レジェンドハーモニクス!
リアクション公開中!
リアクション
■狡猾なる紳士、Mr.ウィンター
「まったく、大人をからかうものではないよ。
……しかし、そういうところも君たちの輝きだ。そしてその輝きは私の手にかかることによってさらに増す」
歯の浮くような台詞を恥ずかしげもなく言い、Mr.ウィンターがバチッ、とウィンクを決める。
「うげぇ~気持ち悪ぃ~!!」
「なぁにアレ。古臭っ」
観客はこぞってドン引くが、Mr.ウィンターはそんな観客の反応を自分に対する注目の表れと取っていた。
(フフ……ライブで白黒つける、悪くない。私が負けることはないからね。
だが、私は任された仕事は確実にこなす主義なのでね。君たちには内緒で、策を弄させてもらうよ)
一瞬、眼光が鋭くなる。視線の先には今回の標的、D.D.の姿。
「D.D.、私と君の子供をここに居る皆が祝福してくれているよ」
「この子はあなたの子供なんかじゃないわ~! 絶対に渡さないんだから!」
ぷんぷん、と怒りを露わにするD.D.。しかし今も、彼女の耐久力を示す『バブみゲージ』は減り続けていた。
「ちっ、アイツのディスコードがママのソウルドロップを汚染してやがる。早く止めねぇと!」
「慌てるな、焦れば奴の思う壺だ。私たちは奴の言動に惑わされず、私たちのハルモニアを聞かせればいい」
「へっ、わかってらぁ! ダイヤモンド、ライブじゃ負けねぇぞ!」
「勝ち負けに躍起になるのは悪い癖だぞ、アンバー」
アンバー・ベース、ダイヤモンド・ブレイドがそれぞれ楽器を携え、ハルモニアの光を自らに宿らせる――。
「っ……、私も芸能人だけど、流石に年期が違うね……!」
ステージに上がった途端、絡みつくように襲ってくるディスコードに渋谷 柚姫が顔を歪ませる。これだけ強力なディスコードを前にして、自分らしいライブができるかどうか、正直自信はなかった。
「でも、せっかく平和になったディスカディアを、壊させるわけにはいかない! ここは唯の故郷でもあるんだから!」
くるり、と振り返り、同じく顔を歪ませていた羽鳥 唯と向き合う。
「行くよ、唯! 頼りにしてるからね!」
「はい、ユズキ。私も頼りにしています。頑張りましょう!」
二人の手が重なる。その時には柚姫も唯も、ディスコードに顔を歪ませるようなことは無くなっていた。
「そう、唯となら」『ユズキとなら』「どんな相手にだって、立ち向かえる!」
唯がユニゾンし、ハルモニアの光を発する電子管楽器を柚姫が吹けば、伸びたハルモニアがそれぞれ音源となって複数の音色を同時に奏でる。ステージには柚姫のみが立っていながら、まるでオーケストラが演奏を行っているかのように観客の目には見えていた。
「ほう、これはなかなか。少々侮っていたことは認めよう。
では……そんな君たちに敬意を表して、これはどうかな?」
パチン、とMr.ウィンターが格好をつけて指を鳴らせば、柚姫たちが行ったのと同じようにディスコードが伸び、伸びた先で音源となって複数の音色を同時に奏で始める。ハルモニアとディスコードがステージの中央で激しくぶつかり合い、それも新たな音楽となって観客を沸かせた。
(この人……あえてこっちの演奏に被せることで、私たちが観客のレスポンスを受けられないようにしている!?)
