熱戦! 火焔ヒツジ!
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リアクション
【1-2】
だが、幾多の攻撃を食らってもなお、火焔ヒツジの勢いは止まらなかった。
それでも確実に弱り始める「その時」はきっと来る。
熱を帯びた巨体と戦うのは通常の戦闘よりも一層、こちらの体力を激しく消耗してしまうだけだろう。
フェスタ生たちが倒れるのが先か、それとも火焔ヒツジが止まるのが先か。
オモイデ草は、まだ全て採取しきれていない。
「御肉は御野菜の代わりにはならないのよ! 何とかして別の方向へ注意を牽き付けないと……!」
火焔ヒツジがいる場所から死角にある木に隠れて、不安そうな表情を浮かべる弥久 風花。
【葦華具足 【葦原具足】】の上に【泰平羽織】を羽織り、【飾り散雪刀】を腰に挿した少女武者の格好がよく似合う。
彼女のすぐそばには、オモイデ草が誰にも気づかれないようにそっと生えている。
風花は熱気を防ぐために【氷雪の武威】を準備してきたが、かえって冷気で居場所が火焔ヒツジにすぐ分かってしまいそうだ。
「こうなったら当たって砕けるしかねーな。何かいいアイデア浮かんだか?」
武器を構えた芹沢ナズナが、キッと表情を引き締める。
「そうだね……」
先ほどから考えを巡らせていたアーヴェント・ゾネンウンターガングが出した答えは、火焔ヒツジの体外よりも体内を狙うことだった。
「外はウェルダンでも、中はレアなはず……!!」
「熱してダメなら冷やしてみればって感じで!」
と、ライム リドレーがナズナと共に火焔ヒツジの背後に回り込む。
どうやら、アーヴェントは火焔ヒツジとの体格差を考えると真っ向勝負をしても怪我をするだけだと判断したらしい。
互いに火焔ヒツジの体力を少しずつ削りながら、アーヴェントが【甲殻砕き】によって足を中心に攻撃していく。
一気に畳み掛けるよりも、小出しに何度も攻撃することで火焔ヒツジの体力だけでなく集中力も奪ってしまおうというのが2人の魂胆なのだが。
「──まるで底無しの体力だな、ライミー」
「それってヒツジのこと? それとも俺?」
「さぁ……どっちだと思う?」
お互いに冗談を言い合える余裕がある分、2人の体力も底無しだと言っても過言ではないだろう。
アーヴェントとライムが何度攻撃を繰り返そうと、火焔ヒツジが倒れ込むことはなかった。
ほんのわずかでもいいと、疲れのサインが見えるまでヒットアンドアウェイを続けるアーヴェントとライム。
風花も【忍び足】で火焔ヒツジに近づけそうな所まで近づき、一気に斬りかかることができる距離まで接近する。
「はああーーーっ!!」
そして、【荒武者咆哮】を上げ、背負っていた【擬神刀クサナギ】を【蜻蛉の構え】でもって高々と掲げる。
刃を煌かせながら、風花は全力で走って火焔ヒツジに接近した。
「オオォォォォォーーーー!! 火遊びはこれで終わりよ!!」
剣の炎耐性と、身に纏った冷気で身を守っているため、多少の熱さは我慢できる。
「ナズナさん! 私の近くに!」
「見た目によらず、むちゃくちゃ無理するんだなっ──!!」
火焔ヒツジの攻撃を武器で跳ね返し、ナズナが顔を歪ませた。
羊毛に近づくだけでも息苦しくなるほどの熱気が、風花とナズナを包み込む。
「火の災いを退ける神剣、その一撃を受けるが良いわ!……【断斬】っ!!」
火焔ヒツジの攻撃をかわし、風花はナズナと共に刃の届く限り攻撃を繰り返した。
自分の身に炎が燃え移りかねないギリギリの至近距離まで近づき、自分の冷気で少しでもナズナに火の粉がかからないように立ち振る舞う。
(これが低温ローソクの蝋だったら……ナズナさんの小麦色の肌に縄を……って、この考え止め止め!)
