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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ラスト・メドレー! ~レジェンドスターズ~

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ラスト・メドレー! ~レジェンドスターズ~

リアクション

 「神獣対決だね! 僕とヒバリも負けないよ! ノーマ!」
 上空を移動するノーマとレーヴェを目ざとく発見した渋谷 柚姫が、張り切った声を上げる。
 先の戦いから戦略的撤退をしていたノーマたちも、自分たちに向けられた視線に気づいたようだ。体の不調が完全に取り払われたわけではないが、戦闘に支障はないと判断したノーマたちは、追いかけてきたアイドルの相手をしてやることに決めたようだ。
「僕が一番神獣をうまく使えるんだ……なんて言わないけど、本物の神獣との連携っていうのを見せてあげるよ、ノーマ。まぁ、『使う』って言いまわしはあまり好きじゃないんだけどね……」
 炎の神獣幻詩で幼生神獣のヒバリを成長させた柚姫は、地上に残るアイドルたちとの連携ができるようにと、まずはノーマたちを地上に引きずり降ろそうと考える。ヒバリの吐く炎の息吹とスカイハイを使い分けて強引に進路を変え、地上との距離を縮めていこうとしていく。そして周りのアイドルたちも攻撃を加え始めたタイミングを狙って、レーヴェの背中に取りつこうとした。
 当然、それを阻止するためにノーマが柚姫に攻撃を加えるが、柚姫はそれに怯まず背負い投げのような攻撃を敢行する。纏った闘魂オーラとレゾナンスの衝撃波が柚姫に力を与えたため、ノーマは軽々と投げ飛ばされてしまった。
「正直、ノーマに操られてさえなければ、勝ち目すらないんじゃあないかなって思うんだよね!」
 普段のレーヴェを思い、柚木は挑発めいた言葉をかける。だが、しぶとさ抜群のノーマは、地上に向かって攻撃した反動を利用して滞空時間を稼ぐと、がむしゃらにレーヴェへとしがみついた。想像以上のガッツを見せられ虚を突かれた柚姫は、次に来たノーマの攻撃に対処できない。そこへヒバリが炎の息吹を放ち、柚姫を窮地から救い出した。
 立ち直った柚姫はこれ以上ノーマと接近戦で渡り合うのは難しいと考え、ヒバリの背へと離脱しようとする。無事では戻さないとノーマは食らいつくが、クロノスを守りながら駆け付けたはくまとホワイトが状況を察し、ともに柚姫の援護に回ったおかげで事なきを得た。
 だが、一度使った戦法で再びレーヴェにとりつくのを、ノーマもレーヴェも許さないだろう。
 次の一手を決めかね膠着状態になりつつある戦場に、何者かが駆けつけた。
 
