熱戦! 火焔ヒツジ!
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リアクション
【1-1】
「はぁっ……はぁっ……!」
山中に鬱蒼と生い茂る草むらの中を駆け抜ける幾人もの姿があった。
白川 郷太郎が先導し、大葉よもぎとロレッタ・ファーレンハイナー、天導寺 朱、佐伯 ヴァイスが続く。
少し遅れて走ってきた天鹿児 神子の姿を確認した郷太郎は、神子を待って再び走り始める。
その後方に見えるのは唸り声を上げながら追随してきた紅蓮の炎――火焔ヒツジだ。
ほんのわずかでも走るスピードを落とせば、彼らはあっという間に火の海へと飲み込まれてしまうだろう。
「早くオモイデ草を採取してしまわないと……このままでは」
ここまで全力疾走で走り続けたきた大葉よもぎは、炎の熱気を浴びたことで更に体力を奪われ、そろそろ限界に近づいていた。
蔓が足に絡まり、よもぎはつんのめって草むらの中へ倒れこむ。
だが、ここで自分だけが止まってしまうわけにはいかない。
気持ちが焦れば焦るほどうまく立ち上がれず、よもぎの頭の中には最悪のシナリオを描いた不安が駆け巡る。
オモイデ草を──守らなくては!
「立てるでござるか?」
郷太郎がよもぎに手を差し伸べ、ゆっくりと起こしてやった。
不意打ちの出来事で咄嗟にお礼の言葉が出てこなかったよもぎは、ぺこりと頭だけを下げる。
「急いては事を仕損じる──ここは落ち着いて行動するでござるよ」
「は、はい。オモイデ草は、恐らくこの付近かと……」
「イドラ教団残党として何としてもここで伝説食材を持ち帰り、今後に繋げねば……守るでござる――何があっても。オモイデ草も、よもぎも」
「え……」
「要は、群生地のほうに奴が向かなければいいということでござろう?」
郷太郎は辺り一帯が炎に灼かれてしまわないように配慮しながら進度をどうするか、よもぎたちと相談しながら再び走り出す。
「ヒツジ様のお相手は、わたくしがいたしますわ!」
後ろを振り返ったロレッタが【無刀術】で攻撃を仕掛け、わざと方向を変更して火焔ヒツジの気を逸らした。
続いて、ヴァイスも翻弄するような動きで進行を食い止める。
こうやってギリギリまで引きつけることでオモイデ草が群生しているであろう場所から火焔ヒツジを遠ざけ、更には燃やされてしまう範囲も最小限にとどめたいところだ。
「こちらです……!」
先ほどまでは無我夢中だったが、郷太郎に守られていると確信したことでようやく安堵したのだろう、よもぎはいつの間にか先頭を走っていた。
火焔ヒツジはロレッタの攻撃を物ともせず、前足で踏ん張って攻撃に耐える。
「あっづ……っ!!」
降りかかった火の粉を払おうとしたその時、火焔ヒツジが前足で攻撃を繰り出した。
ロレッタは【角牙受け】を使ってその攻撃をいなし、【地踏み】も使ってうまく火焔ヒツジの攻撃範囲からすり抜ける。
ロレッタが放った衝撃波の爆風に押されているうち、火焔ヒツジの動きが徐々に鈍くなっていった。
「ヒツジ様、わたくしたちフェスタのおもてなしを、ごゆるりと味わいくださいませ!」
ロレッタの強烈な蹴りとヴァイスの攻撃が炸裂し、火焔ヒツジはその場に静止したまま何やら力を溜め始めた。
「後は、後はフェスタ生の皆様がきっと何とかしてくださると信じていますわ……」
足に軽い火傷を負ったロレッタはヴァイスに肩を支えられ、目を細めてよもぎたちの行方を見守る──。
一方、ロレッタが身を呈して火焔ヒツジを引き受けたくれたおかげで、よもぎたちは予測どおりオモイデ草が群生している場所を発見していた。
