【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影
リアクション公開中!
リアクション
■“炎の冠”の足を止め、隙を作れ!
(アルカは心の好敵手……ソレと定めたのはワタシからの一方的なコトだけど。
ソレでも、カノジョがあんな身勝手なマネをしているのは、ライバルとしてガマンならないわ……!)
アルカへの憤りを胸に秘め、加宮 深冬の操る麒麟に同乗するノエル・アドラスティアが、舞芸者相手に応戦を続ける“炎の冠”を見つめ、深冬と沙羅科 瑠璃羽に指示を送る。
「深冬とワタシが先に突っ込んで牽制するわ! 瑠璃羽は後ろから強烈な一撃を叩き込んでちょうだい!」
「分かりました。必ずや痛手を負わせてみせましょう」
「任せたわ! 深冬、行くわよ!」
「うんっ!」
後ろにピタリと付いた瑠璃羽が頷いたのを見遣り、ノエルが深冬に突撃を指示する。同時に炎を繰る妖の血の力を解放させ、背中から炎の羽を吹き上がらせる。
(炎の化身である炎の冠に、火属性の攻撃は効き難いと思うケド。この力はワタシの炎耐性も高めてくれる。
この状態で深冬や瑠璃羽を“炎の冠”の炎から庇うのがワタシの役目!)
覚悟を決めたノエルと深冬、その後ろから瑠璃羽が“炎の冠”の後方へ回り込む軌道を取る。“神”であっても人型である以上、腕の可動範囲は前方が大きく、後方は小さい。後方からの攻撃なら迎撃を受ける可能性を減じられる、そう読んだノエルの作戦による行動だったが、“炎の冠”も当然、回り込まれるのを阻止しにかかる。
「! 来るわ! 深冬、伏せて!」
「うん! ……これで少しは、態勢を崩して!」
ノエルに庇われる形になった深冬が、隠れる前に“炎の冠”の足元から石弾を撃ち出す。もろくなった地面が崩れ、“炎の冠”の身体が沈み込む形になり、それによって放たれた炎の挙動も変わる。
「っ――」
そして迫る炎をできる限り避けつつ、あえて短時間触れることで撃墜されたように見せかける。それに騙されてくれたのか、あるいは他の仲間が注意を引いたのか、一行はそれ以上の迎撃を受けずに“炎の冠”の後方へ回り込むことができた。
「……! ノエル、大丈夫!?」
重みを感じた深冬が見た先、ノエルがあからさまに疲労した姿で深冬へ寄りかかっていた。いくら耐性を高めていたとしても“炎の冠”の炎を直撃で浴びており、ダメージはかなりのものであった。
「……この、くらいで……倒れるほど、ヤワじゃないわ」
それでも意地を張って、ノエルが“炎の冠”へと向かう瑠璃羽に視線を送る。ノエルと深冬に見送られる形になった瑠璃羽は全力で翔け上がり、頭部への痛打を浴びせんとする。
(お二人が囮になってまで得た好機――無駄にはしない!)
抜いた紅い刀身の刀を構え、間合いに飛び込んだ瞬間、陽の気をはべらせた一撃を浴びせる。
「っ!?」
返ってきた感触にほとんど手応えのないことに、瑠璃羽の表情が歪む。それでも手を止めることなく、陰の気をはべらせた一撃を続けて打ち込むも、これもほとんど手応えが返ってこなかった。
「瑠璃羽さん逃げて!」
「!!」
直後、深冬の警告に瑠璃羽が刀を手放し、自分を掴もうとする手の軌道から辛うじて逸れつつ、その手を蹴った反動で“炎の冠”から離脱する。あと少し深冬の声が遅れていたら、ハエ叩きで叩かれたハエのようになっていたかもしれない。
「お二人の献身に報いることができず、申し訳ありません……!」
戻ってきた瑠璃羽が悔しがる表情を浮かべ、ノエルと深冬に謝罪する。気にしないで、と声をかけつつ、深冬に介抱されながらノエルが、周囲を炎に包み込む“炎の冠”を見つめ、おそらく中に居るであろうアルカへ呼びかけるように呟く。
「……アルカにも守りたいモノ、譲れないモノがあるコトは解るケド……。その守りたいモノ、譲れないモノの一つであるはずの八咫子の顔を見なさいな。
大事なヒトにあんな顔をさせて……今のアルカのやっているソレはただの『独りよがり』というのよ」
(アハ、あれが炎の冠いうやつどすかぁ。……冠ていうにはやや貧相やけど、眠ってるもん起こしたら魅力的になるやろか?)
