【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影
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【2-3】道遠からん~全四幕
ミヤビが徐々に自分の中で高まってきている「楽しい」と気持ちは、舞芸を見届ける観客たちにも十分伝わっているようだった。
その証拠に、舞芸が始まる前と今とでは明らかに場の雰囲気が異なっており、張り詰めた緊張に包まれていた会場は今や多くの人々で賑わっていた。
「次の舞台が、始まる……」
いまだかつて、ミヤビはこんなにも舞うことが楽しみだと思ったことはなかった。
自分の舞を、見守ってくれる人がたくさんいる。
もしかすると母も、今の自分と同じ思いを抱いたことがあったのではないだろうか――この、楽しいという気持ちを。
「みゃー様ー! わたしに天照舞教えてー!」
落ち着いたところで、今度は目に見えない重圧がのしかかろうとしていたミヤビを和ませてくれたのは天地 和だった。
「て、天照舞とは、一朝一夕で何とかなるようなものではありません」
「だってみゃー様、舞芸嫌いなんでしょ? そんな人に無理やり舞わせれないよ!」
どうやら和は軽い冗談で言ったわけではなく、彼女なりの覚悟があった上での申し出だったらしい。
「天照舞を舞うということが、一体どういうことなのか分かって言っているのですか?」
「もちろん。ほら、なんかの偶然で私が成功させちゃえば、みゃー様は舞わなくて済むじゃん? わたしに舞わせるのは、みゃー様にとっても悪い事じゃないよ!」
「……関係のない人を、むざむざ命の危険に晒すわけにはいきません」
和の真剣な思いはミヤビに伝わってはいたが、和のことを思えばこそ、首を縦に振ることはできなかった。
だが、和もそう簡単には引き下がらない。
「わたしは、自分の力を信じる。だってわたしの目標は、確率33万分の1の天和を毎回引けるくらいのカリスマ麻雀アイドルになって世界を救う事なんだから!」
「確率33万分の1の天和ですって……?」
ミヤビは麻雀のことは分からなかったが、せめて和の好意には報いたいと思う。
だが自身の性格が邪魔をして、素直に和を受け入れることができない。
「今からそこで練習をしますから、覚えたければどうぞご勝手に」
「ほんと!? やったーっ♪」
和は小躍りして、ミヤビが練習する舞の型を真似ながら、短い時間の中で体得しようと尽力するのだった。
「和さんお疲れ様です。ミヤビさん…微力な身ですが、私に出来る精一杯、最大限のお手伝いをさせていただきます。だから、天照舞をみんなで一緒に成功させましょう!」
巫の清楚な緋袴に身を包んだ空花 凛菜が、練習を終えたミヤビと和に優しく声をかけた。
【やんごとなき足運び】は凛菜の立ち居振る舞いをより美しく見せる。
いまひとつ舞芸者は好きになれないミヤビだったが、振る舞いに気品のある凛菜のような舞芸者と話すのは嫌じゃなかった。
「次の舞台は四幕構成になりますが、よろしくお願いしますね。イメージは……水の上です」
八重崎 サクラの構想による四幕の舞台は、ミヤビにとっては初の試みとなるものであった。
「――失敗すれば、私には、死が待っています」
いつもたった1人で舞ってきたミヤビは、緊張に震える。
「……確かに危険なのかも知れないけど、ミヤビさんがやるって決めたんだし、私も止めはしないよ。ただ、一人でやり遂げるなんて思わないでほしいな」
ミヤビの不安をかき消すように、渋谷 柚姫が立ち上がる。
「ミヤビさんが命を懸けて天照舞を舞うのなら、僕たちだって全力でそれに応えたい。舞芸者の力を借りるのが嫌だったらさ、舞芸者以外の人からも力を借りればいいんだからね」
「……舞芸者以外の人?」
「さっ、盛り上げていこ!!」
具体的な演出効果を説明するのは、ミヤビの不安を余計に煽るだけだ。
柚姫は再度、立ち位置や演出手順などを確認してから、颯爽と舞台へと歩いて行った。
「皆さん! 今から披露する舞は特別な舞です。樹京のみならず、この華乱葦原を救うための舞です。この舞を舞う人は、たった一人でこの舞を完遂させようとしていました。ですが、今ここには皆さんがいます。どうか、皆さんの力を貸してください! 彼女と一緒に、この舞を楽しんでください。舞を楽しむ心が、この世界を救う最高の武器になるのです!」
