母なる神に捧ぐ舞
リアクション公開中!
リアクション
【2-2】
ふぇすた座の武芸者たちによって満たされた気持ちになっていたイザナミに対して、今の輝夜にできることは、ただ一つ……。
「ライブ。あたしたちにどこまでやれるか分からないけど、一緒にやってくれる?」
輝夜の申し出に快く頷いた白川 郷太郎は、
「ああ。……よっしゃ、燃えてきたでござるよ!! 拙者が足りないところを補ってやるでござる!」
白い歯をのぞかせて、屈託のない笑顔を見せた。
ロレッタ・ファーレンハイナーも、半年以上も楽しみにしていた輝夜とのライブに
内心、胸を躍らせる。
このような場所に正式な舞台があるわけではなかったが、演者さえ集まれば、たとえどんな演目でも
表現できる。
楽器がなければ自分たちの声と体を使えばいい。
郷太郎たちのサポートがあれば本来の力を発揮しきれない輝夜でも、自分の思いをイザナミに伝える
ことができるかも知れない。
そんな可能性を、今は信じていたい輝夜。
一番重要なメインの演奏を任された郷太郎が、【冷然のクロスコード】を纏って落ち着いた雰囲気の
旋律を奏で始めた。
キーボードで副旋律を担当するのはスピネル・サウザントサマーだ。
ロレッタが笛の音色と周囲の者の影を躍らせる神秘的な舞を披露しだすと、多くの人がいる世界で、
まるで2人ぼっちといった不思議な雰囲気を演出した。
事前に全員の音量を調整していたこともあり、誰かが大きすぎることも小さすぎることもなく、音の
バランスはとてもいい。
すぐにイザナミの視線が注がれる。
演奏に合わせて、 輝夜と千夏 水希が日本舞踏を舞う。
星の閃きを起こし、瘴気を吹き飛ばすような二人の舞。
空気が澄んで、ぴんと張り詰めたような冬の空にちりばめられた星屑の光を連想させる演目だったが、
まるで今にも本当に星が落ちてきそうな、神聖な空気が辺りに漂い始め、徐々に黄泉の瘴気を晴らして
いった。
どこまでも響き渡るようかのように、少しずつ大きくなっていく音。
「これが……今の、あたしにできる全部だよ」
輝夜と水希が、イザナミに向かって手を差し出す。
それは、輝夜はもう母親のものではなく、一人の演者としてここに立っているという意味も含め
られていた。
イザナミが手を伸ばしかけると、輝夜はにこっと微笑んで背を彼女に向ける。
「郷太郎……二曲目いくよ!!」
輝夜のウインクを受け、続いて郷太郎は【夜焔の六弦琴】を使ってロレッタの歌に合わせたビートを刻む。
ロレッタは歌うことに多少躊躇していたようだったが、いざ歌い出すとすっかり輝夜との共演を楽しんでいる。
そして要所要所でエアドラムを入れては、ロックのビートに身を任せた。
水希のコーラスが響く中、イザナミは顔色を変えることなく涼やかな表情で彼らの舞台を見つめ続けた。
郷太郎の【艶美独奏】で曲に合わせて生み出される軽快な音は、輝夜とのセッションによって互いに追いかけ合うような
テンポの良いリズムと共に、瘴気が晴れ始めた黄泉に響き渡った。
輝夜のギターの音を殺してしまわないよう、【グッドハーモニー】で彼女の旋律を存分に引き立たせる。
輝夜を引き立たせるため水希も時折コーラスを入れると、スピネルも途中で演奏を止め、コーラスに参加した。
声もまた、楽器の一つと言えよう。
自分たちの音を楽しむ輝夜は気分が乗ってきたのか、意識せずとも郷太郎に合わせるような演奏を紡いでいった。
【夜焔の六弦琴】から舞い散る火の粉が、郷太郎に飛び散る。
アクロバティックなダンスを披露するロレッタがイザナミに向かって手を振ったりウインクしたり……青い炎とロックの饗宴はイザナミの気分を上げるのに十分だった。
その様子を見ていた水希は、ふっと安堵の表情を見せる。
そこへ、スピネルが仕込んでいた花火が上がり、黄泉の空にぽっと大輪の花を咲かせた。
「……た~まや~」
そんな一言が、イザナミの口から小さく飛び出す。
輝夜を前面に押し出し、背中合わせになることでより一層演奏に熱が入る郷太郎。
かつてないほどの充実感を感じた輝夜は、まるでそこに千人もの観客がいるような気分になる。
黄泉醜女とイザナミの顔は、かつてないほど穏やかなものに変化していたのだった。
