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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ラスト・メドレー! ~オルトアース&ビーストラリア~

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ラスト・メドレー! ~オルトアース&ビーストラリア~

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■3-1.ラブ&ピース!

 ライブやラビリンスでの喧騒もなんのその。それに負けじとでも言わんばかりの騒ぎが起きているのがこのフェスメシのフードコートだ。

「もう! こんな鮮度の落ちたぎょかいるいを使うなんて。これじゃあマイニャだって食べたくないって言うよ!」

「なんだと!? 俺のぎょかいるいが食べられねえってのか!」

 ケモマニアの会の男がいかにもといった態度で小羽根 ふゆを恫喝していた。引こうとしないふゆに対してポケットからなにかのびーすとを繰り出そうとするが、

「遅い遅い!」

 ふゆの合図ひとつで彼女の影からクラリネットネコのマイニャが飛び出した。むぎゅりとポケットを踏みつけると、そこを踏み台に男の顔を引っ掻いたのであった。

 それだけで男は意気消沈。ふゆは愛猫の頭が撫でていると、男に脅されていた屋台の店主がお礼にと猫と一緒に食べられるという魚の塩焼きを差し出してくるのであった。

 ……ごくり。

 さて、そんな意気消沈した男を見てケモマニアの仲間たちが集まってきたものの、そこに天鹿児 神子が立ちはだかった。彼女は祈るような姿勢のまま彼らに向き合うと、

「地球様は仰っています。何事も規則正しくあるがままに従いなさいと。鮮度の落ちた食べ物で体調を崩す人がいれば、ケモマニアの会――ひいてはあなた方の支援するアイドルたちの信頼が失墜することでしょう」

 ――ド正論を言い放った。

 とはいえ、そんな正論だけで止まるならハナから破壊活動に手を染めることはない。ごろつき同然の男たちは神子を襲おうとポケットに手を伸ばすが、

「コラーッ! 何やってるの!」

 弥久 風花が乱入し、あれよあれよとペースを握られていく。気づけばいつの間にか彼女や神子と広場でバトルをすることになっていた。

 ――全部私が受け止めてあげるから、野性味の魅力を見せてみなさいな。

 そんなことを言われれば男たちとて黙ってはいられない。彼女の乱入によっていつの間にか男たちの破壊活動は食べ歩きをする人々への“ショー”へと変わっていったのだった。

 地球様への祈りとケモマニアたちの怒声、風花のサービス精神たっぷりのアピールへの拍手。少しずつこれらの騒ぎは、どこか賑やかさを孕んで鎮圧されていく。

「野生の力っていうのは、『全力で奪い、奪われる戦い』だからこそ美しいと思わないかーい?」

 そして賑やかといえば、天地 和がケモマニアたち相手に仕掛けた麻雀バトルも外せない。びーすとの真理……っぽいことを嘯く彼女であるが、頭に貼った絆創膏で若干格好がついていない。だが、その眼差しはケモマニアの会たちの点棒を狙う一匹のしゅりょうびーすとのそれだ。

 自分のテーマソングである勇ましい音楽とともに迫力ある野性味を出す彼女は、珍しくケモマニアたち相手に連勝していた。

「だ、だめだァ……! なんて野生ちからだ……!」

 彼女の迸る迫力がケモマニアたちをベタオリさせていたのだ。

 ケモマニアたちの騒乱はそんな彼女たちのおかげで終息を迎えつつあった。だがそれでも目立たずこっそりとフェスを妨害しようとする不逞の輩がいまだに存在した。

「へっへっへ、俺たちも頭を使わなくちゃな……って、うわあっ!?」

 なにやら屋台の隅で悪巧みをしていたケモマニアの会の男たちを弾き飛ばすようにして巨大――というにはちょっとあまりにも大きすぎる黒猫が通り過ぎていったのである。

「あいててて! くっそ、せっかく準備したのが台無しになっちまった。また準備しないと……」

 そんな風にぶつくさと文句を言っているところに、

「おにーさん達大丈夫? 屋台もずいぶんめちゃくちゃになっちゃったみたいだけど……ビーストラリア応援してるよ」

 なんて笑顔を向けながら千夏 水希が彼らにプリンシェイクを差し入れた。突然の美女の出現に驚きを隠せない男たちだが、鼻の下を伸ばして差し入れを飲み始める。

 ――うんうん。あんたたちが持ちこんだ食材も、ダメになっちゃったフルーツも、全部あんたたちが片付けてくれよ。

 そう。彼女が差し入れたのは彼らが持ち込んだみるくやたまご、ダメになった屋台の廃棄食材たちで作った“夢見プリンシェイク”。当然巨大な黒猫もパートナーのベレスが巨大化した姿である。

 程なくすれば彼らは腹痛と悪夢のダブルパンチ。影でこそこそ動いていた暴徒も、こうしてひっそりと成敗されていったのであった。

「あっ、ベレスこら! 飲んじゃだめ! ぺっしなさいぺっ!」あー!」

 アイドルたちの活躍により、フードコートは本来の活気を取り戻しつつあった。直せる屋台は修理することで立て直し、ダメになった食材を屋台の間で融通しあう。そんな和やかな空気が流れ始めたのだ。

 空からは気持ちのいい歌が響いている。翼を羽ばたかせて空からフードコートを眺める御空 藤の歌声である。

 彼女は今、アイドルとしてではなく――ただ一人の人間として、歌を紡いでいた。

「!」

 人混みの中からなにかを見つけた彼女は地上へ降りる。そこには怪我をして今にも泣きそうな子供の姿があった。藤は優しくその頭を撫でると、てきぱきと応急処置を済ませていく。終われば、彼女は手を振ってまた次の“困ってそうな人”を探しに出る。

