【初夏の大祭典!】フェス×フェス2029
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リアクション
■キュート部門【4】
「今日は猫さんの格好でアニマルライブだにゃーん♪ フーちゃんとクーちゃんも、一緒にがんばろうね!」
ライブに合わせ、猫っぽさを前面に出した衣装を身につけた虹村 歌音が星獣フーと星獣クーとじゃれていると、着替えを済ませたウィリアム・ヘルツハフトがやって来た。
「あっ、ウィルさんは犬さんだね!」
「サーカスのために働くのだ犬よ! ……なんてね、にゃははっ」
「…………狼だ、と訂正させてもらおう。嫌な予感はしていたが、やはり動物に扮して出る羽目になったか」
やれやれ、と頭を抱えつつもやるからには全力でやらねばな、とウィリアムが覚悟を決めたところに、アレクス・エメロードが悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「シャロは軽業は昔っからすごいんだが、動物使いが荒くてな。入学当初は動物に避けられてたんだったか。
ウィリアムも覚悟しとけよ? 天井突き抜ける勢いで放り投げられっから。けけけ」
「ひっどーい! ボクそこまでしないよ? ……あっでもウィリーちゃんならちょっとくらい」
「お手柔らかに頼む」
先んじてウィリアムがシャーロット・フルールの目論見を封じ、シャーロットはむぅ、と頬を膨らませた。
「くくく、怒んな怒んな。可愛さアピールが台無しになんぞ♪」
小馬鹿にした口調だが、その時だけは特殊な波動を言葉に乗せていた。
「……しょうがないなー。可愛いって言われたからには、がんばるしかないなー」
「おう、しっかりやんな。サポートはお前のディーヴァがしてやるからよ。めいっぱい楽しんでこい」
シャーロットとアレクスの素直なのかそうじゃないのか判断の難しい、でもきっと一番気が合っている関係を、歌音とウィリアムが微笑ましく見つめていた――。
「入学当初の、ボクの夢。とびっきり楽しくて賑やかな、最高のアニマルサーカス。
“リトルフルール”」
ステージの中央に立ったシャーロットが、物心ついた時から思い描いていた光景。
「この三年で磨き上げた軽業、曲芸、動物使い……仲間との絆」
今ならそれを、現実に体現することができる――その確信を得て今、最高の舞台を顕現せんとする。
「その全てを、ここで出し切る☆」
ステージ中央に生まれる命の大樹、そこから広がる森の世界はステージを飛び越え、観客席までも侵食していった。伸びた枝葉には光の糸が縦横無尽に張り巡らされ、糸を伝って自由な移動ができるようになっていた。
「ようこそお客人♪ ボクたちの妖精郷へ!
たくさんの森の仲間が歓迎するよ☆」
シャーロットの声を合図として、歌音と神獣アルカ、ウィリアム、アレクスと、クーとフー……と無数の狐と小鳥が糸を伝って駆け、羽ばたいて会場中に飛んでいった。
「一匹、二匹じゃリトルフルールのライブにゃ、物足りねぇからな! やるなら徹底的に、だ!」
アレクスによって出現した大量の動物たちは、実際には存在していない幻。しかし観客にはあたかもそこに居て、触れることのできる存在として認知されているし、星獣がくぐると音が鳴るフラフープにもちゃんと反応する。
(命溢れる妖精郷、童心に還る魂の遊び場。
……そのサポートを機械の俺がしてんのが、なんかくるものがあるな)
半ば無意識に、アレクスが胸に手を当てた。それはディーヴァにとっては何ら意味のない行動。
(シャロにとっちゃ、俺も立派な命だった訳か)
けれど不思議と、あたたかいものを感じるような気がして。――一瞬だけそんなことを思って、照れ隠しに空から大量のふわもこ毛玉を降らせてステージを賑やかす。
「もうすっかり、シャロちゃんとアレクちゃんの世界って感じだね! でも、ライブはまだまだ始まったばかり!
