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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影

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【陰陽アイドル大戦】ハレの都にケの巨影

リアクション

「ちょっと甘やかしすぎなんじゃない?」

 次の曲の準備をするため舞台袖に下がった音羽は、桃葉とすれ違いざまに呟く。

「え?」

「舞芸者が嫌いなら嫌いで結構だけど、自分の役目があるんだったら責任を果たせるように自分から動けばいいのに。どうしてみんなでわざわざちやほやする必要があるのかなって疑問に思っただけ」

 音羽が視線を向けているのはミヤビだ。

「協力することで少しでも目的の成功率を上げられるかもしれないのに、その可能性を潰すように反発して馬鹿なの? 自分の感情を優先するの?」

「音羽は相変わらず言い方がキツイな……」

 同じく曲の準備を進めていた圭が、思わず苦笑する。

「……まぁ、でも、本心はミヤビを死なせたくないから……音羽はそう思ってるんだろ?」

「どうかしら。……目的遂行のためなら、自分の感情なんて後回しよ」

 音羽は笑顔になると、桃葉の腕を引いて再び舞台へと踊り出た。
 華乱葦原の空を突き抜けるくらい軽快な【唐紅六訓楼屡】は、会場の熱気を更にヒートアップさせる。
 圭が【朧芸者の符】を使うと、幻の舞芸者たちが4人現れ、桃葉と音羽のパフォーマンスをサポートするべく思い思いに動き回ってくれた。

「幻でも楽曲の演出に最大の効果あり……使いようによってはどんな舞芸にも化けるな」

 効果を十分に確認することができた圭は、頭の中で改良点などを的確にまとめ上げ、すでに次の舞芸ではどう展開させるかを構想しているように見える。
 常に新しい方向性を見出そうとする圭の姿勢は、舞芸者でなくとも見習いたいところだ。
 猛々しいリズムが響き渡り、熱気に包まれた観客たちは腕を振り上げて舞芸者たちを鼓舞し続けた。

「いきなりインパクトありまくりだけど……出しちゃう?」

 桃葉が「今だ」と感じたタイミングは、音羽も圭も同じだったようだ。

「いつでも準備オッケーよ!」

「……今だ!」

 圭が合図を送り、2人の呼吸がちょうど合ったところで、【舞神召喚】を発動する桃葉と音羽。
 どこからともなく現れた天津神々が観客席から舞台上へと交互に移動し、観客たちを恍惚の域へと誘った。

「不器用だから、探してるのかも知れないね。自分には、一体何ができるのか……って。そのお手伝いを、みんなはしてるだけなのかも!」

 桃葉が【麒麟】を呼び出し、音羽と共にその背に乗ると、2人は全身で風を感じながら上空へと上がっていく。

「それ、ミヤビの話?」

「うん。本当は、どう甘えればいいのかも分かってないんじゃないかな?」

「見た目だけじゃなく精神的にも子供なのね」

「私たちが教えてあげるしかないのかも。舞芸が……どんなに楽しいものなのかを」

「……ほーんと、手がかかる子供よね」

 音羽が十分に納得できたかどうかは分からないが、少なくとも、舞芸で観客たちを楽しませようとする気合いと意気込みは本物だった。
 圭がミヤビの方を見ると、先ほどよりも更に頬を緩ませた表情が目に入る。
 桃葉と音羽も、そんなミヤビの様子を見逃さなかった。

「言葉じゃなくても、伝わるものはある……それが歌なら、舞芸なら尚更。ミヤビ、見てるか……? この観客たちの反応を。僕たちは舞芸者として、この瞬間のために全てを懸けてるといっても過言じゃない」

 割れるような大歓声と拍手は、いつまでも舞芸者たちに向けられていた。
 次の曲が始まると、ミヤビは生き生きとした笑顔で舞台を駆け回る。
 ミヤビをうまく引き立たせるよう、前に出過ぎない撫子の存在感も好感度が高く、あえて動きをずらした独特の舞は、抜群の演出効果を発揮する。
 死と隣り合わせとは到底思えない、凛とした表情に観客たちは少しずつ惹かれていった。
 ミヤビの舞に花を添えるような形で、朱が【夢妖の宴技】で二つの扇を華麗に操りながら踊ると、観客たちからミヤビコールが上がった。
 舞台上のミヤビに万一のことが起こってもすぐに対処できるように、朱は人知れず【手甲鉤】の準備も怠らなかったが、今のところは大丈夫な様子である。
 頃合いを見計らって、【酒鬼乱舞】を使って舞台に炎を躍らせると、観客たちは大歓声を上げた。
 舞台の終焉を飾るのは、【桜花招来】による無数の花びら。
 座って観覧していたはずの客たちは、総立ちになって大きな拍手をミヤビたちへ送る。

「楽しくて、気持ちいい……? これが、舞芸……!!」

 振り返ったミヤビは、朱の姿を探しているようにも見えた。
 だが朱は肩をすくめると、笑顔のまま【忍び足】で舞台から脱出を図ってしまったのである。

「お疲れ様♪ はい、どうぞ」

 体の熱を静めるためにと舞台裏で撫子が用意してくれた餡蜜は、舞芸者たちにとってもミヤビにとっても、忘れられない味となった。
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