麒麟の上から、オンバシラへ向けて進行を続ける“炎の冠”を捉えた朝霞 枢の顔には、楽しむような色が浮かんでいた。
(ふふ……うちの渇きを癒してくれるならええけど。ほな、いきまひょか)
“炎の冠”の頭上まで麒麟を飛ばし、そこで呪いの力を発動させる。顔には狂気とも言える笑みを浮かべて、その位置から飛び降り一直線に“炎の冠”へと落ちていく。
「アハハハハハハ!」
“炎の冠”から溢れる瘴気を浴びても怖じることなく、愉悦に歪んだ顔で“炎の冠”の頭部へ落下の勢いを乗せた攻撃をぶつける。刀に集めた瘴気の力も乗せた一撃は、一瞬“炎の冠”をふらつかせるほどの威力を伴っていた。
「ウオオオオオオ!!」
そして、雄叫びをあげた“炎の冠”が自分にこれだけのダメージを与えた枢を脅威と認め、狙いを定めた炎を浴びせる。
「うちを追ってくれるん、嬉しいわぁ。うちから目ぇ離せなくしてあげます」
意思の見えない視線を向ける“炎の冠”へ、艶やかな視線を返した枢が直後、飛んできた複数の炎の玉を舞うような動きで避けていく。その動きは妖艶な輝きすら感じさせるものであり、もしここにライブ客が居たなら彼女から目が離せなくなっていただろう。
「なぁ、うち、寂しいねん……。もっと触れおおて、絡みおおて、どろどろに溶けるまで混ざりおおて、最期まで気持ちよくなろ?」
攻撃を避け、軽やかに“炎の冠”の身体を登った枢が、その胴体辺りで煽るような言葉と表情を浮かべ、瘴気の宿る刀を撫でるように“炎の冠”へ当てる。それだけ接近すれば普通の人間であれば瘴気に飲み込まれてしまうだろうが、瘴気を操る祟咬はむしろ自分の力としてしまうかのように、噴き出す瘴気を飲み込んでいく。
「ふふ、ごちそうさま。……こんな美味しい瘴気をもらったお礼は、ちゃぁんと返さんとね」
ぺろり、と赤い舌で唇を潤し、枢がさらに身体を登り肩付近まで到達すると、大きく跳ぶ。これまでよりも大量の瘴気を刀に集め、落下の勢いのままに肩へ刀をぶつければ、爆発にも似た衝撃が生まれる。“炎の冠”の身体がガクッ、と傾き、攻撃を受けた肩が明らかに外れ、機能を失っているのが見えた。
「こっちを向け、この穢ノ神野郎! アタシが相手だ!」
麒麟に乗って空を駆け巡りながら、黒瀬 心美が“炎の冠”の注意を引くように声をあげ、光の矢を上腕へ撃ち込む。放たれた矢が“炎の冠”の腕を瘴気ごと削り取るように飛び過ぎ、光の粒になって弾ける。
(……アルカが何を目的としてこんなことをしたのかは分からないけど、恐らくは八咫子の為なんだろう。まったく……自己犠牲の精神を貶すつもりは無いけど、褒められたもんじゃないねぇ)
“炎の冠”が生み出し飛ばしてくる炎を掻い潜りながら、心美は自分たちに助けを求めてきた八咫子、そして八咫子のために今回の行動を起こしたと思われるアルカの事を思う。
(安心しな、八咫子。アルカはアタシらが必ず助け出す。
アンタとアルカのステージはまだここから先も続いていく。だから、二度と手放すんじゃないよ)
炎が途切れた瞬間を狙い、先程と同じ箇所を狙って光の矢を撃ち込む。既に数度の攻撃をほぼ同じ箇所に集中させており、“炎の冠”の腕の一部は傍から見ても分かるほどに抉れていた。瘴気がそれを補うようにしているため腕としての機能はまだ失われていないが、供給を超える消耗を与えていた。
(けど、流石に十も二十も続けられない。接近する危険を犯してでも、一撃デカイのを当てる!)
心美が矢を撃つのを止め、刀を抜いて麒麟を奔らせ、“炎の冠”に接近する。迎撃に炎の壁が迫るが、生み出した光の網が威力を減じ、少しのダメージで炎を突破する。
「これでも喰らえぇぇ!」
刀に陽の気をはべらせ、全力の斬りを細くなった腕へと叩き込む。ゴムを叩くような感触を得つつそのまま、今度は陰の気をはべらせた刀で追撃を行う。
「落ちない……失敗か!?」
腕を切り落とすつもりで行った攻撃だが、“炎の冠”の腕は落ちなかった。しかし先程まで筋肉のように覆っていた瘴気はその動きを止め、心美が攻撃を加えた先はただ繋がっているだけのようにだらりと垂れ下がっていた。
(満足に動かせなくさせたのなら、目的は果たしたと言えるか)
距離を取り、疲労を訴える身体を休ませながら、心美はこれで仲間が攻撃を受けるリスクが減るだろうことに安堵の息を吐いた。
(アルカは心の好敵手……ソレと定めたのはワタシからの一方的なコトだけど。
ソレでも、カノジョがあんな身勝手なマネをしているのは、ライバルとしてガマンならないわ……!)
