【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影
リアクション公開中!
リアクション
■“炎の冠”の頭部、アルカ救出への橋頭堡を築け!
「うおっと! ちっ、腕を使えなくしても炎は健在か。……振り落とされねーようしっかり掴まってろよ、瑶?」
“炎の冠”へ接近を試みようとした春瀬 那智が、“炎の冠”から放たれた炎を急な軌道で避けると、自分の背後に乗っていた日辻 瑶へ声を飛ばす。
「大丈夫、那智くんの運転だからね」
信頼の感じられる言葉に那智が一瞬顔を綻ばせ、すぐに引き締める。“炎の冠”の両腕は仲間の攻撃によって使用不能状態になっており、下半身も同様に無数の裂傷が生まれ、柱のように身体を支えているのがやっとという有様だった。それでも頭部は生きており、瘴気が集まって生まれた炎は顔の正面に限らず、全方位から飛んでくる。空を飛ぶ者たちにとっては一瞬たりとも気を抜けない状況だ。
(アルカは八咫子のために、ミヤビはこの国のために、か……。命かける理由なんて人それぞれだろうけど……二人が死ぬ事なんて、誰も望んでねーのにな)
何かのために、誰かのために命をかける。時にはそれだけの出費を払ってようやく達成できる事象があるのかもしれないが、大抵はみんなで少しずつ分け合うことで達成できるはずだ。
(だから、その覚悟、全力で踏みにじってやるよ。それで助けられんなら、いくらでも)
故に、二人だけが背負って黄泉へ旅立つのが是であるわけがない。事を為すつもりの者たちは拒絶するだろうが、負担は案外、分け合えるものなのだから。
(……正面は硬そうだな。少し距離はあるが、後頭部が狙い目か)
“炎の冠”の頭部を通り過ぎながら、那智が攻撃を加えるべき箇所を定める。
「突撃のタイミングは俺が図る、瑶は先に一撃を与えてくれ。そこを集中攻撃して穴を開けるぞ」
「うん、分かったよ。一緒に戦っている仲間にも分かってもらえるようにするね」
頷いた瑶に那智も頷き、麒麟を操って“炎の冠”の後頭部へ回り込むような軌道を取る。その間にもまるで対空砲火の如く炎が迫り、二人の接近を阻むが、周りで同様に攻撃を試みる者たちへの分もあって、ほんの一瞬、炎の幕が途切れる。
(――ここだ!)
間髪入れず、那智が“炎の冠”の後頭部へ接近する。彼の後方で瑶が背を伸ばし、鞘から刀を抜く。抜く前は小刀程度の長さだったそれが、瘴気を纏い太刀ほどの長さへと変わる。
(君を助けたいと、助けてほしいと言われたんだ。君の帰りを待っている人がいるんだ。だから、君は戻ってくるんだよ。
幸せを得られないまま死ぬことの悲しみ、辛さを感じてほしくないし、誰かの生命を失って得る幸せなんて、ごめんだ。
そんなの、本当の幸せなんかじゃない)
太刀に、重さを伴うほどに凝縮した瘴気を宿らせる。そして範囲に入った瞬間、それを激流のように撃ち放てば、頭部に抉れたような傷が生まれた。
「続けていくぜ!」
瑶が作った攻撃ポイント目掛けて、那智も刀を振るう。足でバランスを取りながら、大上段から振るわれた刀は先程瑶が作った裂傷に食い込み、傷を広げる形になった。
仲間が“炎の冠”への攻勢を強める中、千夏 水希は少し離れた場所から事態を見守りつつ、これまでのことを振り返っていた。
(炎の冠がどんなヤツか知らないけど、私はもう葦原の神様は信じられない)
水希がそう思うに至ったひとつには、前に戦った穢ノ神が最期に残した言葉の存在があった。
(『神の中には舞芸者もろとも滅ぼしてしまえと意見する者も居た』と、マリパラで会った穢ノ神が教えてくれた。神によって思う所が違うのなら、炎の冠に対する事実も『生まれてすぐ母を焼いたから、八つ裂きにされた』でないのかもしれない。母親の愛も知らず、ただ居場所を探し求める子供かも知れないでしょう?)
