【陰陽アイドル大戦】ふぇすた座出張ライブ Feat.幽霊!
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黄泉の瘴気と陰陽師 2
黄泉憑きたちを倒していく仲間がいるが、それでも墓地には水が湧きおこるようにうじゃうじゃと黄泉憑きの骸たちが人里へ降りようとゆっくりとした動きで広がっている。
そんな不気味な空間へと突っ込んでいった死屍累々のメンバーはこの波のような大群を切り開かねば宝物庫へは行けないと直感した。
「ちょうど、ふぇすた座も御膳披露してる時間か……」
「よーし天河、行け! お前に決めた!」
「え? マジで? マジでやんの? 蒼砥何でそんなノリノリなの!?」
安西 蒼砥にビシッと名指しされた天河は黄泉憑きが甦った際にひっくり返し、積み重なった墓石の上に立って仁王立ちになる。
蒼砥の反応に鳴水立 輝海も思わずツッコミを入てしまうのも無理はない。
「俺様も大暴れしてやるぜ!」
ギャイィィィーン! と派手に月と桜の雅なプリントされた夜桜六絃事を掻き鳴らし骸たちが天河の方へ振り向く。
「立つな! 墓石の上はやめとけ罰当たりだろ!!」
「お前ら死んでいるか!」……うーっ?
「無視かい!?」
「昇天したいか!」……ウーッ!
天河の言葉が分かっているのかいないのか、天河と黄泉憑きたちのコールアンドレスポンスが繰り広げられる。
そのやりとりに感動した天河は炎天却火で太陽の様な眩い光を一瞬炸裂させ、実際の燃え盛る炎を墓石の周りに吹き上げると傾奇奢宇斗で絶叫した。
「……行くぜ! 炎獄死霊六訓!」
「お前それでいいのかサバ天……。あぁ、楽しそうだな!! 楽しそうで何より!!」
誰も輝海のツッコミには返事がないが、天河による黄泉憑きの骸たち相手に瘴気を打ち払う炎獄死霊六訓【曲:祭りのロック】で即席ライブが始まる。
デスメタルな夜桜六絃琴の歪んだ音を強調した、アグレッシブな音楽は天河の酷い声と合わさり逆に死霊感を醸し出す。
音に引きつけられるように黄泉憑きは天河に集まってきた。
「接近戦はなにがあるか分からねぇしな」
「ちゃっちゃと行きたいし、進行に邪魔な骸だけ倒しとこーぜ」
ライブをする天河を囮に蒼砥は氷丸招来で拳大の氷のつぶてを作って撃ち出し、輝海は氷刃乱舞で無数の小さな氷の刃を生み出し、広範囲をなぎ払う。
アリアも神桜の大幣に宿る九十九糺しの力を借り、付喪神の放つ清浄な光の一撃で攻撃する。
「アンコールしてる余裕はねぇよ。ちょっあっ、引っ張るな!」
絶対音感と正確なリズムを誇るが、マシンボイスの歌は聞くに堪えないと言われ続けた天河であったが黄泉憑きの骸たちへのライブは異様な盛り上がりを見せ天河へと集まっていく。
天河のライブという囮に集まった骸たちへ蒼砥がさらに鬼火を投げ、それと同時に炎天劫火が人一倍吹き上がり炎獄死霊六訓が終演を迎える。
「おっしゃー! 行くぜぇ!!」
「どけどけどけぇーっ!」
炎獄死霊六訓を歌い終わった天河は段平刀を抜刀薙ぎ払いで抜刀と同時に大きく身を翻し、一気に敵を薙ぎ払い道を切り開いた。
天河は宝物庫へと続く黄泉憑きの群れを次々に段平刀で薙ぎ払い、それでも穴を埋めようとしてくる骸に天地双閃で刀に陽の気をはべらせた一撃の直後、陰の気をはべらせ、追撃を行い蒼砥たちを宝物庫へと導いていく。
「邪魔なやつらはコンポジットボウの餌食だよ? ……なむさん!」
エステル・エルウィングは天河の打ち漏らしをコンポジットボウで後方からホークアイでよく狙って進行に邪魔な討ち漏らしを始末しながら進むと、エイリル・プルフーが雷丸招来で雷の玉を放ち進路を広げた。
「みなさん、背後はあたしに任せて先に進んで下さい!」
「ありがとう! 後ろは任せるから、一緒に行くわよ!」
「はい!」
前方を天河の段平刀とエステルのコンポジットボウで切り開き、後方をエイリルが守りながら6人は宝物庫を目指す。
彼らの目指す宝物庫の周辺は墓地の周辺よりも瘴気が濃く黄泉憑きの数も多かった。
界塚 ツカサと加賀 ノイはなんとか宝物庫の近くまで来れたが、前に進むのも後ろへ後退することも難しい状況へ陥っていた。
「あの陰陽師の祈祷を止めたいし、何故こんな事をしたのか聞きたい所だけど、こんなに数が多いんじゃまさに四面楚歌ってところだね」
「もしくは前虎後狼でもいいかもしれませんが、骸は土に還しましょう」
ツカサは群がる骸に向かってアクア・スパイクの水球を前に向かって破裂させ、釘状の水弾を至近距離に撃ち出して目の前を一掃させると、倒しきれなかった骸を琴弓で射ることで数を減らしていく。
ノイは鬼火で骸を燃やし尽くすのを基本にしているが、少しでも効率のいい方法がないかと氷丸招来やマナ・バレットを打ち出したり、土蜘蛛の熊手を振るって弱点属性を探っていった。
「うーん。僕の攻撃はどれも普通って感じがします。ツカサさんの攻撃は全体的に効いている所を見ると巫のスタイルが有効なのかもしれませんね」
「だったら弓メインに切り替えだね」
