大規模オーバーラップ“ラ・フォレ・リヴァイブ”
リアクション公開中!

リアクション
■魔王第二形態:ライ(1)
「ふははは! てんかりんがへばっているうちに、魔王にかかってくるのよ」
嘘がマントを翻し、魔王っぽく笑った。
(みんな、判ってるの? このままじゃオーバーラップは解除されないのよ)
心の中で嘘は叫び、【リトルフルール】の5人に目をとめた。
「そこの賑やかそうな1団、そう、【リトルフルール】。対決なのよ!」
「嘘! 嘘ちゃんから指名されちゃった?」
びくんと飛び上がった虹村 歌音は、さっと表情を曇らせる。
「……嘘ちゃんを倒せば、オーバーラップが解除される……でも、本当にそれでいいのかな」
そう呟いた歌音に向けて 団長のシャーロット・フルールは明るく答えた。、
「ノンノン。まだフェスタに来るって約束果たしてないじゃん。消えよたってそうはいかないよ」
二人を見回して、梧 双葉は決心したように呟いた。
「嘘ちゃんに心残りを残させないように、ハッピーエンドを私たちの手で作りたい!」
そんな3人をそばで見守るのは二人の男子。
「魔王として振る舞い、オーバーラップを解決しようとする嘘の姿は素直に賞賛に値する。その覚悟に応え、全力でライブ対決に挑むのもいいのだが……」
ウィリアム・ヘルツハフトと、
「ま、それだけで済むわけがねぇよな」
アレクス・エメロードだった。
「どうやら、対決相手である嘘さえも全力で楽しませようとしているようだな」
「さらにシャロには、とんでもねぇ野望があるし」
「ん? 野望?」
しかし会話はそこで中断した。
「5人まとめてかかってらっしゃいなのよ」
嘘がライブを始めたのだ。
part1【Espoir 希望の勇者】
(早く私を……私を倒して)
嘘は、配下の美少女エルフ達を促して呪いの歌を歌い舞い始めた。
双葉は嘘に向かって問いかけていた。
「嘘ちゃん、魔王として倒されちゃったらお兄ちゃん探せなくなっちゃうんじゃない? いいの?」
「ふはははは! 私は魔王! おに……兄のことなど、どうでもいいのだ!」
嘘は魔王としての態度を崩したくないようだ。
双葉はそれ以上は問わず、ライブに専念した。
*
今日の【リトルフルール】のライブは二部構成。
まずは『不死のラ・フォレ』の勇者をイメージしたロック曲【Espoir 希望の勇者】。
「勇者と魔王の真っ向勝負」をメージさせる熱いロックを、歌音とシャーロットが歌い始める。
♪~
「サンダルフォン・オルガン、展開」
双葉は【《聖具》サンダルフォン・オルガン】を魔王城の地形に合わせて変形させ展開。
その音色で、熱いロックをさらに熱くしていく。
【でゅある剣】を持ったアレクスは、サーカス団員らしくジャグリングのポーズを決めた。
剣の効果によって画力がちょっと上がった状態となったアレクスは、【“w”の芽吹き】を描き始める。
さらに、歌いながら歌音が【超・背景描写】。
ウィリアムとクリエイションしている歌音の【超・背景描写】は、動物などのモブまでも背景に描きこんでいく。
アレクスは【鋼鉄樞翼】で宙を舞い、【羽ばたきと囀り】で様々な動物を描き、森に住まわせる
二人によって、辺りは花と緑の溢れる空間……動物も住む、森となった。
森を背景に双葉が【エクストラチェンジ】。己の周囲に木の葉を舞わせ仮想体【リリカルふったん】に変身。
身長とバストサイズが増加した姿でオルガンを奏でる。
♪~
「ラ・フォレって森って意味なんだよね。ボクの異名は妖精!」
シャーロットは、蝶の意匠に桃色の宝石の刀身を持つ舞台用の飾り剣【未知と冒険を謳う妖精剣】を手にしている。
彼女が念じると剣の効果によって幻影の『雑魚敵四天王』が出現。彼らはシャーロットを追いかけつつ、魔物のように森を荒らし、動物たちを襲って暴れる。
「おい、シャロ。俺の作成物を襲わせんのが早ぇよ!? ちっ」
上空から見ていたアレクスが苦笑いしながら、次なる作業に入った。
「行きやがれ【二次元キャラ:森を往く勇者】。オカリナで呪いを打ち消せ」
『雑魚敵四天王』が暴れる森に、アレクスが放った【二次元キャラ:森を往く勇者】が登場。
