怪獣大決戦&神様復活ライブ!
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神様の返答 2
藍屋 あみかは、フェスタ入学一年目の、当時の自分を意識したミュージシャンのスタイルで舞台に立っていた。
(彼女が信仰篤い使徒であるように、私も新たな一歩のために……)
指輪の演技を終えたレイニィの元に向かうあみかの手には、デイジーによく似た花が二輪握られている。
「二人用の踊りがあって、その名前には幸せや協力が花言葉に込められていて……祈る者の姿ではじまる、しとやかなレディさんな内容なんです」
レイニィはその花言葉というものが、彼女の握る花と関係があるのだと察する。
「一緒に舞台、立ってくれませんか? しあわせを、楽しさをとどけましょう……!」
「分かった……わ。どうするの?」
「まずはこの花をどうぞ」
あみかは手にした二輪の花のうち、フォーチュン・フェリシア(ドリアディナフラワー)をレイニィに渡した。もう一輪のアイディール・フェリシア(ドリアディナフラワー)は自分の手に持ったまま。
この花は散るそばから新しい花びらが現れて舞わせることができるんです、とあみかは説明すると、
「この花を散らせながらテーマに沿って歌うんです。歌詞は……」
説明を終えると、あみかは花を手に、観客を向いた。お祈りの姿勢から身を起こし、天井を仰ぎ正面を向き、「Felicia(曲:初めてのバラード)」を歌った。
手の中の花を散らせ、【ピクシースピリット】による幻のピクシーたちが踊る。歌っている最中は常に微笑み、レイニィを気遣いながら。続いて【フロートアロマ】で花の香りを漂わせる。彼女の周囲に幸せな空気が作られていった。
(悲劇をハッピーエンドに……)
文月 翡翠はブレスを【粉雪のジュエル】で纏い、泣くような仕草で蹲っていた。水蒸気の粒子はまるで彼女が流す涙のようだ。
キラキラとした水の粒が消えた頃、彼女は手を伸ばし、誰かに支えられているかのような仕草でゆっくりと立ち上がると、観客の方に両手を差し伸ばした。
初めその表情は助けを求めるように見えなくもなかったが、彼女がパンと手を叩くと微笑が広がる。
一定の拍子を刻んでいたそれがいつしか明確なリズムを取り始めていくにつれ、優しい【ハミングソング】の旋律が姿を現した。
観客が翡翠に合わせて手を叩くと、彼女の拍手は次第に「Dear you(曲:権天使のゴスペル)」の姿を現す。それが明確になった時、翡翠は歌い出した。
ループで歌えるゴスペル、周囲と――レイニィは視線に気付かなかったが――観客と声を合わせて。
(種族も状態も敵も味方も何にも関係なく皆で楽しんで、神様も、全員が笑顔になりますように!)
