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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

熱戦! 火焔ヒツジ!

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熱戦! 火焔ヒツジ!
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【2-3】

 趣向を変えて、今度は和の皿が提供されることになった。
 緑青 木賊は【大豆と野菜の山椒味噌炒め】に取り掛かるため、準備を始める。
 炙った山椒の実を味噌とすり潰す。
 手作りの大豆も仕込むため、油を敷いた【火焔鉄鍋】でピリピリと辛い山椒味噌と大豆の水煮を揚げ始める。

「なかなかスパイシーな物が続いたみたいっすね。胃を休めるのも大事っす」

 木賊は時折、鍋を揺すって熱が具材に行き渡るように配慮すると、その合間に厚揚げを大きめに切っていった。
 さっと洗ったししとうの茎を切り、破裂を防ぐため身に切れ目を入れる。
 胡瓜は板ずりをしてから乱切りにし、茗荷は食べやすいよう薄切りにした。

「扱うお野菜は、全て今が旬っす。調理した後はすぐにいただくのがオススメ?っす」

 食材によって全て異なる食感の差を、前面に押し出した繊細で大胆な一品。
 揚げ大豆を取り出して油を切り、食材を【火焔鉄鍋】に全て加え、ざっと炒める。

「眠れない夜には、羊の数を数えたりするもんっすけど……」

 【七変化の炎】で自分の掌に柵を作り、【火焔鉄鍋】で作った羊に飛び越えさせるものを作り出す。

「羊といえば、やはりこれっすよね? 柵超え~~」

 【インビジブルスチーマー】で蒸気を発生し、羊のもこもこ感を表現した。

「お醤油と昆布茶を加えたら、完成っす!」

 皿に木賊【スターリーフライヤー】を施すと、見た目も申し分ない【大豆と野菜の山椒味噌炒め】となった。

「んー。どうやって食べてもらうっすか?」

 火焔ヒツジと目が合う木賊。

「……あーん、的な?」

 試しに口を開けるように誘導してみると、【大豆と野菜の山椒味噌炒め】はブラックホールのような漆黒の闇の中へと姿を消した。
 それは、火焔ヒツジの貴重な食事の瞬間だった。

「これ、お品書きだよ」

 と、言って川村 萌夏が火焔ヒツジの目の前に一枚の紙を置く。
 和食のフルコースなど食べたことがない火焔ヒツジは、首を傾げて料理の完成を待つことになった。
 わさびづくしのフルコースは、萌夏が【EBIZORI☆洒夢譜】を用いたアクロバティックな動作を披露することで調理がスタート。
 ワサビをすり下ろす演舞は、見応えのあるものだった。
 ワサビの辛味成分は、アブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体の一種がすりおろされる過程で酸素に触れ、細胞内の酵素と反応することで生成される物質である。
 ゆえに、酸素と触れなければ辛味が出てこない上、おろした後すぐに成分が分解を始めてしまうという点に留意しなければならない。
 パフォーマンスで観客の目を愉しませつつ、同時に素早く、緻密なすりおろしテクニックでわさびの風味を最大限にまで引き出そうと努めた。
 貴重な「ガニ芽」を使用したわさびの前菜三種盛り、わさび寿司、わさびパスタ、わさび鍋、最後にわさびアイスとどれも至れり尽くせりの一品ばかりだった。
 料理は【漆の茶器】盛り付け、【スターリーフライヤー】で見栄えを整える。
 前菜から順に一品ずつ提供するも、料理は瞬く間に食べられてしまった。

「わさび、気に入ってくれた?」

 その答えは、皿ごときれいになくなってしまった跡を見れば誰の目にも明らかだ。

「今度は、山からわさびが食べ尽くされてしまうかも知れませんね」

 天ぷらを揚げる用意を始めていたアニー・ミルミーンは、火焔ヒツジの食べっぷりを見てふふっと笑顔になる。
 さくっとピリ辛になるよう衣に唐辛子を混ぜ、少し厚めに食材を漬けた。
 天ぷら鍋は使わず、油を浅めに入れた深底のフライパンに1つずつ投入していく。

