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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

【陰陽アイドル大戦】ふぇすた座出張ライブ Feat.幽霊!

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【陰陽アイドル大戦】ふぇすた座出張ライブ Feat.幽霊!

リアクション

片割れを求めて 2


 真蛇の祈祷という方向性を失いながらも穢ノ神は元の身体に戻るという気持ち一つでまっすぐに障害物などものともせず飛び続ける。
 桜稜郭の中心部からは外れていくが、大きく方向転換するわけでもなく今もなお桜稜郭へ向かっているのには変わりはない。
 城壁内からは囃子の音が聴こえ、越後座との御前披露が繰り広げられていることが耳で分かる。

「あの腕がどうすれば止まるのかわからないけど、手を拱いて見ている訳にはいかないよね」

 城壁前に防衛線を張っていた梧 双葉は穢ノ神の腕を目視すると琴弓をクイックドローで素早く連続で撃つ。
 巫の弓矢に勢いがそがれる腕に向かって桃城 優希は身の丈を超える大きさをした幅広の刀、鍛練用・逆刃斬鬼刀【段平刀】を振るう。

「ここが最終防衛地点なんだ。ここから先には通さん!」

 双葉の矢に怯みながらも矢を拳で折るように殴りかかる穢ノ神の腕。
 優希は穢ノ神の腕と正面にならないように立ち回るが横2メートルもある腕からは距離が取れずに当たりそうになってしまう。
 とっさにパームカウンターに切り替え、腕の勢いを受け流すが受け流しきれずに数メートル程吹き飛ばされてしまった。

「優希! よくも……芸器に宿る愛しき神よ、悪しき穢れを祓いたまえ!」

 アリサ・ホープライトは夜桜六絃琴で神愛【曲:十八番バラード】のバラード、天下御免羅舞存句を歌い出す。


どれほど想いを募らせようと、触れることすら叶わない
ならばせめてこの想い、唄に乗せて贈りましょう
神まで届け愛の言霊

その想いに応えたくとも、伝えることは叶わない
だけどせめてこの力、貴方の為に振るいましょう
巫まで届け愛の閃光


 葦原と地球の服職人によるブランド『すぱいしぃ・きす』の衣裳であるてふてふ・ばいおれっと【れっど・ろまんす】に孔雀の袖飾りがあしらわれ、宙に光の蝶を舞い描いていった。
 堂々と演じられる天下御免の和風ラブソングに夜桜六絃琴に宿る九十九糺しが発動し、傾奇奢宇斗で叫ぶような音の弾丸に穢ノ神の腕はびくりと震え動きを止める。

「まだまだ! こっからだ!」

 吹き飛ばされた優希が再び穢ノ神の腕に挑む。
 誰何心眼で月明かりが陰っても心眼で位置をとらえ攻撃を当てていく。
 鍛練用・逆刃斬鬼刀は重く取り回しが悪いが叩きつけて斬る動作に優れており、幅広の刀身にはミルキー☆プリンセスの恋とアリスの手により「無敵」の文字が彫られているそれで叩きつけるように大振りに振るう優希の援護に入るように千夏 水希は城壁から腕に飛び乗り、忍びの心得をもって苦無で登攀していった。

 舞忍装束を少し緩めてレザーブーツの紐を絞めて動きやすくしたスタイルで登っていく水希。
 穢ノ神の腕も苦無の突き刺さる痛みがあるのか水希を振りおろそうと震えあがるが、それでも振り落とされないように急いで肘のほうに移動していく。

「『こけら落し』の陰陽師は水脈を狙い、この腕は自身の躯を得るために行き着く先は、あの巨大な桜か。桜がないとお酒が不味くなるでしょう? 鬱陶しい。干からびて土くれに戻れ」

 肘の方まで向かうと魔喰の花の枝【カニバリスタッフ】を突き立て、魔喰の花の枝は根を下ろすように齧りつく。
 生物を喰らう植物モンスターを培養した挙句、接木とかして大変なことになった花の枝から作られた杖は齧りついた場所から栄養を吸収し水希へとエネルギーを還元していった。
 しかし穢ノ神の腕の栄養を絞りつくそうと突き立てた魔喰の花の枝であったが、穢ノ神は弱るそぶりを見せない。

 穢ノ神の腕は九十九糺しからの怯みを振り払うように暴れ、腕に齧りついている水希も煩わしいのか暴れる力はとても大きい。
 そんな危険極まりない兵器といっても過言ではないソレに向かってリリィ・エーベルヴァインはバスタードソードを両手で持ち大きく振りかぶって思いっきり振り下ろした。