ふぇすた座の武芸者たちによって満たされた気持ちになっていたイザナミに対して、今の輝夜にできることは、ただ一つ……。
「ライブ。あたしたちにどこまでやれるか分からないけど、一緒にやってくれる?」
輝夜の申し出に快く頷いた白川 郷太郎は、
「ああ。……よっしゃ、燃えてきたでござるよ!! 拙者が足りないところを補ってやるでござる!」
白い歯をのぞかせて、屈託のない笑顔を見せた。
ロレッタ・ファーレンハイナーも、半年以上も楽しみにしていた輝夜とのライブに
内心、胸を躍らせる。
このような場所に正式な舞台があるわけではなかったが、演者さえ集まれば、たとえどんな演目でも
表現できる。
楽器がなければ自分たちの声と体を使えばいい。
郷太郎たちのサポートがあれば本来の力を発揮しきれない輝夜でも、自分の思いをイザナミに伝える
ことができるかも知れない。
そんな可能性を、今は信じていたい輝夜。
一番重要なメインの演奏を任された郷太郎が、【冷然のクロスコード】を纏って落ち着いた雰囲気の
旋律を奏で始めた。
キーボードで副旋律を担当するのはスピネル・サウザントサマーだ。
ロレッタが笛の音色と周囲の者の影を躍らせる神秘的な舞を披露しだすと、多くの人がいる世界で、
まるで2人ぼっちといった不思議な雰囲気を演出した。
事前に全員の音量を調整していたこともあり、誰かが大きすぎることも小さすぎることもなく、音の
バランスはとてもいい。
すぐにイザナミの視線が注がれる。
演奏に合わせて、 輝夜と千夏 水希が日本舞踏を舞う。
星の閃きを起こし、瘴気を吹き飛ばすような二人の舞。
空気が澄んで、ぴんと張り詰めたような冬の空にちりばめられた星屑の光を連想させる演目だったが、
まるで今にも本当に星が落ちてきそうな、神聖な空気が辺りに漂い始め、徐々に黄泉の瘴気を晴らして
いった。
どこまでも響き渡るようかのように、少しずつ大きくなっていく音。
「これが……今の、あたしにできる全部だよ」
輝夜と水希が、イザナミに向かって手を差し出す。
それは、輝夜はもう母親のものではなく、一人の演者としてここに立っているという意味も含め
られていた。
イザナミが手を伸ばしかけると、輝夜はにこっと微笑んで背を彼女に向ける。
「郷太郎……二曲目いくよ!!」
輝夜のウインクを受け、続いて郷太郎は【夜焔の六弦琴】を使ってロレッタの歌に合わせたビートを刻む。
ロレッタは歌うことに多少躊躇していたようだったが、いざ歌い出すとすっかり輝夜との共演を楽しんでいる。
そして要所要所でエアドラムを入れては、ロックのビートに身を任せた。
水希のコーラスが響く中、イザナミは顔色を変えることなく涼やかな表情で彼らの舞台を見つめ続けた。
郷太郎の【艶美独奏】で曲に合わせて生み出される軽快な音は、輝夜とのセッションによって互いに追いかけ合うような
テンポの良いリズムと共に、瘴気が晴れ始めた黄泉に響き渡った。
輝夜のギターの音を殺してしまわないよう、【グッドハーモニー】で彼女の旋律を存分に引き立たせる。
輝夜を引き立たせるため水希も時折コーラスを入れると、スピネルも途中で演奏を止め、コーラスに参加した。
声もまた、楽器の一つと言えよう。
自分たちの音を楽しむ輝夜は気分が乗ってきたのか、意識せずとも郷太郎に合わせるような演奏を紡いでいった。
【夜焔の六弦琴】から舞い散る火の粉が、郷太郎に飛び散る。
アクロバティックなダンスを披露するロレッタがイザナミに向かって手を振ったりウインクしたり……青い炎とロックの饗宴はイザナミの気分を上げるのに十分だった。
その様子を見ていた水希は、ふっと安堵の表情を見せる。
そこへ、スピネルが仕込んでいた花火が上がり、黄泉の空にぽっと大輪の花を咲かせた。
「……た~まや~」
そんな一言が、イザナミの口から小さく飛び出す。
輝夜を前面に押し出し、背中合わせになることでより一層演奏に熱が入る郷太郎。
かつてないほどの充実感を感じた輝夜は、まるでそこに千人もの観客がいるような気分になる。
黄泉醜女とイザナミの顔は、かつてないほど穏やかなものに変化していたのだった。