母なる神に捧ぐ舞
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リアクション
【3-3】
「それ」は天津神宮をまるで住処のようにして蠢き、溢れ出る穢れた瘴気はいつまでも消えることはなかった。
「──この時を、待っておりました」
目を閉じ、物の怪の気配を感じ取ろうと精神を集中させていた宇津塚 夢佳は、背後から忍び寄る「それ」に向かって言った。
こちらへ一歩も近づけさせないほどの速さで、矢を射続ける。
そして、反対側を向いたかと思うと【白火の毒牙】を放った。
夢佳と背中合わせになっていた橘 樹も同様に、視界に入ってきた敵へ向かって次々と【白火の毒牙】を放つ。
二人で編み出したこの技、これまでなかなか発動する機会がなかったが、皮肉にも今日はいい機会だったのである。
さすがに息はぴったり、何者も寄り付くことは不可能だろう。
「……夢佳さん伏せて!!」
咄嗟に、骸骨の形をした物の怪の瘴気の攻撃から夢佳の身を守る樹。
「ふふ──ありがとうございます樹。でも今の攻撃は、ちゃんと見えていましたよ?」
「そんなことは百も千も承知だけど、夢佳さんに瘴気の塊なんて近づけさせたくなくて……」
夢佳はクスッと笑って、樹の頭を撫でてやった。
思わぬご褒美に意気揚々となった樹は、【≪式神≫雷帝】を発動した。
骸骨に対して、果たして毒がどこまで有効となるのか判断しかねたのだ。
夢佳も【≪式神≫十天十刃】を使い、お互いがお互いを守り合うという絶妙な動きとなっていたのだった。
「──せっかくですから、【≪式神≫破天怨嗟がしゃ髑髏】も使っていきましょうか。
骸骨に髑髏が効きますのかはわかりかねますが」
こんな状況でも冗談めいたことが言える夢佳を、樹は尊敬の眼差しで見てしまう。
この余裕のある優雅な戦いぶりこそ、恐怖に飲み込まれない、真の強さと言えるのかも知れない。
「だいぶ数も減ってきましたね──」
少し疲労してきたのか、樹の額に汗が滲む。
涼やかな顔でそれを見つめていた夢佳だったが、
「──それでは、最後の仕上げをいたしましょうか」
白魚のように美しい手を、樹の前に出す。
「と、とどめを刺すんだね──!」
ほんの少し緊張して、樹が手を重ねた。
「『初めての共同作業』に相応しい威力を、期待いたしますよ?」
「いきます!!」
二人同時に放つ【白火の毒牙】は、先ほどよりも威力を増しかのように激しく、鋭く物の怪たちを徹底的に血祭りに上げた。
漂っていた瘴気が薄れ、夢佳と樹はほっと安堵の表情を浮かべる。
妙な楽しささえ感じたのか、樹のみならず夢佳の頬も紅潮していた。
「久しぶりにえきさいてぃんぐな気持ちになれましたこと、礼を言いますよ樹」
「や、そんな……あ、でも、久しぶりっていうことは、前にもそんな感じになったことがあるってこと?」
「──さあて、どうでしょうか。ちょっとした言葉のあやかも知れませんよ」
夢佳は静かな笑みを浮かべて、肩についた土埃を払った。
そんな様子を、樹はなぜかいつまでも見ていたいような、不思議な気持ちになったのだった。
「それ」は天津神宮をまるで住処のようにして蠢き、溢れ出る穢れた瘴気はいつまでも消えることはなかった。
「──この時を、待っておりました」
目を閉じ、物の怪の気配を感じ取ろうと精神を集中させていた宇津塚 夢佳は、背後から忍び寄る「それ」に向かって言った。
こちらへ一歩も近づけさせないほどの速さで、矢を射続ける。
そして、反対側を向いたかと思うと【白火の毒牙】を放った。
夢佳と背中合わせになっていた橘 樹も同様に、視界に入ってきた敵へ向かって次々と【白火の毒牙】を放つ。
二人で編み出したこの技、これまでなかなか発動する機会がなかったが、皮肉にも今日はいい機会だったのである。
さすがに息はぴったり、何者も寄り付くことは不可能だろう。
「……夢佳さん伏せて!!」
咄嗟に、骸骨の形をした物の怪の瘴気の攻撃から夢佳の身を守る樹。
「ふふ──ありがとうございます樹。でも今の攻撃は、ちゃんと見えていましたよ?」
「そんなことは百も千も承知だけど、夢佳さんに瘴気の塊なんて近づけさせたくなくて……」
夢佳はクスッと笑って、樹の頭を撫でてやった。
思わぬご褒美に意気揚々となった樹は、【≪式神≫雷帝】を発動した。
骸骨に対して、果たして毒がどこまで有効となるのか判断しかねたのだ。
夢佳も【≪式神≫十天十刃】を使い、お互いがお互いを守り合うという絶妙な動きとなっていたのだった。
「──せっかくですから、【≪式神≫破天怨嗟がしゃ髑髏】も使っていきましょうか。
骸骨に髑髏が効きますのかはわかりかねますが」
こんな状況でも冗談めいたことが言える夢佳を、樹は尊敬の眼差しで見てしまう。
この余裕のある優雅な戦いぶりこそ、恐怖に飲み込まれない、真の強さと言えるのかも知れない。
「だいぶ数も減ってきましたね──」
少し疲労してきたのか、樹の額に汗が滲む。
涼やかな顔でそれを見つめていた夢佳だったが、
「──それでは、最後の仕上げをいたしましょうか」
白魚のように美しい手を、樹の前に出す。
「と、とどめを刺すんだね──!」
ほんの少し緊張して、樹が手を重ねた。
「『初めての共同作業』に相応しい威力を、期待いたしますよ?」
「いきます!!」
二人同時に放つ【白火の毒牙】は、先ほどよりも威力を増しかのように激しく、鋭く物の怪たちを徹底的に血祭りに上げた。
漂っていた瘴気が薄れ、夢佳と樹はほっと安堵の表情を浮かべる。
妙な楽しささえ感じたのか、樹のみならず夢佳の頬も紅潮していた。
「久しぶりにえきさいてぃんぐな気持ちになれましたこと、礼を言いますよ樹」
「や、そんな……あ、でも、久しぶりっていうことは、前にもそんな感じになったことがあるってこと?」
「──さあて、どうでしょうか。ちょっとした言葉のあやかも知れませんよ」
夢佳は静かな笑みを浮かべて、肩についた土埃を払った。
そんな様子を、樹はなぜかいつまでも見ていたいような、不思議な気持ちになったのだった。