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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

怪獣大決戦&神様復活ライブ!

リアクション公開中!
怪獣大決戦&神様復活ライブ!

リアクション

「ビューティ&ビースト」劇団


 舞台の上には、一つの椅子。日下部 穂波がそこに座って、朗読用の台本を膝に乗せている。
「今日は、少女と神様の愛にあふれたお話です。みんな、心穏やかに聞いてください」
 ぼうっとしている観客たちにできるだけ目を合わせながら、穂波は童話『星の金貨』――銀貨とも――を朗読していった。
(神様の愛と、少女の愛。それによって幸せになる楽しい物語……以前の日々を思い出してくれるかな?)
 穂波は途中途中で、観客、特に子供たちに話を振る。
「さて、みんなならこんなとき、どうする? ボクは迷っちゃうな。けど、彼女は違ったんだ」
 穂波の声は、隣で演じられる「ビューティ&ビースト」劇団に時にかき消されそうになりながら、静かに続いていく。
 舞台の上の劇団の熱気に圧されているのか反応はまばらだ。
 朗読を終えると、穂波は台本を閉じ静かにゆっくりと一礼をする。顔を上げ、
「さて、今宵のお話はここまで。みなさん、ご清聴ありがとうございました」
 幾つかの拍手を受けながら、穂波は椅子を持って舞台の袖に入る。
 そこでは青井 星一郎がレイニィを激励しているところだった。
「レイニィ。アイドルだって人間だ。内心で気落ちしてる状態で舞台に立たなくちゃいけない場合もある。それでも観客の前では、輝くアイドルでいなくちゃいけない――それが自分がアイドルってことの矜持だって思ってるから」
 星一郎の言葉に暗い雰囲気は微塵もない。
「そ、そんなこと、レイニィは言われなくても分かってるわ。でも……ありがと」
 レイニィは強がるように言った後、照れくさそうに目を伏せた。
「だったら大丈夫だな! 行くぞレイニィ――颯爽登場! 蒼星美少年!」
 舞台に飛び出す星一郎をレイニィが慌てて追って出る。
 星一郎は【高揚する一番星】で輝く光球を頭上に作る。革の着物に漆喰六絃琴という出で立ちが輝きに照らされた。自分の逃げ道を塞いでテンションを上げるのが彼のやり方だ。
 そうして高らかに声を上げる。
「六訓楼屡!」
 【六訓楼屡】でギターをかき鳴らすと、続けて「神よ、俺たちの愛を見ろ!(曲:権天使のゴスペル)」を歌う。
 いまいちピンと来ていない不思議顔の観客。だが次第に顔が劇団でなく自分を向いていくのを感じると、【おもちゃの舞踏会】に切り替えた。
 最前列の観客たちの服に付いたネクタイピンや羽などがカタカタと音を鳴らすと小さく跳ね始める。
「たとえ悲劇、悲恋で終わったとしても、今ここで感じている愛が輝いていることは誰にも否定できない! そうだろ! それに悲劇になったら次は喜劇を目指そう! 悲恋で終わったら、また新しい恋を探せばいい! また何度でもやり直せばいいさ!」
 星一郎は観客を、レイニィを鼓舞する。

 「ビューティ&ビースト」劇団は、一人の若き美女と野獣の男の悲恋を続けていた。
 美しい女性の横顔は悲愴に際立ち、男性の逞しい肉体は野獣の荒々しさで、それがまた一層悲劇を予感させる。消して結ばれない二人の間に次々と起こる悲劇、悲劇、悲劇。
 悲しげな主役たちの叫び声と背後に響く複数のコーラスはそれ相応の声量で、舞台はすぐにでも悲しみに染め上げられそうだ。
 再び【高揚する一番星】が舞台から打ち上がり観客の視線が向く。今度は空花 凛菜だった。
(どちらの神様も本物とは思いますが……ネヴァーランドに神様がお2人いらっしゃって差支えないですからね)
 凛菜には、悪神†タナトス†の真意は測りかねるが、悪意ばかりではなく本当は……という可能性もある気がしていた。
「儚く美しい悲しい恋の物語、とても素敵です。……ですが、今だけは観客の皆さんに暖かな愛で心を満たしほしいと思います」
 輝きが消えると、凛菜は観客に向かって語り掛けた。
「私は、このネヴァーランドのふんわりとした暖かな雰囲気がとても好きです。だから、今日は観客の皆さんが笑顔になれるライブパフォーマンスを目指して頑張ってみようと思います。よろしければ聞いてください……もっとよろしければ一緒に盛り上がっていただけたら嬉しいです!」
 【クリアボイス】の透き通る歌声が「幸福色のゴスペル(曲:従天使のゴスペル) 」をうたって悲劇を押し返そうとする。
 思い浮かべるのは身近にあふれる愛。微笑み、手拍子をし、観客に向けて手を振る。誰かが手拍子をすればほらひとつ、もうひとつ。声が重なって、不安が少しずつ薄れていく。
 一曲歌い終えた凛菜は、礼儀正しくお辞儀をして、次の出演者に舞台を譲った。
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