【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影
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「土人形っていったい何体いるの? きりがないよ……!」
舞芸者たちをフォローしようと、あえかは土人形に【八咫烏の矢】を使って堀へと吹き飛ばし、【祈祷:山之神】によってそこから出てこられないよう封鎖してしまった。
「あえかちゃん、助かる! ――さぁ、今の内に!」
恐怖で足が止まっている人々に声を掛け、早く逃げるように促すツカサ。
「立てますか? しっかりボクの手につかまって」
瓦礫をよけようとしてうずくまっていた小さな少年と、一緒にいた身重の女性を助け起こしてやった。
「すみません――私のせいで、この子が逃げ遅れてしまったんです……」
「大丈夫ですか?慌てないで落ち着いて避難してください」
ノイとツカサは女性をゆっくり起こしてやった。
ツカサはそっと彼女のお腹に手を当て、
「……うん、もう大丈夫。この子も大丈夫だからね」
優しく声をかける。
笑顔で穏やかな表情のノイとツカサを見て、震えていた少年は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「少年、お母さんと赤ちゃんはキミが守ってあげてね? 土人形はボク達が倒すから、2人を安全な所までお願い」
「わ、分かった!」
少年と女性は親子ではなかったが、少年にあえて役割を与えることで恐怖よりも誰かを守るという思いが勝り、一歩前へ踏み出すきっかけとなっただろう。
「これあげる。元気になれますよ」
ノイは少年に【桜餅】を手渡してやると、避難先でみんなと一緒に食べるように伝えた。少年は更に張り切った様子で、女性の手を引っ張って行く。
念のため、辺りを捜索する警邏たちに彼らの護衛を依頼し、出来るだけ自分たちの力で自分たちを守るようにとツカサは声をかけていった。
「……少年は大志を抱きますね。頼もしいことです」
後ろ姿を見守っていたノイは、自然と笑顔になっていた自分に気づく。
「ボクたちがいないと、何もできない人になっちゃダメなんだ。自分たちでできることは、自分たちでする。どうしてもできないことは、遠慮なく誰かに頼る――生きてく上で、役割分担って大事だよね」
そんな会話を交わしながら、ツカサとノイは襲いかかってきた土人形たちを次々と蹴散らしていった。
「まだ残っている方はいませんか?」
人々を安全な場所へと誘導するノイとツカサの姿に、あえかは勇気づけられるのだった。
決して多くは語らないが、リリィも力の限りを尽くして人々を避難させていった。
【影縫い】は実に効果的で、無駄な体力を消耗せずにより多くの土人形を足止めすることができたため、人々が逃げるまでの時間稼ぎをするにはまさにうってつけだった。
舞芸者たちがさほど疲労を感じずに攻撃と誘導に専念できたのは、リリィの存在があってこそだ。
共に協力し合い、1人1人が自分でできることを精一杯やる。
そうすることで最大限の効果を発揮することができるのだ。
「助かった……! ありがとう、あんたらには本当に感謝してもしきれないよ!」
ほっと胸を撫でおろした人々は、何度も舞芸者たちに頭を下げる。
「当然のことをしたまでです。というか、実はあの土人形は人々から忘れられて祀られなくなったせいで、怒っている神様なんです。わたしは、その怒りを鎮めるための社を作りたいのですが……どこかにいい場所を知りませんか?」
命の恩人の1人であるあえかの申し出を、やすやすと断ることなどできない樹京の人々たちは、小さな社をあつらえるのにぴったりの場所へと彼女を案内した。
「待っててくださいね……今、楽にしてあげますから」
あえかは【桜樹の棒】を組んで鳥居を作ると、【ピカピカステージ】で祭壇をきれいに整え、【神拍子】を使って全体を清める。
「穢ノ神であろうと、わたし達の故郷では分け隔てなく同様に祀り讃える神様なのです。巡りが悪く、戦う他ない状況でしたが……どうか、その怒りをお鎮めください」
一礼をしてから、あえかは天と地を結ぶ【天綴の舞】を静かに舞い始めた。
「神様達の確執は、そう簡単に解消されるものではないでしょう。ですが、舞芸を通じて人と神様の仲を取り持てる可能性が残されているのなら……わたしはそれに賭けてみたい……」