 それは【共闘】を名乗る二人のアイドル、龍造寺 八玖斗行坂 貫だった。
(あれが過去を変えた所為で生まれた物だっていうなら、まさに過去でやりたい放題やった身としては何とかしないとな)
 貫はノーマを一瞥すると、側で戦いを見守っていたクロノスに視線を移す。
「過去でやりたい放題やって負担をかけてしまってすまなかった。これが多分最後だなんて気にしなくていい。これが過去を変えた結果生まれた物なら、過去改変をあんたに持ち掛け、過去で色々やった俺達にだって責任があるんだ。一人で手に負えない時は遠慮なく頼ってくれ」
 そしてクロノスに向かって、心からの謝罪をした。非コミュを自覚するクロノスは、どう答えるのが正しいかわからず、落ち着きなく周囲を見渡す。しかし、どうやら自分で決めなければならないという雰囲気を察すると、
「あ、あとで……考えとくよっ」
 どうにかそれだけ言って、視線を逸らす。その先にいるのは、ノーマとレーヴェ。か弱いとか力を使えないとか言いながらも、本気でノーマたちから逃げ隠れしないのは、この戦いを見届けなければという思いがあるからだろうか。もっとも、あのノーマがクロノスを見失った挙句に諦めることなどありえないだろうから、いっそのこと目の届く範囲で倒されてくれた方が心理的に楽だという計算も働いたのかもしれないが、そこはあえて聞き出すところでもないだろう。
 クロノスの視線に辿り、成り行きを見守っていた八玖斗もレーヴェを見つめる。
(多くの神獣の恩寵が込められたギフトグレイスを貰っちまったしな、それを持ちながらああなったレーヴェ止めるのも神獣への返礼になるだろ。後はクロノスにもまあまあ覚悟を求める事を言った手前、オレも体を張って覚悟を見せねえとな)
 それに、貫の気持ちに理解が及ばないわけでもない。レーヴェへの視線を相棒に向けると、貫もまた八玖斗の心情は心得ているというように笑っていた。
 ならば、後は行動で示すだけと、八玖斗は≪魔機≫プテラノ=ベースで空を駆けると、ノーマとレーヴェへ向かって飛び始めた。陽だまりのサンギータで持続的な回復の下地を整えた貫も、食神降臨で身体を巨大化させ、ノーマたちの注意を引き付けようとする。
 そして貫の身体の間を縫うようにしてノーマの元へたどり着いた八玖斗は、≪魔構≫ブラスト・ヒッターで圧縮した空気を次々に射出し始めた。八玖斗の攻撃に合わせようと、貫も蹂躙するダークロードで空を駆けあがり、空中のノーマたちを引きずり降ろそうと腕を伸ばす。
「人間が人間のままデカくなったり飛べねえと思うなよっ!」
 ノーマも二人を始末しようとレーヴェをけしかけるが、貫の天空神の接見が二人への攻撃を妨害する。そこで自らも打って出ようとするが、愛のためのヴァーディがその動きを鈍らせ不発に終わり、ノーマたちは次第に地面へと近づいていく。それをチャンスと感じた八玖斗は、ノーマの視覚外からボムハイドアタックで迫る。八玖斗の接近をレーヴェの声で気づいたノーマは、スタンこそ免れたもののダメージを殺し切れない。ノーマが怯んでいる間に離脱した八玖斗は、今度はレーヴェの真上から≪魔構≫エレキ・サーベルを振り下ろし、そのタイミングに合わせた貫がレーヴェの羽を狙った一撃を放つ。八玖斗と貫のコンビネーションで、ノーマとレーヴェはついに地面へ転がった。
 八玖斗と貫は、まずはレーヴェを戦闘不能にしようと接近した。再び上空へ戻ろうとするところを、八玖斗はシャムアンブッシュのからめ手で怯ませ押し留める。レーヴェはなおも飛び立とうとするが、八玖斗が自らも巻き込むほどの至近距離でジェムミックスを発動したため、その衝撃でレーヴェはついに動かなくなった。ブースアーマーを用意していたとは言え、それなりの衝撃を受けた八玖斗だが、横たわるレーヴェの正気を戻そうとソング・オブ・セブンスを歌い始める。
「懐かしいだろ、仲間の神獣の心だ、目を覚ませ」
 そう言って八玖斗がギフトグレイスを見せようとすると、レーヴェの体が身じろぎした。レーヴェが正気を取り戻したのだろうかと、八玖斗がレーヴェの体に触れようとした瞬間、レーヴェの口からは大地を揺るがせるような咆哮がほとばしる。
 レーヴェは正気に戻ってはいなかった。正気を失ったまま追い詰められたことだけを自覚したレーヴェは、その身を無理やり起き上がらせると八玖斗を突き飛ばす。異変を察した貫が食神分身で取り押さえにかかるが、容易く弾かれてしまった。
 それをチャンスと見たノーマは、レーヴェが空へ上昇する直前に背に跨り、再び空へと舞い戻った。貫は後を追いかけたいが、八玖斗の負傷は深刻なためにそこまで手が回らない。
 事態の急変に気づいたはくまは、ここにいてはクロノスが危険だと判断し逃走を図った。ノーマはレーヴェがいくらか落ち浮いたのを見計らうと、クロノスを追跡するために飛び去った。
 
