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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

怪獣大決戦&神様復活ライブ!

リアクション公開中!
怪獣大決戦&神様復活ライブ!

リアクション

【2】荒ぶる巨魁 2

「バケホさん……ウリエルさんは私達の事見てるし、私達の声を聞いてる。これならやれるよ、ウィリアムさん!」
 リーニャ・クラフレットは闘のクロスを手にし、バケットホイールエクスカベーターの真後ろに回った。
 どこか、細くて脆そうなところはないか。
 巨大なバケットホイールエクスカベーターの中で、リーニャが目をつけたのはアームを吊り下げている4本の太いワイヤだった。
「真ん中の太い柱から両脇を合計4本のワイヤがアームを釣っている構造か……なるほど。あれがなければ、バケットホイールエクスカベーターはバランスを保てないんだな」
 ウィリアム・ヘルツハフトは遠くから巨大な機械を観察した。
 バケットホイールエクスカベーターはアイドルのうち、吸血鬼に対して優先的に攻撃をしているように見えた。
 【リトルフルール】のうち、虹村 歌音シャーロット・フルールは吸血鬼であり、標的になりやすい立場であった。
「俺の目の前でアイドルたちを傷つけさせるわけにはいかないからな。やるぞ、クラフレット!」
「ここからなら当てられるよね! 1本でも切れればバランスを崩せるはず! いくよ!」
 リーニャは空中に白煉のジャッジメントの光の十字を出現させた。
 そしてワイヤの根本を狙い、何本もの十字をそこへ突き立てた。
 すると、ワイヤの一部が綻び、ブツン、と何かが切れる音がした。
「何本ものワイヤーが束になってるみたいだな……! だが、これならいける!」
 ウィリアムはリーニャの反対側に回ると、別のワイヤに向かって白煉のジャッジメントを仕掛けた。
 すると、ウリエルがアイドルたちの意図に気づいたのか、今まで固定されていた巨大なキャタピラが動き、バケットホイールエクスカベーターが移動し始めた。
「やっぱりねっ! バケちゃんてば、動けるんだね! ほらほら、バケちゃん、シャロちゃんはこっちだよ~☆」
 シャーロットは空中に出現させた燃える林檎をバケットホイールエクスカベーターに投げ落とし、誘うように動いた。
 別方向からは歌音が虹色ショートケーキをちぎり、バケットホイールエクスカベーターに投げつけた。
「ウィルさんとリーニャちゃんのために……頑張らなきゃ! きゃああ! こっち向いたぁ!!」
 ケーキは石になり、機体に傷を作った。
 歌音とシャーロットの攻撃はそこまで大きなダメージとはならなかったが、吸血鬼2人で引きつけることにより、ウィリアムとリーニャが機体へと接近する隙が生まれた。
「ワイヤの束がほぐれてる……あれなら、切れる!」
 リーニャは闘のクロスを構え、光の翼で高く飛び上がった。
 そしてそのまま、最後に残ったワイヤに向かってその先端を突き立てた。
 ワイヤはバチンと音を立てて寸断。
 アームが大きく傾き、リーニャはそのままアームの上に落下し、どうにか機体にしがみついた。
「っと、危ない……! ウィリアムさん! 私は大丈夫だから! やって――!」
「よし、そこを動くなよよクラフレット! 歌音! シャーロット! バケットホイールエクスカベーターから離れろ!!」
 ウィリアムはそう叫ぶと、スノウトリガーを構えた。
「この一発で……仕留める!」
 放たれた銃弾は、ギリギリでアームを保たせていた最後の一本を断ち切った。
 支えの2本を失ったアームはそのまま、自らの重みで折れ曲がり、先端の回転する刃の部分が落下し、地面にめり込んだ。
「にゃはーっ♪ ダイナミックー☆ 流石、人類史上最大の重機ってだけはあるよね!」
 巻き込まれないように距離を取ったシャーロットは、その豪快な壊れっぷりを見届けた。