願いの通り、歌っている人たちが笑顔になっていく。
想いを込めて歌い終えた翡翠は【粉雪のジュエル】で再度キラキラとした輝きを作り出し、その後【慈しみの吐息】で爽やかな風を周囲に漂わせる。
「この世界に祝福あれっ! ですよ」
歌を終えた翡翠は先に劇場を出ると、アカペラで歌の続きを歌いながら、神様ではない、この曲が思う――ただの†タナトス†に歌を捧げた。
「ねぇ、†タナトス†様。私の歌を聞いていてくれてますか?」
薔薇が舞い、劇団の間を流れていく。主役たちの目に光が戻り、声が止む。
天啓が解除されたのだ。無理をさせられていたのか、劇団の団員たちが長い息を吐きながら次々に床にへたり込んだ。
そしてはっとした観客たちの目にもその光が見えた……レイニィの周囲に、アイドルたちのライブに惹かれた蛍のような小さな光が、ふわふわと舞っている。
レイニィが蓋を開けると、光はすうっと虫かごの中に入って行った。……仲間だと認識してるのだろうか。
「神様……窮屈じゃない……?」
レイニィが心配していると、枢が虫かごに向かって尋ねた。
「神さま、話せるんやったら聞きたいんやけど†タナトス†はんのことどう思うてはるの? 元は自分の一部なんやろ? これからどうするつもり?」
ややあって、光の欠片が幾つかくるくると虫かごの中で踊ると、微かな声が答えた。
「あの黒い服、カッコいいと思ってるのかな……」
「……そこなん?」
「いずれにせよ、みんなを悲しませることは止めたい」
センスについてはともかく、†タナトス†を問答無用で消滅させるなどという返答でなくて良かったと、枢はひとまず安心した。
続けてアーヴェントが尋ねる。
「なあ、何故タナトスは悪感情を抱いてしまったんだ?」
【第49使徒ドイツゴシャベレェル】だけあって、今度の返答はもう少し声が大きかった……ようだった。迷いのような感情が感じ取れる。
「……分からない。だけど「僕」の存在が分かたれた時に、たぶんあいつは何か大切なものを持ち逃げした」
「持ち逃げ?」
「それは何らかの「感情」かもしれないし、「記憶」かもしれないし、「理想」かもしれない。それが関係しているのかもしれないけれど、僕からはすっぽり抜け落ちてしまっているものだから、やっぱりあいつのことは分からないんだ」
「そうか……タナトスのことはどう思う?」
「君は、例えば君自身の至らなさが原因で大切な人を傷付けてしまった時に、その自分のことをどれだけ好きになれる?」
普通はあまり好きにはなれないだろうな、とアーヴェントは返答する。
「†タナトス†のこと嫌い?」
続けて水希が直截な物言いをした。彼女の推測――ネヴァーランドと住民の行く末を見極めるのにはこの質問だけで今は十分で、そしてこの質問が必要だった。
「あの中二センスは嫌いだね。僕なのに、僕じゃないみたいだ」
満足がいく答えとは言い難いだろうが、その答えに彼女は思案顔になる。
その横顔を見ながら、左右左はどちらの『神様』も和を貴んでくれればいいんだがな、と思った。
藍屋 あみかは、フェスタ入学一年目の、当時の自分を意識したミュージシャンのスタイルで舞台に立っていた。
(彼女が信仰篤い使徒であるように、私も新たな一歩のために……)
指輪の演技を終えたレイニィの元に向かうあみかの手には、デイジーによく似た花が二輪握られている。
「二人用の踊りがあって、その名前には幸せや協力が花言葉に込められていて……祈る者の姿ではじまる、しとやかなレディさんな内容なんです」
レイニィはその花言葉というものが、彼女の握る花と関係があるのだと察する。
「一緒に舞台、立ってくれませんか? しあわせを、楽しさをとどけましょう……!」
「分かった……わ。どうするの?」
「まずはこの花をどうぞ」
あみかは手にした二輪の花のうち、フォーチュン・フェリシア(ドリアディナフラワー)をレイニィに渡した。もう一輪のアイディール・フェリシア(ドリアディナフラワー)は自分の手に持ったまま。
この花は散るそばから新しい花びらが現れて舞わせることができるんです、とあみかは説明すると、
「この花を散らせながらテーマに沿って歌うんです。歌詞は……」
説明を終えると、あみかは花を手に、観客を向いた。お祈りの姿勢から身を起こし、天井を仰ぎ正面を向き、「Felicia(曲:初めてのバラード)」を歌った。
手の中の花を散らせ、【ピクシースピリット】による幻のピクシーたちが踊る。歌っている最中は常に微笑み、レイニィを気遣いながら。続いて【フロートアロマ】で花の香りを漂わせる。彼女の周囲に幸せな空気が作られていった。
(悲劇をハッピーエンドに……)
文月 翡翠はブレスを【粉雪のジュエル】で纏い、泣くような仕草で蹲っていた。水蒸気の粒子はまるで彼女が流す涙のようだ。
キラキラとした水の粒が消えた頃、彼女は手を伸ばし、誰かに支えられているかのような仕草でゆっくりと立ち上がると、観客の方に両手を差し伸ばした。
初めその表情は助けを求めるように見えなくもなかったが、彼女がパンと手を叩くと微笑が広がる。
一定の拍子を刻んでいたそれがいつしか明確なリズムを取り始めていくにつれ、優しい【ハミングソング】の旋律が姿を現した。
観客が翡翠に合わせて手を叩くと、彼女の拍手は次第に「Dear you(曲:権天使のゴスペル)」の姿を現す。それが明確になった時、翡翠は歌い出した。
ループで歌えるゴスペル、周囲と――レイニィは視線に気付かなかったが――観客と声を合わせて。
(種族も状態も敵も味方も何にも関係なく皆で楽しんで、神様も、全員が笑顔になりますように!)
