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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

熱戦! 火焔ヒツジ!

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熱戦! 火焔ヒツジ!
  • 熱戦! 火焔ヒツジ!

リアクション

【1-3】

 決して消えることのない炎などこの世に存在するはずがないのだが、火焔ヒツジが纏う炎はそう思わざるを得ないほど激しく燃え盛っていた。
 一時的に鎮火できても、完全に消火しきれていないためか再び燃え始めてしまう。
 煉獄の炎とも言うべき激しさは、どこまでも衰えることを知らない。

「きりがないな……焼いてダメなら煮て食べるしかないのか?」

 ナズナが鬱陶しそうに火焔ヒツジの攻撃を振り払う。
 オモイデ草に火が移るのを避けるため下手に動き回れないのがもどかしい。

「火焔ヒツジ──君の相手はこちらだよ。他への手出しは控えてもらおう」

 ナズナに向けられた爪による攻撃を跳ね返し、堀田 小十郎が鋭い眼差しを火焔ヒツジに向けた。
 
「あまり好き勝手やられちゃ困るんだよなぁ。男に二言はねぇ……全力でぶつかってやるぜ!」

 睡蓮寺 陽介も火焔ヒツジの前に立ちはだかり、【飢えの太郎太刀】をぎゅっと握りしめる。

 火焔ヒツジの方も小十郎と陽介の殺気におののいているのか、おいそれと近づくことができないようだ。
 小十郎は火焔ヒツジを冷静に観察する──最初に沈黙を破ったのは、火焔ヒツジ。
 容赦のない攻撃を繰り出してくるが、小十郎は【無拍子】で回避しながら火焔ヒツジの注意を引きつける。
 通り抜けざまの斬撃にて両足に斬りかかり、一気に機動力を殺ぎにかかった。

「──今だ!」

「よし……!! ナズナっ、しばらくこらえてくれ……っ!!」

 ナズナが頷き、小十郎が火焔ヒツジを食い止めている間に更なる猛襲をかける。

「おめぇさんに暴れられると困る奴がいんだ……お互いに頭冷やそうぜ!」

 続いて陽介も 【遁足の忍薬】で高めた速さで火焔ヒツジの正面から攻撃の隙をついて懐へと掻いくぐり、【スジ斬り】を力いっぱい
お見舞いした。
 すると、闇をも食い尽くしてしまいそうなほどの大きな口を開けて、火焔ヒツジは炎を纏った羊毛を吐く。

「伏せろ!! 炎が燃え移るぞ!!」

 よもぎたちをかばいながら、小十郎は【擬神刀クサナギ】で激しい炎をなぎ払った。

「ほーらよ。おめぇの望んだすげぇ獲物だ……その真価、発揮させてもらうぜ!」

 陽介は【餓えの太郎太刀】を振り上げると、【分身乱撃】で限界まで増やした分身と共に渾身の連撃を撃ち込んでいく。
 すると、小十郎と陽介に守られながらオモイデ草を抱え込んでいたよもぎが真っ青な顔で2人を見つめた。

「……ん? なんだ?」  

 見ると、小十郎の衣服に炎が燃え移り、一瞬、火だるまになったように見えたのだ。

「あ~、まぁ、あるあるだな」

 炎は陽介によってすぐに鎮火され、小十郎が大事に至ることはなかった。

「ごめんなさい小十郎さん!! ごめんなさい私のために……」

 顔を強張らせたよもぎに向かって、小十郎は静かな笑みを見せる。

「もとより無事に済むとは思っていない……だが、皆も私も折れるつもりはない。
いいか、これは試練だ。ならばどんなに体が傷つこうとも…心が折れなければ終わりではない」

「そうそう。ただ、羊狩りがドラゴン狩りになっただけだ……むしろ燃えてきたぜ!
って実際に燃えてたけどよー」

 ぽりぽりと頭をかいて、

「奴さんも燃えてるみてぇだし、ちょうどいいだろ。燃えてる者同士、ぶつかり合ってクールダウンと
いこうじゃねぇか!」

 陽介は再び火焔ヒツジに対峙する。
 この人たちと出会えて本当によかった。
 よもぎはしっかりとした足取りで地を踏みしめる。

「オモイデ草は……絶対守り通してみせます……!」

「その意気だ。皆、ここに立つ理由は様々だが、最初から負けるつもりの者などいない。
私も【不撓】の心を以て、相手が認めるまで挑み続けよう」

 小十郎は再びよもぎをかばいつつ、火焔ヒツジを前にして居直った。
 その佇まいには、武士の風格すら漂っている。

「全霊一刀……その身にて味わうといい」

 小十郎渾身の一撃、【無明絶刀】が火焔ヒツジに放たれた。

「小十郎さんっ、援護します!!」

 木の陰から空花 凛菜が追い討ちをかける。
 燃え盛る炎を前に、思わずひるみそうになった。
 炎に包まれた羊毛を吐く火炎ヒツジの姿は、まさにドラゴン。
 足がすくみ、たとえようのない恐怖が凛菜に襲いかかってくる──。
 
「やるだけやったらぁーーーー!!」

 気がつくと、ナズナと火焔ヒツジが火花を散らして対峙していた。

「……私は、絶対に逃げません」

 唇をぎゅっとかみ締めると、凛菜は自分の高鳴る鼓動を聞きながらゆっくりと弓を構えた。
 ……トクン、トクン。
 狙いを火焔ヒツジの頭部に定めてから矢を放つ。
 うまく命中したと同時に、火焔ヒツジが小さな悲鳴を上げた。

