【初夏の大祭典!】フェス×フェス2029
リアクション公開中!

リアクション
■エレガンス部門【2】
全力を尽くしたライブが幕を閉じ、出演者が舞台袖に引き上げてくる。
「お疲れさま、だよ。はい、よかったらこれで汗拭いてね。
……よし、それじゃみんな、次のライブ準備、始めよっ」
小羽根 ふゆがアイドルの候補生であるフェスタ生と一緒に、ステージの大道具小道具の入れ替えを担当する。本人はお手伝い、のつもりだったのだが、アイドルとしても名の通っている上、テキパキと仕事をこなしていたらいつの間にか、他に手伝いをしている子たちの指示役になっていた。
(あはは……ま、これはこれで、野心溢れるアイドル見習いの子をスカウトできるチャンスだよね。
これからもっと輝ける子、輝こうって思ってる子に手を差し伸べられたら、嬉しいな)
そんな思いでステージのセッティングをこなしつつ、ステージに上がっている以上はアイドルとしての振る舞いも忘れない。
「ふゆちゃんも入賞できる実力あると思うのになー」
愛想を振りまけば、そんな応援の声が観客席から届けられた。アイドルとして応援されること自体は嬉しいので笑顔で応えつつ、もしこの応援が自分のプロデュースするアイドルに向けられたら……と思うと、嬉しさがもっと大きくなるのを感じた。
「校長先生は……っと、いたいた。はは、子供みたいにはしゃいでるぜ」
「ふふ。先生に聞かれたら怒られますわよ」
観客以上に応援に熱が入っている校長先生を子供のよう、と評する春瀬 那智をジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァが言葉では嗜めるも、表情には笑顔があった。
「それじゃ、今年も魅せてやろうぜ。今日まで培った俺たちの全力で、最高のフェス×フェスを」
「はい、騎士様。応援して下さる先生や皆様が、わたくしを『歌姫』にしてくださいました。
今日はその感謝をお返ししましょう。わたくしたちの、最高の音色に乗せて」
弾くと淡い光の粒をきらきらと振り撒く竪琴を奏で、純白のドレスを身につけたジュヌヴィエーヴがステージの中央へ立ち、呼び出したアンサンブルと傍らに寄り添う神獣ムジカと共に、まるで妖精のような伸びる声を観客の元へ届ける。夜空に瞬く星のように、例え小さく儚くても誰かの心に安らぎを灯せるような――。
ジュヌヴィエーヴの演奏と歌声に合わせて、那智もヘッドセットから歌声を重ねる。姫を支え、姫の剣である騎士を体現するように低く、がっしりと支えるような声を巧みに使い、そしてゆったりとしたテンポでステージを歩きジュヌヴィエーヴの元へ寄る。観客が向ける期待の眼差しに応えるように、ジュヌヴィエーヴの正面で片膝をついて恭しく手を差し出せば、そっと手が重ねられた。
優雅で、見るものをうっとりとさせるような、二人のワルツ。ジュヌヴィエーヴが演奏を止めてしまわないように那智がエスコートし、音を絶やさずステップを踏む。そのまま二人でステージの前方に進み出て、観客席に手を差し伸べ、しっとりと囁くようなトーンで告げる。
「――Do you like Music?」
観客の『肯定』の意思が、会場を包み込むイルミネーションの光として現実化する。
(やっぱりライブは、皆で楽しんでこそ、だろ?)
観客の反応に満足げに笑って――那智の身体が光に包まれる。衣装がエレガントにグレードアップされるのに合わせて、ジュヌヴィエーヴが背景を相応しいものへと変化させる。庭園の中でダンスを続け、観客も輪になって一緒に踊り、会場に一体感が生まれる。
「それじゃ、クライマックスだ。頼むぜ、ジュネ」
「ええ、騎士様。ムジカ、騎士様とわたくしを乗せて、校長先生の元へ」
ジュヌヴィエーヴの願いに応え、成長したムジカが二人を乗せ、空を翔けて特等席、校長先生の元へ向かった。
「今日まで俺たちを見守ってくれてありがとう。
そして――これからもよろしくお願いします、校長先生」
そして那智が、用意した花束を校長先生に贈る。
「ありがとうございます! いやぁ、こんなにも成長した姿が見られて、私は……ううっ」
感涙にむせぶ校長先生にもう一度お礼を言って、観客席をぐるりと一周してからステージに戻り、那智はピシッ、と力強さを感じさせる動作で礼をし、ジュヌヴィエーヴはドレスの裾をつまんでふんわりとお辞儀をして締めくくった。
観客の、大きな拍手と歓声が校長先生の分まで届けられる――。
この心は折れない刃のように
どんな困難にだって負けないんだから
弥久 風花の持ち歌である『SWORD OF VIRGIN』が流れ出す。だが今日は風花の、蓮のように淡く美しい色の衣を身につけハープのような形の楽器を携え奏でる姿に合わせ、アレンジがかかっていた。心を込めて伸びやかに歌う姿はそのままに、しっとりと観客の心に響かせるようなステージを作り上げていく。
(こういうのも一度は、やってみたかったのよね!)
