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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

レジェンドハーモニクス!

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レジェンドハーモニクス!

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■ネヴァーランドの危機……なんだよね?

「じゃあベルちゃん、神様はぼくに任せてねぇ」
「ええ、後ろは任せましたわ、ノーラ」
 服の裾をひらり、と舞わせ、リーザベル・シュトレーネが吸血鬼一族の始祖、ドラキュラ女伯爵の元へ向かう。それを見送って、ノーラ・レツェルが身体を覆うことで透明になったように見せかけられるマントを纏い、神様の元へ向かう。
「この歌が、ベルちゃんの力になるように」
 そして紡がれる、仲間を勇気づける歌。その歌を背に胸を張って、リーザベルがドラキュラ女伯爵の前に姿を晒し、服の裾を摘んで優雅に礼を行う。
「噂に誉れ高い始祖様に拝見し賜ること、恐悦至極でございます。お忙しいとは存じておりますが、わたくしともお話して下さいませ」
 摘んでいた裾を離した直後、掌の中で作り出した複数の弾丸をドラキュラ女伯爵へ向けて放つ。直後に炸裂してさらに無数の弾丸となったそれらを、ドラキュラ女伯爵は避けようともせずにその身で受ける。
「私に牙を向ける理由を、聞いてもよろしいかしら」
 あくまで微笑んでいるように見えるドラキュラ女伯爵に対し、リーザベルは震えを悟られないように振る舞いながら口を開く。
「はい。神は確かにいけ好かない存在でありますが、今現在の世界の方が私にとって望ましい姿であります故。
 それと……私の後悔を始祖様にも、味わっていただきたくないと」
「後悔?」
「はい。かつてはわたくしも、対話すらせずに全てを切り捨ててまいりました。その時は正しいと思っていましたが、今は少し、後悔しております。始祖様に同じ思いを、していただきたくないのです」
 リーザベルの話を聞き終えたドラキュラ女伯爵が、くすくす、と笑った。
「あら。あなたは私が、対話もなしにあのクソ野郎を憎んでいると思っているのかしら? まぁ、それを知るすべは無いのだもの、仕方ないわよね。
 もちろん、聞いたわよ? 何故このような、生きてもいない玩具を作ったのか、とね。そしたらあのクソ野郎、なんて答えたと思う? 『この形こそが理想の幸せの形なのさ』とね!」
 威圧がリーザベルに向けられ、咄嗟にリーザベルが盾を張って防ぐ。それでも威圧はリーザベルの皮膚を裂き、白い肌に血を流した。
「……なるほど。始祖様は、変わられていないのですね」
 確かに昔の神様であれば、そう思っていただろう。しかし今はアイドルたちの関与の結果、世界には『死』が生まれ、神様も心を変えた。その中で自分も少なからず変わっていたのだとリーザベルは思い至る。
(言葉による説得は無理でしょう。ならば実力行使……といきたいところですが、今ので力の差は歴然。体力を減らすことすら厳しいかもしれませんが……)
 ちら、と背後を見る、戦闘が苦手なはずのノーラが懸命に、神様に歌を届けようと戦っている。
「ノーラならばこう言ったでしょうね。『最後まで諦めない』と。その言葉、頂戴しますわ。
 ――ええ、わたくしは決して、諦めなどいたしません!」
 流した血の魔力を無数の蝙蝠に変えて、ドラキュラ女伯爵を押し潰さんと仕向ける――。

「あー危ない危ない、避けて避けてー」
 のんきにそう口にしながら、神様が聖なるびーむを発射する。かすっただけでも焼き尽くされそうな威力に、ノーラは当たらないようにするので精一杯だった。
「神様には神様の、ドラキュラ女伯爵さんにはドラキュラ女伯爵さんの信念があることはわかってる。……でも、ぼくにもぼくなりの信念がある。希望を胸に、平和な未来を目指して、誰かと誰かの懸け橋となれるように。そして幸せな気持ちで今日にお休みと言って眠る毎日にするために――!」
 びーむを避け、ノーラが果敢に神様へ呪いを弱める歌を届けようとする。
「ぼくは最後まで諦めない、明日のぼくに自信を持って会いたいから」


 ――そんな、ネヴァーランドの危機が間近に迫っている、のだが。
「……ねえ、どうしてこんな事になってるの!?」
「ヒメに聞くなこのクソアマ~! とりあえずそこのブッサイクな兄弟ブッ殺して白いクソ神元に戻させろ~!」
「まぁまぁヒメちゃん、さっき聞いた通りこのブッサイク兄弟ブッ殺しても呪いは解けないらしいから、このまま居させてあげてー。あっ、ショートケーキ差し入れにもらったよ、食べるー?」
「テメェらブッサイクブッサイクってうるせぇよぉ! つうかこんな顔にしやがったのはテメェらの神と吸血鬼のガチンコバトルのせいだろうがぁ!」