「天ぷらの食材達がアイドルグループだとすれば、センターを飾るのは九州のご当地フーズ、蓮根の穴に辛子を詰めた辛子蓮根と山陰のご当地フーズ、魚のすり身に唐辛子を練りこんだ赤天のダブルセンターです」

 他の食材にも、それぞれの魅力がある。
 ごぼうの掻き揚げはさくさくとした食感が楽しめ、芋の天ぷらは中がほっくりと仕上がるように高温で揚げた。
 食材の魅力をプロデュースすることこそが、今回の自分の使命なのだとアニーは思っていたのだ。
 揚がった天ぷらの油切りをしてから陶器の皿に盛り付け、【プレミアムディッシュ】でごまとラードを合わせたものを塗る。
 油の入ったフライパンに火を投入し、豪快にフランベをした。
 天ぷらを【オープングリル】で火のついた皿ごと近づけ、ラードを発火させる。
 炎の天ぷら、火焔仕立てといったところか。

「さあどうぞ、天ぷらと炎、ホットな共演をお楽しみください」

 ゴマの香りが引き立つように陶皿ごと【薫香七輪】に乗せれば、『ホット&ホット天ぷら』の完成だ。
 火焔ヒツジにしか食べられない、火焔ヒツジのためだけの一皿。
 この料理には、さぞかし火焔ヒツジもご満悦だろう。
 ──和食とは打って変わって、今度は別の料理に取り掛かるクロティア・ライハナレッジ・ディアの姿があった。
 ナレッジはクロティアにレシピを見せたり、具材を切ってみたり、野菜を茹でたりと簡単な作業を代わりにやっていたが、一通り終えてしまうとどうやら手持ち無沙汰になってしまったらしい。

「ど、どうしよう。な、なんか私も簡単な料理作らないと……」

 辺りを物色してみるが、そう簡単にはメニューも浮かんでこない。

「……そうだ! お肉とかをしゃぶしゃぶして、ラー油とかで味付けすればそれなりに行けるかも……?」

 調理を一緒に手伝ってくれていた村雲いろはに相談すると、

「それって発想がバーニャカウダっぽいかも……いいね」

 気合いを入れたクロティアは、いろはの指示に従って肉や海老を慎重に茹でる。
 ラー油を少し鍋に入れると、香ばしい風味が広がった。
 【雑学披露の知識】がここで役に立ち、【イメージトレーニング】を駆使したことで味の失敗もないはずだ。
  タバスコやラー油を具材と混ぜてアレンジしたオリジナルソースをいくつか用意し、アクセント程度にさっとかければバーニャカウダ風のピリ辛茹でスペシャルになった。

「うん……ソースがアクセントになってる……」

 いろはも納得がいったようだ。
 
「初心者なりに頑張ったよ……いろはさんのおかげだね」

「……そんなことないと思うけど」

 いろははクロティアの背中をポンと叩いた。
 ナレッジは、クロティアが茹でたレタスやキャベツを細かく刻んでいた。
 それが終わると、熱く熱したフライパンに切った材料を投入して、卵を混ぜ込んだ米と一緒にパラパラになるよう炒めていく。

「【フルーツ鵺の肉】は、ピリ辛な香辛料をまぶしてからオープングリルで焼きましょうか」

 いろはがOKサインを出す。

「火焔ヒツジが火を出してるなら、その火をちょっと借りれませんかね……?」

 尻尾の辺りの火がちょうど良さそうだったので、許可を得て使わせてもらうことに。
 焼いた【フルーツ鵺の肉】は、炒めずにチャーハンの上に乗せた茹でた野菜の間にそっと盛り付けた。

「……うん、美味しい」

 一口味見をしてから、

「セルフプロデュースみたいになりましたが、どうぞ召し上がってください」

 火焔ヒツジの火で炙った【フルーツ鵺の肉】乗せチャーハンが、火焔ヒツジの前にコトリと置かれたのだった。
 ──米をちゃんと食したドラゴンは、後にも先にも火焔ヒツジだけだろう。
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