~♪♪♪
オカリナで森や動物を癒すが、彼らの魔の手は留まる所を知らない。
そこに現るは、 シャーロット、双葉、ウィリアム。
3名の救世主。
歌音が放った【二次元キャラ:希望の救世主】が、光そのものとなり魔王城内を飛び回り、希望を感じさせる輝きを振り撒く。
その光の中、シャーロットは【ゴッズマスターピース】で神作画かつ神声質に。
【フェアリーテイルプリンセス】はこの盛り上がりにのって、光の粉のようなキラキラしたエフェクトを放つお姫様のような姿にチェンジ。
「妖精姫の出来上がり♪ さあ、森の支配者は魔王じゃなくて妖精ってのを教えてあげる♪」
シャーロットは【未知と冒険を謳う妖精剣】を持ったままくるりと回る。
同じく【フェアリーテイルプリンセス】を着用していた双葉――仮想体【リリカルふったん】も、キラキラとしたお姫様の姿に。
【白煉のリフレクション】で【《聖具》サンダルフォン・オルガン】の力を開放し、純白の光の十字架を複数出現させた。
光の十字架は空中を旋回しながら神聖な輝きを放つ。
厳そかなライティングの下、『雑魚敵四天王』やさらにその配下の雑魚達は、バッタバッタとシャーロットの【未知と冒険を謳う妖精剣】に切られに行く。
雑魚の切られ役を出現させ、華やかな殺陣を演出するのがこの剣の力なのだ。
ウィリアムは【英雄の品格】にて堂々とした雰囲気を纏いながら【エクストラチェンジ】。
【智者のサーベル】を手に、雄々しく戦う騎士を存分にアピール。
シャキーン! ドカーン! ドサッ!!
歌音の【超・効果音】が、二人の剣さばきをより良く仕上げる。
【Espoir 希望の勇者】はクライマックスへ向かっていく。
歌音はウィリアムとのクリエイション効果を付帯した【言葉のコーラス】で、複数のバックコーラスを奏でる。
双葉は【みんないっしょに】にて場を盛り上げて、【二次元キャラ:森を往く勇者】を自分の元へ呼び、オカリナでオルガンの演奏をサポートしてもらう。
*
♪♪♪
壮大なライブにも動じず、嘘は淡々と呪いの歌を歌い舞い続けている。
「……」
【鋼鉄樞翼】を使っているアレクスは、上空から嘘を見下ろし、先ほど双葉が口にした「嘘の兄」のことを考えていた。
(嘘が二次元人なら、兄貴も二次元にいんじゃねぇのか?)
(そもそも存在してんのかも怪しい。作られた存在故の苦しみ、設定を変えられちまったらそれまでだ)
*
あっという間に『雑魚敵四天王』達は殲滅された。
【未知と冒険を謳う妖精剣】を手に歌うシャーロットが、じ、っとアレクスを見上げた。
「へいへい。判ってるっつーの」
アレクスは【あなたに贈る白昼夢】を呼ぶ文章を綴り、ライブを見る者達を己が描いた夢の世界のへ呼び込んだ。
それは、こんな夢。
----------------------------------------------------------------------------
倒された魔王嘘ちゃんは 元の世界でお兄ちゃんと一緒に幸せに暮らしました……
----------------------------------------------------------------------------
「えっ? それってどういう……」
嘘が目を見開いたそのとき。
「なーんちゃって☆」
【未知と冒険を謳う妖精剣】を持ったシャーロットが【枠破りのバーンユニバース】を発動。
空間を斬り破り、これまでの全て……この白昼夢も……白紙に戻した。
「そういうエンドもありなんだろーけどさ、ボクはもっとも~っと嘘ちゃんと遊びたいんだよね」
シャーロットが、何もなくなった白紙状態の中、嘘に問いかける。
「嘘ちゃんも迷ってるんでしょ? このまま消えていいのかってね」
「ちがっ……」
思わずそう口にした嘘に魔王っぽさはなく、いつもの嘘の顔と声だった。
「二次元に帰っちゃったら嘘ちゃんの物語は作者任せになっちゃうよ。こっちに来たならさ、自分の物語は自分で作った方がきっと楽しい」
part2【Detour 愉快な世界】