アルカちゃん、行こう! みんなに最っ高のライブを、届けちゃおう!」
歌音がアルカの背に乗り、アルカが一声鳴いて羽ばたき、空へと舞い上がる。そして歌音と一緒になって、ステージから会場全体へ歌を届ける。ステージに残る形になったウィリアムだが、鳴らした音が子猫の姿を取って現れるギターを駆使し、歌音とシャーロットのパフォーマンスを支えていた。ちょうど張り巡らされた糸が、ウィリアムを始点として歌音とシャーロットをつないでいるかのように観客には見えていた。
「……とまあ、いつもならこのまま終わりまで、なのだろうが。今日くらいは一風変わった演出を試してみようか。
アレクス、少し俺に付き合わないか」
「あん? なんだウィリアム、てめぇにしちゃ珍しいじゃねぇか。まっ、断るはダンスマスターシャロのディーヴァの名折れだな」
ウィリアムがアレクスをダンスのパートナーに選び、アレクスも楽しげに誘いを受ける。
「望みとあらばエスコートしてやるぞ?」
「はっ、戯言! てめぇこそ俺のダンスのキレに負けんなよ!」
アレクスがノイズで作った足場を自由に伝い、自ら呼び出した鳥の星獣を引き連れたダンスを舞えば、ウィリアムはこれぞ王道、と言わしめんばかりの堂に入った自然な振る舞いのダンスで対抗する。この時ばかりはアレクスも余裕ぶった表情を消しており、それが特にD.D.には効果的に刺さったようで、絶えずくねくねと身をくねらせて悶えていた。
「普段は生意気な子が主人のために奮闘する……いいわぁ」
アレクスが聞いたら激昂しそうな評価だが、実際そうだったのだから流石はディーヴァの親、であった。
「うんうん。なんだかんだでウィルさんとアレク君って、仲良しさんだよね」
元の大きさに戻ったアルカと、背中に生やした翼で空を飛ぶ歌音がこれまた、二人が聞いたら呆れるだろう言葉を口にして微笑んだ。……それがもし実際に二人の前で放たれたとしたら、アレクスがシャーロットをからかって「苦労する主人を持つもの同士、ってな。けけけ」と笑い、シャーロットの制裁を食らう結果が見えるだろうが、それはまた別の機会である。
「はぁ、はぁ……うし、俺の勝ち! だな」
「まだ、訓練が足りないか。仕方ない、結果は受け入れよう」
そうこうしているうちに二人のダンス勝負に決着がつき、どうやらアレクスが辛うじて観客の反応で上回ったようだった。
「負けたウィリアムには罰ゲームとして――動物になれー!」
アレクスがウィリアムを動物の姿に変じ――実際はウィリアムが自ら変じた――、シャーロットの元へ献上するように運ぶ。
「にゃははは♪ いつもしかめっ面のウィリーちゃんも、こうなっちゃうと可愛いね☆」
むぎゅっと抱きしめられたウィリアムが迷惑そうな表情をし、アレクスはどこか羨ましそうな顔をしていた。
「さぁウィリーちゃん、とっておきの芸を披露だっ☆ 連続月輪くぐり、そーれ♪」
光の糸にかけられた連続した月輪めがけて、シャーロットがウィリアムを投擲する。
『うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!??』
細腕からどうしてそのような力が出るのか、とウィリアム自身も驚かざるを得ない加速度で、またたく間に月輪をくぐり七色の音色を奏でたウィリアムがそのまま天井を突き抜け――ることなく全身をバネにして衝撃を殺し、アルカの背に乗った歌音に無事キャッチされる。
「ウィルさん、顔がすごいことになってる」
『……なるほど、シャーロットに動物を使わせるのは、考えた方がいいな。ともかく助かった』
「どういたしまして。ここからは一緒にライブだね、ウィルさん」
『そうなるか。大丈夫か、重くないか?』
「ぜんぜん! ワンちゃんになったウィルさん、かわいいよ」
『……狼だと言っているだろう』
ムスっとしつつもまんざらでもないウィルを抱きかかえながら、歌音が降らせた雨でできた虹を動物の形に描く。そうして動物を増やしていったところにシャーロットが、動物に光の糸を巻き付けてやって来た。
「にゃはは~♪ かのんちゃんもあそぼっ。
かのんちゃんは今日まで一緒にサーカスをしてくれた、ボクの一番の友だち。フィナーレは二人で、ね☆」
シャーロットが歌音と手を繋げば、二人が光芒へと変じる。
「うん! いっしょにね、シャロちゃん。ウィルさんはアレク君と仲良くねっ」