 空中実況席では、おろおろとするレイニィ、今にもグリム兄弟をミンチにしたそうなヒメ、楽しそうな様子で差し入れにもらった毒々しいほどカラフルな色合いのショートケーキを振る舞う✝タナトス✝、そして兄弟揃って仲良く死にかけていた所を助けられ連れてこられたグリム兄弟でもうめちゃくちゃだった。
「はい、始まりました神様、ドラキュラ、アイドル達のハチャメチャバトル。というわけで✝タナトス✝さん、コメントをどうぞ」
 ちゃっかり✝タナトス✝の隣に収まっているリリィ・エーベルヴァインにマイクを向けられ、✝タナトス✝がぜんぜん困ってない困った顔をして答える。
「えぇ~僕ぅ~? まぁ、なんだかんだでアイドル達が勝つと思うな~。だって僕たちに勝ったんだよ? いくら始祖だからって吸血鬼が勝てるわけないじゃん」
「クソタナテメェ~! 今すぐこっから落ちろそして死ね!」
「ハハハ、いまだとうん、落ちたら死ぬかなー。でも大丈夫、ラファエルたちが守ってくれるから」
 ✝タナトス✝に「ね?」と呼ばれた守護天使たちが頷くが、レイニィには彼らの顔がかなり引きつっているように見えた。つまり事態はそれだけ深刻ということだ。
「✝タナトス✝さん、コメントどうもありがとうございます。さーてこの戦い誰が勝つかな?」
 リリィが小型のオルガンで即興の音楽を鳴らし、チョコミント味の紅茶でふぅ、と喉を潤す。
「先程のお話を聞く限り、神様と始祖さんの間に禁断のカンケイがあったわけではないのですね?」
「うん、そういうのじゃないよ。僕も神様もあの時はそれが正しいと思っていたし、話を聞くつもりも無かったし。そしたら今度は始祖の方が話を聞くつもり無くなっちゃって、まぁでも自業自得だよねーあはははは」
「笑ってる場合なの!?」
 小鈴木 あえかの問いに✝タナトス✝が笑って答え、レイニィがツッコミを入れる。
「喉元を食い千切ろうとするってのが不自然で、私は始祖さんが神様にファーストキスをしたのではと思いました」
「確かあの時は、四肢を吹き飛ばされてたんじゃなかったかなー。それでも生きてたなんてやっぱり神だよねー。流石、人間から生きたまま芸能神になっただけのことはあるよ、うん」
「えっ、そのルートってあるんですか? てっきり死後召喚されて芸能神になるのかとばかり」
「あるみたいだよー。よっぽどがんばった人はそのまま芸能神になれちゃうんだって。だから神様もそれだけの人を殺したくなくて、手加減してたんじゃないかなー。その結果吸血鬼の始祖に生まれ変わって今に至る、ってとこ」
「始祖さんはとても器量の大きい方でした。そんな素敵な方があれほど神様を恨むのには、どんな理由があるんでしょう」
「流石に人間だった頃のまではわからないかなー。それはもう、本人に聞いてみるしかないよ。
 はい、ショートケーキとチョコミントティーをどうぞ。僕たちはここで事の成り行きを見守っていよう?
 大丈夫、今回もきっと、何とかなるさ」

 すぐ近くで、一見まともそうに聞こえて実に頭のおかしい会話を交わしている者たちをケッ、と見遣り、グリム兄弟の兄が口を開く。
「何なんだ、この世界は」
「改めて、狂ってやがるぜ、ったく」
 弟も口を開いたところで、彼らを助けここに連れてきた千夏 水希が二人に向けて口を開いた。
「ま、私もこんな状況、半笑いで見てるしかないわ。決着がつくまで暇してるのも何だし、ねぇ、私の創作の童話、聞いてくれない? あんたらお話づくりのプロなんだろ、感想聞かせてよ」
「あぁん? ……ケッ、勝手にしやがれ」
 プイ、とそっぽを向きつつ、耳はこちらに向けているのを確認して、水希は自作の童話を披露する――。

 身体に醜い傷を持ち、瞳に悪魔を宿らせた姫は、誕生日に13番目の魔女に呪いをかけられ、眠りに落ちます。
 ですが、そんな姫を助ける王子様は誰もいませんでした。百年の眠りを経て、荒廃し茨に囲まれたお城で目覚めた姫は、自分は誰にも愛されていないと理解してしまいました。
 そしてその醜い傷も、瞳に宿る悪魔も全て、いつも優しかった12人の魔女と王妃の所業だったことを知ります。
 なにもかも恨み憎んだ姫は自らも魔女となり、手始めに王妃の墓を暴いて業火の炎に包んでから、12人の魔女達を探します。
 魔女を見つければ殺しました。無残に、命乞いをしても、関係のない魔女でも、もう存在が許せない。
 しかし最初の目的を忘れるほど魔女を狩った頃、姫は王子様に出会います。返り血が黒に染まり、瞳が濁り、傷だらけになった姫を、放っておけないと言ってくれたのです。
 その心が姫の心を救いました。

 ……でもその愛も、永くは続きませんでした。
 またも魔女の呪いが、今度は王子様を永遠の眠りに落としたのです。
 姫はまた歩き始めます。魔女の骸を踏みつけ、果て無き荒野を永遠に。愛する人の目覚めを願う魔女殺しの魔女、茨姫――。


 話し終えた水希に振り返り、グリム兄が腕を組んで感想を口にする。
「救いのねぇ話だな。けど、捻って怖いものにしてるとこはいいと思うぜ」
「だよな。やっぱ物語は怖いものでないとだぜ。それがやりたくてバビプロ入ったようなもんだしな」
「おい! それは黙ってろって言ったろ!」
「いてっ! す、すまねぇ兄者」
 勝手にバビプロ参加動機をしゃべったグリム兄弟を、水希が「ほんとバカだなこいつら」と言っている目で見つめる。
(ま、これでひとつ、わかったわ。後はアンラが何をしたいか、か……)
 アンラ・マンユ。善悪二元論の絶対悪と同名。そんな彼女が何故にバビプロを従え、世界を変えようとしているのか――。
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