アルカへの憤りを胸に秘め、加宮 深冬の操る麒麟に同乗するノエル・アドラスティアが、舞芸者相手に応戦を続ける“炎の冠”を見つめ、深冬と沙羅科 瑠璃羽に指示を送る。
「深冬とワタシが先に突っ込んで牽制するわ! 瑠璃羽は後ろから強烈な一撃を叩き込んでちょうだい!」
「分かりました。必ずや痛手を負わせてみせましょう」
「任せたわ! 深冬、行くわよ!」
「うんっ!」
後ろにピタリと付いた瑠璃羽が頷いたのを見遣り、ノエルが深冬に突撃を指示する。同時に炎を繰る妖の血の力を解放させ、背中から炎の羽を吹き上がらせる。
(炎の化身である炎の冠に、火属性の攻撃は効き難いと思うケド。この力はワタシの炎耐性も高めてくれる。
この状態で深冬や瑠璃羽を“炎の冠”の炎から庇うのがワタシの役目!)
覚悟を決めたノエルと深冬、その後ろから瑠璃羽が“炎の冠”の後方へ回り込む軌道を取る。“神”であっても人型である以上、腕の可動範囲は前方が大きく、後方は小さい。後方からの攻撃なら迎撃を受ける可能性を減じられる、そう読んだノエルの作戦による行動だったが、“炎の冠”も当然、回り込まれるのを阻止しにかかる。
「! 来るわ! 深冬、伏せて!」
「うん! ……これで少しは、態勢を崩して!」
ノエルに庇われる形になった深冬が、隠れる前に“炎の冠”の足元から石弾を撃ち出す。もろくなった地面が崩れ、“炎の冠”の身体が沈み込む形になり、それによって放たれた炎の挙動も変わる。
「っ――」
そして迫る炎をできる限り避けつつ、あえて短時間触れることで撃墜されたように見せかける。それに騙されてくれたのか、あるいは他の仲間が注意を引いたのか、一行はそれ以上の迎撃を受けずに“炎の冠”の後方へ回り込むことができた。
「……! ノエル、大丈夫!?」
重みを感じた深冬が見た先、ノエルがあからさまに疲労した姿で深冬へ寄りかかっていた。いくら耐性を高めていたとしても“炎の冠”の炎を直撃で浴びており、ダメージはかなりのものであった。
「……この、くらいで……倒れるほど、ヤワじゃないわ」
それでも意地を張って、ノエルが“炎の冠”へと向かう瑠璃羽に視線を送る。ノエルと深冬に見送られる形になった瑠璃羽は全力で翔け上がり、頭部への痛打を浴びせんとする。
(お二人が囮になってまで得た好機――無駄にはしない!)
抜いた紅い刀身の刀を構え、間合いに飛び込んだ瞬間、陽の気をはべらせた一撃を浴びせる。
「っ!?」
返ってきた感触にほとんど手応えのないことに、瑠璃羽の表情が歪む。それでも手を止めることなく、陰の気をはべらせた一撃を続けて打ち込むも、これもほとんど手応えが返ってこなかった。
「瑠璃羽さん逃げて!」
「!!」
直後、深冬の警告に瑠璃羽が刀を手放し、自分を掴もうとする手の軌道から辛うじて逸れつつ、その手を蹴った反動で“炎の冠”から離脱する。あと少し深冬の声が遅れていたら、ハエ叩きで叩かれたハエのようになっていたかもしれない。
「お二人の献身に報いることができず、申し訳ありません……!」
戻ってきた瑠璃羽が悔しがる表情を浮かべ、ノエルと深冬に謝罪する。気にしないで、と声をかけつつ、深冬に介抱されながらノエルが、周囲を炎に包み込む“炎の冠”を見つめ、おそらく中に居るであろうアルカへ呼びかけるように呟く。
「……アルカにも守りたいモノ、譲れないモノがあるコトは解るケド……。その守りたいモノ、譲れないモノの一つであるはずの八咫子の顔を見なさいな。
大事なヒトにあんな顔をさせて……今のアルカのやっているソレはただの『独りよがり』というのよ」
(アハ、あれが炎の冠いうやつどすかぁ。……冠ていうにはやや貧相やけど、眠ってるもん起こしたら魅力的になるやろか?)
