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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

母なる神に捧ぐ舞

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母なる神に捧ぐ舞

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 ――華乱葦原、黄泉の底。

 暗く瘴気の立ち込める宮の広間で、舞芸者たちが相対するは、
 天地創造の権能を持つ芸能神、イザナミであった。

 彼女はうら若き少女でこそなかったが、身も絞られ肌も磨かれた、隙のない麗しさを持つ淑女であった。
 辛く苦しいヨモツヘグリダイエットの成果である。
 そうして作られたきめ細やかな肌には、完璧なメイクが施され、日々の努力と研鑽を物語っている。

 彼女が今まで一日たりともそれを欠かさなかったのは、ひとえにかつての夫――イザナギが老けた暁に「老いぼれクソジジイめ!」と罵りながら弑するためだった。
 その憎きイザナギをなんとか引っ張り出してやるため、子供たちを送り出し、二人で育んだ古き愛の巣――華乱葦原を、混乱に陥れることを企てたのだ。

 その華乱葦原の民草から、よもや牙をむくものが現れようなどと、なにゆえ想像できようか。
 いわんや、徹底的に恨みつらみを語り尽くし、穢ノ神に仕立て上げた娘など。

「理解に苦しむ。輝夜、おぬしはわらわの子、神なる身ぞ。
 有象無象に義理立てなど、することはないのじゃぞ」

 取るに足らない雑多な生き物ばかりだと、芸能神は驕っていた。
 それゆえに、想像もつかなかった。
 その舞芸者たちが、世界を渡り変えてきた“アイドル”であることを。
 そして彼らが、葦原のひとびとを愛していたことを。

 そのことを身をもって知っている輝夜は、さわやかに笑って母に言った。

「ぶっちゃけ、神とか人とか妖とか、あたしにはどうでもいいのよ」

 背負っていたギターを腰に回して、懐から硬貨をひとつ取ってピック代わりにする。
 ――最近観た映画の影響だ。
 自分の想像もつかないようなものが、次々に流れ込んでくる感動を、彼女は忘れていない。

「この世界には芸があって、それを感じる心がある。
 それは芸能神が――ママがそうだったからでしょ?
 だから、ママが楽しくないのは、絶対おかしいって」

「……この期に及んで、まだわらわを引き合いに出すか!」

「だってあたしは、ママの娘だもの。
 これは――あたしなりの親孝行よ」


■目次■

1ページ 目次・プロローグ
2ページ 【1-1】
3ページ 【1-2】
4ページ 【1-3】

5ページ 【2-1】
6ページ 【2-2】
7ページ 【2-3】
8ページ 【2-3-2】
9ページ 【2-3-3】

10ページ 【2-4】
11ページ 【2-4-2】
12ページ 【2-4-3】

13ページ 【3-1】
14ページ 【3-2】
15ページ 【3-3】

16ページ エピローグ
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