「無茶するなよ凛菜!!」

 芹沢の声に頷き、燃える羊毛を避けて凛菜はゆっくりと火焔ヒツジを誘導する。
 軌道が反れそうになると、もう一度矢を放って自分の方へと引きつけた。
 挑発と誘導のサイクルを繰り返すことで、オモイデ草の群生地からどんどんと遠ざかってゆく凛菜。
 心臓が口から飛び出してしまいそうなくらい凛菜は緊張していたが、その様子は落ち着いている。

「凛菜さんは、決して1人じゃありませんよ?」

 笹鳴 風花が並走しながら、穏やかな口調で語りかけた。

「私が今持つ力の全てを使い、オモイデ草を共に守ります。燃やさせはしない、絶対に」

 風花の揺るぎない態度は、凛菜も心強かった。
 お互いに確かな存在として実力を認め合うことで、フェスタ生はいつどこででも共闘することができるのだ。

「今だけでいい……私たちを、認めて」

 【地踏み】の轟音と衝撃が火焔ヒツジを襲い、ひるんだその隙にフェスタ生たちは一斉に攻撃し始める。

「ナイスアシスト!!」

 芹沢がピースサインを凛菜に送ったのは、少しでも時間稼ぎをしてくれたことへの敬意だ。

「氷刃乱舞っ!!」

 オモイデ草に攻撃が及ばないよう、火焔ヒツジの顔や首元に全力で攻撃を続ける風花。
 ヘイトを稼ぎ、火焔ヒツジを明後日の方向へ向かせる。
 そして、ナズナの後ろで左右に移動しては魔法での攻撃を繰り返した。

「ナズナさんと違って、打たれ弱いですから、私は」

「どの口が言うんだか……」

 呆れつつも、お互いにサポートすることで向かってくる火焔ヒツジの攻撃を最小限におさえている。

「オモイデ草もみんなのことも、少しは守れた……?」

凛菜は慣れない戦闘で気を張っていたのだろう。
 緊張の糸が切れると、安心感と共に少しずつ脱力した。
 一方、その様子を見ていたお互いに頷き合った千夏 水希スピネル・サウザントサマーは火焔ヒツジの背後を取り、木々に隠れて瘴気の刀(穢ノ閃)による【飾り包丁・天網斬】で尻尾を攻撃する。
 スピネルも、水希と合わせて背後から尻尾へ一気に【飾り包丁・花十字】を振り下ろした。
 炎に包まれた毛が、地面に落ちる。
 不意打ちを食らった火焔ヒツジは、怒りの矛先を水希とスピネルに向けた。

「全部、想定内だけどね!!」

 水希は火焔ヒツジを上手く引きつけ、獣道を走り出した。
 木の枝に飛び乗ることで火焔ヒツジの爪攻撃を避け、吹き飛んだり回ったりすることでうまく直撃をかわす。
 まさにその動きは防御技術のひとつ、スリッピング・アウェーだ。

「燃える羊毛がどこまでも厄介だな!!」

 炎は瘴気を纏う【挽肉拳】で受け止めて鎮火してしまう。
 木に飛び火でもしてしまえば、山火事を誘発しかねない。
 自由自在に動いているように見えて、水希はそういう細やかな配慮も忘れていなかった。
 スピネルも【ぺこぺこのツボ】で水希を労い、自分の体力も回復した気になるツボを押して彼女の後を追いかけていた。

「もう眠くなっても、ヒツジの数は絶対に数えない!!」

 【破魔の鉄輪ブーメラン】で燃える羊毛を切り裂き、それが草木に飛び火しないようスピネルも細心の注意を払った。

「ねぇスピネル、もしかして、気づかれてる……?」

「さあ……まだ今の時点では何とも言えない」

 2人は、火焔ヒツジの住処を特定しようとしていたのだった。
 焼け焦げた場所を遡るべく、ひたすらに獣道を抜けてゆく。
 しばらく行くと、細かい木の枝が幾重にも重ねられ、バリケードのように見立てた薄暗い空間へと辿り着いた。

「あれ……見て」

 千夏が指差した方向には、随分と小柄の火焔ヒツジが積み重なった切り株の隙間からこちらの様子を覗いていた。
 火焔ヒツジの子供らしい。
 2人から気が逸れた瞬間、千夏は火焔ヒツジの尻尾を切断しようとしたが、素早い抵抗によってそれは阻止されてしまった。
 火焔ヒツジは子供を守るようにして、鼻息を荒くする。

「何もしない。……何もしないよ。オモイデ草を守りたかっただけだから。住処まで荒らすつもりはない」

 千夏は両手を上げて、無抵抗であることを火焔ヒツジに示した。

「もしかしたら、子供が私たちに襲われるって思ったのかな? だからあんなに怒って……」

 スピネルが子供を覗きこもうとすると、火焔ヒツジは牙をむき出しにする。

「あんたたちも、生きてるんだよね……。命の価値は、みんな平等だよ」

 千夏とスピネルは、決して危害を食わえないという意志を示すために、各々の武器をそっとその場に置いた。
 火焔ヒツジも、少しずつ穏やかな表情へと変わっていきつつあった。
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