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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ラスト・メドレー! ~レジェンドスターズ~

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ラスト・メドレー! ~レジェンドスターズ~

リアクション

 心を通わせて
 
 会場内は明るく照らされ、ステージに立つ者はいない。次のステージが始まるまでの、準備時間のようだ。場内は肩同士が触れ合うほどの距離間で観客が集っているというのに、話し声はまばらだ。
 どうやら、ここにいる誰もが、次のステージを今か今かと待ち構えているらしい。きっと、ライブビューイングを見ている人々も同じなのだろう。
 終焉の島はまだ遠く、肉眼で辛うじて見える程度。それでも確かに降りてきていることだけは、誰となく感じ取っていた。
 やがて、拍手がまばらに鳴り始めたかと思うと、音が一気に膨れ上がった。
 新たなステージが、これから始まる。
 
 ステージには、紫陽花の共鳴で咲き乱れた花畑。狩屋 恋歌はその中に、花子と二人で佇んでいた。
 ステージの内容に関して、花子とは事前に打合せが済んでいる。後は本番に集中するだけ――それでも、別の場所で戦う仲間のことを考えてしまう。それを隣にいる花子が感じ取ったのか、優しく恋歌の名を呼んだ。
(私はこちらで、少しでもお力になれるよう、頑張ります)
 気持ちを切り替えた恋歌の瞳が、照明の光を受けてきらめいた。そして口の動きで「大丈夫」と花子に告げると、優しくサンライトスマイルを浮かべた。
(私のライブでは、悪の見方を変えて、“認める”方向でアプローチを。降下速度を緩やかにできたらいいなって)
 これが、予め花子に伝えていたこと。それを表現するかのように、慈愛と輝きの笑顔でステージを晴れやかにすると、ピクシートーンで花子と歌い始めた。
「ぽかぽかお天気に こころうきうき
 晴れの日はなんだかいい気分」
 花子の演奏も手伝って、ステージは歌詞にふさわしい陽気が包み込む。晴れの日を『良いもの』と捉えた恋歌の歌声が、会場をもぽかぽかお天気で晴れやかにしていく。そこで歌詞を区切った恋歌はふと、サンライトスマイルを中断して笑顔を失くしたような表情になり、水の神獣幻詩に力を与えられたティラミスが雨を降らせ始めた。
「ぽつぽつ雨粒に こころしょんぼり
 雨が降るとなんだかいやな気分」
 雨は『悪いもの』。そう歌う恋歌の瞳が、雨粒を受けて泣いているように見えた。
「でもお花たちはうれしそう
 雨といっしょにおどってる」
 足元に視線を落とした恋歌は、自分と違って心地よさそうに雨粒を受ける花々を見て、驚いてみせる。『悪いもの』と思っていたものでも、別の視点から見れば『良いもの』に変わるのだと。同時に、フラワーフェアリーズから翼を生やしたアンサンブルたちが次々に現れ、恋歌と花子一緒に踊り出す。
 いつしか降り続いていた雨も止み、ステージを恋歌のサンライトスマイルが再び照らす。
「雨が上がって 空見上げれば
 きれいな虹のアーチ
 雨を好きになれそうな気がした」
 『悪いもの』だと思っていたものでも、見方次第でいくらでも変わる。大切なのは、認め受け入れようとする気持ち。
 恋歌の歌は、ほんの少しの優しさを持ってほしいと語りかけるように響いていた。
 
 (島を移動させれば、いいアプローチができそうだ。美女のためにライブし、さらに惚れさせる事が悪に対峙する際の最高の効率的なライブだ!)
 ステージに響いた靴音、満を持してという体で登場したのは死 雲人
 花子は瞬時に何かを悟った。ライブを見慣れているのだろう幾人かの観客も、何かを察した。アンラは努めて気づかない振りをした。
「アンラ。お前は俺のハーレムの女にしたい女だ。そして花子もな」
 雲人の唐突な発言に、事情をよく知らない観客から、どよめきが起こる。
「ふ……突然の発言に惚れたか」
 雲人が、アンラと花子に流し目を向ける。突然の発言に二人が惚れることはなかったが、観客はどよめいているようだ。
「だから、俺の女のために島を移動させるからな。安心しろ」
(――えっ、何が『だから』なんでしょう?)
