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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影

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【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影

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「でもその前に……ほんの少しだけ、ここで楽しんでいってください!」

 まだ不安が拭いきれない人々のために、小明が進み出て来た。

「私がこれから披露させていただく天津舞は、今上の帝や天津神々への奏上です。皆さんが共に祈り、応援してくださる事より多くの加護を強めることにつながります。皆さんの為にオンバシラで尽力しているミヤビさんのためにも、どうか、一緒に楽しんでください。お願いいたします……!」

 深々とお辞儀をする小明と樹に、人々のあたたかな拍手が送られた。
 小明は期待に応えるためにも、巫の作法【巫所作】に則り、神事としての【天津舞い】を披露し始めた。
 【御詠歌】を詠み上げながら、人々と同じ高さの場所でゆっくりと舞う。
 一拍ずらした形で、鬼月が小明と対になるような舞を入れてゆく。
 しんと張り詰めた空気の中、やがて光と影のようにぴったりと重なり合う2人の舞。
 神事とはいえ、【天津舞い】を身近に感じた人々は、小明と鬼月の熱意に応えようと真摯な態度で舞に見入っていた。
 少し勢いがついてきたところで、樹は【朧芸者の符】で幻の舞芸者を呼び出し、扇子代わりに【色街の花札】を持って、しなやかな舞いを披露した。
 小明と鬼月とは初めて舞を合わせたが、とても即興とは思えないくらい3人の呼吸はぴったりだった。

「これで、樹京に来た甲斐がありました。ほんの少しでも、誰かのお役に立てたのなら……こんなうれしいことはありません」

 【天津舞い】を披露し終えた小明の晴れやかな表情は美しく、オンバシラへ向かう男性たちをどぎまぎとさせている。

「待て、伏せろ!!」

 鬼月が声を上げる。
 ――鎧武者のような何かが1体、ぬるりとこちらへ向かって来た。
 土人形だった。
 慌てふためいた人々が立て続けに転び、辺りは騒然とした空気に包まれる。

「ったく、せっかくの舞を台無しにしてくれやがって……」

 舞の様子を見守っていた不知火 和夢は、誰よりも速く【忍び足】で土人形に近づくと、【極火二刀】で頭から体を真っ二つに斬った。
 だが、すぐさま次の土人形が現れ、気がつけば舞芸者たちは周囲をぐるりと取り囲まれてしまっていた。

「なめられたもんだな……」

 チッと舌打ちをした和夢は、【忍び二投術】で土人形の背後に回り込み、【開門手裏剣】の後に【飛苦無】を投げて攻撃を仕掛けた。

「【九十九糺し】!!」

 鬼月が和夢に襲いかかろうとした土人形を光の一撃で射貫き、続いて【神鏡の宝鈴】の光条が更に鎧を吹き飛ばした。
 よろよろと傾く土人形を自分の方へ引き付け、【禍ツ閃】で瘴気の一部を絡ませる。

「きき、借りを作る気はないぞ……」

 手裏剣を携えた和夢が、小さな声で鬼月に言った。

「いいから。そっちは土人形に集中してくれ」

「……分かった。でも、……無茶は、するなよ」

「おい、誰に言ってるんだ?」

 鬼月はフッと笑うと、人々を避難させるために通路の確保を急いだ。
 和夢はすぐそばの草むらにしゃがみこんでいた男性を立ち上がらせると、【分身の術】で作った自分の分身を使って、鬼月の近くまで彼を誘導してやった。

「避難誘導はそっち任せだ!――これで貸し借りなしだな」

「了解」

 和夢と鬼月は背中合わせに短い会話を交わし、互いの目的のために別々の方向へ走り出す。
 交わす言葉は少なくとも、そこには揺るぎない信頼関係が確かにあった。
 
「大丈夫か? 見せてみろ」

 転んだことで擦り傷を作ってしまった女性に、鬼月は【祈祷:田之神】で回復を施す。

「応急手当程度にしかならんだろうが、何もやらんよりましだろ」

 女性は鬼月に礼を告げると、樹たちの誘導によってオンバシラへと向かって行った。
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