天歌院玲花全国反省ツアー
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リアクション
■2-1.つかの間のふれあい
超玩都市オキナワ。ここでもまた玲花にトラブルが降りかかるのだが、それとは全く無縁に追い詰められる者も居た。
「な、なんでこんなことに……」
眩しく降り注ぐ日差しの中で、瀬那覇 智里は背筋に冷や汗をかきながら凍りついていた。目の前にいるのは海藤 キョウヤ。彼女の想い人でもあり、歳の離れた男の子でもあり、そして、
――こんな姿、見られたくなかった……!
自分の本当の姿を隠したかった相手である。姿が見えた瞬間隠れようともしたのだが、パートナーでもある近衛 詩歌によって力づくで阻止されてしまった。
「キョウヤ。悪いんだが瀬那覇はDマテに不慣れでな、できればフォローを頼みたいんだが……」
そう告げる行坂 貫に対して恨み言の一つでも言いたくなった彼女であったが、流石にこの状況ではそうもいかない。
「…………なるほど。ああ、分かったよ」
キョウヤは少しばかり考える素振りを見せた後、素直に頷いてみせた。この場にはリュウェル・フリードマンも同席している。貫、詩歌、リュウェル。こう三人も揃ってしまえば、いかに鈍感な人物であろうとも気づこうものである。
「さっ、ちーさんもキョウヤくんもいきましょう! せっかくのゲームです、楽しまなきゃソンですよ!」
貫と詩歌は引き合わせるまで。後の細かいサポートはリュウェルに任せてと、彼らはそのまま別行動を取る流れだ。
気まずくもある空気を砕くようにして、リュウェルが無邪気に二人の手を引く。彼女は彼女でどこかそわそわした素振りを見せながら脱出ゲームに挑もうとしている。この状況からして、導かれる結論は一つしかない。
――端的にいうとハメられた、というやつである。
本当の自分を未だ隠していたかった智里。本当の姿を見せてほしいと願ったキョウヤ。いずれにせよこの状況、悪しざまに手を振り払える状況にはなかった。お互いに言いたいことはあるだろう。しかし、どうにもその言葉がもどかしくて言い切ることなんてできない。
今の二人には言い訳が必要だった。
「……ええと」
最初に切り出したのはキョウヤだ。頬を掻いて、どこか照れくさそうに。
「この大会にはあの天歌院玲花も出てるらしい。……僕は、あいつに負けたくない。だから一緒に戦ってくれない……だろうか」
実際であればDマテリアルに慣れたキョウヤ一人のほうがうまくいくのかもしれない。けれど、
「……うん。キョウヤ君のDマテリアルを使う姿が間近で見られるのは、私、何より嬉しいから……がんばるね」
智里のはにかみにキョウヤは目をそらす。目の前の姿は、彼の知る“彼女”とは似ても似つかぬ姿ではあるが――それでも、その面影を感じてしまったから。
「よーっし、それじゃあ私も二人のためにがんばって手伝うですよ!」
その空気を壊さぬように、しかし努めて重くならないように。リュウェルは高らかに腕を突き上げると、駆け出すようにして少し離れるように先へ行く。リュウェルが振り返れば、ぽつぽつと二人が話し始める姿が見えた。それだけでずいぶんと心が軽くなるような感覚があった。
――あとは二人に邪魔が入らないようにするです!
貫が言うにはこの大会、観客たちもやる気に満ちているらしい。脱出ゲームであるとはいえ、これがDマテの大会である以上妨害や直接戦闘もありうる話だ。
三人が着々を歩を進める中、先行していた貫は詩歌と顔を突き合わせていた。
「……迷ったな」
「迷ったねえ」
ディーヴァセンサーを主軸に作戦を立てていた貫であったが、Dマテリアルではこれを持ち運ぶ手段がないことに気がついていなかったのだ。作戦通りに進行しようと思いつつも、これでは仲間の位置を把握することもままならない。
「でもリュウェルさんがうまくやってくれるよ、たぶん!」
詩歌は根拠のない自信で言い放つ。実際別れる前もいい感じではあったし、事前にしっかり応援もしておいた。きっと大丈夫だろうと思いながらあたりをぐるりと見回した。
「そうだ。さっき、あっち側に強そうなプレイヤーがいたよ。ひとまずそっちに行ってみない?」
オルトウィングで空を飛んだ際、ちらりと見えた光景だ。脱出ゲームという都合高度制限はあったものの、それでも広く見渡す際に高い視界というのは便利なものだった。
詩歌の指差す方向へ向かうには水に潜る必要がある。貫は少し考え込む素振りを見せて、
「助かる。……よし、他の観客を牽制にいくとするか!」
「きゃっ!?」
ふわりと笑みを浮かべ詩歌の腰を抱き寄せる。彼はそのままマーメイドフィンにダイブし、水中へ飛び込んでいく。唐突な彼に呆れながらも、詩歌も彼にぐっと掴まるようにして移動するのであった。
超玩都市オキナワ。ここでもまた玲花にトラブルが降りかかるのだが、それとは全く無縁に追い詰められる者も居た。
「な、なんでこんなことに……」
眩しく降り注ぐ日差しの中で、瀬那覇 智里は背筋に冷や汗をかきながら凍りついていた。目の前にいるのは海藤 キョウヤ。彼女の想い人でもあり、歳の離れた男の子でもあり、そして、
――こんな姿、見られたくなかった……!