 はくまとクロノスは逃走に成功したものの、逃げ場所に当てはない。それでも、何とか時間稼ぎできそうな場所を探して走り続ける。その二人に向かって「こっちだ!」と叫ぶ声がした。
 声を信じて向かった先では、黒瀬 心美が二人を待ち受けていた。
(“あり得たかもしれない可能性”かぁ……まるで悪夢だね。アタシらが以前の戦いでノーマに勝てなかったら、これが現実になってたかもしれないって事だろ? どんな未来だろうと、こんなクソッタレな状況よりかはマシだろうさ。クロノスは、この状況を回避しようと足掻き続けて、何度も失敗して絶望して……今この光景を見て一番つらいのは、クロノスなのかもしれないね)
 肩で息をしているクロノスを見つめ、心美はその心情を慮る。
(“最悪のイドラ”との戦いに勝てたのは、クロノスが力を貸してくれたおかげだ。そのクロノスに借りを返す……ってワケでもないんだけど、彼女を護って、さっさとこの悪夢を終わらせるよ……!)
 そして、クロノスを追い詰めたかのように薄ら笑いを浮かべ迫ってきたノーマを睨み、剣を握った。
 何より大事なのは、クロノスを守り切ること。そのことを頭に叩き込み、クロノスと自分との距離を念入りに確認する心美。早速、クロノスめがけて放たれたレーヴェの息吹をフォースパリィングで受けると、続けざまに襲い来るレーヴェの攻撃をセット・アドヴァンスで打ち負かそうとする。
 さらにノーマの攻撃に対してシージンググレイブの力を開放すると、鞭のようにしなる赤い刃でノーマを斬りつけた。
「クロノスに指一本でも触れてみろ、その首を跳ね飛ばしてやる」
 心美の表情は凄みを増し、ノーマに威圧感をさらに与えていく。だが、ノーマは他人を見下すかのような表情を改めようとはしなかった。ノーマに撤退の意思がないことを悟った心美は、ゾロールフリューゲルの力を開放し、“暴剣”の名が示す通りの荒れ狂ったような剣戟からフォースパリィングを繰り出す。さらに独善の触手でノーマとレーヴェに絡みつき捕らえようとする。
「バカなヤツだ。素直に逃げてれば追わないのに……!」
 心美はそう言うものの、もはやノーマたちを逃がすつもりはないようだ。一気にノーマに近づくと、天翔五輪・二天無空斬で止めを刺そうと迫る。時も運命も断ち切る剣技に込めるのは、目の前にいるノーマではなく“あり得たかもしれない可能性”。こんな悪夢は早々に終わらせ、現実へと立ち返るため、裂ぱくの気合で剣を振り下ろした。
 だが、そこをレーヴェの息吹が狙い撃ち、タイミングをずらすようにしてノーマのディストーション・ブロウが心美を襲う。
 己の身を省みずに立ち向かった心美の戦いは、確かにノーマたちを圧倒した。それでも、自身の攻撃の反動でダメージが蓄積していた状態から攻撃されては、さすがの心美も限界を自覚せざるを得なかった。
 遠ざかる意識の中でクロノスの声が聞こえた気がしたが、心美に返事をするだけの余力は残っていなかった。
 
