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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

ラスト・メドレー! ~華乱葦原/クロスハーモニクス~

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ラスト・メドレー! ~華乱葦原/クロスハーモニクス~

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華乱葦原・3


「にゃっほ~♪」
 シャーロット・フルールが、銀孤此花に元気よく挨拶した。彼女の後ろでは、リトルフルール改めふるーる座のメンバーがライブの最終確認をしているところだ。
「銀孤ちゃん、此花ちゃん、この舞芸合戦にふるーる座をお招きありがと☆ 葦原が平和になった記念に全力でがんばっちゃうよ♪」
「つーかシャロはいつも全力じゃねぇか。騒ぐ口実が欲しいだけだろ」
 アレクス・エメロードのツッコミを聞いて、はっとするシャーロット。目をぱちくりさせている。
「何、ばれちゃったみてぇな顔してんだ」
 アレクスが肩をすくめる。――ま。そんなシャロが好きなんだけどよ。
 誰にいうともなく呟いたアレクスの言葉は、花見客の歓声で完全にかき消えた。場を仕切る遊び人のシンから、ふるーる座の名がコールされたのだ。

「ってなわけで、銀孤ちゃん、此花ちゃんもふるーる座にごしょうたーい♪」
 歓声を浴びながら、ふるーる座のメンバーが次々と舞台へ上がる。そこでふと、シャーロットが足を止めて銀孤に訊いた。
「あ、そだそだ。絢狐ちゃんはどしたの? 姿見えないけど、お仕事? せっかくだからこの舞芸も見て欲しいんだけどにゃ~。銀孤ちゃんの晴れ姿でもあるし」
「……母上も忙しいのだ」
 銀孤はぶっきらぼうに応える。そこにあるのはもちろん人に対する憎しみではなく、照れ隠しである。
「そっか~。うし、ならアレクちゃん。記録よろしくなんだよ☆」
「へいへい、相変わらずこき使ってくれるぜ」
 アレクスがライトメモリーを片手を掲げて、頷きを返した。
「了解しましたよ、お姫様」


 いち早く舞台に上がった日向 千尋が、幻月夜の御神渡りで舞台を彩った。
 水面に映る月と桜を見ながらウィリアム・ヘルツハフトが呟く。
「花見のなかの舞芸合戦とは、なかなか風流な催しだ」
「まったくデス! 花見に芸とはこれまた乙デスね。日和ったのんびりヤローどもに一発カマして、花見大名目指すデスよ!」
 千尋が気合いを込めて客席に叫んだ。
「それでは皆様お立ち会い、デス!」
 つづいて登場した虹村 歌音が、此花を振り返って言う。
「お花見をより楽しめる舞芸かぁ。まさに“花”の名を冠するわたしたちの出番だね!」
「ふふ、言われてみればそうかもね」
 微笑んだ此花の手を取って、二人はステージをくるくると踊った。上品な着物がふわりと咲き誇る。
 此花も今日は桜稜郭の殿姫ではなく、ひとりの女の子として舞芸合戦を楽しんでいた。その様子に、客席で観覧する咲夜も大はしゃぎだ。
「お姉ちゃん、かっこいい! きれーっ! 天下一!」
 そこへ、シャーロットも舞台に登場。幻の月を指差しながら、此花と銀孤に言った。
「今日のテーマは夜桜だかんね☆ ちひちゃんが演ってくれてるのって元は2人の技じゃん? 本家本元のをどーんとまぜちゃってほしいにゃ~」
「シャロがそう言うのなら遠慮はせんぞ。此花、ひとつ魅せてやろうか」
 此花に合図を送ると、二人は揃って幻月夜の御神渡りを発動した。どーん。どーん。月が、三つになった。
「わたしたちの舞芸で、お花見をもっともっと楽しくしてあげちゃおう! ふるーる座の舞芸をとくとご覧あれ♪」
 歌音が夜桜をイメージした祭りのポップを奏でつつ、虹色夜光鍵盤を七色に光らせた。
 彼女の演奏に合わせるように、ウィリアムがひもろぎの宝剣を振るう。輝く刀身を振って笛のような音を鳴らし、ときおり地面を叩いては鐘の音を響かせる。
 ステージが少しずつ明るくなっていく。ウィリアムが天津奏で舞いの効果で照らしているのだ。いっぽう歌音は、虹色の光をだんだん抑えめにしていく。
 今回の舞芸のメインは、あくまでも花見である。桜吹雪を見てもらえるようウィリアムの光で視線を誘っていく。
 たくさんの花びらが舞い踊るなか、ふるーる座のみんなが賑やかに踊り回る。ステージの水面も楽しそうに揺れ、水面の満月が破顔する。
 ふるーる座にかかれば、幻の月だって笑いだすのだ。
「さぁ、よってらっしゃい♪ みてらっしゃい♪ 華炎の妖獣率いるふるーる座の舞芸だよっ☆」
 シャーロットの歌声が響く。

月夜に咲き
舞い踊る
美しい桜をキミにっ!


