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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】ふぇすた座出張ライブ Feat.幽霊!

リアクション公開中!
【陰陽アイドル大戦】ふぇすた座出張ライブ Feat.幽霊!

リアクション

勝負! 越後座 2


 麻雀ライブでステージに上がっていた観客も席に戻り、舞台は青い光に包まれた。
 日下部 穂波は妖怪『磯女』に変装し、全身水浸しでぽたぽたと水滴が垂れるくらいにびしょ濡れな白装束を身に纏い、薄手の羽織を頭からかぶることで顔を見えなくした衣装で登場する。

「みなさんみなさん聞いてくれ。これは女の物語。海の女の物語」

 前口上を名乗ると傾奇帆符でカブキホップであるながらバラード調の静かな調子で謳い上げ始めた。


ある漁村の砂浜に黒髪の長い女がいたんだ
その女はじぃ……っと沖合を見つめているんだ
砂浜には黒髪の女以外誰もおらず、漁師の男はその不思議な女に声をかけた
すると……鼓膜を突き刺すような鋭い声で叫び、こちらに振り向いた


 穂波は被っていた薄手の羽織を脱ぎ去り、隠されていた顔があらわになる。
 全身を水浸しにした水滴によって、髪が顔につき、身体にくっついき、それはそれはおどろおどろしい様相だった。
 口と目元には紅がささり、水滴で流れた紅と合わせて、怖い様相を醸し出す。
 瞳孔は開き、ずるりずるりとステージの前まで這い寄ってくると、恨みを声にして乗せるような形で観客たちに迫っていく。



迫りくるは女の髪!
まとわりつかれりゃもうおしまい
生き血を吸われて引きずり込まれ、土佐衛門のできあがり!



 気迫迫る演技に観客からは息をのむように言葉が出ない。
 傾奇帆符が止まり辺りがしんと静まり返ると、伸ばしていた手を戻し穂波はとしゃんと背筋を伸ばして一礼をした。
 そこにはもうあの磯女の姿はなかった。

 続いて肝を冷やした観客の前に姿を見せたのは笛を持ったすみれと桐山 撫子、そして彩である。

「こんばんは♪ 今夜は桐山撫子とすみれさん、西宮さんの3人で協力して特別な一曲をお届けするよ☆♪ それじゃ、聴いてね。『黄泉の国を超え』」

 すみれが笛を吹きだし、撫子は日本の童謡調に乗せ『黄泉の国を超え』を歌い出す。


柔らかな月の照らす 零れ落ちる雫の川辺
記憶の欠片 童歌 懐かしいあの人は 今
この手に温もりを忘れ 祈りは儚くとも
耳を澄まして 慕う想いは小さな勇気
仄かに灯る蛍火よ 私の願いを届けさせて
命の言霊 形見の面影
何時でも貴方を思い出せる 夜空に高く舞う光
黄泉の国を超え 何時か また 巡り逢える


 ピンスポットですみれの笛を吹く姿を。
 優しく、力強く歌っていく撫子の姿を。
 笛と歌詞に合わせるように踊る彩の姿を。
 それぞれが照らされ静かな調子で曲は進んでいく。

 最後の一音まで丁寧に歌いあげ、ピンスポットはゆっくりと絞られるようにして辺りは暗闇に包まれる。
 それすらも演出のひとつのようで観客からは拍手が鳴り響いた。

 拍手が弱まると今度は太陽の様な眩い光が走りステージの中心に炎が巻き上がる。
 その炎の灯りによって筒見内 小明とすみれが炎を中心に左右に分かれているのが映った。

此れより、高天原と黄泉に境界を設け、分かち保った、古のお伽噺をご披露致します


 その炎を境界線として小明は天津舞いを舞いだし、すみれにも巫の舞いを舞い始める。
 そして交互に浮遊し、奇怪に見えるよう舞を披露していく。
 それは小明を高天原の巫女として、すみれを黄泉の巫女として炎を境にし、対比を表現する意味がある。

