イラスト

シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

熱戦! 火焔ヒツジ!

リアクション公開中!
熱戦! 火焔ヒツジ!
  • 熱戦! 火焔ヒツジ!

リアクション

【2-2】

 地上に戻ってきた火焔ヒツジが一息ついた頃を見計らって、小鈴木 あえかは『セブンスフォール産サンドイッチ・ワイバーンホイップソース仕立て』を作り始めた。
 る。
 具材ととオモイデ草を挟み、ホイップクリームと辛味のある素材を混ぜた甘辛ソースをたっぷりと仕込む。
 ほんのりした甘さが、火を噴く辛さを更に引き立てるだろう。
 扱いが難しいオモイデ草を、必要な分をサッと切って、新鮮な状態のまま使う。
 見た目のアクセントに花を添えて、一口サイズがとても大きいサンドイッチがテーブルの上に並べられ、フェスタ生たちの目を楽しませた。

「しかし! 俺はあえて『食べ応え』でアピールするのだ。かといって量が多いわけでもないのだ──とにかく色々なのが楽しめればはぴはぴかなっておもって☆」

 料理は味だけでなく、見た目も大事だと思う宇津塚 倖々葉は、エヘンと咳払いしてから【はぴはぴディッシュ】を2枚用意する。

「いざ、【料理:味評判の麻婆】でしょーぶするぞなもし」

 まず【はぴはぴ麺セット】を茹で、その時間を使って麻婆豆腐、麻婆春雨、麻婆茄子に取りかかる。

「んーさすがにこれだけいっぱい作るのはたいへんぞよ……【スープストック】でぱぱっとつくってしまえたらいいのだ☆」

 麺が茹で上がると、4種類の麺と麻婆豆腐、麻婆春雨、麻婆茄子を【はぴはぴディッシュ】の中へ入れる。
 1枚だけ皿が余ったため、そこに麻婆のたれを注いだ。

「これに麺をつけたり、おかずと麺を食べたり色々できるぞよ」

 倖々葉は食べる相手の反応も想定して、自ら料理を作る過程も楽しんでいる。

「はぴらきらりん☆」

 盛り付ける際には、呪文を唱えることも忘れない。

「できたぞなもしーーー」

 完成した料理を振る舞うため、【インビジブルスチーマー】で幻想的な演出をする。
 皿の位置が見えにくくても、火焔ヒツジは嗅覚でその位置を的確にかぎ分けることができた。

「普段はそこまでしないけどけど、特別に地獄的な辛さにしておいたのだ。色んな種類の麻婆で、ヒツジさんにも満足してもらえるかもかも?」

 倖々葉が言い終わらないうちに、辛味に耐えかねた火焔ヒツジが再び羊毛を吐き出したのは言うまでもない。
 料理によってすっかり骨抜きにされている火焔ヒツジは、次なる刺激を求めていた。

「火焔ヒツジさんにも、私の料理で笑顔になってもらえたら嬉しいな!」

 世良 延寿の得意料理はビシソワーズなのだが、今回は通常のビシソワーズにアレンジを加えて、辛口のスパイシービシソワーズを作るらしい。
 スープに入れる具材には、様々なものが用意されている。
 ハバネロを練り込んだ激辛チョリソーに、甘みも辛みもある風味豊かな唐辛子「ハラペーニョ」の輪切り。
 そして食の使いである【スパイスターキー】の炭火焼き。

「ジャガイモには「他の食材の味を吸いやすい」という特徴がありますから、ジャガイモの冷製スープに辛口具材をたくさん入れることで、ピリッとした食べ応えのあるスープに仕上げたいと思います!」

 まるで料理番組のように、軽快なトークを混ぜながら調理を進めていった。

 グウウウウウウ

「ん?」

 ……グウウウウ

 延寿がふと見ると、あんなに食べたはずの火焔ヒツジが腹を空かせているようだった。
 何度か羊毛を吐き出したことで、体力を消耗したのだろうか。
 くすっと微笑み、延寿はチョリソーとターキーを【薫香七輪】を使って火にかけた。
 【オープングリル】の炎で焼ける肉を見せ、香ばしい香りを立たせると、火焔ヒツジの鼻がひくひくと反応する。
 空腹と期待を刺激され、だんだんと目が血走ってきたのを延寿は見逃さない。
 ビシソワーズは【スープストック】で時間を歪ませることで、あっという間に冷たいスープへと変化させた。
 空腹の火焔ヒツジをこれ以上待たせるのは、危険だと判断した延寿。

「はい、どうぞ! ピリッとスパイスの効いた、食べる冷製スープだよ」

 冷たくて喉越しのよいスープは火焔ヒツジの喉を潤し、そして辛味は激しく体内を刺激した。
 羊毛を吐こうとして我慢をする火焔ヒツジ。
 それは、延寿への精一杯の敬意であったに違いない。

「次は肉攻めだ。……覚悟しな」

 【スパイスターキー】と【フルーツ鵺の肉】を抱えた陸斗・ハーヴェルが、ニッと笑みを浮かべる。
 早乙女 綾乃は火焔ヒツジや他のフェスタ生たちを前にして緊張した表情をしていたが、自分は1人で臨むわけではないということを改めて確認すると、大きく息を吸い込んだ。

「やっぱがっつり食うなら肉。ただ肉を食うだけじゃ芸がねーから、ステーキ丼が最強だな」
 
 陸斗は手順を見ると、食べ応えがあるよう肉を分厚く切り分け、白波 桃葉が持っていた【クラシカルハーブ】も細かく刻んでいった。
 包丁捌きの腕はなかなかのものである。
 
「ほら、ここ置くぞ」

 切っていった材料を次々とトレーに入れ、桃葉が作業しやすいようにずらりと並べてやった。
 桃葉は【フルーツ鵺の肉】に辛味オイルとして使われている調味料を使って下味をつけていく。
 【フルーツ鵺の肉】はもともと甘いのだが、辛味が合わさることでまろやかさとスパイシーさが交互に楽しめる絶妙な味に変化したようだ。
 
「やっぱ肉を焼く時は、こいつの出番だよな」

 【ワイルド肉焼き鉢】を使い、桃葉が手渡してくれた肉を隅々まで焼いてゆく。
 中は少し赤身を残した方が見た目もいいのだが、生すぎるのも体に毒だろう。

「でも口の中に入れたら焼けるのか……? 謎だな、あいつの体ん中……」

 桃葉も不思議に思ったのか、陸斗と顔を見合わせる。
 2人がちらっと火焔ヒツジを見ると、食い入るようにじっと肉を見つめている目が爛々と輝きを放っていた。
 その目には、桃葉さえも美味しそうに映っていたかも知れない。
 
「もうちょいで出来上がるから、おとなしくしてな? 容赦ないくらい、食わせてやるからよ」

 火焔ヒツジが色んな意味でごくりと生唾を飲み込むと、その音につられて周囲にいたフェスタ生たちも思わず食欲をそそられるのだった。
 綾乃が炊き立てのご飯を器に盛り、焼き上がった肉をギッシリと上に乗せていく。
 ターキーに染み込んだ香辛料のような香りが漂う中、鴨肉の方にハーブを散らせばステーキ丼の出来上がりだ。
 これはフェスタ生たちも是非食べたい一皿だろう。
 飲み物のように肉を流し込む火焔ヒツジに、

「よく噛んで食べろよ?」

 陸斗が声をかけたが、その声は果たして届いたのかどうかは定かでない。
ページの先頭に戻る