(あ、惚れたという事実からのハーレム参加決定からのこの発言ということか。あーそうか)
 雲人の怒涛の畳みかけに対し、顔を見合わせたアンラと花子の思考が完全にシンクロしていたことは、誰にも知る由はなかった。
 そうした観客の困惑やアンラと花子の気持ちにもお構いなく、雲人のライブは愛のためのヴァーディのメロディで幕を開けた。
 そのメロディが周囲の情景を庭園のように塗り替えた中、奇しくもまるで対峙するかのように向き合っていたアンラと花子に向かって、雲人が近寄っていく。二人に向かって取る態度は、まるでその場を収めようとするかのもの。争いはこの穏やかな場所には似つかわしくないというように、両腕を広げた雲人は言う。
「アンラ。俺は女のために戦うから、悪に立ち向かい、大切な女を助ける。自身の魅力に気づく時が来ることを信じてな。だから立ち向かう」
 良いことを言われた気がするのに、どうしても拭い去れないちぐはぐ感は一体何なのだろう。いよいよアンラの混乱が深まっていく。もちろん、花子も混乱していた。
 そんな二人をよそに、雲人は愛しき過日を発動する。
「花子。正義は大切な人のために戦うのが当たり前だぞ」
 雲人は心を込めた歌声で、人を愛する気持ちが思い出せるようなワンシーンを演出する。今までの正義と、自分を愛してくれた出来事を思い出したようになったアンラと花子は、やっぱり言っていることは良いと思うのだが、同時に圧倒的な噛み合わなさも感じてしまった。
 ここまで熱烈にアプローチを行っていた雲人だったが、急にディストーション・バーストで自らの姿のみを周囲から見えなくする。そしてアンラと花子に耳打ちするのは、二人が思い思いのライブをすること。
 二人は一瞬だけ視線を交わしたが、すぐにアンラがステージの中央に進み出てライブを披露する。それを見た観客たちは沸き立ち、声援が会場を震わせる。次に花子が歌い始めると、会場はますますヒートアップした。
 その裏では雲人が、賢者の石と併せて人の為の歌を発動させて歌える環境を整えていたようだ。二人の背中を見て、雲人は満足げに微笑んでいる。
(音楽を聴くために。悪に堕ちた女の魅力を出すために。正義や悪より、俺は女のために歌う。アンラも花子も活躍できる様に)
 これを本人たちに聞かせれば良いと進言するのは、恐らく雲人にとっては野暮なことなのだろう。
 その内、次第に舞台に姿を現していった雲人は、鳳凰堂の御宴を振るって出現させたアンサンブルでヒロイックソングス! を奏でる。その歌が、この盛り上がりが、悪の心を変化させるような魅力を出せるように願って。
「俺のハーレムの女と認める女達ならできる。アンラも花子もな。そこに魅力もある。大切なハーレムの女を助け、できることをして魅力を出せるからだ」
 雲人が最後に言った言葉は、歓声の中に埋もれてしまったらしい。観客にアピールする二人が、雲人を振り返ることはなかった。
 だが、観客に向けたその表情は、このステージで一番魅力ある笑顔に見えた。
 
 「新しいゲートの安定化に繋がるとのことですし……終焉の島が無事に地球へ効果できるよう精一杯お手伝いしようと思います」
 空花 凛菜はそう言うと、花子ともにステージへ上がった。
 やんごとなき足運びで、緋袴の裾をはためかせることなく颯爽と現れた凛菜を見て、客席の人々無意識に居住まいをただす。
 凛菜の選んだテーマは、悪を荒ぶる魂と見立て、その魂を鎮めるための奉納を舞うこと。
「花子さん、よろしくお願いします」
 開始に先駆けお辞儀をする凛菜に、花子は同じように会釈をすると、自らを悪役に見立てた演技を始める。対する凛菜は朧芸者の符で舞芸者を呼び出すと、花子とともに気迫のこもった殺陣を繰り広げていった。
