熱戦! 火焔ヒツジ!
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リアクション
【1-4】
「これ以上あちこち燃やされたら、山ごとなくなってしまいかねない──」
行坂 貫が【童子跳び】で高く飛び上がり、火焔ヒツジの注意を引き付けた。
燃える羊毛にまぎれる様に【開門手裏剣】を投げつけ、炎がオモイデ草に燃え移らないようにコントロールするのはなかなか至難の業だ。
渋谷 柚姫も同じく注意を引こうとするが、凄まじい勢いの炎に飲み込まれそうになり、なかなか思うようには動けない。
「山がなくなったら大変だよぉぉぉ~」
貫を援護するべく、リーニャ・クラフレットは【妖槍・國霰】に【氷雪の武威】を纏わせる。
「【極火二刀】!!」
貫の攻撃をまともに受けた火焔ヒツジは、しばらくの間その場にうずくまる──自身も炎をまとっているとはいえ、貫が走らせた温度の違う炎は、強烈な痛みを与えたようだった。
「地上は灼けても、空まではそうはいかないだろう……!」
鼻息が荒くなった火焔ヒツジに対して、
「ほらほらメーメーひつじさんこっちだよ!! あ、ドラゴンさんのがよかったかな?」
槍であちこちを突っつきながに、挑発するリーニャ。
貫は気が気ではなかったが、比較的余裕のある様子でよもぎとは反対側の方に距離を取っているのを確認すると、若干安心したようだ。
「まあいいや!! かかってこーい!」
挑発に乗った火焔ヒツジを煽り、できるだけ木々の少ない荒地を進みたいが選定は難しい。
「んー、この辺でいーかな」
リーニャは立ち止まると、【妖槍・國霰】で火焔ヒツジを薙ぎ払った。
「えっとね、メーメーさん、くらえなの! 頭を冷やすのだー!」
つんつくと槍でつつき続ける。
リーニャの槍攻撃は、確実に火焔ヒツジの体力を奪い続けた。
燃える羊毛が飛んできても、リーニャは気にしていない様子──なぜなら、槍で自分を刺すことで冷気が深手を負うのを防いでいるからだ。
「貫さんが火傷したら困るけど、私は自分で何とかできるので!」
続いて貫が上空から攻撃を開始する。
容赦ない貫のスピードに、火焔ヒツジは完全に遅れをとっていた。
燃えた後は灰と化す──それをいとも簡単にやってのける火焔ヒツジに対して、行き場のない憤りを感じる貫。
「食の使いがどれほど偉いのかは知らんが、簡単に山を焼き払って良いわけあるか!」
なりふり構わずに、【地踏み】を使って火焔ヒツジに怒りをぶつける。
「山が減れば、それだけ生物の住処は減るんだ。どんな存在だろうが、命や住処をむやみやたらに奪う権利はない!」
火焔ヒツジは呼吸を整えてから大きく息を吸い込んだ。
一方、各所に生えるオモイデ草を採取していたよもぎは、深郷 由希菜と合流して1本でも多くの苗を無駄にしまいと静かに奮闘していた。
「そ、そんなにたくさん抱えて大丈夫ですか、由希菜さん?」
両腕いっぱいにオモイデ草を抱えながら、
「絶対にオモイデ草を守って見せる! 気合だけは十二分に入れてきたからね! その気合、今使わなきゃどこで使うのって」
そう言ってウインクをしてみせた由希菜を、よもぎは頼もしく思う。
抜け道を駆けて行くと、燃え盛る草木が行く手を阻んでいた。
由希菜はオモイデ草が焼けないよう【氷雪の武威】の後に【尖土遁術】を使って、とにかく炎から守ろうと努める。
「んー、ちょっと待ってねよもぎさん」
ほんの少しだけ力を入れて、【無銘の剛剣】の【抜刀一閃】で一気に炎をかき消す。