神事と怪異、それは決して相容れぬもの


 炎を軸に円を周るように舞を披露し、一周したところで慎太が登場する。

けれど、人は願ったのです。彼らと共存できる道を


 小明とすみれで慎太の両手を左右で取り、3人は一緒に踊りだす。
 踊りに慣れていない慎太をフォローしつつ炎の周りを回っていく。

そうして人を介して、彼らは交わり、一つの地に降り立ちました


 境界線である炎の前で、3人は横に並び観劇していた方に頭を下げ、感謝を述べた。
 炎も消えたステージに今度は枢木 朝が登場する。

「三人の男女が百物語をしている。次で98話目に差し掛かるようだ」

 朝はステージの端に自然体で溶け込むように立ち、ナレーションを入れていく。


妖狐が町で見かけた娘に恋をしました
2人は黄昏時に再会しお互い想いあう仲に


 娘役のすみれと妖狐役の雨宮 いつきにスポットが当てられ、いつきはすみれの手に触れるのにどぎまぎしたり、口を開く時に頬を染めて目を逸らしたり、色恋には奥手な雰囲気を出していく。


しかし、実は娘も人ならざる者だったのです
聞けば悪霊に肉体を乗っ取られてしまったとか


 すみれと入れ替わるように幽霊の演技メモで思い切り雰囲気出している悪霊役の朝霞 枢が登場すると悪霊らしく荒々しい動きをしてみせる。
 それを見たいつきは桜樹の木刀を手に力強い瞳で睨みつけた。


彼女の体を取り戻すため、深夜に家へ忍び込みます
大戦闘の末、悪霊を打倒し身体を取り戻します
しかし、奪われてから何十年も経っていた肉体は魂が戻ると共に崩れていきます


 桜樹の木刀を振るいながら蛍火舞いでいつきの動きに合わせ、、蛍火のような仄かな光が剣閃を描き枢を斬りつける。
 枢は倒れ、後ろにすみれが姿を現すとすぅっと消えていった。


妖狐は心に決めます
彼女の生まれ変わりを待とうと
今でも妖狐は娘を待ち続けているのかもしれません


 いつきは消えていったすみれの方を見上げると、ひとつ頷き舞台袖へと下がっていく。
 舞台袖に戻った枢といつきは次の衣裳に着替える。

「次は99番目。しっかりと見続けてほしい」


あるところに悪霊退治を生業とする青年と相棒の幽霊の少女がいました
ある日、退治屋の元に悪霊退治の依頼が舞い込みます
渋い顔をして渋る相棒……しかし、何かを決意したように承諾します


 今度は悪霊退治屋の青年となったいつきと、その相棒のすみれが舞台に上がった。
 あまり愛想は良くないけれど心根は優しい……そんな人物を演じるいつき。
 すみれはそんないつきを優しい眼差しで見つめている。

 スポットライトがいったん消え、また灯るとそこには化け提灯が大きく裂けた口でいつきに迫り、すみれの方は鬼火の人魂が襲いかかってきた。
 いつきは悪霊役の枢に飛炎と鬼火で炎を舞わせ、それと一緒に自身も舞うように戦っていく。


なんとか悪霊を退治しましたが、同時に相棒の身体も薄れていきます
実は、この悪霊は相棒の半身だったのです
青年と一緒にいたい一心で、自分の悪の心を切り離し封印したモノがこの悪霊なのでした
ずっと慕っていたという本心を伝え消えていく相棒
朝日が昇り、そこには肩を震わせる青年だけが残っていました


 いつきに抱きしめられ、いつきに手を伸ばすすみれ。
 徐々に身体は透けていき、消え去ると桜の花弁が舞い上がり上空へと消えていく。
 ひとり残されたいつきは涙は見せずに、けれど肩を震わせている……そんな最後まで素直になれない人を演じた。

「これが100番目。最後はどのような結末が待っているのだろうか」


幼馴染二人が肝試しへ


 幼馴染の役は枢といつき。
 枢は華のかんばせでいつきの方を見つめ、いつきも照れつつも笑いかけている。


途中で本当の幽霊に襲われます
1人だけで逃げてと少女は言いますが、少年は意地でも女の子を連れて逃げようとして……


 すみれが2人を怖がらせるように迫ってくると、今まで枢の後ろにいたいつきが前に出た。

「ボクだけ助かっても意味がない、君が一緒じゃなきゃダメなんだ!」

 はっきりとそう言い、いつきは枢を守るようにすみれに挑みかかる。


実は襲った幽霊はご先祖様
進展しない二人の仲を取り持ったのでした
やれやれ、これで我が家系も安泰だ
などと笑って見つめるのです


 100の物語が終わり、すみれがろうそくを消して舞台がダークアウト。
 ほんのり灯りが戻った時には枢もいつきもすみれも誰もいなかった。
 朝はそんな誰も居なくなった空間に言葉を落とす。

「これで百物語は終了。一体どこまでが夢か現か……それは見ていた者にしか分からない」

 朝のスポットライトも消え、ステージには誰も居なくなってしまった。
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