 凛菜と花子の戦いはひとつの局面を迎え、周囲には花子に敗れた舞芸者が倒れていた。追いつめられた凛菜だが、少しでも鎮魂への兆しとなるように、一心に天女の舞を捧げる。その神聖な祈りが届いたのか、やがて花子の演じる荒魂は浄化され、後には清浄な息吹が満ちていた。
「花子さん、急な共演のお願いに応えていただいて本当にありがとうございます。おかげでとても趣深い舞台に仕上がったと思います」
 物語の一幕のようなスライブを終え、凛菜は花子に感謝を述べる。花子は笑顔でそれに応えて立ち去り、その背を見送っていた凛菜は、ふと自分たちを見つめていた視線に気づく。
「こんにちはアンラさん」
 凛菜の挨拶に、アンラは無言で小さく手を振る。アンラの無言に拒絶の意思がないことを感じた凛菜は、もう少しだけ会話をしてみたいと考えた。
「ゲートが無事に地球に降りて安定したら、向こう側の世界と行き来できるようになるのでしょうか?」
 アンラはまたも無言で首を振る。その答えは、今の時点では確定できることではないということだろうか――それでも構わないと、凛菜はさらに思いを伝える。
「私はゲートの先にどんな世界が広がっているのかを考えるだけで、とてもワクワクしています!」
 ステージで見せた気品ある振る舞いから一変、年相応の可愛らしさでそう言う凛菜を見て、アンラは眩しいものを見るような目をする。
「――あなたの願いが叶うといいわね」
 柄にもないことを……そう感じながらもアンラはそう告げると、いずこかへ立ち去る。凛菜は、その背が見えなくなるまで見つめていた。
 
 「終焉の島を地球に……。なんかすっごいねぇ。悪へのアプローチ、悪への対峙のライブかぁ」
 出番を目前に控え、深郷 由希菜はぽつりと呟いた。それから考え込むような素振りで動きを止めた後、
「悪って、一般的には『わる』のイメージだけど、『力強さ』の意味があるんだって! なら、力強さの対決みたいな感じでライブしたらいいのかな?」
 出番を終えて通りかかった花子に意見を求めた。花子はしばし考えをまとめるように唸っていたが、由希菜先輩の考えた通りのするのがベストですと胸を張って答えるのだった。
 花子の言葉に自信や勇気をもらったかはともかく、由希菜はいよいよステージに立った。
「花子ちゃん! 今回、俺、珍しくロック歌うから、聞いててね!」
 ティンクアステリアで着飾った由希菜はそう叫ぶと、『未来への懸け橋』を熱唱し始めた。ドレスに散りばめられた光の粒が、その歌声を会場いっぱいに響かせていく。さらにキマイラの杖の歌声とオルトノームのサポートも相まって、由希菜の歌には力強さが増していった。
 由希菜のロックに、星獣のぽめぽめも大はしゃぎ。
「今回はぽめぽめ、大人しくしててね? 俺、頑張るから!」
 それを慌ててなだめると、歌はサビに突入した。由希菜が歌いながらウォーズヒストリーを振り回すと、武装したアンサンブルたちが戦闘のような荒々しいパフォーマンスを見せる。そこへオルトシルフィードが風を起こし、ライブの盛り上がりに一役買う。その中で由希菜が陽だまりのサンギータを発動すると、荒々しい力強さはたちまち背中を押すような温かさに変わっていく。
 それこそが由希菜の考える力強さ――弱い自分との衝突、そして弱さの克服なのだった。
 由希菜がステージを降りると、ぽめぽめが突進してくる。
「ぽめぽめ、大人しくしてて偉かったねー。よしよーし」
 よしよしする由希菜に、花子が近づく。どうやら、ぽめぽめが興奮してステージに上がらないように見守ってくれていたようだ。
「花子ちゃんもぽめぽめもふる?」