熱いロックから曲は一転し、楽しそうでポップな【Detour 愉快な世界】に。
先ほどまでの【Espoir 希望の勇者】とそっくりなメロディだが、萌えや可愛さを前面に押し出す曲調だ。
♪☆♪☆♪
歌音とアレクスは、先ほどのスキルを使って、白紙の世界に新しい世界を描いていった。
賑やかで楽しいサーカスや、そこにいる動物達を描いていく。
玉に乗り、火の輪をくぐるサーカスの日々を、楽しい曲にのせ、文字も絵も入り乱れ、カラフルに。
【言葉のコーラス】を使った、深みのある演奏で。
ウィリアムの放った【ラブ・フォー・ライブ!】のハートがふわふわ、さらにその場を楽しく可愛くする。
妖精は道に迷わせるもの
もしも妖精に道を迷わされたら
寄り道を 楽しもう♪
きっとそこに ホントの楽しさがあるよ
サビ部分では【Detour 愉快な世界】の歌に付帯されている効果によって、パステルカラーの小さな風船が舞う。
歌音の【創作物:行進する人々】で創られたモブキャラクター達が、フラッシュモブ・ダンスを繰り広げ、賑やかさと楽しさは最高潮へ。
フルールサーカスに興味を奪われ、魔王の嘘と、配下達の美少女エルフ達の歌と踊りが鈍くなる。
「うまく踊れないのよ」
ダメージを相殺できていないのか、嘘は苦痛に顔を歪めている。
「うまく、歌えないのよ」
嘘がうめく。
「嘘ちゃんが魔王かどうか、二次元の住人かどうかなんて本当はどうでもいい。私はただ、嘘ちゃんと仲良くなりたかったんだ。もしもこのライブが終わったあとも嘘ちゃんと過ごせるなら、そのときは一緒にお兄ちゃん探すの手伝うね」
双葉の声がする。
「嘘ちゃん、ボクのサーカスに入らない? ただいま二次元住人の団員を熱烈募集中なんだ☆」
「シャロちゃん! それいいね!」
シャーロットと歌音の声もする。
「もしかして、さっき言ってた野望とは……」
「ご名答♪ たくシャロったら、機械だろうと何だろうと、興味津々なのは長所なんだろーけどな」
ウィリアムとアレクスの声もする。
何気ない楽しそうなやりとり。
フェスタの優しいみんな。
アイかつ。アニメ。漫画。
楽しく賑やかな、カラフルで色鮮やかな日常。
ついさっきまで、嘘もそこにいたはずだった。
「どれも、もうすぐお別れしなきゃいけない世界」
嘘は深く呼吸をし、ぎゅっと目を閉じた。
☆ミ
絶望的な真っ暗な中に、一瞬、キラリと光る何かが見えた。
「はふ」
溺れる者がわらをつかむように、とっさに嘘は手を伸ばす。
「はっ!」
確かに何かを掴んだ手ごたえを感じ、嘘は目を開ける。
「これは……」
嘘はいつのまにか、なじみある痛キャリーバッグを手にしていた。
しかも魔王仕様になっているのか色も形もダークキュートでご丁寧に「魔王参上」と書かれた缶バッチがたくさんついている。
「これは私の魔王パワー? それとも作者様が仕込んだ隠しアイテムなの?」
嘘は嬉しそうに痛キャリーバッグを眺める。
「とても力が湧いてくるのよ! 言うなればこんな感じ? 《魔王の痛キャリーバッグ:魔王らしく改造された痛カッコイイキャリーバッグ。そくばいかいでゲットした品や、楽しい思い出が詰まっている。例えば少年ソウルのオフ会に行った時などは(文字数)。持つだけで楽しかった日々を思い出し、元気に前向きになれる。魔王が二次元に戻る際のも、きっと大切に持ち帰ることだろう》。んふふ……」
嘘は5人を見回した。
「【リトルフルール】の入団申し込み用紙をくれると嬉しいのよ。大事にここに、詰めて帰るから……」
*
【ルナ・ハニカム】の小鈴木 あえかは、これまでの左脳の立ち居振る舞いや発言を総合して、左脳……姫宮ぶるぅべりぃを『完全な味方ではないが、信頼を置ける人物』だと考察していた。
(姫宮先生が「もっと面白いハッピーエンドがあるはず」と言うのなら)
(その言葉を信じ、)
(魔王となった嘘さんが消えるかもしれないという恐れを超え、全力でライブ対決に臨むのが自分達勇者一行が果たす役割)
あえかはそう考えていた。
同じく【ルナ・ハニカム】の氷華 愛唯が、あえかの横で言う。