「……これ大き過ぎて、効いてるかどうか……良く分からない?」

 双葉も城壁から琴弓をクイックドローを続け、優希も鍛練用・逆刃斬鬼刀を振るう。
 三者三様の武器を手に果敢に挑む仲間たち。

 怯みから脱した穢ノ神の腕が大きく振りかぶって邪魔をする彼らを吹き飛ばそうとしてくるのをリリィがブロッキングに入るように構える。
 アリサはそのリリィを守るように祈祷:山之神で光の網を張って守りを強くするものの、リリィはほとんど吹き飛ばされる形で地面をすべり、起き上がるのもやっとのことだった。

「まだ……まだ」
「無理はしないで!」

 ボロボロのリリィにアリサは桜之神祈りを捧げ、傷を癒す。
 穢ノ神の腕にもし声帯があったら咆哮を上げていただろう。
 腕に寄生する水希を煩わしく思った穢ノ神の腕は城壁に向かって水希を押しつぶしにかかった。

「我が闇は星を蝕む闇。たかだ大地の一つや二つッ!」

 水希は城壁に当たるわずかな時間にマナエグザートでマナを活性化させダークネスをぶつける。
 しかし穢ノ神はひるむことなく向かってくる。
 勢いよく押し潰された水希を再び穢ノ神の腕が今一度叩き潰そうと上空へ上がった腕と水希の間にリリィがブロッキングで立ち塞がり代わりにリリィがダメージを負った。

「うっ……」
「どうして……っ!」
「守りたいから。ただ私のお気に入りのスポットを壊されたくないだけ」
「でも、だからと言って……」
「早く止めよう。これ以上被害を止める為に」
「そうね。……もう一度やるわよ! 覚悟しなさい!」

 穢ノ神の腕は桜稜郭の中心部へ自分の半身を求め、邪魔な城壁を破壊しようと拳を上げる。
 リリィの言葉に胸を打たれたアリサは傾奇奢宇斗で夜桜六絃琴をかき鳴らし叫ぶような音と共に天下御免羅舞存句を歌いあげ、双葉もクイックドローで素早く矢を取り出すと同時に二連撃を行い穢ノ神の腕を怯ませた。

「これに全てを賭けるわよ!」

 傾奇奢宇斗に九十九糺しを乗せ穢ノ神の腕は城壁の手前で急停止。
 動きが止まった腕に畳み掛けるように弓で刀で傷を作っていく。
 ここまでの間に穢ノ神の腕を止めようとした他の仲間が作った傷もあり、ここで止めてみせるといった気迫迫る想いで一矢一矢、一打一打射抜き、斬り伏せ傷を増やす。

「……冷やしてから温めると物が壊れやすいと効いたことがあるけど効く?」

 すでに立つこともできないリリィであるが、それでも射程へと入り込み氷丸招来で氷のつぶてを打ち出し、鬼火で焼いていく。
 息つく間もなく攻撃の手を緩めない彼らの攻撃に先程なら九十九糺しを無理やり振りほどいていた穢ノ神の腕も動けないでいる。
 それに気付いた優希は大きく飛び上がった。


「これで終わりだー! 天地! 双閃ッ!!」


  鍛練用・逆刃斬鬼刀に陽の気をはべらせた一撃の直後、陰の気をはべらせ、追撃を行う侍の奥義の一つである天地双閃。
 光と闇の連撃に穢ノ神の腕震えそのまま動かなくなると霧散するように宙に消えていった。

 神の腕ともいえる威圧感も消え、桜稜郭からは囃子の音が絶えず聴こえてくる。

「終わった……?」
「あぁ。終わったんだ」
「……ッやった! 私たちは桜稜郭を守れたんだ!」

 ようやく破壊神の進撃を止められたことを実感する彼女たち。
 穢ノ神の腕によって深い傷を受けながらも誰一人欠けることなくこの場に居ることに喜びを感じる5人。
 それもここまで来るのに何人もの巫たちの足止めがあってこそ。
 一部の壁はボロボロにされてしまったが、桜稜郭の人々に被害はない。
 それは聴こえてくる囃子の音が証明する。

 人一倍傷を負ったリリィと水希にアリアは桜之神祈りを捧げ少しでも痛みを取り除こうと助力し、己の足で立てるまでに回復した2人を支えるように桜稜郭の中へと入った。
 今はただ傷を癒すことに専念した方がいいだろう。
 越後座との勝負は舞台に立つ者たちが決着をつけてくれるのだから。
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