本来ならば柚姫と唯の演奏に対して受けられるはずのレスポンスが、Mr.ウィンターが割り込んできたことによって二人の演奏に対してに変わってしまい、結果としてMr.ウィンターへの注目を集めることとなってしまった。
「ハラスメントの部分は子供っぽいって思ってたけど……こういうところは、流石ベテランって感じだ……!」
「素直に相手への尊敬を抱けるのは、素敵なことさ。……さ、お遊びはここまでだ。ここは大人のステージ、子供は退場願おう」
Mr.ウィンターがもう一度パチン、と指を鳴らすと、音源からディスコードが放たれる。複数の音源から同時に放たれるディスコードは二人の音に絡みつき、身動きを取れなくしてしまった。
「これじゃ、思うように歌えない……! せっかく、唯と一緒に歌おうとしていたのに……!」
「時には挫折も必要だ。そうして這い上がった先でまた会おう。……もっとも、その機会があるとは限らないがね」
「Mr.ウィンター、本当に凄いライブだ。彼の実力は本物だ」
ステージ上で存在感をアピールするMr.ウィンターに、アーヴェント・ゾネンウンターガングが心からの称賛を送る。
「だが、その音はここ、ディスカディアには合っていないように思う。皆が聞きたいのはもっと別の、熱く感じさせてくれる音だろう」
スッ、と彼の手元に、天草 燧からギターが渡される。ありがとう、と礼を述べてアーヴェントがギターを受け取り、次いで燧は合歓季 風華へ、マイクを手渡す。
「お二人ならばきっと『ディスカディア』を奏でられます。いってらっしゃい、ネムさん」
はい、と頷いた風華がマイクを受け取り、そして燧が光の粒子となってマイクに取り込まれ、ハルモニアの光を放ち始める。
「ほほう、実に見目麗しい淑女。ぜひ私と一夜の語らいをいかがかね?」
Mr.ウィンターの先制攻撃にも、動じた素振りを見せること無く風華は周囲に展開させた球状の電子楽器から音色を放ち、マイクを通してライブの開始を告げる。
「ではこれより、星の生まれる日の祝祭を」
頭上に飛ばしたドローンから光が伸び、アーヴェントを照らす。セミフォーマルな衣装で丁寧に観客へ一礼した――と思いきや、構えたギターからノイズ混じりの音色を放って、観客の期待に応える。
「さあ始めようか、ディスカディアのライブを!」
そのままロックなナンバーを奏で、ステージをアクロバティックに、かつ雅さを纏ったパフォーマンスで観客の注目を集める。Mr.ウィンターはここでも、注目を独占させまいと自身のパフォーマンスをアーヴェントたちに向けている視線に被せようとするが、二人の放つハルモニアがそれを阻止する。
(……私が押し負けている、だと……?)
自由にダンスを行えず、やむなくMr.ウィンターが自陣に引き返す。妨害が入らなくなったことで二人の演奏はさらに輝きを増し、風華の手にしたマイクから飛んだ光が観客の手元に取り付き、光の輪となって現れた。
「いいぞー! もっともっと盛り上げてこうぜー!」
「最高ー!!」
光の輪は観客にステージへの一体感をもたらし、観客によってステージ全体が光を放つかのように輝いていった。いまはもう一人として、Mr.ウィンターのパフォーマンスに視線を向けない。それによってステージ上空に示された青のゲージが減少を始めていき、反対に赤のゲージは減少を止めた。
(よし、頃合いだ)
場が整ったのを見計らい、曲を転調させる。流れてきた音楽に観客が、おぉ、とどよめきを漏らした。
「そう、君たちも聞き覚えのあるナンバーだ。もちろん本人にも歌ってもらいたい。そうだろう?」
震えんばかりの歓声が生まれる。その歓声を手土産に、アーヴェントがD.D.をステージへ手招きする。