 歌いながら分身の術でシャーロットは三人に増えた。元気も可愛さも三倍だ。と思うやいなや、ポップな桜が描かれた巻物を広げれば、両隣のシャーロットが桜の木に大変身。
 踊る夜桜の宴がはじまる。
「夜であろうと賑やかに、されど美しく。この舞芸、“春告げ妖精の従者”としてまとめ切ってみせらぁ」
 アレクスが豊穣の神を祈って舞い踊り、月夜に似合う神秘的な響きを奏する。共に舞う天津神の恵みを受けて、稲穂がすくすく育ち、集まってくる白狐の群れ。
「チッヒ、やっちゃってくれ」
「任せたデス!」
 千尋が酔扇子を振れば、稲穂はたちまち桜に変わった。
「それそれっ、皆々様のお手元にも満開の桜がございますデス! 手に取るもよし、眺めるもよし。……でもせっかくデス、同じアホなら踊らにゃ損ってもんデスよ!!」
 千尋に盛り上げられて、花見客が夜桜といっしょに踊りだした。
 そんな会場を見回していた歌音が、ちらっとアレクスを見る。
「うん? なんだカノン。俺と踊ろうってか?」
「同じ巫どうしだし、アレク君と舞ってみたいなー♪」
「いいぜ。シャロ直伝の舞の腕、見せてやる。遅れんなよ」
 アレクスが大桜の舞を披露すると、歌音もまた楽しげに華の舞を踊った。葦原で生まれたふたつの舞いが共演する。それはこの葦原に住む、市井の人々と舞芸者の共演でもあった。
 二人の舞いにあわせてウィリアムが紙吹雪を飛ばし、芸器から発する光でライトアップ。舞い散る花びらのなか、踊り明かすフルールの夜。

夜は妖怪の時間♪
でも、けっして怖くはないよ


 シャーロットが歌いながら白金孔雀の大袖を翻すと、陽気を吸い込んだ幻獣のハナビちゃんが虎に成長した。ハナビちゃんの背に乗って、自らが分身した踊る桜の木を飛び回るオリジナルシャロ。空中ブランコのように枝から枝へ飛び移れば、その度に桜吹雪が舞い落ちた。
 気づけば狐に狸、春の鳥――。様々な妖怪が夜桜に集い、歌い、踊っている。


人も神も半妖も桜に集え
手をとり謳え
らすとめどれー☆

葦原の未来に幸多かれ!


 歌がクライマックスに差し掛かったところで、歌音が舞神召喚。より華々しく賑やかに見せつつ、天女の舞で美しくしなやかに、神々しい光でステージの皆を照らす。
「やれやれ。風流な催しも、すっかり騒がしい演出になってしまったな。夜の静けさが吹き飛んでしまった」
 ウィリアムが楽しそうにため息をつけば、神通天幕で雲と星の空を演出。歌音の美しさを引き立てる。
「最後は、ウィルさんと踊り明かしたいな。えへへ♪」
 歌音が差し出した手を、ウィリアムは無言のまま、しかし優しく取った。歌音をリードするようにして、いっしょに花の舞を踊る。
 ふるーる座のライブも佳境に入っていた。満を持して千尋が日華鳳凰を放つ。
 仲睦まじく飛び交う灼熱の鳥を見て、アレクスが言う。
「チッヒの鳳凰か。OK、使わせてもらうぜ」
「ボクも乗るよ~」
 アレクスとシャーロットがそれぞれ飛び乗った。暖かな火の粉を撒き散らして、二人を乗せた灼熱の鳥たちがステージを踊る。
 空中でくるりと回ってみせた二人は、そのまま軽やかに舞い降りる。先に着地していたアレクスは、後から降りてきたシャーロットにさっと両腕を差し出し、お姫さまだっこ。
「にゃはは~。ボクが抱かれちゃった☆」
 アレクスの腕のなかで、シャーロットは弾けるように笑った。

「次はわたしたちの番だね!」
「……実に酔狂な宴だ」
 ウィリアムが苦笑しつつも、シャーロットたちと入れ替わりに鳳凰へ乗った。千尋が飛燕単衣紙の紙吹雪で彩れば、歌音とウィリアムは花の舞で応える。
「此花ちゃん、銀孤さん、最後はあなたたちの番だよ♪」
 歌音がハイタッチしながら、二人と入れ替わる。
 灼熱の鳥に乗った此花と銀孤は、ステージを飛び回りながら、会場を見回した。花見客は一体となって盛り上がっている。そこに人も半妖も区別はない。アイドルたちの舞芸が、葦原に暮らす者たちの心をひとつにしたのだ。
 鳳凰から二人が着地すると、客席から大歓声が巻き起こる。此花は元気よく両手を振ってみせた。銀孤はいくぶん恥ずかしそうにしながら、それでも片手を上げて観客の声に応えた。


☆☆☆



 舞台袖にはける前に、アレクスがライトメモリーを銀孤に差し出した。
「ばっちり記録しといたぜ」
 銀孤はそのハードカバーのノートを受け取った。ぱらぱらと中身を確認していると、シャーロットが弾ける笑顔を向けた。
「よく撮れてるじゃん☆ 絢弧ちゃんへのプレゼントにしよっ!」
 ふるーる座とのライブの思い出がたくさんつまったノート。どのページにも、楽しいひと時が映し出されている。
「……感謝する」
 銀孤が、顔をそむけるようにして頷いた。そして足早に舞台袖へと去っていった。

 彼は後に気づくことになる。ライトメモリーの最後のページには、銀孤の照れくさそうな微笑みが、新たに描かれていることに。
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