薄暗い草むらをやわらかな黄金色で照らし、オモイデ草が生えているその場所は何か特別な空間にさえ見える。
「強く握ると消えてしまいますので……採る時はそーっと、そーーーっとお願いしますね……」
細心の注意を払って、よもぎがごくりと唾を呑みこむと、フェスタ生たちは慎重な面持ちで頷いた。
オモイデ草を根っこごと引き抜き、一箇所に集めてこの場からいったん持ち去ろうというのがフェスタ生たちの計画だ。
貴重なる伝説の食材を、火焔ヒツジの炎によって根絶やしにされてしまっては元も子もない。
「……近づいてきたら、すぐ分かるのぜ。その熱気でなァ!!」
振り返った朱の背後にいたのは、追いついてきた火焔ヒツジだった。
朱は【雹遁術】で作った無数の氷塊と【鉤付き鎖鎌】、そして【薄氷睡蓮】の【忍び二刀流】で燃える羊毛を刈り落としていく。
「あぢっ……これぞまさしく、ヒツジの毛刈り・ザ・スペシャルバージョンなのぜ……!!」
反対側の羊毛を【薄氷睡蓮】で鎮火させるように刈ってゆく。
その様子を見ていた神子が、ぶつぶつと何かを唱え出す。
「すべては、“地球様”からのお告げ……突然は必然であり、必然は偶然……」
「あ、あと少し耐えてください朱さん……、神子さん……っ!!」
オモイデ草は、まだ全て採取しきれていない。
よもぎたちは、徐々に近づいてくる火焔ヒツジからせめてオモイデ草を守ろうとして覆いかぶさった。
「偶然の連続、それは運命なのです」
そう言い放った神子が、咄嗟に 【マナパレット】を火焔ヒツジの目に向けて放った。
気を取られた火焔ヒツジが一瞬隙を見せると、
「ファインプレー神子さん~~~、こっちは任せるのぜ……【雹遁術】っっ!!」
朱は自分にも注意を向けさせるよう火焔ヒツジめがけて【雹遁術】を繰り返す。
反り返った反動で攻撃を仕掛けてきたところを、【角牙受け】で食い止めた。
「地球様、わたくしに無限の力をお与えください……」
天に向かって祈るような素振りを見せた神子は、【尖土遁術】を使って今度は火焔ヒツジの足元を狙い、地団太を踏ませるようにしてわざと怒りを誘った。
「地球様の名のもとに生き物はみな平等ですが――今はほんの少し、我慢をしていただけるとありがたいのです」
落ち着き払った神子の様子に、火焔ヒツジは嘶いて脅しをかける。
脅えた様子をちらとでも見せれば、負けだ。
意外に勝負強い神子の一面を見た朱はヒュウと口笛を吹く。
「万物の理に基づき……火は、水には絶対勝てないように決まってるのぜーーーっ!!」
水の力を味方につけた朱が押し切ると、やがて火焔ヒツジの体からシュウシュウと音を立てて蒸気が立ち始めた。
「はぁっ……はぁっ……!」
山中に鬱蒼と生い茂る草むらの中を駆け抜ける幾人もの姿があった。
白川 郷太郎が先導し、大葉よもぎとロレッタ・ファーレンハイナー、天導寺 朱、佐伯 ヴァイスが続く。
少し遅れて走ってきた天鹿児 神子の姿を確認した郷太郎は、神子を待って再び走り始める。
その後方に見えるのは唸り声を上げながら追随してきた紅蓮の炎――火焔ヒツジだ。
ほんのわずかでも走るスピードを落とせば、彼らはあっという間に火の海へと飲み込まれてしまうだろう。
「早くオモイデ草を採取してしまわないと……このままでは」
ここまで全力疾走で走り続けたきた大葉よもぎは、炎の熱気を浴びたことで更に体力を奪われ、そろそろ限界に近づいていた。
蔓が足に絡まり、よもぎはつんのめって草むらの中へ倒れこむ。
だが、ここで自分だけが止まってしまうわけにはいかない。
気持ちが焦れば焦るほどうまく立ち上がれず、よもぎの頭の中には最悪のシナリオを描いた不安が駆け巡る。
オモイデ草を──守らなくては!