何やらよからぬ考えが風花の頭をよぎったのは、少しは余裕があるということなのだろう。
火焔ヒツジが進むその先で待機していた界塚 ツカサと加賀 ノイは、待っていましたとばかりにお互いの顔を見て頷き合った。
火焔ヒツジの退路を断つように、その後方へと回り込み、ツカサが【氷雪の武威】を食らわせる。
ノイはツカサが攻撃するタイミングに合わせて、【氷丸招来】を火焔ヒツジの体中心に集中して撃ち込んでいった。
手元に纏わせた冷気と霰が武器となり、炎でも恐れるに足らず。
最も羊毛の割合が大きいのは背や腹の部分だ。
よって、そこを徹底的に冷やすのは火焔ヒツジを弱らせるのに効果的だろう。
「お二人とも、大丈夫ですか? 風花さんもナズナさんも、思っていた以上に無茶をしますね……」
足に少し火傷を負っていた風花とナズナに、ノイは【桜之神祈り】を捧げた。
「ちょっとはおとなしくなりなよ──!」
暴走を防ごうと、火焔ヒツジの動きを止めるために【スジ斬り】でアキレス腱を狙うツカサ。
「スジを切れば、肉ってやわらかくなるんだよね。ノイ、知ってた?」
「ためになる情報、ありがとうございます」
火焔ヒツジがツカサを踏み潰そうとしたため、ノイは更に【氷丸招来】で足を攻撃する。
「心頭滅却すれば、火もまた涼し。ですよ?」
穏やかな表情を浮かべていても、ノイの攻撃の手が止まることはない。
その間にツカサが反撃し、火焔ヒツジは燃える羊毛をツカサとノイに飛ばしてきた。
鋭いツメで薙ぎ払うような素振りを見せた次の瞬間、ツカサは【バックステップ】で火焔ヒツジと距離を取った。
「ノイ危ない、避けて!!」
飛んできた炎の塊は、小さな隕石のようだ。
当たればひとたまりもないだろう。
「まだ逃がさないよ……これで終わったわけじゃない」
火焔ヒツジに逃げられないよう、ノイと連携して進行方向に回り込む。
ツカサは火焔ヒツジの真正面に立つと、ノイの牽制に合わせて高くジャンプをした。
頭に【甲殻砕き】を食らわせるが、羊毛が甲冑代わりとなって火焔ヒツジの頭部を固く守っている。
「まぁいきなり仕留めるのはちょっと難しいから……これで、少しは、疲れやすくなるんじゃないかい?」
ライムが【氷雪の武威】を纏わせた《氷霜刀-纏水仙-》で、火焔ヒツジに斬りかかった。
ツカサとノイもライムに加勢する。
わずかな傷口から、少しずつ少しずつ熱が奪われてゆく──。
「冷たい氷でも食べて、心底冷えるといい……」
少しだけ動きが鈍り始めた火焔ヒツジの様子を窺いながら、アーヴェントはタイミングを待つ。
ライムも【雹遁術】の後に《遁走の忍薬》を使って、「その時」に備える。
生暖かい風が2人の頬を撫でつけ、火焔ヒツジの焦げ臭い羊毛の上を通って行った。
「──今だ……!!」
火焔ヒツジが大きく息を吸い込み、炎を帯びた羊毛を吐き出した瞬間。
アーヴェントがライムに合図を送り、火焔ヒツジの足元に【無名絶刀】を突き立てる。
「ライミー、後は任せたぞっ!──さあ。自分達の戦いを見てくれ、火焔ヒツジ!」
ライムは火焔ヒツジの炎が燃え移らないギリギリの所まで近づいてから、 自分の周りに作った無数の氷塊を一気にその大きな口
の中へと押し込んだ。
暴れ狂う火焔ヒツジを避けながら、アーヴェントは【不撓】でもう一度気合いを入れ、剣でライムに降りかかる火の粉や
攻撃を振り払う。
「夏だし、かき氷でもたんとお食べってね。 きっと頭も冷えると思うよ? 慌てないで……まだまだたくさんあるからさ」
体内を冷やしたことで大量の水蒸気が噴き出し、火焔ヒツジを包み込んだ。