次いで楽器を奏でながら衣の裾をふわり、と翻し、優雅な舞踏で観客の心を惹き付ける。楽器から生み出された音は光となって風花の周囲に広がり、ステージを明るく照らしていった。
やがて曲が佳境に差し掛かると、風花が腰に巻いていた布を舞いの挙動に合わせ、くるり、と回すようにして広げ、宙に浮かべる。すると観客席の風景が神々しい雲海と光芒が満たす空に変わり、観客はより風花のステージに没頭するようになる。最後は柔らかな光の雨を、ステージから会場の奥へ移動するように降らせ、観客に優しい祝福の雨をもたらしたのだった――。
観客からの温かな拍手と歓声に応えながら、風花の視線はある人物へと向けられていた。
「先輩、『私』はどうでしたか♪」
声には出さず口パクで――相手が自分のことをちゃんと見ているのをわかった上で――告げた風花が笑顔を振り撒いてステージを退く。
「あそこまでされちゃあ、オレも覚悟決めないとな」
話しかけられた人物――泰河がそんな声をぽつり、と漏らした。
五月女 千鶴が神獣に寄り添い話しかけ、力を与えればそれに応え、神獣が鳴く。ステージから会場の奥へ、翔けるように柔らかな雨が降り、雨が降った後には虹が生まれた。
(この世界はいつだって美しく輝いている。
……僕達のライブで観客の皆がそのことを思い出せるよう、願っているわ)
思いを込めて、千鶴はステージに涼やかな霧霞を発生させ、演奏に使用していた半透明の鍵盤が目立たないようにする。周囲に浮かび上がる虹と差し込む光によって、観客はステージそのものが美しい音色を奏でる楽器であるかのように思い込む。
(僕が今このステージに立てているのも、フェスタの皆や校長先生のおかげよ。
ありがとう。……そして校長先生の海よりも深い『愛』を、皆にも感じさせてあげるね♪)
フェイトスターアカデミーに集う者たちを称え、祝福する歌を深い水底を感じさせる歌声で観客の心に聞かせる。その歌は観客だけでなくフェスタの教員や校長先生までも深い感動を与え、人によっては涙を浮かべるほどであった。
「最後まで聞いてくれて、ありがとう。僕もとっても楽しかったよ」
最後にもう一度、大きな虹をかけて千鶴が神獣とステージを後にすると、観客は大きな拍手を送って彼らを讃えたのだった。
全力を尽くしたライブが幕を閉じ、出演者が舞台袖に引き上げてくる。
「お疲れさま、だよ。はい、よかったらこれで汗拭いてね。
……よし、それじゃみんな、次のライブ準備、始めよっ」
小羽根 ふゆがアイドルの候補生であるフェスタ生と一緒に、ステージの大道具小道具の入れ替えを担当する。本人はお手伝い、のつもりだったのだが、アイドルとしても名の通っている上、テキパキと仕事をこなしていたらいつの間にか、他に手伝いをしている子たちの指示役になっていた。
(あはは……ま、これはこれで、野心溢れるアイドル見習いの子をスカウトできるチャンスだよね。
これからもっと輝ける子、輝こうって思ってる子に手を差し伸べられたら、嬉しいな)
そんな思いでステージのセッティングをこなしつつ、ステージに上がっている以上はアイドルとしての振る舞いも忘れない。
「ふゆちゃんも入賞できる実力あると思うのになー」
愛想を振りまけば、そんな応援の声が観客席から届けられた。アイドルとして応援されること自体は嬉しいので笑顔で応えつつ、もしこの応援が自分のプロデュースするアイドルに向けられたら……と思うと、嬉しさがもっと大きくなるのを感じた。
「校長先生は……っと、いたいた。はは、子供みたいにはしゃいでるぜ」
「ふふ。先生に聞かれたら怒られますわよ」
観客以上に応援に熱が入っている校長先生を子供のよう、と評する春瀬 那智をジュヌヴィエーヴ・イリア・スフォルツァが言葉では嗜めるも、表情には笑顔があった。
「それじゃ、今年も魅せてやろうぜ。今日まで培った俺たちの全力で、最高のフェス×フェスを」
「はい、騎士様。応援して下さる先生や皆様が、わたくしを『歌姫』にしてくださいました。
今日はその感謝をお返ししましょう。わたくしたちの、最高の音色に乗せて」
弾くと淡い光の粒をきらきらと振り撒く竪琴を奏で、純白のドレスを身につけたジュヌヴィエーヴがステージの中央へ立ち、呼び出したアンサンブルと傍らに寄り添う神獣ムジカと共に、まるで妖精のような伸びる声を観客の元へ届ける。夜空に瞬く星のように、例え小さく儚くても誰かの心に安らぎを灯せるような――。
ジュヌヴィエーヴの演奏と歌声に合わせて、那智もヘッドセットから歌声を重ねる。姫を支え、姫の剣である騎士を体現するように低く、がっしりと支えるような声を巧みに使い、そしてゆったりとしたテンポでステージを歩きジュヌヴィエーヴの元へ寄る。観客が向ける期待の眼差しに応えるように、ジュヌヴィエーヴの正面で片膝をついて恭しく手を差し出せば、そっと手が重ねられた。
優雅で、見るものをうっとりとさせるような、二人のワルツ。ジュヌヴィエーヴが演奏を止めてしまわないように那智がエスコートし、音を絶やさずステップを踏む。そのまま二人でステージの前方に進み出て、観客席に手を差し伸べ、しっとりと囁くようなトーンで告げる。
「――Do you like Music?」
観客の『肯定』の意思が、会場を包み込むイルミネーションの光として現実化する。
(やっぱりライブは、皆で楽しんでこそ、だろ?)