「わたしは、わたしの『勇者』としての役割を全うしようと思うの」
2人は、うなずき合い、同じ思いを胸に嘘の前に出る。
愛唯は、仮想体――『ルナ・ドリームパレス』、自称の二つ名【いつも見守る月】へと変身した。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘や配下達は、先ほどよりもパワーアップしたように見える。
ルナは舞台用の飾り剣【聖剣≪ワンラヴ≫】を静かに振りかざす。
念じると、剣の効果によって幻影の雑魚敵の群れが出現。
ルナと雑魚敵達は、派手な殺陣を始めた。
『不死のラ・フォレ』は王道ファンタジー。派手な殺陣は、魔王城内部にぴったりマッチしている。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘の周りのエルフ達が、バトルシーンを取り入れた洗練された華麗かつ禍々しい舞いを繰り広げルナに対抗した。
「きゃぁっ!」
ルナはその勢いと美しさに圧倒されそうになるが、
「ルナちゃん!」
裏方に徹しているあえかは、ルナが大きなダメージを受ける前に【≪戦礼≫不葬】を施し回復させる。
「ありがとう」
ルナは心強い裏方の元、思うままパフォーマンスを展開した。
*
【聖剣≪ワンラヴ≫】の雑魚敵たちは見事な切られ役を演じている。
ルナに襲いかかっては、派手にやられて、消えていく。
その動きに合わせ、あえかが【爆発】の演出を添え、よりいっそう臨場感のある闘いのシーンを作り上げた。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘から余裕がなくなってきているのを、ルナは感じ取っていた。
襲い掛かって来た雑魚敵を華麗に散らして、ルナは一瞬、切なそうに細めた。
(嘘ちゃん、『あなた』の本当の居場所はここじゃないのかもしれない。この雑魚敵達のように、本当は消え去る運命なのかもしれない)
ルナはこころの中でだけ、嘘に語りかけ、パフォーマンスに専念していく。
*
(本気の本気で、倒しに来てくれてる)
嘘は【ルナ・ハニカム】の2人を見て力強く頷いた。
「こちらも本気で、お返しするのよ!」
嘘は痛キャリーバッグを演出の道具にしつつ、まるでミュージカルのように、印象的に可愛らしく、呪いの歌を歌い舞った。
♪♪♪ ♪♪♪
何かの力が宿っているのか、痛キャリーバッグからも呪いの雰囲気が渦巻きになって放出している。
「っくっ!」
その凄まじい力を相殺しつつ、ルナは剣を持ったまま歌い始めた。
あえかは【創作物:歌って踊れる共演者】と【二次元キャラ:神世紀のレーヴァティナ】のミチルを登場させる。
ルナの歌はさらに演出が冴え、華やぎが増した。
ライブが歌に移行したため、もう、魔王城内に先ほどの雑魚敵たちの姿はない。
――こんなふうに、消え去る運命……さっきの切ない考えがよぎったが、ルナは全力で歌い続けた。
* それは氷の華のように *
仄かに溶けて消えていく それは氷の華のように
あなたにとけてのこりたい それをおぼえていてね
ちいさなおもい 小さな指輪
だってだってわかってる おしまいが来ること
小さな心 ちいさなかけら
だけどずっと願ってる はじまりはここから
仄かに溶けて消えていく それは氷の華みたいで
わたしのむねにのこしたい ずっとおぼえているよ
仄かに溶けて消えていく それは氷の華のように
あなたにとけてのこりたい それをおぼえていてね
華やかに、涼やかに、鮮やかに。
希望を、夢を、愛を、Mellowな曲調に乗せ、優しく歌いあげていく。
嘘は、歌に出てくる「あなた」が、自分のことのように感じた。
「あ……」
本気の勝負の余韻なのか、ルナ――愛唯の愛が届いたのか、嘘の目には涙が浮かんでいる。
そのダメージは、かなり大きかったようだ。嘘が苦しそうに震えた。
「う、嘘ちゃん……」
「ルナちゃん。彼女なら大丈夫ですよ」
あえかは落ち着いている。
「左脳さんを信じましょう。今わたしたちは、ちゃんと『本当のハッピーエンド』を目指しているはずです」