深々とお辞儀をする柚姫に一条の光が照らされ、そして、暗転。
ミヤビが徐々に自分の中で高まってきている「楽しい」と気持ちは、舞芸を見届ける観客たちにも十分伝わっているようだった。
その証拠に、舞芸が始まる前と今とでは明らかに場の雰囲気が異なっており、張り詰めた緊張に包まれていた会場は今や多くの人々で賑わっていた。
「次の舞台が、始まる……」
いまだかつて、ミヤビはこんなにも舞うことが楽しみだと思ったことはなかった。
自分の舞を、見守ってくれる人がたくさんいる。
もしかすると母も、今の自分と同じ思いを抱いたことがあったのではないだろうか――この、楽しいという気持ちを。
「みゃー様ー! わたしに天照舞教えてー!」
落ち着いたところで、今度は目に見えない重圧がのしかかろうとしていたミヤビを和ませてくれたのは天地 和だった。
「て、天照舞とは、一朝一夕で何とかなるようなものではありません」
「だってみゃー様、舞芸嫌いなんでしょ? そんな人に無理やり舞わせれないよ!」
どうやら和は軽い冗談で言ったわけではなく、彼女なりの覚悟があった上での申し出だったらしい。
「天照舞を舞うということが、一体どういうことなのか分かって言っているのですか?」
「もちろん。ほら、なんかの偶然で私が成功させちゃえば、みゃー様は舞わなくて済むじゃん? わたしに舞わせるのは、みゃー様にとっても悪い事じゃないよ!」
「……関係のない人を、むざむざ命の危険に晒すわけにはいきません」
和の真剣な思いはミヤビに伝わってはいたが、和のことを思えばこそ、首を縦に振ることはできなかった。
だが、和もそう簡単には引き下がらない。
「わたしは、自分の力を信じる。だってわたしの目標は、確率33万分の1の天和を毎回引けるくらいのカリスマ麻雀アイドルになって世界を救う事なんだから!」
「確率33万分の1の天和ですって……?」
ミヤビは麻雀のことは分からなかったが、せめて和の好意には報いたいと思う。
だが自身の性格が邪魔をして、素直に和を受け入れることができない。
「今からそこで練習をしますから、覚えたければどうぞご勝手に」
「ほんと!? やったーっ♪」
和は小躍りして、ミヤビが練習する舞の型を真似ながら、短い時間の中で体得しようと尽力するのだった。
「和さんお疲れ様です。ミヤビさん…微力な身ですが、私に出来る精一杯、最大限のお手伝いをさせていただきます。だから、天照舞をみんなで一緒に成功させましょう!」
巫の清楚な緋袴に身を包んだ空花 凛菜が、練習を終えたミヤビと和に優しく声をかけた。
【やんごとなき足運び】は凛菜の立ち居振る舞いをより美しく見せる。
いまひとつ舞芸者は好きになれないミヤビだったが、振る舞いに気品のある凛菜のような舞芸者と話すのは嫌じゃなかった。
「次の舞台は四幕構成になりますが、よろしくお願いしますね。イメージは……水の上です」
八重崎 サクラの構想による四幕の舞台は、ミヤビにとっては初の試みとなるものであった。
「――失敗すれば、私には、死が待っています」
いつもたった1人で舞ってきたミヤビは、緊張に震える。
「……確かに危険なのかも知れないけど、ミヤビさんがやるって決めたんだし、私も止めはしないよ。ただ、一人でやり遂げるなんて思わないでほしいな」
ミヤビの不安をかき消すように、渋谷 柚姫が立ち上がる。
「ミヤビさんが命を懸けて天照舞を舞うのなら、僕たちだって全力でそれに応えたい。舞芸者の力を借りるのが嫌だったらさ、舞芸者以外の人からも力を借りればいいんだからね」
「……舞芸者以外の人?」
「さっ、盛り上げていこ!!」
具体的な演出効果を説明するのは、ミヤビの不安を余計に煽るだけだ。
柚姫は再度、立ち位置や演出手順などを確認してから、颯爽と舞台へと歩いて行った。
「皆さん! 今から披露する舞は特別な舞です。樹京のみならず、この華乱葦原を救うための舞です。この舞を舞う人は、たった一人でこの舞を完遂させようとしていました。ですが、今ここには皆さんがいます。どうか、皆さんの力を貸してください! 彼女と一緒に、この舞を楽しんでください。舞を楽しむ心が、この世界を救う最高の武器になるのです!」
深々とお辞儀をする柚姫に一条の光が照らされ、そして、暗転。