観客の反応に満足げに笑って――那智の身体が光に包まれる。衣装がエレガントにグレードアップされるのに合わせて、ジュヌヴィエーヴが背景を相応しいものへと変化させる。庭園の中でダンスを続け、観客も輪になって一緒に踊り、会場に一体感が生まれる。
「それじゃ、クライマックスだ。頼むぜ、ジュネ」
「ええ、騎士様。ムジカ、騎士様とわたくしを乗せて、校長先生の元へ」
ジュヌヴィエーヴの願いに応え、成長したムジカが二人を乗せ、空を翔けて特等席、校長先生の元へ向かった。
「今日まで俺たちを見守ってくれてありがとう。
そして――これからもよろしくお願いします、校長先生」
そして那智が、用意した花束を校長先生に贈る。
「ありがとうございます! いやぁ、こんなにも成長した姿が見られて、私は……ううっ」
感涙にむせぶ校長先生にもう一度お礼を言って、観客席をぐるりと一周してからステージに戻り、那智はピシッ、と力強さを感じさせる動作で礼をし、ジュヌヴィエーヴはドレスの裾をつまんでふんわりとお辞儀をして締めくくった。
観客の、大きな拍手と歓声が校長先生の分まで届けられる――。
この心は折れない刃のように
どんな困難にだって負けないんだから
弥久 風花の持ち歌である『SWORD OF VIRGIN』が流れ出す。だが今日は風花の、蓮のように淡く美しい色の衣を身につけハープのような形の楽器を携え奏でる姿に合わせ、アレンジがかかっていた。心を込めて伸びやかに歌う姿はそのままに、しっとりと観客の心に響かせるようなステージを作り上げていく。
(こういうのも一度は、やってみたかったのよね!)
次いで楽器を奏でながら衣の裾をふわり、と翻し、優雅な舞踏で観客の心を惹き付ける。楽器から生み出された音は光となって風花の周囲に広がり、ステージを明るく照らしていった。
やがて曲が佳境に差し掛かると、風花が腰に巻いていた布を舞いの挙動に合わせ、くるり、と回すようにして広げ、宙に浮かべる。すると観客席の風景が神々しい雲海と光芒が満たす空に変わり、観客はより風花のステージに没頭するようになる。最後は柔らかな光の雨を、ステージから会場の奥へ移動するように降らせ、観客に優しい祝福の雨をもたらしたのだった――。
観客からの温かな拍手と歓声に応えながら、風花の視線はある人物へと向けられていた。
「先輩、『私』はどうでしたか♪」
声には出さず口パクで――相手が自分のことをちゃんと見ているのをわかった上で――告げた風花が笑顔を振り撒いてステージを退く。
「あそこまでされちゃあ、オレも覚悟決めないとな」
話しかけられた人物――泰河がそんな声をぽつり、と漏らした。
五月女 千鶴が神獣に寄り添い話しかけ、力を与えればそれに応え、神獣が鳴く。ステージから会場の奥へ、翔けるように柔らかな雨が降り、雨が降った後には虹が生まれた。
(この世界はいつだって美しく輝いている。
……僕達のライブで観客の皆がそのことを思い出せるよう、願っているわ)
思いを込めて、千鶴はステージに涼やかな霧霞を発生させ、演奏に使用していた半透明の鍵盤が目立たないようにする。周囲に浮かび上がる虹と差し込む光によって、観客はステージそのものが美しい音色を奏でる楽器であるかのように思い込む。
(僕が今このステージに立てているのも、フェスタの皆や校長先生のおかげよ。
ありがとう。……そして校長先生の海よりも深い『愛』を、皆にも感じさせてあげるね♪)
フェイトスターアカデミーに集う者たちを称え、祝福する歌を深い水底を感じさせる歌声で観客の心に聞かせる。その歌は観客だけでなくフェスタの教員や校長先生までも深い感動を与え、人によっては涙を浮かべるほどであった。
「最後まで聞いてくれて、ありがとう。僕もとっても楽しかったよ」
最後にもう一度、大きな虹をかけて千鶴が神獣とステージを後にすると、観客は大きな拍手を送って彼らを讃えたのだった。