「ミリィ、全セーフティリリース!」
「全セーフティリリース、D・F・ドラゴンチョッパー、スローターモードに移行」
 追いつめられたクロノスの方へ向かってくるように、声が響いた。駆け付けたのは、水鏡 彰ミリィ・ファーレン。まだ動けるアイドルがいたのかと舌打ちしたノーマは、一度レーヴェを上空へと上がらせる。
(天から見下して皇帝を僭称するってんなら、お前をもう一度地べたに引きずり落としてやるさ、ノーマ)
 彰はミリィとユニゾンすると、攻撃のために高度を下げた瞬間を見計らってレーヴェに飛び移ろうとする。レーヴェは暴れて振り落とそうとするが、タウロスユニットの爪がしっかり食い込み、簡単には振りほどけないようだ。代わってノーマが彰を落とそうとするが、彰はME.フラッシュストラグルで押し返す。さらにU.ディストーションブロウとミリィのサウンドブーストで追い打ちをかけ、ついにノーマを地面につき落した。
「伊達や酔狂で四つ足揃えてねぇ!」
「ノーマ、アキラの言っていた通り貧弱な臆病者ですね、一角獣の突撃がそれほどに怖いですか?」
 彰とミリィの声が、大地に転がるノーマには煽っているように感じられた。先ほどの攻防で発生した彰のダメージも、ミリィのヒールハルモニアがほとんど癒している。歯ぎしりしたノーマは、二人めがけてディストーション・ブロウを放った。
 しかし、ミリィは冷静に彰へ告げる。
「アキラ、こちらは負けません。単純な話ですが、ノーマのディストーションブロウに、ディーヴァのサポートは無いのです、出力ならこちらが上です」
 ミリィも声にうなずいた彰は、
「ドラゴンチョッパーリミッター解除! ハルモニアブレード展開……これがっディストーションブロウだっ!!」
 ノーマと同じ攻撃で対抗。同じ技同士のぶつかり合いは束の間の拮抗を見せたが、ノーマの技が押し負け、その身体を貫かれる。
「これがっ! ディストーションブロウです!!」
 ミリィが叫ぶと、彰もそれに続く。
「皇帝を僭称する悪魔ノーマ! この一角獣の騎士、水鏡彰が打ち取った!」
 だが、ノーマは「くひひっ」と嘲笑うような声を出すと、すぐに立ち上がってみせた。そして確かにノーマは倒れたはずだと動揺しているところへ、レーヴェとの連携を仕掛けた。その攻撃に、まず戦闘不能になったのはミリィ。ディーヴァとのユニゾンは確かに強力なものだったが、セブンスフォールの恩恵を受けられなかったことが、マイナスに働いてしまったのだ。今度はそちらが歯ぎしりする番だとばかりに、ノーマは彰へゆっくり近づいていく。彰はノーマが接近したことをチャンスに変えようと、ME.フラッシュストラグルで目くらまししてから、ドラケンストゥーガの一振りを浴びせかけ、もう一度U.ディストーションブロウを放とうとする。
 だが、彰がU.ディストーションブロウを見抜いていたのか、今度がノーマがディストーション・ブロウをやり返し注意を引き付けた隙をつき、レーヴェが彰に体当たりする。
 弾き飛ばされた彰に止めを刺すため、ノーマが魔法を放とうとする。だが、それを遮るように麒麟の姿が横切った。ノーマは慌ててレーヴェを呼び戻して背に乗ると、麒麟に操る相手の正体を確認する。
 それはノーマの姿を追い求め、カンタレーヴェの街を疾駆していた弥久 風花だった。
(ノーマが王様なんて悪夢よ、あんなの王様の器じゃないわ! 世の為人の為、そして何より本人の為にも大急ぎで倒さなきゃ!)
 風花はここが正念場とばかりに、真剣な表情になる。過去に戦った時は上手く渡り合えたが、今度は同じように戦えるだろうか。そんな不安が頭をよぎるが、今は全力でぶつかることが大事と思考を切り替えた。
「自称皇帝ノーマ! 私が相手よ!」
 麒麟の背に直立した風花は、死鎮刃;マイ・モータルと再刃刀クサナギの2刀を構えると、神威ワダツミで派手に一帯を打ち払って目くらましをする。その隙にノーマとレーヴェの死角となりそうなポイントに見当を見繕って、麒麟を螺旋状に走らせて接近する。風花の接近に気づいたノーマはレーヴェに迎撃させるが、風花は強引に耐えきった。さらに死鎮刃;マイ・モータルに解放させた力と再刃刀クサナギが持つ広範囲への斬撃を組み合わせ、これ以上ノーマに反撃する隙を与えないようにして間合いへ飛び込んだ。
 そして風花は、雷霆双剣で雷の気を纏わせると、なんと麒麟の背中から飛び上がった。あっけにとられたノーマに、人威フウカを発動した風花がいよいよ迫る。手にした2刀で斬りかかると見せかけノーマの視線を固定すると、竜皇のひと咬みで剣の力を開放した。ノーマの眼前には幾重もの幻の剣が現れ、竜が獲物をかみ砕くがごとき強靭な攻撃が襲いかかる。
 全力の攻撃を決めた風花だったが、着地のことなど全く頭になかった。危うく頭から地面に激突しそうになるが、どうやら麒麟が受け止めてくれたようだ。
 一方でその間についに力尽きたノーマは、レーヴェとともに地面に墜落するのだった。
 
 こうして、セブンスフォールに君臨した“皇帝”ノーマは倒された。
 何度か窮地を迎えたものの、結果としてクロノス無傷で済んだようだ。
 黒い太陽の暴走も程なくして収まり、現実の世界も守られたのだった。
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