もちろん、自分の考えが正である保証もない。実は超凶暴で知能が無く、生まれた事自体が災厄という存在だってある。それでも水希は、間違った認識のまま攻撃を加えることに躊躇いがあった。
(舞芸者を守りたくて、黄泉についた神がいた。
楽しませてくれる舞芸があって欲しいんだと、最期に教えてくれた。
今の葦原を守ってくれと頼まれた。
葦原の子。親を無くした子。銀狐、ミヤビ、此花・咲夜……そして炎の冠。
泣いてる子供は助けないと、ね?)
考えをまとめ、自らの為すべきことを定め、水希が麒麟に乗り空を翔ける。
「自分の身を賭けてでも確かめたい、どうにもならない邪悪な存在なのかを」
「せっかく八咫子が私たちのことを頼ってくれたんだから……何としても、それに応えないとね!」
『アルカを助けたい』と助けを求めてきた八咫子を手伝いたい思いで“炎の冠”攻撃組に参加した世良 延寿が、麒麟の上から仲間がつけた傷跡を目視する。
「あそこに攻撃を加え続ければ、中に続く道が開けそうだね! よーし!」
麒麟を操り、接近を阻む炎の塊を避けながら進み、攻撃ポイントまで到達すると装飾の施された剣の柄を取り出す。
「一回の攻撃だけだと、瘴気が傷口を覆っちゃうみたいだから……これでどう!?」
延寿が柄を振るえば、ちょうど開けた傷口辺りにかまいたちが生まれる。風の刃は傷口を覆おうとしていた瘴気を吹き飛ばすように飛び過ぎ、“炎の冠”の回復を妨げる。
「アルカは絶対、助けるんだからね!」
飛んでくる炎を避けながら、繰り返し裂傷へかまいたちを見舞う。吹き飛ばしては纏わりつく、そんな千日手にも似た応酬が何度が続けられるが、他の場所でも戦闘により瘴気が消耗されていった結果、裂傷を覆う瘴気の供給も少しずつ途絶えていった。
「あとちょっとで、中に入れるよ!」
ここでもう一撃、大きい攻撃を当てることができれば、人が入れるほどの入り口を作ることができるだろう。――そしてその担い手は、“炎の冠”上空に到着しつつあった――。
「今度こそその怖い顔を吹っ飛ばしてやるで御座る!」
一度は“炎の冠”の猛攻の前に撤退を余儀なくされた平平と風華が、再び大砲を携え発射位置につく。
「風華殿、行くで御座る!」
「はい」
風華が耳を塞ぎ、平平が火術大砲を発射する。瘴気の供給が途絶えたことで最後の壁を失った頭部の裂傷へ、質量の塊である弾がぶつけられ、筋だった傷跡がバカッ、と広がった。
「続けていきます。……あそこから入るのですから、冷やす必要がありますね」
耳から離した手に、氷のつぶてを生み出した風華が広がった裂傷へそれを撃ち込む。傷を押し広げつつ冷やすことで、突入する者たちの移動を容易にする。
「ここが好機! その頭、ちょっと中を検めさせて貰うわ!」
平平と風華の攻撃に続いて、麒麟から飛び降りた風花が刀を大上段に構え、渾身の力を込めて斬りつける。
「おおおおっ!!」
振るわれた刀は、かろうじて一人が入れるか程度の傷だったそれを、複数人が一気に突入できる程度に広げた。だが傷が広がったことで、漏れ出す瘴気の量も増えてしまい、このままでは突入する際に大きなダメージを負う。
「火澄さん! 止め、お願い!」
反撃を避けるために離脱しながら声を飛ばした先、悠が式神召喚の詠唱を終え、行使するだけとなっていた――。
「待たせたな。臨・兵・闘・者・以下省略……おいでませ、日華鳳凰……!」
悠の召喚に応えた灼熱の鳥『鳳』と『凰』が最初は仲睦まじく飛び、やがて左右に分かれ“炎の冠”頭部を左右から自らの発する炎で焼き、仲間がこじ開けた裂傷の左右で合流して消滅する。これで傷口を覆おうとする瘴気の供給は完全に途絶えた。
「その名の如く、門をこじ開けろ開門手裏剣……!」
さらにダメ押しとして、『閉ざされた門すら押し開く』という謂れにより“開門”手裏剣と名付けられたそれを左右の手に持ち、振りかぶって投擲する。音を立てて手裏剣が突き刺さり、最終的に人が3人は並んで入れようかという程度まで穴が広がった。
「後は任せたぜ、ルア、アミカ……」
悠の言葉に応えるように、麒麟に乗った夢月 瑠亜と藍屋 あみかが開けた穴から“炎の冠”内部へ突入するのが見えた――。