「戦うだけがバトルじゃない。俺は守る方でバトルに勝利したい!──なんてね」
「ありがとうございます。私はもう十分に守られていますよ。私だけじゃありません……オモイデ草だって」
「そう言ってもらえるとうれしいな。──そうだ、これ、せっかく持ってきたから仕掛けておこうかな」
と言って、由希菜が取り出したのは【とら挟み】だった。
「火焔ヒツジからすれば、こんなの小石くらいにしか思わないかもだけどね」
今はちょっとしたトラップでも、火焔ヒツジを足止めする時間稼ぎにはなるだろう。
「みんな──頑張れ……!! 行坂君、りゅーや先輩、渋谷ちゃん──リーニャちゃん。信じてるからね」
離れた位置に見えた激しい炎に向かって、由希菜は力強く拳を握り締めた。
貫が心配していたオモイデ草はすでによもぎやフェスタ生たちによってそのほとんどが採取されたが、攻防戦はまだ続いている。
沙羅科 瑠璃羽が【麒麟】に乗って飛行し、空から火焔ヒツジを攻める。
「【薄氷睡蓮】!! 頭を冷やせ、火焔ヒツジ!!」
美しい刀が煌めき、火焔ヒツジへと斬りかかっていく。
「燃える羊毛や爪も届かないなら……こっちに来るしかないでしょ!」
【忍びの心得】を使った柚姫は、攪乱作戦を実行するべく火焔ヒツジにじりじりと近づいた。
【智者のサーベル】で斬りかかり、すぐに離れて遠距離から【手裏剣】で投擲を行う。
火焔ヒツジが反撃しようと燃える羊毛を吐いた瞬間、瑠璃羽は口内を狙って咄嗟に攻撃を仕掛けた。
燃える羊毛が口の中で詰まり、火焔ヒツジは動けなくなる。
「今だっ、【忍法猫騙し】──あっつ!!」
柚姫はリーニャを襲おうとする火焔ヒツジの注意をそらそうと足を払いのけたが、髪に火が燃え移り、わずかに焦げた匂いが立ち込めた。
貫が散らしてくれたおかげですぐに消火したが、うかうかしていると大火傷を負ってしまうだろう。
「ありがとう。距離を取るのが本当に難しいね……」
お互いがお互いの邪魔にならないように、火の向きなども予測しながら動かなければならない。
今は、隙を見て攻撃を繰り返すというヒットアンドアウェイが最も有効なのかも知れない。
そう判断した柚姫は、リーニャと協力して二手に分かれた。
視線が一点に集中しなければ、火焔ヒツジの攻撃力も最大とまではいかないだろう。
「全部終わったら、おいしいもの食べようね」
「うん!」
柚姫とリーニャ、瑠璃羽はそろって思わず頬を緩ませた。
勝利のその先には、きっと上質な肉が待っている。
「無理やりあんたを捕らえようとした人間が悪いのは百も承知だが……だからって、我を忘れて他の生き物を殺して良い道理はないだろ? 分かったら落ち着いて冷静になれ。分からないなら大人しく俺たちに食われろ。それが──」
俺たちの願いだ──と言わんばかりに貫は突進する火焔ヒツジを追いかけ、後足に刀を突きたてる。
どうやら貫の思いが通じたのか、火焔ヒツジはがくんと崩れ落ちてそのままおとなしくなった。
呼吸は荒いが、今のところ抵抗はしそうにない。
ふと見ると、由希菜がしかけた【とら挟み】が足元の羊毛にからまっている。
ふふっと苦笑して、瑠璃羽がそれを外してやった。
「痛くしちゃってごめんねー? でも、落ち着いてくれてよかったの!」
リーニャは【応急手当】を火焔ヒツジに施す。
決して自分たちは好んで戦いを挑んだわけではないということが、リーニャの行動によって証明された瞬間だった。