麒麟の上から、オンバシラへ向けて進行を続ける“炎の冠”を捉えた朝霞 枢の顔には、楽しむような色が浮かんでいた。
(ふふ……うちの渇きを癒してくれるならええけど。ほな、いきまひょか)
“炎の冠”の頭上まで麒麟を飛ばし、そこで呪いの力を発動させる。顔には狂気とも言える笑みを浮かべて、その位置から飛び降り一直線に“炎の冠”へと落ちていく。
「アハハハハハハ!」
“炎の冠”から溢れる瘴気を浴びても怖じることなく、愉悦に歪んだ顔で“炎の冠”の頭部へ落下の勢いを乗せた攻撃をぶつける。刀に集めた瘴気の力も乗せた一撃は、一瞬“炎の冠”をふらつかせるほどの威力を伴っていた。
「ウオオオオオオ!!」
そして、雄叫びをあげた“炎の冠”が自分にこれだけのダメージを与えた枢を脅威と認め、狙いを定めた炎を浴びせる。
「うちを追ってくれるん、嬉しいわぁ。うちから目ぇ離せなくしてあげます」
意思の見えない視線を向ける“炎の冠”へ、艶やかな視線を返した枢が直後、飛んできた複数の炎の玉を舞うような動きで避けていく。その動きは妖艶な輝きすら感じさせるものであり、もしここにライブ客が居たなら彼女から目が離せなくなっていただろう。
「なぁ、うち、寂しいねん……。もっと触れおおて、絡みおおて、どろどろに溶けるまで混ざりおおて、最期まで気持ちよくなろ?」
攻撃を避け、軽やかに“炎の冠”の身体を登った枢が、その胴体辺りで煽るような言葉と表情を浮かべ、瘴気の宿る刀を撫でるように“炎の冠”へ当てる。それだけ接近すれば普通の人間であれば瘴気に飲み込まれてしまうだろうが、瘴気を操る祟咬はむしろ自分の力としてしまうかのように、噴き出す瘴気を飲み込んでいく。
「ふふ、ごちそうさま。……こんな美味しい瘴気をもらったお礼は、ちゃぁんと返さんとね」
ぺろり、と赤い舌で唇を潤し、枢がさらに身体を登り肩付近まで到達すると、大きく跳ぶ。これまでよりも大量の瘴気を刀に集め、落下の勢いのままに肩へ刀をぶつければ、爆発にも似た衝撃が生まれる。“炎の冠”の身体がガクッ、と傾き、攻撃を受けた肩が明らかに外れ、機能を失っているのが見えた。
「こっちを向け、この穢ノ神野郎! アタシが相手だ!」
麒麟に乗って空を駆け巡りながら、黒瀬 心美が“炎の冠”の注意を引くように声をあげ、光の矢を上腕へ撃ち込む。放たれた矢が“炎の冠”の腕を瘴気ごと削り取るように飛び過ぎ、光の粒になって弾ける。
(……アルカが何を目的としてこんなことをしたのかは分からないけど、恐らくは八咫子の為なんだろう。まったく……自己犠牲の精神を貶すつもりは無いけど、褒められたもんじゃないねぇ)
“炎の冠”が生み出し飛ばしてくる炎を掻い潜りながら、心美は自分たちに助けを求めてきた八咫子、そして八咫子のために今回の行動を起こしたと思われるアルカの事を思う。
(安心しな、八咫子。アルカはアタシらが必ず助け出す。
アンタとアルカのステージはまだここから先も続いていく。だから、二度と手放すんじゃないよ)
炎が途切れた瞬間を狙い、先程と同じ箇所を狙って光の矢を撃ち込む。既に数度の攻撃をほぼ同じ箇所に集中させており、“炎の冠”の腕の一部は傍から見ても分かるほどに抉れていた。瘴気がそれを補うようにしているため腕としての機能はまだ失われていないが、供給を超える消耗を与えていた。
(けど、流石に十も二十も続けられない。接近する危険を犯してでも、一撃デカイのを当てる!)
心美が矢を撃つのを止め、刀を抜いて麒麟を奔らせ、“炎の冠”に接近する。迎撃に炎の壁が迫るが、生み出した光の網が威力を減じ、少しのダメージで炎を突破する。
「これでも喰らえぇぇ!」
刀に陽の気をはべらせ、全力の斬りを細くなった腕へと叩き込む。ゴムを叩くような感触を得つつそのまま、今度は陰の気をはべらせた刀で追撃を行う。
「落ちない……失敗か!?」
腕を切り落とすつもりで行った攻撃だが、“炎の冠”の腕は落ちなかった。しかし先程まで筋肉のように覆っていた瘴気はその動きを止め、心美が攻撃を加えた先はただ繋がっているだけのようにだらりと垂れ下がっていた。
(満足に動かせなくさせたのなら、目的は果たしたと言えるか)
距離を取り、疲労を訴える身体を休ませながら、心美はこれで仲間が攻撃を受けるリスクが減るだろうことに安堵の息を吐いた。