アルカにウィリアムを託し、歌音がシャーロットと手を繋いだまま、二人で会場の空に文字を描く。
ボクたちの絆
リトルフルールは永遠に不滅
なんだよ>ワ<
そしてステージに戻った二人を、ウィリアムとアレクスを、ステージを彩った動物たちを、観客が絶え間ない拍手と歓声で出迎えた。
「私もこの前みたいに、遊びたかったな」
「クロノスちゃんは今回は審査員だから、仕方ないですね」
「マジ!? クロノス運動できるの?」
「人を引きこもりみたいに言わないでほしいな。……だいたいあってるけど」
「大丈夫、これからいっぱい遊べるから」
しゅん、とするクロノスをD.D.がよしよし、と慰める。その間も観客からの声援は、途切れることがなかった。
「今日は猫さんの格好でアニマルライブだにゃーん♪ フーちゃんとクーちゃんも、一緒にがんばろうね!」
ライブに合わせ、猫っぽさを前面に出した衣装を身につけた虹村 歌音が星獣フーと星獣クーとじゃれていると、着替えを済ませたウィリアム・ヘルツハフトがやって来た。
「あっ、ウィルさんは犬さんだね!」
「サーカスのために働くのだ犬よ! ……なんてね、にゃははっ」
「…………狼だ、と訂正させてもらおう。嫌な予感はしていたが、やはり動物に扮して出る羽目になったか」
やれやれ、と頭を抱えつつもやるからには全力でやらねばな、とウィリアムが覚悟を決めたところに、アレクス・エメロードが悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「シャロは軽業は昔っからすごいんだが、動物使いが荒くてな。入学当初は動物に避けられてたんだったか。
ウィリアムも覚悟しとけよ? 天井突き抜ける勢いで放り投げられっから。けけけ」
「ひっどーい! ボクそこまでしないよ? ……あっでもウィリーちゃんならちょっとくらい」
「お手柔らかに頼む」
先んじてウィリアムがシャーロット・フルールの目論見を封じ、シャーロットはむぅ、と頬を膨らませた。
「くくく、怒んな怒んな。可愛さアピールが台無しになんぞ♪」
小馬鹿にした口調だが、その時だけは特殊な波動を言葉に乗せていた。
「……しょうがないなー。可愛いって言われたからには、がんばるしかないなー」
「おう、しっかりやんな。サポートはお前のディーヴァがしてやるからよ。めいっぱい楽しんでこい」
シャーロットとアレクスの素直なのかそうじゃないのか判断の難しい、でもきっと一番気が合っている関係を、歌音とウィリアムが微笑ましく見つめていた――。
「入学当初の、ボクの夢。とびっきり楽しくて賑やかな、最高のアニマルサーカス。
“リトルフルール”」
ステージの中央に立ったシャーロットが、物心ついた時から思い描いていた光景。
「この三年で磨き上げた軽業、曲芸、動物使い……仲間との絆」
今ならそれを、現実に体現することができる――その確信を得て今、最高の舞台を顕現せんとする。
「その全てを、ここで出し切る☆」
ステージ中央に生まれる命の大樹、そこから広がる森の世界はステージを飛び越え、観客席までも侵食していった。伸びた枝葉には光の糸が縦横無尽に張り巡らされ、糸を伝って自由な移動ができるようになっていた。
「ようこそお客人♪ ボクたちの妖精郷へ!
たくさんの森の仲間が歓迎するよ☆」
シャーロットの声を合図として、歌音と神獣アルカ、ウィリアム、アレクスと、クーとフー……と無数の狐と小鳥が糸を伝って駆け、羽ばたいて会場中に飛んでいった。
「一匹、二匹じゃリトルフルールのライブにゃ、物足りねぇからな! やるなら徹底的に、だ!」
アレクスによって出現した大量の動物たちは、実際には存在していない幻。しかし観客にはあたかもそこに居て、触れることのできる存在として認知されているし、星獣がくぐると音が鳴るフラフープにもちゃんと反応する。
(命溢れる妖精郷、童心に還る魂の遊び場。
……そのサポートを機械の俺がしてんのが、なんかくるものがあるな)
半ば無意識に、アレクスが胸に手を当てた。それはディーヴァにとっては何ら意味のない行動。
(シャロにとっちゃ、俺も立派な命だった訳か)
けれど不思議と、あたたかいものを感じるような気がして。――一瞬だけそんなことを思って、照れ隠しに空から大量のふわもこ毛玉を降らせてステージを賑やかす。
「もうすっかり、シャロちゃんとアレクちゃんの世界って感じだね! でも、ライブはまだまだ始まったばかり!