 そう言ってぽめぽめを抱き上げる由希菜に、花子は二人の時間を邪魔したくないと言ったのだが、
「ついでに花子ちゃんも撫でるー♪ 癒されるー♪」
 由希菜の前では、そんな抵抗は無意味なのだった。
 
 「単純解釈だけど、芸能界にある終焉の島が地球の島になるってことか?」
 それは舞台袖で待機していた【絆を結ぼう】のメンバー、麦倉 淳の声だった。仲間に疑問を投げかけつつ、淳はさらに続ける。
「オレたちも、様々な世界を渡ったアイドルだけど、いつもすぐ、そこの世界になじめたわけじゃない。先方にとっては最初は『悪』だったこともあったかもしれない。その世界に受け入れてもらうためには……?」
 そこで一度、話を区切った淳は、自分なりの答えとして考えたライブの主題を仲間に伝える。その内容を、ティリア・トレフォイルが素早くまとめ上げていった。
(ふむ……アイドルと異世界の者との交流……そこで起きる悪影響と、それに対する我らの在り方を示す、物語調のライブか)
 興味深いことを考えたものだと、堀田 小十郎は淳に感心し、
「これらは本当に起こり得る事……故にそれにどう向き合うか、その為の覚悟を共に示したい」
 淳の提唱する演目に賛同する。
(成程ねぇ……この物語では、俺達は穏やかに過ごす生き物を脅かす悪って訳だ)
 睡蓮寺 陽介は淳の話を聞き、賛同しつつも不敵に笑ってみせた。
「でもよ、混乱させてはい終わり……そんな玉じゃねぇだろう、アイドルってのはな!」
 アイドルにとっての善と悪は、決して目をそらしてはならないこと。テーマの重さをしっかり噛みしめた睡蓮寺 小夜も、首を縦に振った。
「わたし達が目指してきたアイドルなら、諦めない……そうだよね、みんな……」
 側では白波 桃葉も神妙な顔つきをする。
「自分は友好的にしようとしても、悪意になってしまう事もあるものね。相手の事をちゃんと理解しようと歩み寄らないと、いつまでも平行線になったりね」
 そして一呼吸置くと、一つの決意を口にした。
「この話、たしかに本当にありそうだわ。私達も気を付けなくちゃ……。アイドルが皆に不安を与えたままだなんて、そんな事ではアイドル失格よね!」
「アイドルとして僕達は今までも異世界に行って、その世界の人達と関わってきたけど……もし、今まで信頼関係が築けずに居たら
その世界を平和に出来てなかったと思う。だから僕達は初心を忘れずに、共に理解し合い、助け合うことが大切なんだよね」
 藤崎 圭も、自分なりの考えでステージに臨むことを決めたようだ。
「何が善で何が悪なのか、それはその時の状況・立場で変わっていくのかもしれない……でも、それでも、お互いが心を開こうとすれば、きっとどんな生物でも心は通じると思うの。このライブはその中のひとつ、私達アイドルが異世界に行った時に、もしかしたら本当にあったかもしれないお話。心に留めておくべき、大切な事。自分たちが好意的に接しようとしても、悪意ととられてしまうかもしれない」
 やる価値は十分にある。いや、自分たちこそがやるべきだと、麦倉 音羽は感じていた。
「この島に、地球の仲間入りしてもらうなの♪」
 皆の気持ちが一つになったことを感じ、栗村 かたりが笑みを浮かべる。
「芸能界……ひいては全世界にとって必要ならやってみるだけ」
 ティリアは素っ気ないくらいの態度だが、真っ先に演目内容をまとめ上げるくらいなのだから、やる気は十分にあるはずだ。
「私達はアイドル……皆を最後に笑顔にするのが私達の役目。たとえどんな世界の生き物であっても、恐怖や悲しみのまま放っておけないわ。このお話は私達が選ぶ理想の道……」
 そして音羽はステージに待機すると、静かに思いを口にした。