ルナはうなずき仕上げの【ラブ・フォー・ライブ!】。
魔王城に、たくさんのハートを浮かべる。
そのハートは魔王、嘘のそばにも届き、しゃらしゃらときれいな音をたてた。
「ふははは! てんかりんがへばっているうちに、魔王にかかってくるのよ」
嘘がマントを翻し、魔王っぽく笑った。
(みんな、判ってるの? このままじゃオーバーラップは解除されないのよ)
心の中で嘘は叫び、【リトルフルール】の5人に目をとめた。
「そこの賑やかそうな1団、そう、【リトルフルール】。対決なのよ!」
「嘘! 嘘ちゃんから指名されちゃった?」
びくんと飛び上がった虹村 歌音は、さっと表情を曇らせる。
「……嘘ちゃんを倒せば、オーバーラップが解除される……でも、本当にそれでいいのかな」
そう呟いた歌音に向けて 団長のシャーロット・フルールは明るく答えた。、
「ノンノン。まだフェスタに来るって約束果たしてないじゃん。消えよたってそうはいかないよ」
二人を見回して、梧 双葉は決心したように呟いた。
「嘘ちゃんに心残りを残させないように、ハッピーエンドを私たちの手で作りたい!」
そんな3人をそばで見守るのは二人の男子。
「魔王として振る舞い、オーバーラップを解決しようとする嘘の姿は素直に賞賛に値する。その覚悟に応え、全力でライブ対決に挑むのもいいのだが……」
ウィリアム・ヘルツハフトと、
「ま、それだけで済むわけがねぇよな」
アレクス・エメロードだった。
「どうやら、対決相手である嘘さえも全力で楽しませようとしているようだな」
「さらにシャロには、とんでもねぇ野望があるし」
「ん? 野望?」
しかし会話はそこで中断した。
「5人まとめてかかってらっしゃいなのよ」
嘘がライブを始めたのだ。
part1【Espoir 希望の勇者】
(早く私を……私を倒して)
嘘は、配下の美少女エルフ達を促して呪いの歌を歌い舞い始めた。
双葉は嘘に向かって問いかけていた。
「嘘ちゃん、魔王として倒されちゃったらお兄ちゃん探せなくなっちゃうんじゃない? いいの?」
「ふはははは! 私は魔王! おに……兄のことなど、どうでもいいのだ!」
嘘は魔王としての態度を崩したくないようだ。
双葉はそれ以上は問わず、ライブに専念した。
*
今日の【リトルフルール】のライブは二部構成。
まずは『不死のラ・フォレ』の勇者をイメージしたロック曲【Espoir 希望の勇者】。
「勇者と魔王の真っ向勝負」をメージさせる熱いロックを、歌音とシャーロットが歌い始める。
♪~
「サンダルフォン・オルガン、展開」
双葉は【《聖具》サンダルフォン・オルガン】を魔王城の地形に合わせて変形させ展開。
その音色で、熱いロックをさらに熱くしていく。
【でゅある剣】を持ったアレクスは、サーカス団員らしくジャグリングのポーズを決めた。
剣の効果によって画力がちょっと上がった状態となったアレクスは、【“w”の芽吹き】を描き始める。
さらに、歌いながら歌音が【超・背景描写】。
ウィリアムとクリエイションしている歌音の【超・背景描写】は、動物などのモブまでも背景に描きこんでいく。
アレクスは【鋼鉄樞翼】で宙を舞い、【羽ばたきと囀り】で様々な動物を描き、森に住まわせる
二人によって、辺りは花と緑の溢れる空間……動物も住む、森となった。
森を背景に双葉が【エクストラチェンジ】。己の周囲に木の葉を舞わせ仮想体【リリカルふったん】に変身。
身長とバストサイズが増加した姿でオルガンを奏でる。
♪~
「ラ・フォレって森って意味なんだよね。ボクの異名は妖精!」
シャーロットは、蝶の意匠に桃色の宝石の刀身を持つ舞台用の飾り剣【未知と冒険を謳う妖精剣】を手にしている。
彼女が念じると剣の効果によって幻影の『雑魚敵四天王』が出現。彼らはシャーロットを追いかけつつ、魔物のように森を荒らし、動物たちを襲って暴れる。
「おい、シャロ。俺の作成物を襲わせんのが早ぇよ!? ちっ」
上空から見ていたアレクスが苦笑いしながら、次なる作業に入った。
「行きやがれ【二次元キャラ:森を往く勇者】。オカリナで呪いを打ち消せ」