だが、幾多の攻撃を食らってもなお、火焔ヒツジの勢いは止まらなかった。
それでも確実に弱り始める「その時」はきっと来る。
熱を帯びた巨体と戦うのは通常の戦闘よりも一層、こちらの体力を激しく消耗してしまうだけだろう。
フェスタ生たちが倒れるのが先か、それとも火焔ヒツジが止まるのが先か。
オモイデ草は、まだ全て採取しきれていない。
「御肉は御野菜の代わりにはならないのよ! 何とかして別の方向へ注意を牽き付けないと……!」
火焔ヒツジがいる場所から死角にある木に隠れて、不安そうな表情を浮かべる弥久 風花。
【葦華具足 【葦原具足】】の上に【泰平羽織】を羽織り、【飾り散雪刀】を腰に挿した少女武者の格好がよく似合う。
彼女のすぐそばには、オモイデ草が誰にも気づかれないようにそっと生えている。
風花は熱気を防ぐために【氷雪の武威】を準備してきたが、かえって冷気で居場所が火焔ヒツジにすぐ分かってしまいそうだ。
「こうなったら当たって砕けるしかねーな。何かいいアイデア浮かんだか?」
武器を構えた芹沢ナズナが、キッと表情を引き締める。
「そうだね……」
先ほどから考えを巡らせていたアーヴェント・ゾネンウンターガングが出した答えは、火焔ヒツジの体外よりも体内を狙うことだった。
「外はウェルダンでも、中はレアなはず……!!」
「熱してダメなら冷やしてみればって感じで!」
と、ライム リドレーがナズナと共に火焔ヒツジの背後に回り込む。
どうやら、アーヴェントは火焔ヒツジとの体格差を考えると真っ向勝負をしても怪我をするだけだと判断したらしい。
互いに火焔ヒツジの体力を少しずつ削りながら、アーヴェントが【甲殻砕き】によって足を中心に攻撃していく。
一気に畳み掛けるよりも、小出しに何度も攻撃することで火焔ヒツジの体力だけでなく集中力も奪ってしまおうというのが2人の魂胆なのだが。
「──まるで底無しの体力だな、ライミー」
「それってヒツジのこと? それとも俺?」
「さぁ……どっちだと思う?」
お互いに冗談を言い合える余裕がある分、2人の体力も底無しだと言っても過言ではないだろう。
アーヴェントとライムが何度攻撃を繰り返そうと、火焔ヒツジが倒れ込むことはなかった。
ほんのわずかでもいいと、疲れのサインが見えるまでヒットアンドアウェイを続けるアーヴェントとライム。
風花も【忍び足】で火焔ヒツジに近づけそうな所まで近づき、一気に斬りかかることができる距離まで接近する。
「はああーーーっ!!」
そして、【荒武者咆哮】を上げ、背負っていた【擬神刀クサナギ】を【蜻蛉の構え】でもって高々と掲げる。
刃を煌かせながら、風花は全力で走って火焔ヒツジに接近した。
「オオォォォォォーーーー!! 火遊びはこれで終わりよ!!」
剣の炎耐性と、身に纏った冷気で身を守っているため、多少の熱さは我慢できる。
「ナズナさん! 私の近くに!」
「見た目によらず、むちゃくちゃ無理するんだなっ──!!」
火焔ヒツジの攻撃を武器で跳ね返し、ナズナが顔を歪ませた。
羊毛に近づくだけでも息苦しくなるほどの熱気が、風花とナズナを包み込む。
「火の災いを退ける神剣、その一撃を受けるが良いわ!……【断斬】っ!!」
火焔ヒツジの攻撃をかわし、風花はナズナと共に刃の届く限り攻撃を繰り返した。
自分の身に炎が燃え移りかねないギリギリの至近距離まで近づき、自分の冷気で少しでもナズナに火の粉がかからないように立ち振る舞う。
(これが低温ローソクの蝋だったら……ナズナさんの小麦色の肌に縄を……って、この考え止め止め!)