「ツカサさんのことは僕が護ってみせます!」
ノイが死んだ土蜘蛛の顎と腹を使って作られた杖状の呪具である土蜘蛛の熊手で足下をすくい上げ、ツカサが琴弓で射抜いていると死屍累々が墓地の方からようやくここまでたどり着く。
「おっと!?」
「あの墓地からここまで来たんだね、お疲れ。宝物庫まであと少しだよ」
「そーなのかー。もうひと頑張りだね」
「僕たちが殿になります。みなさんは宝物庫へ行ってください!」
「あたしもここに残ります! 3人の方がより守りが堅くなりますから!」
「わかった。あなたたちも無理しないで! さぁ、行くわよ!」
アリアの音頭で今まで共に進んでいたエイリルを残し、死屍累々のメンバーは宝物庫へと急ぐ。
同時刻、死屍累々が目指す宝物庫の屋根裏へと隠れ身の術を駆使して世良 延寿が忍び足で走っていた。
空からはカムイ【陽魂の幻獣】の陽気を取り込み、飛翔する妖怪の力を目覚めさせた火澄 悠が陽気:妖翼を羽ばたかせ宝物庫へと一直線に飛んでいく。
「やれやれ、せっかく気分良く桜の元で寝てたってのに……桜稜郭にはオレのお気に入りの寝床も昼寝スポットもあるんだよ、そいつを壊させるわけにはいかねーぜ? 素性は知らねーけど、オレの眠りを邪魔するってんならその正体暴いてコソコソとふざけた事できないようにしてやるぜ……」
「ふふ、悠ってば口ではイヤがりつつなんだかんだアタシのやりたい事も手助けしてくれるしね。これはもう一押しでアタシの事認めちゃうんじゃない? よーし、張り切っちゃおう~♪」
昼寝の邪魔をされつつも最終的にはリーゼロッテ・リスタリアのやりたいことを叶えてしまう悠はボルト・バレットで雷の弾を生み出し、それをぶつけて道を作る。
地上ではリーゼロッテが伝馬に乗って悠の邪魔をする飛行生物の黄泉憑きをコンポジットボウで射って落としていった。
「頼むぜ、カムイ……頑張ったら後でご褒美をやろう……」
「ふふ、アタシの狙いからは逃げられないよ~?」
ホークアイで遠くの標的を正確に捉え、コアチェックで弱点を見抜いて正確な射撃を心がけ悠の進撃を援護していく。
そうして辿り着いた宝物庫の前。
そこには既に呪われた木遁人形【木遁人形】 を身代わりに行坂 貫が影縫いで黄泉憑きの骸を足止めし、戸を開かずに中へ声をかけていた。
「陰陽師ってことは半妖だよな? 真蛇って言うぐらいだから蛇なのか? 体のどこかに鱗とかあるのか? まあ、返事は期待してないけどな」
禍々しいまでの瘴気を溢れさせる宝物庫を前に貫は言葉を重ねていく。
「桜稜郭を狙うのは何でだ? お前の執着してる誰かか何かがあそこに居たりするのか? それとも目的の達成に必要な何かがあそこにあるのか?」
戸の向こうから返ってくる言葉はない。
知りたいことなのに、向こうの言い分を理解したいのに、戸が開くことはなし。
まるで天岩戸のようである。
「聞いてくれないのか……俺の言葉は届かないと言うのか……。頼む、少しでいい俺の言葉を聴いてほしいんだ」
「そんな悠長なことをしてたら外で戦っている仲間がやられちゃうかもしれないじゃん! 時間的猶予はないんだよ。訊きたかったら中に入ってからにしてよ! もう!」
屋根裏を忍び足で走っていた延寿が天井から降りて貫を説教すると、宝物庫の戸へとアクロバットキックで蹴破って内部に突入する。
「おいおい。祈祷を止めたところで穢ノ神が止まるわけではなく、目的地を見失って見境なくなる方が危険だとは思わないのか」
「ちゃんと穢ノ神の方も対応してくれる人がいるから大丈夫だって信じてるもん」
「そうか。そう思うなら俺は何も言うまい」
貫は延寿がそこまで言うならと身を引いて中へと入っていく。
室内は暗くその奥でこちらに背を向ける形で真蛇は小さな神像に祈祷していた。
「そこまでだよ、おとなしく降参しなさい!」
延寿はそう言って飛苦無を真蛇に向かって放つ。
それは真蛇を守る盾の結界術により阻まれ、カラリと飛苦無は床に落ちた。
「私の神聖な行いを邪魔立てするのは何者か」
「神聖? こんなものが神聖な行いなわけないでしょ! 桜稜郭を破壊しようとしてることを素直に認める訳にはいかないよ」
ゆっくりと振り返る真蛇を真っ直ぐな目で見つめる延寿。
そこへ悠が宝物庫の中へゆったりと緩慢な動きで入ってきて頭をかきつつ口を開く。
「おす、引きこもりの仮面にーちゃん……。鬼と屍の百鬼夜行ライブはオシマイだぜ……? こんなつまんねー【ノイズ】だらけのライブじゃ観客のリスペクトなんざもらえねーっての……」
「くだらんことを……私は私の信じる行いをしているまで。邪魔をしているのはあなた方だ」
「邪魔もしたくなるっつーの。昼寝の邪魔だけじゃなくこんな誰もリスペクトしないようなライブを聴く側にもなれっての」
悠はアイドルやライブに関係する単語を散りばめ真蛇がアイドルの関係者かどうか注意深く探っていくが、思ったような反応は得られない。
どうやら地球のアイドルとは違うようである。
では誰か。
それを知るためにはもっと真蛇と会話をする必要があった。