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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

母なる神に捧ぐ舞

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母なる神に捧ぐ舞

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【1-1】

 隙を見て【真蛇さん助け隊】の全員で回り込みさえすればすぐに真蛇を解放できそうな距離にいるのに、それがままならないことに狛込 めじろは苛立ちを感じていた。
 イザナミの取り巻きである黄泉神たちがそうはさせまいと、黄泉醜女らとともに【真蛇さん助け隊】の行く手を阻む。

「真蛇──磔のままくたばるなよ?」

 万一に備えて【幻遁宿儺像】を忍ばせる合歓季 風華と麒麟に乗った行坂 貫 が、まずは【天舞刃扇】の鎌鼬で攻撃を仕掛け、黄泉神との距離を詰めていった。
 麒麟の頭上付近には、皆の速さを上げるために【翠風の光雨】を発動した藍屋 あみかの姿も見える。

「もぶ夜刀5号、今参ります……!」

 風華が、全員に【急令結界】の守りを施す。
真蛇の位置を目視で確認しようと、【音ほどきのスペクトル】を介した声や心音の聞き取りを試みていたあみかが、

「トールさん!」

 と小さく叫んだ。

「……そこだ狛込!!」

 あみかから真蛇の位置を知らされた貫が、めじろに合図を送った。
 めじろは黄泉神たちの意識を真蛇から逸らそうと、

「今ならお尻ぺんぺんで済ませてあげるから、さっさとその尻尾まいて帰るんですね! べーっだ!」
 
 あえて【陽気:妖翼】を見せびらかすように羽ばたいて、まずは彼らへ堂々たる宣戦布告をする。

「【祈祷:大地母神】!!」

 あみかも足止めを食らわせる。
 煽られた黄泉神たちのリミッターが外れるのは意外に早く、早速、雷槍を突きつけ距離を縮めてきた。

「立派に親離れして、母を救おうとなさる輝夜さんを……少しは見習いなさい!!」
 
 そう言った風華がすぐさま【煙羅のひと吹き】を食らわせると、視界を遮られた彼らの動きが少しずつ鈍り始めた。
 その隙に穂先の届かない懐へスッと押し入っためじろは、【≪式神≫破天怨嗟】でがしゃ髑髏を召喚する。

「あなたたちは母親に迎合するばかりで、本当に分かってるんですか? 人が憎い、殺してやりたいって程の、身を焦がすような恨みの気持ち……分かるわけないか。だったら、この子が教えてくれますよ」

 死の気配が色濃く漂う黄泉の瘴気の中。
 髑髏は水を得た魚のように、素早い動きで黄泉神を取り囲む。
 即座にまわりこんできた貫が【灼火鬼灯・影打ち】で斬りかかり、更に≪式神≫十天十刃を叩き込んで動きを封じた。

「お前達も磔にしてやる!!」

 黄泉神たちの周囲に渦巻き、勢いを増した炎が黄泉醜女にも襲いかかる。
 めじろは髑髏と貫に翻弄される黄泉神と黄泉醜女たちを横目に、

「傷つけられた真蛇さんを見た時のわたしの気持ち…今なら、わかってくれますか? ふふっ」

 そう呟くと、真蛇の方へと向かって行った。

「さあ、準備はいいですかネムさん、貫さん、あみかさん!」

「ああ、いつでもいいいぞ狛込!」

 黄泉神の動きを封じた貫は、めじろが詠唱の妨害をされないように麒麟で距離を保つ。

「【悪華鳳凰】!!」

 それぞれに思い入れがあり、研鑽も十二分に積んだ大技をめじろが放った。
 
「真蛇さんのあの炎に迫りましょう……今こそ!」

 風華や【鸞鳳の大風切】の力も加わり、大きく、華やかに術式を編むとすべてを焼き尽くすような凄まじい勢いの黒炎が、黄泉神の陰気な空気を吹き飛ばした。

「……貫さん、今です!!」

 真蛇の背中を追ってついに修めた術を保ちながら、真蛇に近づくのは困難だ。
 全ての思いを託しためじろの叫びを聞いた貫は真蛇の元へと駆けつけ、磔にされている拘束具を離れた場所から【天舞刃扇】の鎌鼬で外していった。

「余計な……ことをっ……」

「真蛇さん。皆で共に生き、帰りましょう。そして伝えられる事を明日へと……」

 やさしく微笑みかける風華。
 真蛇は憎まれ口こそ叩いているものの、風華の【急令結界】に守られた状態で麒麟の後ろに乗ると安堵したように大きく息を吐いた。
 
「ほら、これでも着ておけ。何もないよりマシだろ?」

 ボロボロになった装束を気遣ったのか、貫が【桜の舞忍装束】を渡してやる。

「……私が、舞芸者か何かに見えるかね」

「お前の鳳凰は、少なくとも俺たちの目には美しかった」

「――世迷言を」

 と言いつつ、まんざらでもなさそうな真蛇はしおらしく装束を羽織ったのだった。

「真蛇さん、おけがは大丈夫ですか?」

 あみかが【祈祷:田の神】で真蛇の傷を癒そうとした。
 真蛇は警戒したような眼差しであみかを睨みつけたが、やがておとなしくなる。

「私も皆さんも輝夜さんも、心配したんですから。どうか諦めないでください」

「誰も彼も……お節介焼きに熱心なことだ」

 更に【枝葉の守り】が真蛇を包み込む。
 もうこれ以上、怪我が悪化することはないだろう。
 改めて【祈祷:大地母神】で場の守りを固めたあみかは、小さな達成感を感じ始めていた。

「真蛇。お前は俺に言われなくても生きるって言ったよな。だったら、こんな所で簡単に死のうとしてんじゃねえ。
 お前がそんなボロぞーきんみたいになってるのは、本気で抵抗しなかったからだろ」

「それは……買いかぶりというものだ」

「うるさい。……でないと、お前があんな奴らに負けるはず無いんだよ。
 だって、お前は俺達に勝ってるんだから……つまり、俺達より強いんだからな」

 再び立ち向かってきた黄泉神たちの攻撃をかわしながら、貫はニッと笑みを浮かべた。

「どっちが先に奴らを沈めることができるか、競争してみるか?」

「稚児じみた挑発だ」

 真蛇はフンと鼻を鳴らすと、そっぽを向いてしまった。

「今日を、明日をよく眠れますよう。ねむねむとおっきりの加護を……真蛇さんに。
 ……浅学非才は承知の上で、教えを乞いたく存じます」

 貫に加えて風華にまで詰め寄られ、さすがに無視はできない様子の真蛇。
 めじろとあみかは身を案じるような視線を投げかけるが、それもまた堪えがたいようであった。
 真蛇はすいと衣を上げ、どこからやら式の大紙を取り出す。

「まったく私も、奇特な連中に絡まれたものだ。
 だが――葦原に在りて神々に弓を引いた私も、同じ穴の狢か」

 真蛇、貫、風華の攻撃に続いてあみかが【鏡花宝鈴】の光を放つ。
 
「葦原の地を見守ってきた神々へ。祈りをどうか、聞き届けてください。葦原の明日と大切な人のため、黄泉の地で戦う皆に加護を」

 幾筋もの光が、黄泉神と皆に降り注ぐ。
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