 だが、アームが落ち、危険度は下がったものの、まだ完全に壊れたわけではないようだった。
 バケットホイールエクスカベーターは壊れたアームを振り回しながら、エンジンを唸らせ、アイドルたちの方へ向かってきた。それはまるでウリエルの執念を思わせるようだった。
「ふみ。あの真ん中のおっきいところを壊さないと止まらないんだね。かのんちゃん、まだ頑張れる?」
「ばっ、爆発してるし何か怖いけど……大丈夫! 行こう、シャロちゃん!」
 シャーロットと歌音は出来る限りバケットホイールエクスカベーターに近づくと、自分たちの血を蝙蝠に変え、その機体内へと潜り込ませた。
 狙うのは、機関部の圧縮破壊だ。
「捕まえたよシャロちゃん……このまま!」
「どうなるかなー? いっくよーっ!☆」
 惨憺たる紅棺が何かを捕らえ、押しつぶす。
 複雑に入り組んだ金属の塊の中で大きな爆発が起こった。
「ねぇ、ウリエルちゃん? ウリエルちゃんが吸血鬼を狙うのは、ヤキモチさんが原因かな~?」
 シャーロットは停止したバケットホイールエクスカベーターに向かって語りかけた。
「†タナトス†ちゃんにトラウ・ヴィナスちゃん、不敬者が認められてるのが腹立たしいんだよね?」
 その指摘を認めるのか、どうなのか。
 バケットホイールエクスカベーターは動かない。
 シャーロットの後では歌音が権天使のゴスペルを歌っている。
「トラウちゃん、きっと†タナトス†ちゃんを絶対の存在なんて思ってないっしょ? だから楽しい。自分の言いなりになんない。何が起こるか分かんなくてドキドキするから。先の分かる物語、世界ほどつまんないのはないよね? ボクが思うにウリエルちゃん遊びが無さ過ぎなんだよ。ほらほらスマーイルっ♪」
 【第15使徒イチゴエル】のその言葉に対し、ウリエル怒ったのか、またそれとは違うのか。
 突然エンジンが再び唸りを上げ、バケットホイールエクスカベーターが動き始めた。その動きにはどこか迷いがあるのが窺えるが、それでもシャーロットの方へ向かって前進し始める。
 まだ完全に壊れてはいないのだ。
「ウリエルさんウリエルさん、お願い聞いて! 主の言うことをただ聞くだけじゃいい従者さんとは言えないと思うの!」
 バケットホイールエクスカベーターにしがみつきながら、リーニャは叫んだ。
「ちゃんといい事なのか悪い事なのか、本当にこの世界のためなのか、そういう事も考えて主に意見を言って、悪い事は止めれるのがいい従者さんだと思うの! だからね!? ただ聞いて、拡大解釈して……! それだときっとほかの人たちの方が神様に選ばれちゃうんだよ! あとね、天使さんが重機使うのはどうかと思うの――!!」
 どうにか落ちずにはいられている。
 だが、このままでは危ない。
 リーニャはウリエルを止めるため、声を張った。
「工事業者じゃないんだから、天使っていうなら蝗さんとか洪水とかー! あと月喰いさん悪魔に見立てて落としたりとか他にあるでしょー! 重機は浪漫があっても天使としては本当に……きゃあああ!」
「危ない!」
 ついに転がり落ちたリーニャは、橘 駿に受け止められた。
 駿は、リーニャを助け出すチャンスを伺っていたようだ。
「いつ落ちるんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ……! とにかく無事でよかった、ここからは本気で危険だ! 離れるぞ、リーニャ!」
 折れたアームに挟まれたり、機体の下敷きになっては危険だ。
 駿は巻き込まれないよう、リーニャを連れ、バケットホイールエクスカベーターから大きく距離を取った。
 機体を炎に包まれながら、キャタピラはガタガタと動き続けている。
 他のアイドルたちも一旦引かなければ、と同じように機体から離れた。
(もう、手を止めてもいいはずだよ、ウリエルさん。終わりにしよう?)
 どうか、もう止まって。
 歌音は祈るように歌い続けていた。
 
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