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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

母なる神に捧ぐ舞

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母なる神に捧ぐ舞

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【3-1】

 強力な結界が張られた天津神宮は内側から少しずつ、黄泉に侵食されていた。
 生暖かい風が吹き込んだかと思うと、まとまった瘴気がみるみるうちに腐った大蛇の形を成し、黒い骸骨をおびき寄せる。
 瘴気を抑えるため、緑青 木賊が率先して前面に出る。
 好戦的なわけではないだろうが、誰もがそれぞれの局面において励んでいることを木賊はよく理解していた。
 自分に出来ることは、皆が後顧の憂いなく全力を尽くしてこの場を鎮める一助となること。
 見上げた心意気である。

「……ていうか、こいつら的に、もうちょっと何か他に無かったっすかね……? 腐った蛇が若干百足っぽくて怖い……とかじゃなくて! えっとその、ほら、若いおなごとか幼子に見せるには憚られる姿であるというか! ほら!」

 ふわりと【桜灯の衣】をなびかせ、深呼吸をしてから瘴気に立ち向かう甘味 恋歌に言う。

「私は、蛇や骸骨でよかったと思います。だって瘴気がかわいい姿をしていたら、なんとなく戦えなかったと気がします」

 確かにそのとおりだ。
 妙に納得してしまう木賊。
 恋歌は、衣の下に身に着けてきた大切なネックレスにそっと触れた。
 大切なあの人──ネックレスの送り主が応援してくれているような気がして、少しずつ勇気が湧いてくる。

「──もう、大丈夫です私」

「う、うん。無理しないで」

 木賊【翠風の光雨】を配り、少しでも全員が動きやすくなるように配慮する。
 その後、【隠形の術】で暗闇や障害物に潜むようにひっそりと移動し、化け物どもに気づかれるよりも先に瘴気へと接近していった。
 息苦しさを感じながら【灼火鬼灯・影打ち】を放ち、【天舞刃扇】で【極火二刀】を用いて一気に瘴気を切り裂く。
 瘴気の勢いが次第に弱まっていったところへ、

「──はっ!!」

 ここぞとばかりに、大蛇にわざと囲まれたリリィ・エーベルヴァインが【影縫い】で大蛇の影に針を飛ばし、動きを止めた。
 両手に持った【小刀】を巧みに操り、大蛇の後方に潜んでいた骸骨も切り捨てる。

「木賊さんのおかげで攻撃しやすい。ありがとう」

 動きを止めた敵に向かって突っ込み同士討ちを狙い、残った大蛇は【極火二刀】を使って火を走らせ、次々と切り裂いてゆく。
 【影縫い】を巧みに使った動きは物の怪には真似できない技であり、身軽なリリィの体を生かした体当たりの攻撃でもあった。
 木賊と協力して共闘すると、一人よりももっと大きな効果を得ることができる。

「こんな時にこういうこと、あんまり言うもんじゃないっすけど」

 大蛇からの反撃をいなした木賊が、不意に口を尖らせる。

「何?」

「リリィさんと一緒に攻撃するの、なんつーか、すごい気持ちいいーっていうか。えーっと、変な意味じゃなくてなんだろ。んーと、つまりそういうことっす」

 無言で再び【影縫い】を使うリリィ。
 気を悪くしてしまったかな、と不安な表情になる木賊だったが、

「──私も、そんな感じ」

 そう言って【鬼の棒菓子】をかじり、ふふっと笑ったのだった。

「食べる?」

「い、いただきます!」

 【鬼の棒菓子】はほんのりと、甘かった。
 同じく【鬼の棒菓子】を食べた恋歌も、すぐさま、“二匹のねこ”をテーマにした舞芸を始める。
 【朧芸者の符】呼び出した幻の舞芸者たちに演奏を依頼し、ねこの存在は【白猫提灯】と【黒猫提灯】で表す。
 歌と踊りを【傾奇九屠】に乗せれば、二匹のねこが戯れる愛らしい姿となった。
 【桜花招来】を発動すると、桜の花びらが舞い散る。
 【夢妖の宴技】で【白猫提灯】と【黒猫提灯】を扱いその燐光が交わるように振れば、ぽかぽかのいいお天気に二匹のねこさんが出会った様子を表現させた。
 今度は【夢妖の宴技】を離した状態から徐々に近づけることで、距離が縮まっていく様子を表す。
 肉球の燐光をハート状に振り、二つの提灯を寄り添わせて仲睦まじい二匹を見せていく。
 必要最低限の道具だけでうまく世界観を作り出すその技は、表現者としての恋歌の無限の可能性を垣間見せた。

「恋歌氏、おそるべき実力の持ち主……!!」

「おそるべきねこの恋歌さん」

「い、言い方! もうやめてください~」

 三人のやりとりは、瘴気に包まれていた天津神宮を明るく照らすかのようだった。
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