静かに歌い始めた【御詠歌】は、今にも淀んだ空気が浄化されていくかのようだった。
舞芸者たちをフォローしようと、あえかは土人形に【八咫烏の矢】を使って堀へと吹き飛ばし、【祈祷:山之神】によってそこから出てこられないよう封鎖してしまった。
「あえかちゃん、助かる! ――さぁ、今の内に!」
恐怖で足が止まっている人々に声を掛け、早く逃げるように促すツカサ。
「立てますか? しっかりボクの手につかまって」
瓦礫をよけようとしてうずくまっていた小さな少年と、一緒にいた身重の女性を助け起こしてやった。
「すみません――私のせいで、この子が逃げ遅れてしまったんです……」
「大丈夫ですか?慌てないで落ち着いて避難してください」
ノイとツカサは女性をゆっくり起こしてやった。
ツカサはそっと彼女のお腹に手を当て、
「……うん、もう大丈夫。この子も大丈夫だからね」
優しく声をかける。
笑顔で穏やかな表情のノイとツカサを見て、震えていた少年は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「少年、お母さんと赤ちゃんはキミが守ってあげてね? 土人形はボク達が倒すから、2人を安全な所までお願い」
「わ、分かった!」
少年と女性は親子ではなかったが、少年にあえて役割を与えることで恐怖よりも誰かを守るという思いが勝り、一歩前へ踏み出すきっかけとなっただろう。
「これあげる。元気になれますよ」
ノイは少年に【桜餅】を手渡してやると、避難先でみんなと一緒に食べるように伝えた。少年は更に張り切った様子で、女性の手を引っ張って行く。
念のため、辺りを捜索する警邏たちに彼らの護衛を依頼し、出来るだけ自分たちの力で自分たちを守るようにとツカサは声をかけていった。
「……少年は大志を抱きますね。頼もしいことです」
後ろ姿を見守っていたノイは、自然と笑顔になっていた自分に気づく。
「ボクたちがいないと、何もできない人になっちゃダメなんだ。自分たちでできることは、自分たちでする。どうしてもできないことは、遠慮なく誰かに頼る――生きてく上で、役割分担って大事だよね」
そんな会話を交わしながら、ツカサとノイは襲いかかってきた土人形たちを次々と蹴散らしていった。
「まだ残っている方はいませんか?」
人々を安全な場所へと誘導するノイとツカサの姿に、あえかは勇気づけられるのだった。
決して多くは語らないが、リリィも力の限りを尽くして人々を避難させていった。
【影縫い】は実に効果的で、無駄な体力を消耗せずにより多くの土人形を足止めすることができたため、人々が逃げるまでの時間稼ぎをするにはまさにうってつけだった。
舞芸者たちがさほど疲労を感じずに攻撃と誘導に専念できたのは、リリィの存在があってこそだ。
共に協力し合い、1人1人が自分でできることを精一杯やる。
そうすることで最大限の効果を発揮することができるのだ。
「助かった……! ありがとう、あんたらには本当に感謝してもしきれないよ!」
ほっと胸を撫でおろした人々は、何度も舞芸者たちに頭を下げる。
「当然のことをしたまでです。というか、実はあの土人形は人々から忘れられて祀られなくなったせいで、怒っている神様なんです。わたしは、その怒りを鎮めるための社を作りたいのですが……どこかにいい場所を知りませんか?」
命の恩人の1人であるあえかの申し出を、やすやすと断ることなどできない樹京の人々たちは、小さな社をあつらえるのにぴったりの場所へと彼女を案内した。
「待っててくださいね……今、楽にしてあげますから」
あえかは【桜樹の棒】を組んで鳥居を作ると、【ピカピカステージ】で祭壇をきれいに整え、【神拍子】を使って全体を清める。
「穢ノ神であろうと、わたし達の故郷では分け隔てなく同様に祀り讃える神様なのです。巡りが悪く、戦う他ない状況でしたが……どうか、その怒りをお鎮めください」
一礼をしてから、あえかは天と地を結ぶ【天綴の舞】を静かに舞い始めた。
「神様達の確執は、そう簡単に解消されるものではないでしょう。ですが、舞芸を通じて人と神様の仲を取り持てる可能性が残されているのなら……わたしはそれに賭けてみたい……」
静かに歌い始めた【御詠歌】は、今にも淀んだ空気が浄化されていくかのようだった。