何やらよからぬ考えが風花の頭をよぎったのは、少しは余裕があるということなのだろう。
火焔ヒツジが進むその先で待機していた界塚 ツカサと加賀 ノイは、待っていましたとばかりにお互いの顔を見て頷き合った。
火焔ヒツジの退路を断つように、その後方へと回り込み、ツカサが【氷雪の武威】を食らわせる。
ノイはツカサが攻撃するタイミングに合わせて、【氷丸招来】を火焔ヒツジの体中心に集中して撃ち込んでいった。
手元に纏わせた冷気と霰が武器となり、炎でも恐れるに足らず。
最も羊毛の割合が大きいのは背や腹の部分だ。
よって、そこを徹底的に冷やすのは火焔ヒツジを弱らせるのに効果的だろう。
「お二人とも、大丈夫ですか? 風花さんもナズナさんも、思っていた以上に無茶をしますね……」
足に少し火傷を負っていた風花とナズナに、ノイは【桜之神祈り】を捧げた。
「ちょっとはおとなしくなりなよ──!」
暴走を防ごうと、火焔ヒツジの動きを止めるために【スジ斬り】でアキレス腱を狙うツカサ。
「スジを切れば、肉ってやわらかくなるんだよね。ノイ、知ってた?」
「ためになる情報、ありがとうございます」
火焔ヒツジがツカサを踏み潰そうとしたため、ノイは更に【氷丸招来】で足を攻撃する。
「心頭滅却すれば、火もまた涼し。ですよ?」
穏やかな表情を浮かべていても、ノイの攻撃の手が止まることはない。
その間にツカサが反撃し、火焔ヒツジは燃える羊毛をツカサとノイに飛ばしてきた。
鋭いツメで薙ぎ払うような素振りを見せた次の瞬間、ツカサは【バックステップ】で火焔ヒツジと距離を取った。
「ノイ危ない、避けて!!」
飛んできた炎の塊は、小さな隕石のようだ。
当たればひとたまりもないだろう。
「まだ逃がさないよ……これで終わったわけじゃない」
火焔ヒツジに逃げられないよう、ノイと連携して進行方向に回り込む。
ツカサは火焔ヒツジの真正面に立つと、ノイの牽制に合わせて高くジャンプをした。
頭に【甲殻砕き】を食らわせるが、羊毛が甲冑代わりとなって火焔ヒツジの頭部を固く守っている。
「まぁいきなり仕留めるのはちょっと難しいから……これで、少しは、疲れやすくなるんじゃないかい?」
ライムが【氷雪の武威】を纏わせた《氷霜刀-纏水仙-》で、火焔ヒツジに斬りかかった。
ツカサとノイもライムに加勢する。
わずかな傷口から、少しずつ少しずつ熱が奪われてゆく──。
「冷たい氷でも食べて、心底冷えるといい……」
少しだけ動きが鈍り始めた火焔ヒツジの様子を窺いながら、アーヴェントはタイミングを待つ。
ライムも【雹遁術】の後に《遁走の忍薬》を使って、「その時」に備える。
生暖かい風が2人の頬を撫でつけ、火焔ヒツジの焦げ臭い羊毛の上を通って行った。
「──今だ……!!」
火焔ヒツジが大きく息を吸い込み、炎を帯びた羊毛を吐き出した瞬間。
アーヴェントがライムに合図を送り、火焔ヒツジの足元に【無名絶刀】を突き立てる。
「ライミー、後は任せたぞっ!──さあ。自分達の戦いを見てくれ、火焔ヒツジ!」
ライムは火焔ヒツジの炎が燃え移らないギリギリの所まで近づいてから、 自分の周りに作った無数の氷塊を一気にその大きな口
の中へと押し込んだ。
暴れ狂う火焔ヒツジを避けながら、アーヴェントは【不撓】でもう一度気合いを入れ、剣でライムに降りかかる火の粉や
攻撃を振り払う。
「夏だし、かき氷でもたんとお食べってね。 きっと頭も冷えると思うよ? 慌てないで……まだまだたくさんあるからさ」
体内を冷やしたことで大量の水蒸気が噴き出し、火焔ヒツジを包み込んだ。