イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

エンジョイ! オルトカルテット!

リアクション公開中!
  • エンジョイ! オルトカルテット!

リアクション

【1-2】

 様々なフードが売られている露店からは次々とおいしそうな匂いが立ち込め、どこも大繁盛だった。
 全て回りきるためには、一体どのくらいの時間が必要なのか──まるで見当もつかない。

「どれもこれも美味そうだな。サクラは何が食べたい? 俺はそうだな…ケバブが気になるな」」

 人混みの中、はぐれてしまわないようにと龍崎 宗麟八重崎 サクラの手を握った。

「う、うーんと、そうだなー……あ、牛串ある! おじさん、牛串1本頂戴!」

 焼きたての牛串を渡されたサクラが財布を出そうとして、両手が塞がっていることに気づく。

「まいどありー」

 いつの間にか会計を済ませてくれていた宗麟は、サクラの顔を覗き込んだ。

「サクラ、熱いから気をつけて」

「ありがとう……」

 すぐ近くにあった露店でケバブも買って、サクラも宗麟も満足そうだ──その間、2人の手はずっとつながれたまま。

「牛串はこの噛んで味が染み出してくる感じがいいんだよねー。あ、あっちのソーセージ盛りもおいしそう──」

 色々と目移りするサクラに、

「このケバブ、程よい辛さとボリュームで満足だな。サクラも食べるかい? あはは、さすがに俺の食べかけは渡さないぞ。実はもうひとつ買ってあるからどうぞ。」

 そう言って、宗麟がケバブを勧めてくれた。

「それじゃあ……早速、一口もらうね?」

 不意に、サクラは宗麟の口元に手を伸ばし、口の脇に付いてたソースを指でそっと拭って舐めた。

「ん、ほんとだ美味しい!」

 サクラのちょっとしたサプライズに面食らった宗麟だったが、

「サクラのも美味しそうだな…良かったら一口くれないかい?」

「じゃあ牛串の残りと交換!」

 サクラと楽しい時間を過ごせたことに「ありがとう」と、素直に感謝の気持ちを伝えた。
 まさに【オーサカ満喫】。
 そんな束の間のひと時を楽しむ2人。
 ──同じ頃、アーヴェント・ゾネンウンターガング合歓季 風華もヴルストを頬張ろうとしていた。

「はい、熱いから気をつけてくれ。ウィンナーのような味と思ってくれればいい」

 息を吹きかけて冷ましてやりながら、風華にヴルストを渡す。
 初めてのヴルストをめずらしそうに見つめて、風華は早速食べてみる。
 あらびきの皮がとてもおいしく、なかなか好みの味付けだ。
 一緒に添えてあったザワークラウトもどこかなつかしい味が口の中に広がり、風華は一口一口を大事そうに噛みしめる。

「ふるさとのお味もこのような?」

「ああ──いつか一緒に行こう、きっと気に入る」

 頷いた風華は、ヴルストと一緒に購入したジンジャーソーダをアーヴェントに勧めた。

「これは香りや風味が心地よく、飲みやすいので私は好きです」

「うっ……炭酸はちょっと」

 アーヴェントの意外な一面を見た風華は、思わずくすっと笑みを浮かべた。
 こんな何気ない当たり前のやりとりがとてもいとおしく、心地よく感じているのがお互いに何も言わなくても分かる。
 それは、空気感がいつもと違うから──。

「ナゴヤの覇権、勇者のお姿。心より、心よりお祝いを」

「ありがとう、皆の応援があったからさ。──きっと、もうすぐ何かが起こる。自分達がどうにかしなければな」」

「そうですね。どうか、こんなお祭のような時をできるだけ長く守れるよう……」

 ふと、何を思ったのかアーヴェントが立ち止まる。
 どうやら、着ていたコートを先ほど腰掛けた場所に置き忘れてきたらしい。
 
「すまない、取ってくる」

 そう言ったアーヴェントの背中に向かって、

「このような穏やかさを、私はいつより感じて……」

 胸の奥に宿る穏やかなものに、風華は想いを馳せた。
 いつまでも風華の深い瞳にある煌めきを見つめていたかったアーヴェントだったが、今までコートを忘れるなんて一度もなかったことに気づく。
 それほど、彼女と過ごすことに夢中になっていたのだ。

「恋って、落ちるものなんだな」

 空に向かってぽつりと呟く。
 はっきりと口に出すことで、その想いは確かなものへと変わった。

「では、帰ろうか」

「はい。また来ましょう……きっとまた」

 アーヴェントと腕を組んだ風華。
 ──2人は再び、ゆっくりと歩き出した。

「か~~~~~、どこもかしこもあっちぃあっちぃな。チキショー」

 焼き鳥の串をくわえながら、カップルたちを横目で見ていたシン。

「あの、シンさん……」

 隣で小さく声を出したよもぎの熱い眼差しに気づき、ぽっと顔を赤らめる。

「お、おう。俺は今のとこフリーっつーかなんつーか」

「──その串、ちゃんとゴミ箱に捨ててくださいね?」

「……へ?」

 子供をたしなめるように言ったよもぎは、ナズナの手を引っ張ってクレープ屋へと向かっていった。

「単細胞、ここに見参~」

 シンの隣を通り過ぎる時、ナズナが「いーっ」という顔をしてみせる。

「あの女──いつかブッ倒す!」

 苦笑して、シンは焼き鳥の串をへし折った。
ページの先頭に戻る