「あはっ♪ やっぱりライブは、こうでなくちゃね!」
嬉々としてステージに上がったD.D.が二人の間に入り、観客は要求されるまでもなくコールを打って出迎える。
キュンと うずく 胸の鼓動は Lovin’youの あかし♪
熱く滴る 私の奥(そこ)へ くちづけを――
そして紡がれる刺激的な音色に、観客は痺れたように身体を震わせ、力の限り叫び、腕を振る。人によっては下品に映るかもしれない、しかしこれこそが――。
「これが、ディスカディアだ!」
「まったく、大人をからかうものではないよ。
……しかし、そういうところも君たちの輝きだ。そしてその輝きは私の手にかかることによってさらに増す」
歯の浮くような台詞を恥ずかしげもなく言い、Mr.ウィンターがバチッ、とウィンクを決める。
「うげぇ~気持ち悪ぃ~!!」
「なぁにアレ。古臭っ」
観客はこぞってドン引くが、Mr.ウィンターはそんな観客の反応を自分に対する注目の表れと取っていた。
(フフ……ライブで白黒つける、悪くない。私が負けることはないからね。
だが、私は任された仕事は確実にこなす主義なのでね。君たちには内緒で、策を弄させてもらうよ)
一瞬、眼光が鋭くなる。視線の先には今回の標的、D.D.の姿。
「D.D.、私と君の子供をここに居る皆が祝福してくれているよ」
「この子はあなたの子供なんかじゃないわ~! 絶対に渡さないんだから!」
ぷんぷん、と怒りを露わにするD.D.。しかし今も、彼女の耐久力を示す『バブみゲージ』は減り続けていた。
「ちっ、アイツのディスコードがママのソウルドロップを汚染してやがる。早く止めねぇと!」
「慌てるな、焦れば奴の思う壺だ。私たちは奴の言動に惑わされず、私たちのハルモニアを聞かせればいい」
「へっ、わかってらぁ! ダイヤモンド、ライブじゃ負けねぇぞ!」
「勝ち負けに躍起になるのは悪い癖だぞ、アンバー」
アンバー・ベース、ダイヤモンド・ブレイドがそれぞれ楽器を携え、ハルモニアの光を自らに宿らせる――。
「っ……、私も芸能人だけど、流石に年期が違うね……!」
ステージに上がった途端、絡みつくように襲ってくるディスコードに渋谷 柚姫が顔を歪ませる。これだけ強力なディスコードを前にして、自分らしいライブができるかどうか、正直自信はなかった。
「でも、せっかく平和になったディスカディアを、壊させるわけにはいかない! ここは唯の故郷でもあるんだから!」
くるり、と振り返り、同じく顔を歪ませていた羽鳥 唯と向き合う。
「行くよ、唯! 頼りにしてるからね!」
「はい、ユズキ。私も頼りにしています。頑張りましょう!」
二人の手が重なる。その時には柚姫も唯も、ディスコードに顔を歪ませるようなことは無くなっていた。
「そう、唯となら」『ユズキとなら』「どんな相手にだって、立ち向かえる!」
唯がユニゾンし、ハルモニアの光を発する電子管楽器を柚姫が吹けば、伸びたハルモニアがそれぞれ音源となって複数の音色を同時に奏でる。ステージには柚姫のみが立っていながら、まるでオーケストラが演奏を行っているかのように観客の目には見えていた。
「ほう、これはなかなか。少々侮っていたことは認めよう。
では……そんな君たちに敬意を表して、これはどうかな?」
パチン、とMr.ウィンターが格好をつけて指を鳴らせば、柚姫たちが行ったのと同じようにディスコードが伸び、伸びた先で音源となって複数の音色を同時に奏で始める。ハルモニアとディスコードがステージの中央で激しくぶつかり合い、それも新たな音楽となって観客を沸かせた。
(この人……あえてこっちの演奏に被せることで、私たちが観客のレスポンスを受けられないようにしている!?)