「うおっと! ちっ、腕を使えなくしても炎は健在か。……振り落とされねーようしっかり掴まってろよ、瑶?」
“炎の冠”へ接近を試みようとした春瀬 那智が、“炎の冠”から放たれた炎を急な軌道で避けると、自分の背後に乗っていた日辻 瑶へ声を飛ばす。
「大丈夫、那智くんの運転だからね」
信頼の感じられる言葉に那智が一瞬顔を綻ばせ、すぐに引き締める。“炎の冠”の両腕は仲間の攻撃によって使用不能状態になっており、下半身も同様に無数の裂傷が生まれ、柱のように身体を支えているのがやっとという有様だった。それでも頭部は生きており、瘴気が集まって生まれた炎は顔の正面に限らず、全方位から飛んでくる。空を飛ぶ者たちにとっては一瞬たりとも気を抜けない状況だ。
(アルカは八咫子のために、ミヤビはこの国のために、か……。命かける理由なんて人それぞれだろうけど……二人が死ぬ事なんて、誰も望んでねーのにな)
何かのために、誰かのために命をかける。時にはそれだけの出費を払ってようやく達成できる事象があるのかもしれないが、大抵はみんなで少しずつ分け合うことで達成できるはずだ。
(だから、その覚悟、全力で踏みにじってやるよ。それで助けられんなら、いくらでも)
故に、二人だけが背負って黄泉へ旅立つのが是であるわけがない。事を為すつもりの者たちは拒絶するだろうが、負担は案外、分け合えるものなのだから。
(……正面は硬そうだな。少し距離はあるが、後頭部が狙い目か)
“炎の冠”の頭部を通り過ぎながら、那智が攻撃を加えるべき箇所を定める。
「突撃のタイミングは俺が図る、瑶は先に一撃を与えてくれ。そこを集中攻撃して穴を開けるぞ」
「うん、分かったよ。一緒に戦っている仲間にも分かってもらえるようにするね」
頷いた瑶に那智も頷き、麒麟を操って“炎の冠”の後頭部へ回り込むような軌道を取る。その間にもまるで対空砲火の如く炎が迫り、二人の接近を阻むが、周りで同様に攻撃を試みる者たちへの分もあって、ほんの一瞬、炎の幕が途切れる。
(――ここだ!)
間髪入れず、那智が“炎の冠”の後頭部へ接近する。彼の後方で瑶が背を伸ばし、鞘から刀を抜く。抜く前は小刀程度の長さだったそれが、瘴気を纏い太刀ほどの長さへと変わる。
(君を助けたいと、助けてほしいと言われたんだ。君の帰りを待っている人がいるんだ。だから、君は戻ってくるんだよ。
幸せを得られないまま死ぬことの悲しみ、辛さを感じてほしくないし、誰かの生命を失って得る幸せなんて、ごめんだ。
そんなの、本当の幸せなんかじゃない)
太刀に、重さを伴うほどに凝縮した瘴気を宿らせる。そして範囲に入った瞬間、それを激流のように撃ち放てば、頭部に抉れたような傷が生まれた。
「続けていくぜ!」
瑶が作った攻撃ポイント目掛けて、那智も刀を振るう。足でバランスを取りながら、大上段から振るわれた刀は先程瑶が作った裂傷に食い込み、傷を広げる形になった。
仲間が“炎の冠”への攻勢を強める中、千夏 水希は少し離れた場所から事態を見守りつつ、これまでのことを振り返っていた。
(炎の冠がどんなヤツか知らないけど、私はもう葦原の神様は信じられない)
水希がそう思うに至ったひとつには、前に戦った穢ノ神が最期に残した言葉の存在があった。
(『神の中には舞芸者もろとも滅ぼしてしまえと意見する者も居た』と、マリパラで会った穢ノ神が教えてくれた。神によって思う所が違うのなら、炎の冠に対する事実も『生まれてすぐ母を焼いたから、八つ裂きにされた』でないのかもしれない。母親の愛も知らず、ただ居場所を探し求める子供かも知れないでしょう?)
もちろん、自分の考えが正である保証もない。実は超凶暴で知能が無く、生まれた事自体が災厄という存在だってある。それでも水希は、間違った認識のまま攻撃を加えることに躊躇いがあった。
(舞芸者を守りたくて、黄泉についた神がいた。
楽しませてくれる舞芸があって欲しいんだと、最期に教えてくれた。
今の葦原を守ってくれと頼まれた。
葦原の子。親を無くした子。銀狐、ミヤビ、此花・咲夜……そして炎の冠。
泣いてる子供は助けないと、ね?)