『雑魚敵四天王』が暴れる森に、アレクスが放った【二次元キャラ:森を往く勇者】が登場。
~♪♪♪
オカリナで森や動物を癒すが、彼らの魔の手は留まる所を知らない。
そこに現るは、 シャーロット、双葉、ウィリアム。
3名の救世主。
歌音が放った【二次元キャラ:希望の救世主】が、光そのものとなり魔王城内を飛び回り、希望を感じさせる輝きを振り撒く。
その光の中、シャーロットは【ゴッズマスターピース】で神作画かつ神声質に。
【フェアリーテイルプリンセス】はこの盛り上がりにのって、光の粉のようなキラキラしたエフェクトを放つお姫様のような姿にチェンジ。
「妖精姫の出来上がり♪ さあ、森の支配者は魔王じゃなくて妖精ってのを教えてあげる♪」
シャーロットは【未知と冒険を謳う妖精剣】を持ったままくるりと回る。
同じく【フェアリーテイルプリンセス】を着用していた双葉――仮想体【リリカルふったん】も、キラキラとしたお姫様の姿に。
【白煉のリフレクション】で【《聖具》サンダルフォン・オルガン】の力を開放し、純白の光の十字架を複数出現させた。
光の十字架は空中を旋回しながら神聖な輝きを放つ。
厳そかなライティングの下、『雑魚敵四天王』やさらにその配下の雑魚達は、バッタバッタとシャーロットの【未知と冒険を謳う妖精剣】に切られに行く。
雑魚の切られ役を出現させ、華やかな殺陣を演出するのがこの剣の力なのだ。
ウィリアムは【英雄の品格】にて堂々とした雰囲気を纏いながら【エクストラチェンジ】。
【智者のサーベル】を手に、雄々しく戦う騎士を存分にアピール。
シャキーン! ドカーン! ドサッ!!
歌音の【超・効果音】が、二人の剣さばきをより良く仕上げる。
【Espoir 希望の勇者】はクライマックスへ向かっていく。
歌音はウィリアムとのクリエイション効果を付帯した【言葉のコーラス】で、複数のバックコーラスを奏でる。
双葉は【みんないっしょに】にて場を盛り上げて、【二次元キャラ:森を往く勇者】を自分の元へ呼び、オカリナでオルガンの演奏をサポートしてもらう。
*
♪♪♪
壮大なライブにも動じず、嘘は淡々と呪いの歌を歌い舞い続けている。
「……」
【鋼鉄樞翼】を使っているアレクスは、上空から嘘を見下ろし、先ほど双葉が口にした「嘘の兄」のことを考えていた。
(嘘が二次元人なら、兄貴も二次元にいんじゃねぇのか?)
(そもそも存在してんのかも怪しい。作られた存在故の苦しみ、設定を変えられちまったらそれまでだ)
*
あっという間に『雑魚敵四天王』達は殲滅された。
【未知と冒険を謳う妖精剣】を手に歌うシャーロットが、じ、っとアレクスを見上げた。
「へいへい。判ってるっつーの」
アレクスは【あなたに贈る白昼夢】を呼ぶ文章を綴り、ライブを見る者達を己が描いた夢の世界のへ呼び込んだ。
それは、こんな夢。
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倒された魔王嘘ちゃんは 元の世界でお兄ちゃんと一緒に幸せに暮らしました……
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「えっ? それってどういう……」
嘘が目を見開いたそのとき。
「なーんちゃって☆」
【未知と冒険を謳う妖精剣】を持ったシャーロットが【枠破りのバーンユニバース】を発動。
空間を斬り破り、これまでの全て……この白昼夢も……白紙に戻した。
「そういうエンドもありなんだろーけどさ、ボクはもっとも~っと嘘ちゃんと遊びたいんだよね」
シャーロットが、何もなくなった白紙状態の中、嘘に問いかける。
「嘘ちゃんも迷ってるんでしょ? このまま消えていいのかってね」
「ちがっ……」
思わずそう口にした嘘に魔王っぽさはなく、いつもの嘘の顔と声だった。
「二次元に帰っちゃったら嘘ちゃんの物語は作者任せになっちゃうよ。こっちに来たならさ、自分の物語は自分で作った方がきっと楽しい」
part2【Detour 愉快な世界】
熱いロックから曲は一転し、楽しそうでポップな【Detour 愉快な世界】に。