「立てるでござるか?」
郷太郎がよもぎに手を差し伸べ、ゆっくりと起こしてやった。
不意打ちの出来事で咄嗟にお礼の言葉が出てこなかったよもぎは、ぺこりと頭だけを下げる。
「急いては事を仕損じる──ここは落ち着いて行動するでござるよ」
「は、はい。オモイデ草は、恐らくこの付近かと……」
「イドラ教団残党として何としてもここで伝説食材を持ち帰り、今後に繋げねば……守るでござる――何があっても。オモイデ草も、よもぎも」
「え……」
「要は、群生地のほうに奴が向かなければいいということでござろう?」
郷太郎は辺り一帯が炎に灼かれてしまわないように配慮しながら進度をどうするか、よもぎたちと相談しながら再び走り出す。
「ヒツジ様のお相手は、わたくしがいたしますわ!」
後ろを振り返ったロレッタが【無刀術】で攻撃を仕掛け、わざと方向を変更して火焔ヒツジの気を逸らした。
続いて、ヴァイスも翻弄するような動きで進行を食い止める。
こうやってギリギリまで引きつけることでオモイデ草が群生しているであろう場所から火焔ヒツジを遠ざけ、更には燃やされてしまう範囲も最小限にとどめたいところだ。
「こちらです……!」
先ほどまでは無我夢中だったが、郷太郎に守られていると確信したことでようやく安堵したのだろう、よもぎはいつの間にか先頭を走っていた。
火焔ヒツジはロレッタの攻撃を物ともせず、前足で踏ん張って攻撃に耐える。
「あっづ……っ!!」
降りかかった火の粉を払おうとしたその時、火焔ヒツジが前足で攻撃を繰り出した。
ロレッタは【角牙受け】を使ってその攻撃をいなし、【地踏み】も使ってうまく火焔ヒツジの攻撃範囲からすり抜ける。
ロレッタが放った衝撃波の爆風に押されているうち、火焔ヒツジの動きが徐々に鈍くなっていった。
「ヒツジ様、わたくしたちフェスタのおもてなしを、ごゆるりと味わいくださいませ!」
ロレッタの強烈な蹴りとヴァイスの攻撃が炸裂し、火焔ヒツジはその場に静止したまま何やら力を溜め始めた。
「後は、後はフェスタ生の皆様がきっと何とかしてくださると信じていますわ……」
足に軽い火傷を負ったロレッタはヴァイスに肩を支えられ、目を細めてよもぎたちの行方を見守る──。
一方、ロレッタが身を呈して火焔ヒツジを引き受けたくれたおかげで、よもぎたちは予測どおりオモイデ草が群生している場所を発見していた。
薄暗い草むらをやわらかな黄金色で照らし、オモイデ草が生えているその場所は何か特別な空間にさえ見える。
「強く握ると消えてしまいますので……採る時はそーっと、そーーーっとお願いしますね……」
細心の注意を払って、よもぎがごくりと唾を呑みこむと、フェスタ生たちは慎重な面持ちで頷いた。
オモイデ草を根っこごと引き抜き、一箇所に集めてこの場からいったん持ち去ろうというのがフェスタ生たちの計画だ。
貴重なる伝説の食材を、火焔ヒツジの炎によって根絶やしにされてしまっては元も子もない。
「……近づいてきたら、すぐ分かるのぜ。その熱気でなァ!!」
振り返った朱の背後にいたのは、追いついてきた火焔ヒツジだった。
朱は【雹遁術】で作った無数の氷塊と【鉤付き鎖鎌】、そして【薄氷睡蓮】の【忍び二刀流】で燃える羊毛を刈り落としていく。
「あぢっ……これぞまさしく、ヒツジの毛刈り・ザ・スペシャルバージョンなのぜ……!!」
反対側の羊毛を【薄氷睡蓮】で鎮火させるように刈ってゆく。
その様子を見ていた神子が、ぶつぶつと何かを唱え出す。
「すべては、“地球様”からのお告げ……突然は必然であり、必然は偶然……」
「あ、あと少し耐えてください朱さん……、神子さん……っ!!」
オモイデ草は、まだ全て採取しきれていない。
よもぎたちは、徐々に近づいてくる火焔ヒツジからせめてオモイデ草を守ろうとして覆いかぶさった。
「偶然の連続、それは運命なのです」
そう言い放った神子が、咄嗟に 【マナパレット】を火焔ヒツジの目に向けて放った。
気を取られた火焔ヒツジが一瞬隙を見せると、
「ファインプレー神子さん~~~、こっちは任せるのぜ……【雹遁術】っっ!!」
朱は自分にも注意を向けさせるよう火焔ヒツジめがけて【雹遁術】を繰り返す。
反り返った反動で攻撃を仕掛けてきたところを、【角牙受け】で食い止めた。
「地球様、わたくしに無限の力をお与えください……」
天に向かって祈るような素振りを見せた神子は、【尖土遁術】を使って今度は火焔ヒツジの足元を狙い、地団太を踏ませるようにしてわざと怒りを誘った。
「地球様の名のもとに生き物はみな平等ですが――今はほんの少し、我慢をしていただけるとありがたいのです」
落ち着き払った神子の様子に、火焔ヒツジは嘶いて脅しをかける。
脅えた様子をちらとでも見せれば、負けだ。
意外に勝負強い神子の一面を見た朱はヒュウと口笛を吹く。
「万物の理に基づき……火は、水には絶対勝てないように決まってるのぜーーーっ!!」
水の力を味方につけた朱が押し切ると、やがて火焔ヒツジの体からシュウシュウと音を立てて蒸気が立ち始めた。