本来ならば柚姫と唯の演奏に対して受けられるはずのレスポンスが、Mr.ウィンターが割り込んできたことによって二人の演奏に対してに変わってしまい、結果としてMr.ウィンターへの注目を集めることとなってしまった。
「ハラスメントの部分は子供っぽいって思ってたけど……こういうところは、流石ベテランって感じだ……!」
「素直に相手への尊敬を抱けるのは、素敵なことさ。……さ、お遊びはここまでだ。ここは大人のステージ、子供は退場願おう」
Mr.ウィンターがもう一度パチン、と指を鳴らすと、音源からディスコードが放たれる。複数の音源から同時に放たれるディスコードは二人の音に絡みつき、身動きを取れなくしてしまった。
「これじゃ、思うように歌えない……! せっかく、唯と一緒に歌おうとしていたのに……!」
「時には挫折も必要だ。そうして這い上がった先でまた会おう。……もっとも、その機会があるとは限らないがね」
「Mr.ウィンター、本当に凄いライブだ。彼の実力は本物だ」
ステージ上で存在感をアピールするMr.ウィンターに、アーヴェント・ゾネンウンターガングが心からの称賛を送る。
「だが、その音はここ、ディスカディアには合っていないように思う。皆が聞きたいのはもっと別の、熱く感じさせてくれる音だろう」
スッ、と彼の手元に、天草 燧からギターが渡される。ありがとう、と礼を述べてアーヴェントがギターを受け取り、次いで燧は合歓季 風華へ、マイクを手渡す。
「お二人ならばきっと『ディスカディア』を奏でられます。いってらっしゃい、ネムさん」
はい、と頷いた風華がマイクを受け取り、そして燧が光の粒子となってマイクに取り込まれ、ハルモニアの光を放ち始める。
「ほほう、実に見目麗しい淑女。ぜひ私と一夜の語らいをいかがかね?」
Mr.ウィンターの先制攻撃にも、動じた素振りを見せること無く風華は周囲に展開させた球状の電子楽器から音色を放ち、マイクを通してライブの開始を告げる。
「ではこれより、星の生まれる日の祝祭を」
頭上に飛ばしたドローンから光が伸び、アーヴェントを照らす。セミフォーマルな衣装で丁寧に観客へ一礼した――と思いきや、構えたギターからノイズ混じりの音色を放って、観客の期待に応える。
「さあ始めようか、ディスカディアのライブを!」
そのままロックなナンバーを奏で、ステージをアクロバティックに、かつ雅さを纏ったパフォーマンスで観客の注目を集める。Mr.ウィンターはここでも、注目を独占させまいと自身のパフォーマンスをアーヴェントたちに向けている視線に被せようとするが、二人の放つハルモニアがそれを阻止する。
(……私が押し負けている、だと……?)
自由にダンスを行えず、やむなくMr.ウィンターが自陣に引き返す。妨害が入らなくなったことで二人の演奏はさらに輝きを増し、風華の手にしたマイクから飛んだ光が観客の手元に取り付き、光の輪となって現れた。
「いいぞー! もっともっと盛り上げてこうぜー!」
「最高ー!!」
光の輪は観客にステージへの一体感をもたらし、観客によってステージ全体が光を放つかのように輝いていった。いまはもう一人として、Mr.ウィンターのパフォーマンスに視線を向けない。それによってステージ上空に示された青のゲージが減少を始めていき、反対に赤のゲージは減少を止めた。
(よし、頃合いだ)
場が整ったのを見計らい、曲を転調させる。流れてきた音楽に観客が、おぉ、とどよめきを漏らした。
「そう、君たちも聞き覚えのあるナンバーだ。もちろん本人にも歌ってもらいたい。そうだろう?」
震えんばかりの歓声が生まれる。その歓声を手土産に、アーヴェントがD.D.をステージへ手招きする。
「あはっ♪ やっぱりライブは、こうでなくちゃね!」
嬉々としてステージに上がったD.D.が二人の間に入り、観客は要求されるまでもなくコールを打って出迎える。
キュンと うずく 胸の鼓動は Lovin’youの あかし♪
熱く滴る 私の奥(そこ)へ くちづけを――
そして紡がれる刺激的な音色に、観客は痺れたように身体を震わせ、力の限り叫び、腕を振る。人によっては下品に映るかもしれない、しかしこれこそが――。
「これが、ディスカディアだ!」