天に抗う人々の為のスケルツォ
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2.神の居た場所 2
かつて自分が住まったその塔がヘイトの的となる事を、かの神は承知の上だったという。
そして彼は反逆者達が退去して押し寄せ、塔を破壊することを黙認した。
だが、アイドルたちの多くはその意志を示すことはなかった。
そして中にはオリヴィエ・ジェルムは反逆者達を阻止しようと動いた者もいた。
「……罰当りめ」
オリヴィエは神塔を背にして立つと、辺りに甘美なるユーフォリアの血霧を充満させた。
反逆者達は霧に囚われ、酩酊状態になる。
その姿を見つめながら、オリヴィエは仔羊のオルガンをかき鳴らす。
周囲を教会さながらの雰囲気に変え、人々の破壊衝動を奪うのがオリヴィエの目的だった。
「そう、大人しく、しててね。ぐっぼーい」
なぜ、こんなところでライブが?
オリヴィエの意図を解しかねている人々に彼は語る。
甘えるな、と。
「世の中をみそなわしめ、我らの罪を赦し賜える造物主は、君たちのママンじゃない。……僕も、ネヴァーランドのひとみたいに、神様や†タナトス†さまみたいなひとが小さい頃からそばにいてくれたのなら甘えたくなるからわかるけど。人の家に上がり込んで物を壊すなんて……悪い子ネズミさん」
人々はオリヴィエの奏でるオルガンの音を聞きながら、黙ってその場に立ち尽くしていた。
ふとオリヴィエが上を見上げると、ウリエルの姿があった。
神塔の様子を見に来たのか。
オリヴィエと目が合うと、ウリエルは「よくやった」という様子で静かに親指を立ててみせた。
そこに現れたのは千夏 水希、そしてスピネル・サウザントサマーだった。
「あんたが恐れてるような事をする気はないよ。†タナトス†のやりたいことを突き止め知らせたいだけ」
水希はオリヴィエに言った。
「何をしたいかわかれば争う必要もなくなるかもしれない……神がやらないなら私がやる」
塔は既に傷みが激しく、中に入るのは困難な状態だった。
だが、どうにか中に入れないかと水希とスピネルは入り口を探した。
「ねぇ、ウリエル? †タナトス†さ、何か持ち出したいものとかなかったわけ?」
スピネルはウリエルにそう声をかけた。
「神やタナトスが大事そうにしてたものがあるならアタシら回収してやるよ、懐に入りそうなもの一点くらいなら多分お届けできるしさ。民から貰ったプレゼントとかー、何か知らない?」
「……こういうものなら、多分†タナトス†様はお喜びになる」
ウリエルはそう言って、瓦礫の中から壊れたゲームソフトを拾い上げた。
周囲には†タナトス†のものらしい漫画本や玩具の類なども見られた。
「やっぱそういうガラクタ系か……二柱とも民大好きだもんなー」
スピネルはウリエルと一緒に周囲のものを拾い集めながら塔の周りを見た。
すると、塔の高層ビル30階くらいの高さに黒い月喰いが出てきたと思しき穴が見つかった。
水希は上を見上げ「高いな」と呟いた。
「スピ、あそこだ。登れ」
「無茶言うなよー! 無理だってあんなの!」
「スパイダーズガンがある。とりあえず蜘蛛の糸を伝って先に登って、私を上から引き上げて貰おうか。しっかり働けよスピ」
「えー? けど、何もなさそうだぜー? 月喰い出てきた時に全部落ちたっぽくね?」
スピネルはホークアイを働かせながらそう言った。
そして、瓦礫の中に何か落ちているのを見つけた。
「ん? 『サルでも分かる天地創造の書』……? おい! これ、お宝ぽくね?!」
「帰って神に見せてみるか。だけどもうちょっと、手紙とか、日記ないかな。神からすっぽ抜けてる『理想』……文章から読み取れるし、神がいない間タナトスが書いたものがあるかも」
水希は流した血の魔力を大きな三日月状の刃に変えて撃ち出し、塔の一部に入り口を開けることを試みた。
だが、脆くなった塔はやはりもう限界に近く、入り口を開ける前に神塔そのものが倒壊しかねない様子であった。
「残念ながら、†タナトス†がどうやって月喰い作ったかは見れなそうだな」
スピネルが大きくため息をついた。
「フィギュアとか模型みたいなのに命吹き込むとか、神がぐっちゃぐっちゃ生物作ってるとか、そういうのあったらグロテスクで面白そうだったのにな」
「帰るぞ、スピ」
水希は塔を背にし、歩き出した。
(†タナトス†を独りで戦わせやしないよ。孤独な人には望まなくても闇が纏わりつくものさ)
手がかりは見つかった一冊の本のみ。
神はこれに、どんな反応を示すだろうか?
