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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

レジェンドハーモニクス!

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レジェンドハーモニクス!

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■ライブステージ、決着

「……ふぅ。私としたことが、少々荒ぶってしまったようだ」
 ハンカチで額に浮かんだ汗を拭うMr.ウィンターは未だ平静を装っているように見えるが、上空の青のゲージはここにきて減少幅が大きくなっていた。反対に赤のゲージは回復を受けており、形勢は既に逆転していた。

「なぁ、あのオッサン誰だ? 会ったことも見たことすら無いんだが」
「大物って話だし、もしかしたらどこかで見たことあるかもしれないけど、覚えてないわ。だってここはディスカディアだもの」
「ハハッ、それもそっか。本当は凄いやつかもしれねぇけど、ここじゃ無名だもんな」

 そこへ、ハルとそんな会話を交えた龍造寺 八玖斗がDフレームに乗りながら会場を巡りつつ、パフォーマンスを混ぜながら観客に問いかける。
「あのオッサン誰ですか? 俺に教えてくれませんか?」
 問いかけられた観客は手を振り首を振り、知らない興味ないの一点張り。そうして観客との一体感を作り上げた八玖斗がハルモニアを開放し、観客をステージから浮き上がらせた状態でライブを続ける。

 敵味方だったけど戦う内に芽生えた信頼
 溢れる母性は皆喝采
 そんなDDを無名な奴が襲って良い訳がない

 あのオッサン誰ですか?
 あのオッサン誰ですか?
 あのオッサン誰ですか?


「……ガキが、調子に乗るなよ。あと少しで貴様らのステージとやらも消えて無くなるぞ」
 散々煽られたせいか、Mr.ウィンターがこれまで見せることのなかった邪悪さを押し出して告げる。しかしそれに対しても、八玖斗は涼しい顔でMr.ウィンターに呼びかけた。
「でも認めてはいるんだぜ? わざわざ捨て駒としてこの上に、D.D.を立たせたのがお前の手腕なんだから」
「…………」
 Mr.ウィンターは無言だったが、その無言こそが雄弁に語っていた。
(ま、そういうことか。ドライバー破壊の方は仲間が阻止してくれてる。後はこのオッサンがどんな末路を見せてくれるか、楽しみだ)
 性格悪いがな、と付け加えて、八玖斗がステージを後にする。次いでステージに上がったのは、死 雲人だった。
「おい変態ジジイ。お前のライブは所詮、小細工やユニゾン頼りに過ぎない。それにお前はさっき、溢れんばかりの愛が、と言ったな。
 なら、俺がその溢れんばかりの愛ってやつを、お前に思い知らせてやる」
 雲人の周囲に影が集まり、黒く輝く巨大な衣装となって現れる。邪悪よりもさらに深く、吸い込まれていくような錯覚にMr.ウィンターが無自覚な身震いを起こした。
「もはやここに、お前の居場所はない。お前の存在は無に帰すのだ」
 言い放ち、魂の輝きを伴った先進的で独創的なダンスで、会場を支配する。そして、D.D.のすぐ近くまでやって来た雲人がD.D.をダンスに誘えば、D.D.がその手を取ってステージに上がった。
「ママ!? そいつは――」
「まぁまぁ。ここで乗っておけば、あのオッサンにトドメを刺せるわよ」
「そうそう。つうわけだから一芝居、付き合ってくれ。な?」
「…………そういうことなら」
 目論見を理解したダイヤモンドが手を引っ込める。そのままハル、アンバー、ダイヤモンドと共にダンスを踊り、存在感を存分にアピールした雲人がステージの中央で観客に呼びかける。
「おい、舞台に上がりたい奴、誰でもいい! 遠慮はいらん、上がりたい奴は上がってD.D.の元へ行け!」
 扇動された観客がワイワイとステージに上がり、D.D.とハル、アンバー、ダイヤモンドを囲む観客の輪が形成された。そしてMr.ウィンターはステージの端に、あと一歩で落ちてしまうところまで追い詰められた。
「さあ、ここがお前の墓場だ。……もっとも、泣いて命乞いをすれば見逃してやらんこともないぞ?」
 Mr.ウィンターの前に立ち、雲人が不遜な笑みでもって問いかける。
「……貴様ァァァァァ!!」
 邪悪さをそのままに、Mr.ウィンターが掴みかかる。
「フン」
 雑魚をあしらうように、雲人がMr.の頬を張ってステージの床に叩きつける。
「俺とお前とでは、背負っているものが違う」
 踵を返した雲人の元へ、D.D.とハル、アンバー、ダイヤモンドが駆け寄る。その瞬間上空の青のゲージがパキーン、と音を立てて粉々に崩れ去り、ここに勝敗は決したのであった――。


「ディスカディアはネオンとビル明かり、熱い音で満ちる世界。そして今、自由と自然を育み始めた。
 そこに押し付け、強要する『エセ紳士』なんて『お呼びじゃない!』のさ」
 D.D.を伴い、倒れ伏したまま呆然とするMr.ウィンターへアーヴェントが告げる。
「貴方様の突然割って入ろうとする振る舞い、それこそ紳士にあるまじき行為でありましょう。
 まずはこの世界を学んでいただきたく思います。そう……バブみから」
 続いて告げた風華に頷いて、D.D.がMr.ウィンターの頭をそっと抱え上げ、自らの膝に導く。
「あなたのおかげで、私はこの子を……スターチャイルドを守るという使命に目覚めました。
 ありがとう、これは私からのお礼です」
 Mr.ウィンターの後頭部とD.D.の太腿が触れた瞬間、Mr.ウィンターの瞳がカッ! と見開かれた。
「おぉぉ……何だこの、天にも昇るような心地は――ハッ!

 こ、これこそが『天バブ』……!」


「最後までダセェ語彙だぜまったく。あんなヤツさっさと蹴り飛ばしちまえばいいだろが」
「私もできたらそうしたいけど、どうせ懲りずにやって来ると思うから。
 それなら、ママの心をわからせた方が、また何か悪さしようって時に効果あるかもしれないじゃない?」
「なるほどな。ママの御心、素晴らしく思う」

 こうして、『バブみ』を教えられたMr.ウィンターは芸能界へ戻っていったのであった。
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