願いの通り、歌っている人たちが笑顔になっていく。
想いを込めて歌い終えた翡翠は【粉雪のジュエル】で再度キラキラとした輝きを作り出し、その後【慈しみの吐息】で爽やかな風を周囲に漂わせる。
「この世界に祝福あれっ! ですよ」
歌を終えた翡翠は先に劇場を出ると、アカペラで歌の続きを歌いながら、神様ではない、この曲が思う――ただの†タナトス†に歌を捧げた。
「ねぇ、†タナトス†様。私の歌を聞いていてくれてますか?」
薔薇が舞い、劇団の間を流れていく。主役たちの目に光が戻り、声が止む。
天啓が解除されたのだ。無理をさせられていたのか、劇団の団員たちが長い息を吐きながら次々に床にへたり込んだ。
そしてはっとした観客たちの目にもその光が見えた……レイニィの周囲に、アイドルたちのライブに惹かれた蛍のような小さな光が、ふわふわと舞っている。
レイニィが蓋を開けると、光はすうっと虫かごの中に入って行った。……仲間だと認識してるのだろうか。
「神様……窮屈じゃない……?」
レイニィが心配していると、枢が虫かごに向かって尋ねた。
「神さま、話せるんやったら聞きたいんやけど†タナトス†はんのことどう思うてはるの? 元は自分の一部なんやろ? これからどうするつもり?」
ややあって、光の欠片が幾つかくるくると虫かごの中で踊ると、微かな声が答えた。
「あの黒い服、カッコいいと思ってるのかな……」
「……そこなん?」
「いずれにせよ、みんなを悲しませることは止めたい」
センスについてはともかく、†タナトス†を問答無用で消滅させるなどという返答でなくて良かったと、枢はひとまず安心した。
続けてアーヴェントが尋ねる。
「なあ、何故タナトスは悪感情を抱いてしまったんだ?」
【第49使徒ドイツゴシャベレェル】だけあって、今度の返答はもう少し声が大きかった……ようだった。迷いのような感情が感じ取れる。
「……分からない。だけど「僕」の存在が分かたれた時に、たぶんあいつは何か大切なものを持ち逃げした」
「持ち逃げ?」
「それは何らかの「感情」かもしれないし、「記憶」かもしれないし、「理想」かもしれない。それが関係しているのかもしれないけれど、僕からはすっぽり抜け落ちてしまっているものだから、やっぱりあいつのことは分からないんだ」
「そうか……タナトスのことはどう思う?」
「君は、例えば君自身の至らなさが原因で大切な人を傷付けてしまった時に、その自分のことをどれだけ好きになれる?」
普通はあまり好きにはなれないだろうな、とアーヴェントは返答する。
「†タナトス†のこと嫌い?」
続けて水希が直截な物言いをした。彼女の推測――ネヴァーランドと住民の行く末を見極めるのにはこの質問だけで今は十分で、そしてこの質問が必要だった。
「あの中二センスは嫌いだね。僕なのに、僕じゃないみたいだ」
満足がいく答えとは言い難いだろうが、その答えに彼女は思案顔になる。
その横顔を見ながら、左右左はどちらの『神様』も和を貴んでくれればいいんだがな、と思った。