 彼女はそんなことを繰り返していた。それは誰にでもできて、でも、彼女だからこそできることでもある。

 アイドルとして。あるいは一個人として。様々な形で人々はこのフェスに関わっている。そして、そんな彼らひとりひとりの行なってきたことが、多くの人の笑顔につながるのだ。

 それはもちろん、こういった直接的な関わり方でなくても同じことだ。

「お嬢ちゃん! オルトアース名物ルミマル焼きはどうだい!」

「ルミマル!? ……って、ああ~! なるほど、ルミマルの形をしたおまんじゅう! おいしそうだしかわいいですね~♪」

 好奇心のままに屋台を巡るオーバニー・カッシロアは、笑顔を振りまきながらルミマル焼きにかぶりつく。ふわりとした優しい生地を食べると、ふわりと甘い香りが鼻を通り抜けていく。

「あっ、ねえねえ。こっちの虹色クリームソーダと合わせるともっとおいしくなるわよ!」

 オーバニーにそういってカップを差し出してきたのは風白 美咲だ。両手いっぱいに屋台の食べ物を抱えながら今日という日を満喫していた。

 勧められるままに飲んでみるとクリームが生地と渾然一体となりえもいえぬ味に変わる。

「おいしかったよね? うんうん。おじさーん! 私にもルミマル焼き一個!」

「はいよー! はい、どうぞー」

「むぐむぐ……んん~! やっぱおいしい! 決め手はなんなのかしらねっ」

 美咲はルミマル焼きを頬張ると身を縮こませるようにしながら舌鼓を打つ。彼女のそんな姿を見て、他の人々もついついルミマル焼きや虹色クリームソーダを買ったりしてしまうのだ。

 彼女たちが次に注目したのはそろそろ開店しそうな、ある一つの移動料亭だった。

「よーっし、はぴらきらりん☆ 俺のスペシャリテっ、かーんせいなのだーっ!」

 そこは宇津塚 倖々葉による屋台だった。曰くはぴはぴ度をアップさせた火焔マトンのステーキにSNS映えも重視した鮮やかな彩りのライスタワーを合わせたもの。友人や弟に手伝ってもらいながら、その栄えある第一号が完成したのだ。今はそのスタッフ四人で試食会、といった具合である。

「わあ、やっぱり美味しいね、これ!」

 なんて最初に感想を漏らしたのは橘 樹だ。時折倖々葉にからかわれたりして不満顔にはなるものの、やはりそれはそれである。それにみんな――特にある一名――と協力しあって出来た一品、それもひとつのスパイスとなっていたか。

 彼は笑みを浮かべながらステーキを切り分けると、宇津塚 夢佳に向けて差し出した。

「はい、夢佳さんもどうぞ」

 夢佳はわずかに目を見開くが、そのままするりと表情を微笑みに戻してステーキを受け入れる。兄の作った料理がおいしいというのもあったが、それ以上に“この行為”に嬉しさやら気恥ずかしさやらがこみ上げる。

 それをなんとかこらえている夢佳であったが、樹がじっと視線を向けていることに気がついた。

「樹さま、如何なさいました?」

「口元にソース付いてるよ」

 そして、夢佳がそれを拭う暇も与えずに、樹はぺろりとそれを舐め取った。

「ッ!?」

 夢佳の顔から湯気……ではなく点描シャワーが吹き上がる。他の人たちが目を離した一瞬で行われたのだが、

「あー! はぴはぴのらぶらぶだー☆ ひゅーひゅー☆」

 どうやら倖々葉には見られていたらしい。夢佳はかろうじて平静を……いやだいぶ怪しい感じに頬のほてりを誤魔化していたが、当の本人は悪びれた様子もなく夢佳に笑みを向けるのみであった。

 そんな彼らをスルーしながら、給仕担当の芹沢 葉月は開店に向けて妹をイメージした仮想体へと姿を変えた。

「はあーい! はぴらきらりん☆ 開店でーっす!」

 屋台が開くと、その香ばしい匂いにつられて多くの客が押し寄せる。ケモマニアたちの動きが静まってきたのもあり、屋台は盛況の様子。

「ん……ここか。確かにいい香りだ」

 そこに倖々葉の友人である月見里 彼方が訪れる。元々彼に誘われていたため、待つことなく座敷についた彼のもとに葉月が注文を取りにやってきた。

「盛況で何よりだな。……はぴらきらりん……いや、はぴらきらりん☆ひとつ。ライスもセットで」

「ほんとよかったです! それでははぴらきらりん☆一つお持ちしますねっ。妹の魔法は付けますか?」

「……お願いします」

 事あるごとにメモを取る彼の様はまるでグルメガイドの調査員のようであったが、それも友人の料理をしっかりと堪能し、正面から向き合い満喫したからこそであった。

 倖々葉の屋台は時間が経つほどに繁盛していったが、それは、木佐 千沙希が裏で活躍していたからにほかならない。

 ――といっても倖々葉サンの信念あってこそ、っすけどね。

 なんて考えながら彼は思わず笑みをこぼした。屋台に訪れる客や、それを営む仲間たちの楽しそうな姿を撮影してはSNSへとアップしていたのだが、これは“はぴはぴ”でケモマニアの会を静めようという意図もあった。

 仲間たちの様子を見て思わず笑みを浮かべる千沙希のように、おそらく彼の動画を見たものたちも思わず笑顔になるだろう。それは彼らだけではない。楽しそうに屋台を巡るオーバニーたちや、歌やパフォーマンスに湧く観客たち。それらが繋がり、今の空気を象っている。

 ケモマニアの会のメンバーは最早誰一人として暴れることはなかった。それは今日という日をより良くしたいと思う人や、今日を全力で楽しもうとする人、他にも様々な人々の力によって成されたことだ。

 それはまさしく人々の繋がりによって生まれた平和であった。
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