【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影
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リアクション
――第一幕は、昼のイメージだ。
明るい照明の下、バラードを思わせる琴の調べが鳴り響き、舞台に【飛翔宝船】が登場する。
船が地上3mくらいので止まると、サクラと別葉・ペアーズが姿を現した。
両手に持った【碧鱗之大扇・真打【妖蝶の大扇】】広げてふわりと飛び降りる。
そしてまるで水面に降り立ったかのようにゆっくりとつま先で着地し、足元には【氷花招来】によって蓮が花開く。
別葉は舞台に降りた途端、【妖怪の色目】を使って観客にアピールをする。
妖艶な視線に釘付けとなった観客たちは、サクラと別葉、どちらも観たいと欲張りな様子だ。
「二兎追う者、一兎も得ずよ――なんてね♪」
観客たちの視線を下から追い越すように真上へ【吃驚化け独楽】を投げ上げ、巨大化させる別葉。
独楽が落ちてきたところへ【古錆びた妖刀】を振るい、【紅月焔唄】を独楽へとぶつけるべく、ギリギリまで引き付け、独楽が消える瞬間に共に炸裂したかのように魅せる。
徹底的に上へと視線を誘導したところで、【氷花招来】が炸裂する。
観客たちは思わず両手で顔を覆ったが、何事もなかったかのように繰り広げられる舞を観て、ほっと胸を撫でおろすのだった。
「大成功♪」
別葉の掴みは上々、さすがのテクニックだ。
サクラが【浮遊身転】で蓮の花の間を舞った後、回転しながら大きく扇を振って光の粒を飛ばす。
そして舞台上をくるくると回り、2人は凛菜とミヤビと入れ替わる。
清楚な見た目とは裏腹にアクティブな一面も持ち合わせる凛菜は、ミヤビと共に舞台へ登場すると、たおやかな舞で多くの観客たちをたちまち虜にしてしまった。
ポーズを決めるたびに拍手が送られ、にっこりと笑って反応を返す凛菜。
第二幕は夕方を彷彿とさせる演出で、観客たちを更に和ませた。
曲調がゆっくりと変化したところへ再びサクラが現れる。
大扇の光の色も夕焼けの茜色に変化し、緩やかな弧状を描いては観る者たちを楽しませる。
茜色を映した蓮の花の周りを回りながら細かく跳躍を決め、サクラは蓮の花の上に着地するとあえて砕いた氷片を散らせる。
氷片を踏むたびに氷の粒が輝き、やがて夜の闇の色へと変わる。
「こんな舞……今まで観たことある……?」
観客席から感嘆の声が漏れ、それは溜め息を伴って徐々に広がっていった。
サクラがしなやかに体を伏せると、再び凛菜が舞い始める。
決められた型をなぞりながらも決して枠にとらわれない自由な動きは、ミヤビでさえもたじろいでしまうほどだ。
だが凛菜は、ミヤビを食ってしまわないように引くべき所では後ろへ下がり、主役はあくまでミヤビであるということを観客たちに伝えるような立ち位置で舞い続ける。
花札とペチュニアの花を持った柚姫が舞台袖から現れ、ミヤビたちと共に舞った。
花は思いのほか効果を奏し、舞台をより幻想的なものとして美しく彩っている。
舞芸者たちが退場すると、場面転換のために3分ほどの休憩が入る。
舞台袖で観客たちの様子を見守るミヤビに、別葉が扇子を突き付け、
「あなた、やっぱり楽しくなさそうだわ」
と言い放った。
「今、楽しいって思ってるんでしょ? だったらもっと、その気持ちを全身で表現してごらんなさい」
「……あなたは、心から楽しいと思っていますか?」
「ええ、私は楽しいわ!! これだけのお客さんがいて、しかもこれだけの舞台だもの! 緊張もするけど……でも、それを乗り越えようとするのはもっと楽しいわ」
「私だって……同じように思っています。多分」
「多分? あなたを信じる人の前で、大切な舞台の上でしょう? そんな仏頂面で、曖昧な態度で、あなたは本当にそれで良いのかしら?」
別葉は少し大げさなくらいに首を傾げて続ける。
「あなたが嫌いな舞武芸者のためじゃなく、舞台を観てくれてるお客さんたちのために、笑ってあげて欲しいわ! 本当に楽しい時、人は誰しも笑顔になるものよ」
――はたして、別葉の言葉はミヤビに届いたのだろうか。
第三幕が始まると照明は全て落とされ、サクラが持つ大扇の光が紺色になる。