先ほどまでの【Espoir 希望の勇者】とそっくりなメロディだが、萌えや可愛さを前面に押し出す曲調だ。
♪☆♪☆♪
歌音とアレクスは、先ほどのスキルを使って、白紙の世界に新しい世界を描いていった。
賑やかで楽しいサーカスや、そこにいる動物達を描いていく。
玉に乗り、火の輪をくぐるサーカスの日々を、楽しい曲にのせ、文字も絵も入り乱れ、カラフルに。
【言葉のコーラス】を使った、深みのある演奏で。
ウィリアムの放った【ラブ・フォー・ライブ!】のハートがふわふわ、さらにその場を楽しく可愛くする。
妖精は道に迷わせるもの
もしも妖精に道を迷わされたら
寄り道を 楽しもう♪
きっとそこに ホントの楽しさがあるよ
サビ部分では【Detour 愉快な世界】の歌に付帯されている効果によって、パステルカラーの小さな風船が舞う。
歌音の【創作物:行進する人々】で創られたモブキャラクター達が、フラッシュモブ・ダンスを繰り広げ、賑やかさと楽しさは最高潮へ。
フルールサーカスに興味を奪われ、魔王の嘘と、配下達の美少女エルフ達の歌と踊りが鈍くなる。
「うまく踊れないのよ」
ダメージを相殺できていないのか、嘘は苦痛に顔を歪めている。
「うまく、歌えないのよ」
嘘がうめく。
「嘘ちゃんが魔王かどうか、二次元の住人かどうかなんて本当はどうでもいい。私はただ、嘘ちゃんと仲良くなりたかったんだ。もしもこのライブが終わったあとも嘘ちゃんと過ごせるなら、そのときは一緒にお兄ちゃん探すの手伝うね」
双葉の声がする。
「嘘ちゃん、ボクのサーカスに入らない? ただいま二次元住人の団員を熱烈募集中なんだ☆」
「シャロちゃん! それいいね!」
シャーロットと歌音の声もする。
「もしかして、さっき言ってた野望とは……」
「ご名答♪ たくシャロったら、機械だろうと何だろうと、興味津々なのは長所なんだろーけどな」
ウィリアムとアレクスの声もする。
何気ない楽しそうなやりとり。
フェスタの優しいみんな。
アイかつ。アニメ。漫画。
楽しく賑やかな、カラフルで色鮮やかな日常。
ついさっきまで、嘘もそこにいたはずだった。
「どれも、もうすぐお別れしなきゃいけない世界」
嘘は深く呼吸をし、ぎゅっと目を閉じた。
☆ミ
絶望的な真っ暗な中に、一瞬、キラリと光る何かが見えた。
「はふ」
溺れる者がわらをつかむように、とっさに嘘は手を伸ばす。
「はっ!」
確かに何かを掴んだ手ごたえを感じ、嘘は目を開ける。
「これは……」
嘘はいつのまにか、なじみある痛キャリーバッグを手にしていた。
しかも魔王仕様になっているのか色も形もダークキュートでご丁寧に「魔王参上」と書かれた缶バッチがたくさんついている。
「これは私の魔王パワー? それとも作者様が仕込んだ隠しアイテムなの?」
嘘は嬉しそうに痛キャリーバッグを眺める。
「とても力が湧いてくるのよ! 言うなればこんな感じ? 《魔王の痛キャリーバッグ:魔王らしく改造された痛カッコイイキャリーバッグ。そくばいかいでゲットした品や、楽しい思い出が詰まっている。例えば少年ソウルのオフ会に行った時などは(文字数)。持つだけで楽しかった日々を思い出し、元気に前向きになれる。魔王が二次元に戻る際のも、きっと大切に持ち帰ることだろう》。んふふ……」
嘘は5人を見回した。
「【リトルフルール】の入団申し込み用紙をくれると嬉しいのよ。大事にここに、詰めて帰るから……」
*
【ルナ・ハニカム】の小鈴木 あえかは、これまでの左脳の立ち居振る舞いや発言を総合して、左脳……姫宮ぶるぅべりぃを『完全な味方ではないが、信頼を置ける人物』だと考察していた。
(姫宮先生が「もっと面白いハッピーエンドがあるはず」と言うのなら)
(その言葉を信じ、)
(魔王となった嘘さんが消えるかもしれないという恐れを超え、全力でライブ対決に臨むのが自分達勇者一行が果たす役割)
あえかはそう考えていた。
同じく【ルナ・ハニカム】の氷華 愛唯が、あえかの横で言う。
「わたしは、わたしの『勇者』としての役割を全うしようと思うの」