(届けましょう、私達の心をアイドルとして。伝えましょう、世界中の皆へ共に歩む未来を)
 それぞれの決意を胸に、幕が開けた。
 舞台はまず、自然に囲まれ、動物や人が穏やかに過ごす世界があったところから始まる。
 音羽が≪星獣≫恐竜の追憶で自然にあふれた景色を演出すると、その世界で静かに暮らしている人を演じる。その側では、星獣ゆきみが楽しそうに動き回り始めた。桃葉もある日の変身譚でうさぎに変身すると、星獣けだまと遊び始める。そこへ圭も、シマエナガおじさんとどうぶつずかん≪とり≫から出したスズメを放ち、星獣の雫も出演させる。圭の目には、雫がいつも以上にくつろいだ様子に見えるようだが、とりあえずはそっとしておくようだ。小夜も歌鳥・奏をステージに飛ばし、平和の演出を添える。淳もその世界に加わり、ミニうさのあかりと星獣のクラリス、どうぶつずかん≪いぬ≫から発現させたオオカミと勇敢な猟犬と平和に暮らしている演技を行う。かたりも陽気・陽怪変化でキツネに姿を変え、幻獣のひまわりと遊ぶような仕草をする。さらに小十郎の星鼠・翼を慈しむかのように、陽介の麒麟が佇んでいた。
「あらゆる獣の楽園、【恐竜の追憶】……これは、そこに生きる子達と、わたし達アイドルが織りなす『もしも』の物語です……」
 舞台が整ったのを確認した小夜はナレーションを入れると、『世界を駆けるアイドル』を歌い始めた。
 物語はさらに進み、自然豊かな世界に異世界を往来できる、アイドルという存在が来訪する場面になった。
 二人組のアイドルは、小十郎と陽介。二人にとっての異世界であるこの場所に降りた小十郎だが、その際に起こした不備で混乱を招き入れてしまう。それを演出するのは枠破りのバーンユニバース。突如、空間に亀裂が入ったかと思うと瞬く間に裂け、辺りは真っ白な空間だけが残された。
 本当に怯えていないか心配しながらも、世界の混乱からけだまたちと逃げる様子を演じる桃葉は、ナナイロフレイムで暗さを演出するような炎を生み出していく。そこへかたりがディストーション・バーストで小十郎と陽介以外の姿を隠すと同時に、ティリアが無形の怪物を発動し、極まった混乱からノイズが発生した様子を演出した。
 取り返しのつかない失態に後悔をにじませながらも、やがて小十郎は覚悟を決めた。
「皆を笑顔にしてこそのアイドルだ……こんな私だが、私もアイドルとしての本懐を果たしたい」
 その言葉を待っていたとばかりに、陽介は笑う。
「実害を伴う驚きなんて俺らが一番やっちゃいけねぇ事だ……起こした罪には、覚悟を以て向きわなきゃ嘘だってな!」
 そして、アイドルたちとノイズの戦いが始まった。
 ティリアがヒュドラーの鎖を使い、ノイズを会場を覆うほどに強大な存在として演出し、ワルプルギスの夜も交えてアイドルたちの動きを妨げようとする。加えてヒートインパクトによる炎の衝撃で戦いの激しさを、毒幻ナイトメアでノイズへの大きな不安感を、観客に植え付けていく。
 だが、アイドルたちは一歩も退かなかった。覇王の境地と蹂躙するダークロードを発動した小十郎は、ステージを飛び越え、会場全体を縦横自在に動き回っていく。そこに古武術演武・幻想紡ぎの殺陣を組み合わせ、ノイズへ果敢に立ち向かう。
 陽介も覇王の境地で高く飛び上がると、維新の乱撃で花火を乱れ咲かせて観客を魅了する。
 戦いにさらなる熱量を呼び込むように、かたりも≪式神≫舞芸:悪華鳳凰で演出を加える。
 だが、二人だけではノイズを押し留めるのが精いっぱい。ついに陽介が力負けし、衝撃で地面に叩きつけられようとした時、この世界の住民である麒麟が、陽介を受け止め助けに入った。小十郎の側には星鼠・翼が寄ってきて、ノイズに立ち向かおうとしていた。