鳴り止む音楽――それは、夜の訪れを意味する。
やがて少しずつ大扇の光が明るくなってゆき、ゆっくりだったサクラの歩調が確かなものに変化した。
再び場面が転換し、第四幕へと続く。
夜の後に訪れる朝を表現したものだろうか、曲が元に戻り、大扇の光が少しずつ明るさを取り戻してゆく。
「ポン! そしてロン!」
明るくなったところへ、観客席に和が登場する。
特に【麻雀帷子の着物【菱刺しの着物】】が評判が良く、突然の登場にも関わらず、観客たちから好意的に受け入れられている。
そして、先ほどこっそり練習した天照舞を、ミヤビに続いて披露した。
観客たちは最初、笑っていたが、決して見よう見まねではない和の真剣な表情に少しずつ魅せられていった。
サクラも合流して大きく舞い回り、一礼してその場に跪いた舞芸者たちに大きな拍手が送られた。
「……ありがとう……」
舞台上。
観客には聞こえない小さな声で、ミヤビが口をすぼめて言った。
「……何かおっしゃいまして?」
料理に例えると、ミヤビがメインディッシュとして、凛菜はさながらその味わいをより彩り強く引き立たせる前菜やデザートと言ったところか。
やがてミヤビの舞が終盤に向かうと、凛菜と別葉が【舞神召喚】で天津神々を召喚する。
「まだまだ、休ませませんわよ……♪」
そして【朧芸者の符】で呼び出した4人の幻舞芸者たちと共に舞台で円状となり、そのまま浮遊する【天津舞い】でミヤビの舞を盛り立てたのだった。
ミヤビの天照舞が成功したかどうかは、割れんばかりの拍手がはっきりと物語っている。
「……いい笑顔、やっと出ましたわね」
どうやら、幕間に別葉が言ったことは、ミヤビの心に届いていたようだ。
「あなたたちのおかげです。ところで凛菜さん、あなたはおしとやかそうに見えて、どこにそんな力が……?」
「ふふふ。舞が成功したのも喜ばしいことですが、私は何より、ミヤビさんが無事だったのがとても嬉しい」
屈託のない凛菜の笑顔は、ミヤビの心をまた一段と溶かしたのだった。
舞芸者たちとの舞芸をいくつも経験したミヤビは、息が上がりながらも言い表せないほどの高揚感に胸をときめかせる。
苦痛でしかなかった舞芸が、こんなにも楽しいものだったのかということを生まれて初めて知ったのである。
明るい照明の下、バラードを思わせる琴の調べが鳴り響き、舞台に【飛翔宝船】が登場する。
船が地上3mくらいので止まると、サクラと別葉・ペアーズが姿を現した。
両手に持った【碧鱗之大扇・真打【妖蝶の大扇】】広げてふわりと飛び降りる。
そしてまるで水面に降り立ったかのようにゆっくりとつま先で着地し、足元には【氷花招来】によって蓮が花開く。
別葉は舞台に降りた途端、【妖怪の色目】を使って観客にアピールをする。
妖艶な視線に釘付けとなった観客たちは、サクラと別葉、どちらも観たいと欲張りな様子だ。
「二兎追う者、一兎も得ずよ――なんてね♪」
観客たちの視線を下から追い越すように真上へ【吃驚化け独楽】を投げ上げ、巨大化させる別葉。
独楽が落ちてきたところへ【古錆びた妖刀】を振るい、【紅月焔唄】を独楽へとぶつけるべく、ギリギリまで引き付け、独楽が消える瞬間に共に炸裂したかのように魅せる。
徹底的に上へと視線を誘導したところで、【氷花招来】が炸裂する。
観客たちは思わず両手で顔を覆ったが、何事もなかったかのように繰り広げられる舞を観て、ほっと胸を撫でおろすのだった。
「大成功♪」
別葉の掴みは上々、さすがのテクニックだ。
サクラが【浮遊身転】で蓮の花の間を舞った後、回転しながら大きく扇を振って光の粒を飛ばす。
そして舞台上をくるくると回り、2人は凛菜とミヤビと入れ替わる。
清楚な見た目とは裏腹にアクティブな一面も持ち合わせる凛菜は、ミヤビと共に舞台へ登場すると、たおやかな舞で多くの観客たちをたちまち虜にしてしまった。
ポーズを決めるたびに拍手が送られ、にっこりと笑って反応を返す凛菜。
第二幕は夕方を彷彿とさせる演出で、観客たちを更に和ませた。
曲調がゆっくりと変化したところへ再びサクラが現れる。
大扇の光の色も夕焼けの茜色に変化し、緩やかな弧状を描いては観る者たちを楽しませる。
茜色を映した蓮の花の周りを回りながら細かく跳躍を決め、サクラは蓮の花の上に着地するとあえて砕いた氷片を散らせる。