自分のこともちゃんと手当てしておけよ、と貫はリーニャの肩に手を置き、彼女を労ったのだった。
「これ以上あちこち燃やされたら、山ごとなくなってしまいかねない──」
行坂 貫が【童子跳び】で高く飛び上がり、火焔ヒツジの注意を引き付けた。
燃える羊毛にまぎれる様に【開門手裏剣】を投げつけ、炎がオモイデ草に燃え移らないようにコントロールするのはなかなか至難の業だ。
渋谷 柚姫も同じく注意を引こうとするが、凄まじい勢いの炎に飲み込まれそうになり、なかなか思うようには動けない。
「山がなくなったら大変だよぉぉぉ~」
貫を援護するべく、リーニャ・クラフレットは【妖槍・國霰】に【氷雪の武威】を纏わせる。
「【極火二刀】!!」
貫の攻撃をまともに受けた火焔ヒツジは、しばらくの間その場にうずくまる──自身も炎をまとっているとはいえ、貫が走らせた温度の違う炎は、強烈な痛みを与えたようだった。
「地上は灼けても、空まではそうはいかないだろう……!」
鼻息が荒くなった火焔ヒツジに対して、
「ほらほらメーメーひつじさんこっちだよ!! あ、ドラゴンさんのがよかったかな?」
槍であちこちを突っつきながに、挑発するリーニャ。
貫は気が気ではなかったが、比較的余裕のある様子でよもぎとは反対側の方に距離を取っているのを確認すると、若干安心したようだ。
「まあいいや!! かかってこーい!」
挑発に乗った火焔ヒツジを煽り、できるだけ木々の少ない荒地を進みたいが選定は難しい。
「んー、この辺でいーかな」
リーニャは立ち止まると、【妖槍・國霰】で火焔ヒツジを薙ぎ払った。
「えっとね、メーメーさん、くらえなの! 頭を冷やすのだー!」
つんつくと槍でつつき続ける。
リーニャの槍攻撃は、確実に火焔ヒツジの体力を奪い続けた。
燃える羊毛が飛んできても、リーニャは気にしていない様子──なぜなら、槍で自分を刺すことで冷気が深手を負うのを防いでいるからだ。
「貫さんが火傷したら困るけど、私は自分で何とかできるので!」
続いて貫が上空から攻撃を開始する。
容赦ない貫のスピードに、火焔ヒツジは完全に遅れをとっていた。
燃えた後は灰と化す──それをいとも簡単にやってのける火焔ヒツジに対して、行き場のない憤りを感じる貫。
「食の使いがどれほど偉いのかは知らんが、簡単に山を焼き払って良いわけあるか!」
なりふり構わずに、【地踏み】を使って火焔ヒツジに怒りをぶつける。
「山が減れば、それだけ生物の住処は減るんだ。どんな存在だろうが、命や住処をむやみやたらに奪う権利はない!」
火焔ヒツジは呼吸を整えてから大きく息を吸い込んだ。
一方、各所に生えるオモイデ草を採取していたよもぎは、深郷 由希菜と合流して1本でも多くの苗を無駄にしまいと静かに奮闘していた。
「そ、そんなにたくさん抱えて大丈夫ですか、由希菜さん?」
両腕いっぱいにオモイデ草を抱えながら、
「絶対にオモイデ草を守って見せる! 気合だけは十二分に入れてきたからね! その気合、今使わなきゃどこで使うのって」
そう言ってウインクをしてみせた由希菜を、よもぎは頼もしく思う。
抜け道を駆けて行くと、燃え盛る草木が行く手を阻んでいた。
由希菜はオモイデ草が焼けないよう【氷雪の武威】の後に【尖土遁術】を使って、とにかく炎から守ろうと努める。
「んー、ちょっと待ってねよもぎさん」
ほんの少しだけ力を入れて、【無銘の剛剣】の【抜刀一閃】で一気に炎をかき消す。
「戦うだけがバトルじゃない。俺は守る方でバトルに勝利したい!──なんてね」