自分の本当の姿を隠したかった相手である。姿が見えた瞬間隠れようともしたのだが、パートナーでもある近衛 詩歌によって力づくで阻止されてしまった。
「キョウヤ。悪いんだが瀬那覇はDマテに不慣れでな、できればフォローを頼みたいんだが……」
そう告げる行坂 貫に対して恨み言の一つでも言いたくなった彼女であったが、流石にこの状況ではそうもいかない。
「…………なるほど。ああ、分かったよ」
キョウヤは少しばかり考える素振りを見せた後、素直に頷いてみせた。この場にはリュウェル・フリードマンも同席している。貫、詩歌、リュウェル。こう三人も揃ってしまえば、いかに鈍感な人物であろうとも気づこうものである。
「さっ、ちーさんもキョウヤくんもいきましょう! せっかくのゲームです、楽しまなきゃソンですよ!」
貫と詩歌は引き合わせるまで。後の細かいサポートはリュウェルに任せてと、彼らはそのまま別行動を取る流れだ。
気まずくもある空気を砕くようにして、リュウェルが無邪気に二人の手を引く。彼女は彼女でどこかそわそわした素振りを見せながら脱出ゲームに挑もうとしている。この状況からして、導かれる結論は一つしかない。
――端的にいうとハメられた、というやつである。
本当の自分を未だ隠していたかった智里。本当の姿を見せてほしいと願ったキョウヤ。いずれにせよこの状況、悪しざまに手を振り払える状況にはなかった。お互いに言いたいことはあるだろう。しかし、どうにもその言葉がもどかしくて言い切ることなんてできない。
今の二人には言い訳が必要だった。
「……ええと」
最初に切り出したのはキョウヤだ。頬を掻いて、どこか照れくさそうに。
「この大会にはあの天歌院玲花も出てるらしい。……僕は、あいつに負けたくない。だから一緒に戦ってくれない……だろうか」
実際であればDマテリアルに慣れたキョウヤ一人のほうがうまくいくのかもしれない。けれど、
「……うん。キョウヤ君のDマテリアルを使う姿が間近で見られるのは、私、何より嬉しいから……がんばるね」
智里のはにかみにキョウヤは目をそらす。目の前の姿は、彼の知る“彼女”とは似ても似つかぬ姿ではあるが――それでも、その面影を感じてしまったから。
「よーっし、それじゃあ私も二人のためにがんばって手伝うですよ!」
その空気を壊さぬように、しかし努めて重くならないように。リュウェルは高らかに腕を突き上げると、駆け出すようにして少し離れるように先へ行く。リュウェルが振り返れば、ぽつぽつと二人が話し始める姿が見えた。それだけでずいぶんと心が軽くなるような感覚があった。
――あとは二人に邪魔が入らないようにするです!
貫が言うにはこの大会、観客たちもやる気に満ちているらしい。脱出ゲームであるとはいえ、これがDマテの大会である以上妨害や直接戦闘もありうる話だ。
三人が着々を歩を進める中、先行していた貫は詩歌と顔を突き合わせていた。
「……迷ったな」
「迷ったねえ」
ディーヴァセンサーを主軸に作戦を立てていた貫であったが、Dマテリアルではこれを持ち運ぶ手段がないことに気がついていなかったのだ。作戦通りに進行しようと思いつつも、これでは仲間の位置を把握することもままならない。
「でもリュウェルさんがうまくやってくれるよ、たぶん!」
詩歌は根拠のない自信で言い放つ。実際別れる前もいい感じではあったし、事前にしっかり応援もしておいた。きっと大丈夫だろうと思いながらあたりをぐるりと見回した。
「そうだ。さっき、あっち側に強そうなプレイヤーがいたよ。ひとまずそっちに行ってみない?」
オルトウィングで空を飛んだ際、ちらりと見えた光景だ。脱出ゲームという都合高度制限はあったものの、それでも広く見渡す際に高い視界というのは便利なものだった。
詩歌の指差す方向へ向かうには水に潜る必要がある。貫は少し考え込む素振りを見せて、
「助かる。……よし、他の観客を牽制にいくとするか!」
「きゃっ!?」
ふわりと笑みを浮かべ詩歌の腰を抱き寄せる。彼はそのままマーメイドフィンにダイブし、水中へ飛び込んでいく。唐突な彼に呆れながらも、詩歌も彼にぐっと掴まるようにして移動するのであった。