考えをまとめ、自らの為すべきことを定め、水希が麒麟に乗り空を翔ける。
「自分の身を賭けてでも確かめたい、どうにもならない邪悪な存在なのかを」
「せっかく八咫子が私たちのことを頼ってくれたんだから……何としても、それに応えないとね!」
『アルカを助けたい』と助けを求めてきた八咫子を手伝いたい思いで“炎の冠”攻撃組に参加した世良 延寿が、麒麟の上から仲間がつけた傷跡を目視する。
「あそこに攻撃を加え続ければ、中に続く道が開けそうだね! よーし!」
麒麟を操り、接近を阻む炎の塊を避けながら進み、攻撃ポイントまで到達すると装飾の施された剣の柄を取り出す。
「一回の攻撃だけだと、瘴気が傷口を覆っちゃうみたいだから……これでどう!?」
延寿が柄を振るえば、ちょうど開けた傷口辺りにかまいたちが生まれる。風の刃は傷口を覆おうとしていた瘴気を吹き飛ばすように飛び過ぎ、“炎の冠”の回復を妨げる。
「アルカは絶対、助けるんだからね!」
飛んでくる炎を避けながら、繰り返し裂傷へかまいたちを見舞う。吹き飛ばしては纏わりつく、そんな千日手にも似た応酬が何度が続けられるが、他の場所でも戦闘により瘴気が消耗されていった結果、裂傷を覆う瘴気の供給も少しずつ途絶えていった。
「あとちょっとで、中に入れるよ!」
ここでもう一撃、大きい攻撃を当てることができれば、人が入れるほどの入り口を作ることができるだろう。――そしてその担い手は、“炎の冠”上空に到着しつつあった――。
「今度こそその怖い顔を吹っ飛ばしてやるで御座る!」
一度は“炎の冠”の猛攻の前に撤退を余儀なくされた平平と風華が、再び大砲を携え発射位置につく。
「風華殿、行くで御座る!」
「はい」
風華が耳を塞ぎ、平平が火術大砲を発射する。瘴気の供給が途絶えたことで最後の壁を失った頭部の裂傷へ、質量の塊である弾がぶつけられ、筋だった傷跡がバカッ、と広がった。
「続けていきます。……あそこから入るのですから、冷やす必要がありますね」
耳から離した手に、氷のつぶてを生み出した風華が広がった裂傷へそれを撃ち込む。傷を押し広げつつ冷やすことで、突入する者たちの移動を容易にする。
「ここが好機! その頭、ちょっと中を検めさせて貰うわ!」
平平と風華の攻撃に続いて、麒麟から飛び降りた風花が刀を大上段に構え、渾身の力を込めて斬りつける。
「おおおおっ!!」
振るわれた刀は、かろうじて一人が入れるか程度の傷だったそれを、複数人が一気に突入できる程度に広げた。だが傷が広がったことで、漏れ出す瘴気の量も増えてしまい、このままでは突入する際に大きなダメージを負う。
「火澄さん! 止め、お願い!」
反撃を避けるために離脱しながら声を飛ばした先、悠が式神召喚の詠唱を終え、行使するだけとなっていた――。
「待たせたな。臨・兵・闘・者・以下省略……おいでませ、日華鳳凰……!」
悠の召喚に応えた灼熱の鳥『鳳』と『凰』が最初は仲睦まじく飛び、やがて左右に分かれ“炎の冠”頭部を左右から自らの発する炎で焼き、仲間がこじ開けた裂傷の左右で合流して消滅する。これで傷口を覆おうとする瘴気の供給は完全に途絶えた。
「その名の如く、門をこじ開けろ開門手裏剣……!」
さらにダメ押しとして、『閉ざされた門すら押し開く』という謂れにより“開門”手裏剣と名付けられたそれを左右の手に持ち、振りかぶって投擲する。音を立てて手裏剣が突き刺さり、最終的に人が3人は並んで入れようかという程度まで穴が広がった。
「後は任せたぜ、ルア、アミカ……」
悠の言葉に応えるように、麒麟に乗った夢月 瑠亜と藍屋 あみかが開けた穴から“炎の冠”内部へ突入するのが見えた――。