氷片を踏むたびに氷の粒が輝き、やがて夜の闇の色へと変わる。
「こんな舞……今まで観たことある……?」
観客席から感嘆の声が漏れ、それは溜め息を伴って徐々に広がっていった。
サクラがしなやかに体を伏せると、再び凛菜が舞い始める。
決められた型をなぞりながらも決して枠にとらわれない自由な動きは、ミヤビでさえもたじろいでしまうほどだ。
だが凛菜は、ミヤビを食ってしまわないように引くべき所では後ろへ下がり、主役はあくまでミヤビであるということを観客たちに伝えるような立ち位置で舞い続ける。
花札とペチュニアの花を持った柚姫が舞台袖から現れ、ミヤビたちと共に舞った。
花は思いのほか効果を奏し、舞台をより幻想的なものとして美しく彩っている。
舞芸者たちが退場すると、場面転換のために3分ほどの休憩が入る。
舞台袖で観客たちの様子を見守るミヤビに、別葉が扇子を突き付け、
「あなた、やっぱり楽しくなさそうだわ」
と言い放った。
「今、楽しいって思ってるんでしょ? だったらもっと、その気持ちを全身で表現してごらんなさい」
「……あなたは、心から楽しいと思っていますか?」
「ええ、私は楽しいわ!! これだけのお客さんがいて、しかもこれだけの舞台だもの! 緊張もするけど……でも、それを乗り越えようとするのはもっと楽しいわ」
「私だって……同じように思っています。多分」
「多分? あなたを信じる人の前で、大切な舞台の上でしょう? そんな仏頂面で、曖昧な態度で、あなたは本当にそれで良いのかしら?」
別葉は少し大げさなくらいに首を傾げて続ける。
「あなたが嫌いな舞武芸者のためじゃなく、舞台を観てくれてるお客さんたちのために、笑ってあげて欲しいわ! 本当に楽しい時、人は誰しも笑顔になるものよ」
――はたして、別葉の言葉はミヤビに届いたのだろうか。
第三幕が始まると照明は全て落とされ、サクラが持つ大扇の光が紺色になる。
鳴り止む音楽――それは、夜の訪れを意味する。
やがて少しずつ大扇の光が明るくなってゆき、ゆっくりだったサクラの歩調が確かなものに変化した。
再び場面が転換し、第四幕へと続く。
夜の後に訪れる朝を表現したものだろうか、曲が元に戻り、大扇の光が少しずつ明るさを取り戻してゆく。
「ポン! そしてロン!」
明るくなったところへ、観客席に和が登場する。
特に【麻雀帷子の着物【菱刺しの着物】】が評判が良く、突然の登場にも関わらず、観客たちから好意的に受け入れられている。
そして、先ほどこっそり練習した天照舞を、ミヤビに続いて披露した。
観客たちは最初、笑っていたが、決して見よう見まねではない和の真剣な表情に少しずつ魅せられていった。
サクラも合流して大きく舞い回り、一礼してその場に跪いた舞芸者たちに大きな拍手が送られた。
「……ありがとう……」
舞台上。
観客には聞こえない小さな声で、ミヤビが口をすぼめて言った。
「……何かおっしゃいまして?」
料理に例えると、ミヤビがメインディッシュとして、凛菜はさながらその味わいをより彩り強く引き立たせる前菜やデザートと言ったところか。
やがてミヤビの舞が終盤に向かうと、凛菜と別葉が【舞神召喚】で天津神々を召喚する。
「まだまだ、休ませませんわよ……♪」
そして【朧芸者の符】で呼び出した4人の幻舞芸者たちと共に舞台で円状となり、そのまま浮遊する【天津舞い】でミヤビの舞を盛り立てたのだった。
ミヤビの天照舞が成功したかどうかは、割れんばかりの拍手がはっきりと物語っている。
「……いい笑顔、やっと出ましたわね」
どうやら、幕間に別葉が言ったことは、ミヤビの心に届いていたようだ。
「あなたたちのおかげです。ところで凛菜さん、あなたはおしとやかそうに見えて、どこにそんな力が……?」
「ふふふ。舞が成功したのも喜ばしいことですが、私は何より、ミヤビさんが無事だったのがとても嬉しい」
屈託のない凛菜の笑顔は、ミヤビの心をまた一段と溶かしたのだった。
舞芸者たちとの舞芸をいくつも経験したミヤビは、息が上がりながらも言い表せないほどの高揚感に胸をときめかせる。
苦痛でしかなかった舞芸が、こんなにも楽しいものだったのかということを生まれて初めて知ったのである。