 そして≪星獣≫ラプター・ハンティングを発動した小十郎は、ついにノイズとの戦いに勝利する。敗れたノイズは、まるで1羽の鳥のようにいずこかへと消えるのだった。
 だが、世界はいまだに真っ白なまま。そこへ戻ってきた淳は、グローグローブで大地に種をまく仕草をした。すると、大地には再び緑が戻り始める。合わせるように小夜が愛のためのヴァーディを奏で、世界の希望を演出する。
「この人達と話をしてみて分かったわ。別に私達に危害を加えるつもりでした事では無かったのだって。私達の事も理解しようとしてくれたし……皆で共に手を取り協力していけるはず。ゆきみ……大丈夫よ、怖くないわ」
 戻ってきた音羽も、キズナハミングでゆきみに落ち着きを与え、友好の意を示す。
「お互いにとってより過ごしやすい世界を目指しましょう。ほら、ゆきみ達も喜んでいるわ」
 微笑む音羽の側では、≪星獣≫ノチウダッシュをするゆきみ。その残像がキラキラと輝いているのを見ながら淳もガーヤト・アル=ハキームで星空の幻を出現させる。無数に瞬く光は、明るい未来を予感させるよう。
「同時にこれは……人と獣が結ぶ、絆の物語です……」
 最後に小夜の声が響くと、【絆を結ぼう】が作る物語は幕を閉じる。
 そして、物語に加わったメンバーが勢ぞろいする賑やかなライブが始まった。
(ライブを通して心を開く。これがわたし達がアイドルの応えです……)
 小夜は歌鳥・奏との≪星獣≫百万光年のアンサンブルで、人と獣の調和を表現し、クロニクル・クロックで物語冒頭の平和な世界を描いていく。
(芸を通し絆を結ぶ。これが己が為した悪に対する応えであり……アイドルとしての我らの覚悟だ)
 小十郎は天津鈴笛の剣を構えると、古武術演武・幻想紡ぎによる演奏演武を披露する。
(元々住んでいた生き物も、別の世界から来たアイドルも、皆が快適で穏やかに過ごせる世界を目指せるように。アイドルらしく最後は歌や踊りで皆を楽しませるよ。僕たち以外の皆にも一緒に、この一体感を分かりあえたら嬉しいな)
 思い思いのパフォーマンスを、圭のクラリティエールがさらに彩っていく。
(終焉の島が地球に降りたら、知恵と力を出し合って、芸能で幸せを生み出せる世界にしたいな)
 淳も未知なる海のマーチのアンサンブルを指揮し、船で会場を巡っていく。
(俺達は芸能を通して感動を生み、笑顔を生む。それがアイドルってものだろうさ!)
 陽介はプロメテウスの手袋で生み出した火球をジャグリングし、爆発させる。それに合わせてU.パッションハーモニーの熱を会場に届け、臨場感を与えると、麒麟と一緒にME.ワンダフルパレードで空を飛んで無数の花火を放っていった。
(お互いの良いところを知って、お互いが過ごしやすいように歩み寄ってみましょう)
 それを合図に桃葉がKSG8スターブルームを、その隣で圭はリトフルスターブルームを発動する。空と大地に咲いた花は文明と自然の象徴となって、先ほどの壮大な物語を思い起こさせた。
 それぞれに咲いた大輪から舞い散ったかのように、音羽のバード・ブーケの花びらが周囲を満たす。
 かたりも願わしきステラロギアで会場を星空の幻で包み込むと、アレキサンドロスの邪慾で地球を浮かべ、空に向かって強くアピールした。
「芸能界の人と一緒に、力を合わせて楽しく暮らせる日々が来るなの」
 そんな仲間の周囲を、雲歩きの仙術でティリアが飛び回る。黄金の雲はまるで流れ星のようにきらめき、見る者の心に希望を振りまいていた。
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