アルカちゃん、行こう! みんなに最っ高のライブを、届けちゃおう!」
歌音がアルカの背に乗り、アルカが一声鳴いて羽ばたき、空へと舞い上がる。そして歌音と一緒になって、ステージから会場全体へ歌を届ける。ステージに残る形になったウィリアムだが、鳴らした音が子猫の姿を取って現れるギターを駆使し、歌音とシャーロットのパフォーマンスを支えていた。ちょうど張り巡らされた糸が、ウィリアムを始点として歌音とシャーロットをつないでいるかのように観客には見えていた。
「……とまあ、いつもならこのまま終わりまで、なのだろうが。今日くらいは一風変わった演出を試してみようか。
アレクス、少し俺に付き合わないか」
「あん? なんだウィリアム、てめぇにしちゃ珍しいじゃねぇか。まっ、断るはダンスマスターシャロのディーヴァの名折れだな」
ウィリアムがアレクスをダンスのパートナーに選び、アレクスも楽しげに誘いを受ける。
「望みとあらばエスコートしてやるぞ?」
「はっ、戯言! てめぇこそ俺のダンスのキレに負けんなよ!」
アレクスがノイズで作った足場を自由に伝い、自ら呼び出した鳥の星獣を引き連れたダンスを舞えば、ウィリアムはこれぞ王道、と言わしめんばかりの堂に入った自然な振る舞いのダンスで対抗する。この時ばかりはアレクスも余裕ぶった表情を消しており、それが特にD.D.には効果的に刺さったようで、絶えずくねくねと身をくねらせて悶えていた。
「普段は生意気な子が主人のために奮闘する……いいわぁ」
アレクスが聞いたら激昂しそうな評価だが、実際そうだったのだから流石はディーヴァの親、であった。
「うんうん。なんだかんだでウィルさんとアレク君って、仲良しさんだよね」
元の大きさに戻ったアルカと、背中に生やした翼で空を飛ぶ歌音がこれまた、二人が聞いたら呆れるだろう言葉を口にして微笑んだ。……それがもし実際に二人の前で放たれたとしたら、アレクスがシャーロットをからかって「苦労する主人を持つもの同士、ってな。けけけ」と笑い、シャーロットの制裁を食らう結果が見えるだろうが、それはまた別の機会である。
「はぁ、はぁ……うし、俺の勝ち! だな」
「まだ、訓練が足りないか。仕方ない、結果は受け入れよう」
そうこうしているうちに二人のダンス勝負に決着がつき、どうやらアレクスが辛うじて観客の反応で上回ったようだった。
「負けたウィリアムには罰ゲームとして――動物になれー!」
アレクスがウィリアムを動物の姿に変じ――実際はウィリアムが自ら変じた――、シャーロットの元へ献上するように運ぶ。
「にゃははは♪ いつもしかめっ面のウィリーちゃんも、こうなっちゃうと可愛いね☆」
むぎゅっと抱きしめられたウィリアムが迷惑そうな表情をし、アレクスはどこか羨ましそうな顔をしていた。
「さぁウィリーちゃん、とっておきの芸を披露だっ☆ 連続月輪くぐり、そーれ♪」
光の糸にかけられた連続した月輪めがけて、シャーロットがウィリアムを投擲する。
『うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!??』
細腕からどうしてそのような力が出るのか、とウィリアム自身も驚かざるを得ない加速度で、またたく間に月輪をくぐり七色の音色を奏でたウィリアムがそのまま天井を突き抜け――ることなく全身をバネにして衝撃を殺し、アルカの背に乗った歌音に無事キャッチされる。
「ウィルさん、顔がすごいことになってる」
『……なるほど、シャーロットに動物を使わせるのは、考えた方がいいな。ともかく助かった』
「どういたしまして。ここからは一緒にライブだね、ウィルさん」
『そうなるか。大丈夫か、重くないか?』
「ぜんぜん! ワンちゃんになったウィルさん、かわいいよ」
『……狼だと言っているだろう』
ムスっとしつつもまんざらでもないウィルを抱きかかえながら、歌音が降らせた雨でできた虹を動物の形に描く。そうして動物を増やしていったところにシャーロットが、動物に光の糸を巻き付けてやって来た。
「にゃはは~♪ かのんちゃんもあそぼっ。
かのんちゃんは今日まで一緒にサーカスをしてくれた、ボクの一番の友だち。フィナーレは二人で、ね☆」
シャーロットが歌音と手を繋げば、二人が光芒へと変じる。
「うん! いっしょにね、シャロちゃん。ウィルさんはアレク君と仲良くねっ」
アルカにウィリアムを託し、歌音がシャーロットと手を繋いだまま、二人で会場の空に文字を描く。
ボクたちの絆
リトルフルールは永遠に不滅
なんだよ>ワ<
そしてステージに戻った二人を、ウィリアムとアレクスを、ステージを彩った動物たちを、観客が絶え間ない拍手と歓声で出迎えた。
「私もこの前みたいに、遊びたかったな」
「クロノスちゃんは今回は審査員だから、仕方ないですね」
「マジ!? クロノス運動できるの?」
「人を引きこもりみたいに言わないでほしいな。……だいたいあってるけど」
「大丈夫、これからいっぱい遊べるから」
しゅん、とするクロノスをD.D.がよしよし、と慰める。その間も観客からの声援は、途切れることがなかった。