盾に不倒を誓えッ! ウオオオオオオオオッ!」

 兵一郎は盾のみで、ゾロールの四刀を防いでいく。他の者が剣をぶつけて相殺したり、妨害の攻撃を入れることで完全な威力を発揮させない状態で受けているのに対し、兵一郎はほぼ真っ向から――この時点でゾロールは二度、肉体にダメージを受けているのでそういう意味では完全な威力ではない――“暴剣”を受ける。それこそが兵一郎の生き様であり、誰にも譲れない己が意思。

 ……面白い

 その声は、ゾロールが発したものだったか。そんな声を聞いたような気がした兵一郎は、嵐の勢いが弱まっていくのに合わせて盾を押し出す。意外なほどあっさりとゾロールが吹き飛ばされ、数歩分離されたところで踏み留まった。
「ヘッ……防ぎ切ったぜ、この野郎……ッ!
 後は……任せた、やっちまえッ!」
「あいよ! アンタの働き、無駄にはしないっ!」
 盾を降ろし、肩で息をしながらも叫んだ兵一郎に呼応し、心美がそれぞれ刀身に炎と水を迸らせ突撃する。
(狙いは胸の十字傷……ドラグリウスの剣閃をトレースして……!)
 頭で思い描いた通りに二刀を振るい、そしてその切っ先はゾロールの胸の傷をなぞるように抉る。


「ふ、フフフ……貴様らがこれほどとは、な」
 三度肉体に傷を受け、常人であればとても立っていられないだろうダメージを受けながらも、ゾロールはいまだ膝を着くことなくフェスタ生の前に立ちはだかり続けた。
「俺を止めたければ、首を刎ねてみせよ!」
「フン。言われなくてもそうするつもりだ。……強がりもここまでだ。決着をつけてやる!」
 次が最後となるだろう――そんな予感を胸に、クロシェルとフェスタ生は再度、ゾロールと剣を交える――。
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