2人は、うなずき合い、同じ思いを胸に嘘の前に出る。
愛唯は、仮想体――『ルナ・ドリームパレス』、自称の二つ名【いつも見守る月】へと変身した。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘や配下達は、先ほどよりもパワーアップしたように見える。
ルナは舞台用の飾り剣【聖剣≪ワンラヴ≫】を静かに振りかざす。
念じると、剣の効果によって幻影の雑魚敵の群れが出現。
ルナと雑魚敵達は、派手な殺陣を始めた。
『不死のラ・フォレ』は王道ファンタジー。派手な殺陣は、魔王城内部にぴったりマッチしている。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘の周りのエルフ達が、バトルシーンを取り入れた洗練された華麗かつ禍々しい舞いを繰り広げルナに対抗した。
「きゃぁっ!」
ルナはその勢いと美しさに圧倒されそうになるが、
「ルナちゃん!」
裏方に徹しているあえかは、ルナが大きなダメージを受ける前に【≪戦礼≫不葬】を施し回復させる。
「ありがとう」
ルナは心強い裏方の元、思うままパフォーマンスを展開した。
*
【聖剣≪ワンラヴ≫】の雑魚敵たちは見事な切られ役を演じている。
ルナに襲いかかっては、派手にやられて、消えていく。
その動きに合わせ、あえかが【爆発】の演出を添え、よりいっそう臨場感のある闘いのシーンを作り上げた。
♪♪♪ ♪♪♪
嘘から余裕がなくなってきているのを、ルナは感じ取っていた。
襲い掛かって来た雑魚敵を華麗に散らして、ルナは一瞬、切なそうに細めた。
(嘘ちゃん、『あなた』の本当の居場所はここじゃないのかもしれない。この雑魚敵達のように、本当は消え去る運命なのかもしれない)
ルナはこころの中でだけ、嘘に語りかけ、パフォーマンスに専念していく。
*
(本気の本気で、倒しに来てくれてる)
嘘は【ルナ・ハニカム】の2人を見て力強く頷いた。
「こちらも本気で、お返しするのよ!」
嘘は痛キャリーバッグを演出の道具にしつつ、まるでミュージカルのように、印象的に可愛らしく、呪いの歌を歌い舞った。
♪♪♪ ♪♪♪
何かの力が宿っているのか、痛キャリーバッグからも呪いの雰囲気が渦巻きになって放出している。
「っくっ!」
その凄まじい力を相殺しつつ、ルナは剣を持ったまま歌い始めた。
あえかは【創作物:歌って踊れる共演者】と【二次元キャラ:神世紀のレーヴァティナ】のミチルを登場させる。
ルナの歌はさらに演出が冴え、華やぎが増した。
ライブが歌に移行したため、もう、魔王城内に先ほどの雑魚敵たちの姿はない。
――こんなふうに、消え去る運命……さっきの切ない考えがよぎったが、ルナは全力で歌い続けた。
* それは氷の華のように *
仄かに溶けて消えていく それは氷の華のように
あなたにとけてのこりたい それをおぼえていてね
ちいさなおもい 小さな指輪
だってだってわかってる おしまいが来ること
小さな心 ちいさなかけら
だけどずっと願ってる はじまりはここから
仄かに溶けて消えていく それは氷の華みたいで
わたしのむねにのこしたい ずっとおぼえているよ
仄かに溶けて消えていく それは氷の華のように
あなたにとけてのこりたい それをおぼえていてね
華やかに、涼やかに、鮮やかに。
希望を、夢を、愛を、Mellowな曲調に乗せ、優しく歌いあげていく。
嘘は、歌に出てくる「あなた」が、自分のことのように感じた。
「あ……」
本気の勝負の余韻なのか、ルナ――愛唯の愛が届いたのか、嘘の目には涙が浮かんでいる。
そのダメージは、かなり大きかったようだ。嘘が苦しそうに震えた。
「う、嘘ちゃん……」
「ルナちゃん。彼女なら大丈夫ですよ」
あえかは落ち着いている。
「左脳さんを信じましょう。今わたしたちは、ちゃんと『本当のハッピーエンド』を目指しているはずです」
ルナはうなずき仕上げの【ラブ・フォー・ライブ!】。
魔王城に、たくさんのハートを浮かべる。
そのハートは魔王、嘘のそばにも届き、しゃらしゃらときれいな音をたてた。