「ありがとうございます。私はもう十分に守られていますよ。私だけじゃありません……オモイデ草だって」
「そう言ってもらえるとうれしいな。──そうだ、これ、せっかく持ってきたから仕掛けておこうかな」
と言って、由希菜が取り出したのは【とら挟み】だった。
「火焔ヒツジからすれば、こんなの小石くらいにしか思わないかもだけどね」
今はちょっとしたトラップでも、火焔ヒツジを足止めする時間稼ぎにはなるだろう。
「みんな──頑張れ……!! 行坂君、りゅーや先輩、渋谷ちゃん──リーニャちゃん。信じてるからね」
離れた位置に見えた激しい炎に向かって、由希菜は力強く拳を握り締めた。
貫が心配していたオモイデ草はすでによもぎやフェスタ生たちによってそのほとんどが採取されたが、攻防戦はまだ続いている。
沙羅科 瑠璃羽が【麒麟】に乗って飛行し、空から火焔ヒツジを攻める。
「【薄氷睡蓮】!! 頭を冷やせ、火焔ヒツジ!!」
美しい刀が煌めき、火焔ヒツジへと斬りかかっていく。
「燃える羊毛や爪も届かないなら……こっちに来るしかないでしょ!」
【忍びの心得】を使った柚姫は、攪乱作戦を実行するべく火焔ヒツジにじりじりと近づいた。
【智者のサーベル】で斬りかかり、すぐに離れて遠距離から【手裏剣】で投擲を行う。
火焔ヒツジが反撃しようと燃える羊毛を吐いた瞬間、瑠璃羽は口内を狙って咄嗟に攻撃を仕掛けた。
燃える羊毛が口の中で詰まり、火焔ヒツジは動けなくなる。
「今だっ、【忍法猫騙し】──あっつ!!」
柚姫はリーニャを襲おうとする火焔ヒツジの注意をそらそうと足を払いのけたが、髪に火が燃え移り、わずかに焦げた匂いが立ち込めた。
貫が散らしてくれたおかげですぐに消火したが、うかうかしていると大火傷を負ってしまうだろう。
「ありがとう。距離を取るのが本当に難しいね……」
お互いがお互いの邪魔にならないように、火の向きなども予測しながら動かなければならない。
今は、隙を見て攻撃を繰り返すというヒットアンドアウェイが最も有効なのかも知れない。
そう判断した柚姫は、リーニャと協力して二手に分かれた。
視線が一点に集中しなければ、火焔ヒツジの攻撃力も最大とまではいかないだろう。
「全部終わったら、おいしいもの食べようね」
「うん!」
柚姫とリーニャ、瑠璃羽はそろって思わず頬を緩ませた。
勝利のその先には、きっと上質な肉が待っている。
「無理やりあんたを捕らえようとした人間が悪いのは百も承知だが……だからって、我を忘れて他の生き物を殺して良い道理はないだろ? 分かったら落ち着いて冷静になれ。分からないなら大人しく俺たちに食われろ。それが──」
俺たちの願いだ──と言わんばかりに貫は突進する火焔ヒツジを追いかけ、後足に刀を突きたてる。
どうやら貫の思いが通じたのか、火焔ヒツジはがくんと崩れ落ちてそのままおとなしくなった。
呼吸は荒いが、今のところ抵抗はしそうにない。
ふと見ると、由希菜がしかけた【とら挟み】が足元の羊毛にからまっている。
ふふっと苦笑して、瑠璃羽がそれを外してやった。
「痛くしちゃってごめんねー? でも、落ち着いてくれてよかったの!」
リーニャは【応急手当】を火焔ヒツジに施す。
決して自分たちは好んで戦いを挑んだわけではないということが、リーニャの行動によって証明された瞬間だった。
自分のこともちゃんと手当てしておけよ、と貫はリーニャの肩に手を置き、彼女を労ったのだった。