かつて自分が住まったその塔がヘイトの的となる事を、かの神は承知の上だったという。
そして彼は反逆者達が退去して押し寄せ、塔を破壊することを黙認した。
だが、アイドルたちの多くはその意志を示すことはなかった。
そして中にはオリヴィエ・ジェルムは反逆者達を阻止しようと動いた者もいた。
「……罰当りめ」
オリヴィエは神塔を背にして立つと、辺りに甘美なるユーフォリアの血霧を充満させた。
反逆者達は霧に囚われ、酩酊状態になる。
その姿を見つめながら、オリヴィエは仔羊のオルガンをかき鳴らす。
周囲を教会さながらの雰囲気に変え、人々の破壊衝動を奪うのがオリヴィエの目的だった。
「そう、大人しく、しててね。ぐっぼーい」
なぜ、こんなところでライブが?
オリヴィエの意図を解しかねている人々に彼は語る。
甘えるな、と。
「世の中をみそなわしめ、我らの罪を赦し賜える造物主は、君たちのママンじゃない。……僕も、ネヴァーランドのひとみたいに、神様や†タナトス†さまみたいなひとが小さい頃からそばにいてくれたのなら甘えたくなるからわかるけど。人の家に上がり込んで物を壊すなんて……悪い子ネズミさん」
人々はオリヴィエの奏でるオルガンの音を聞きながら、黙ってその場に立ち尽くしていた。
ふとオリヴィエが上を見上げると、ウリエルの姿があった。
神塔の様子を見に来たのか。
オリヴィエと目が合うと、ウリエルは「よくやった」という様子で静かに親指を立ててみせた。
そこに現れたのは千夏 水希、そしてスピネル・サウザントサマーだった。
「あんたが恐れてるような事をする気はないよ。†タナトス†のやりたいことを突き止め知らせたいだけ」
水希はオリヴィエに言った。
「何をしたいかわかれば争う必要もなくなるかもしれない……神がやらないなら私がやる」
塔は既に傷みが激しく、中に入るのは困難な状態だった。
だが、どうにか中に入れないかと水希とスピネルは入り口を探した。
「ねぇ、ウリエル? †タナトス†さ、何か持ち出したいものとかなかったわけ?」
スピネルはウリエルにそう声をかけた。
「神やタナトスが大事そうにしてたものがあるならアタシら回収してやるよ、懐に入りそうなもの一点くらいなら多分お届けできるしさ。民から貰ったプレゼントとかー、何か知らない?」
「……こういうものなら、多分†タナトス†様はお喜びになる」
ウリエルはそう言って、瓦礫の中から壊れたゲームソフトを拾い上げた。
周囲には†タナトス†のものらしい漫画本や玩具の類なども見られた。
「やっぱそういうガラクタ系か……二柱とも民大好きだもんなー」
スピネルはウリエルと一緒に周囲のものを拾い集めながら塔の周りを見た。
すると、塔の高層ビル30階くらいの高さに黒い月喰いが出てきたと思しき穴が見つかった。
水希は上を見上げ「高いな」と呟いた。
「スピ、あそこだ。登れ」
「無茶言うなよー! 無理だってあんなの!」
「スパイダーズガンがある。とりあえず蜘蛛の糸を伝って先に登って、私を上から引き上げて貰おうか。しっかり働けよスピ」
「えー? けど、何もなさそうだぜー? 月喰い出てきた時に全部落ちたっぽくね?」
スピネルはホークアイを働かせながらそう言った。
そして、瓦礫の中に何か落ちているのを見つけた。
「ん? 『サルでも分かる天地創造の書』……? おい! これ、お宝ぽくね?!」
「帰って神に見せてみるか。だけどもうちょっと、手紙とか、日記ないかな。神からすっぽ抜けてる『理想』……文章から読み取れるし、神がいない間タナトスが書いたものがあるかも」
水希は流した血の魔力を大きな三日月状の刃に変えて撃ち出し、塔の一部に入り口を開けることを試みた。
だが、脆くなった塔はやはりもう限界に近く、入り口を開ける前に神塔そのものが倒壊しかねない様子であった。
「残念ながら、†タナトス†がどうやって月喰い作ったかは見れなそうだな」
スピネルが大きくため息をついた。
「フィギュアとか模型みたいなのに命吹き込むとか、神がぐっちゃぐっちゃ生物作ってるとか、そういうのあったらグロテスクで面白そうだったのにな」
「帰るぞ、スピ」
水希は塔を背にし、歩き出した。
(†タナトス†を独りで戦わせやしないよ。孤独な人には望まなくても闇が纏わりつくものさ)
手がかりは見つかった一冊の本のみ。
神はこれに、どんな反応を示すだろうか?


