猫神バス=テトの誘い ~芸能界へご招待!?~
リアクション公開中!

リアクション
【1-6】
「訳わかんなくてムカついてるとは思うけどさ、とにかく見てってくれよ!」
別のステージでは、狩屋 海翔が【ワンウィングスケボ】に足をかけ、螺旋を描くように滑空している真っ最中だった。
着地と同時にまた声を上げた海翔は、【BREAK!!!】をスタートさせる。
「見せてやるよ──わだかまりも性別も国境も、下らねーもん何もかも全部ぶっ壊す、ブレイクダンスってやつをさ!!」
海翔のパフォーマンスに、最初は毒づいていた観客たちも気づけば釘付けになっている。
序盤のエントリーからトップロック、アップロックなど、地味に見える立ち踊りでも、海翔はアクロバティックな見せ方を知っていた。
【タンブルファイア】でステージ全体を飛び回り、サビに入る手前で足を前後に開く。
腕だけで体を支えてその場でフリーズし、指をパチンと鳴らした。
「お前ら、ついてこれるかぁ!?」
【シルフィードダンス】を発動し、風の分身達と共にステージ上で次々と技を披露する。
キックアウト、6歩等からのウィンドミルにエアートラックス。
海翔は軽やかな足取りで、やがて大きく回転する技へと着実に繋げていった。
曲の終わりで近付いたところで【ワンウィングスケボ】を使い、再び滑空する。
《ボム》という、背中から落ちる技を頂点から繰り出すと、観客席からは大きな歓声が上がった。
高所からの落下中に【ムーン・グラヴィティ】を発動させる。
そのまま低速落下をしてから、着地後にもう一度《ボム》背を地につけて着地。
バネのようにしならせた体をひねって、足先を空へ向けた《チェアー》でラストを決めると、地の底から湧き立つような叫び声が観客席から次々と巻き起こった。
「へへっ……とりあえずまぁ、成功みたいな?」
このステージの後、海翔に弟子入りしたいという荒くれ者たちが殺到し、ブレイクダンス部なるものが結成された。
これもまた、バス=テトの狙いだったのだろうか?
満足そうにティータイムを楽しんでいた彼女は、猫舌であることをすっかり忘れていたのか、口に含んだお茶を吹きこぼしそうになっていた。
バス=テトの視界には、ちょっぴりアダルトな雰囲気のバニーガール衣装に身を包んだ川村 萌夏が現れる。
それまで殺伐とした空気の中にいた観客たちが、吸い寄せられるようにして集まり始めた。
【音曲噺】を用いたレトロで陽気なメロディーとノリの良い話術で、
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」
と手招きをする萌夏。
【ロールアクト】を使って、人相の悪そうな観客の一人をステージ上に呼び出し、自分をミュージシャンだと思い込ませる暗示をかけた。
「何か歌を唄ってみて」
「……きゃ、きゃりお うぇいわぁ~そぉ~おお~ん」
男の音程はひどいものだったが、どこかで聴いたことがある曲のワンフレーズだ。
「ふふふ、上出来だよ♪」
【プチマジック】で何やら手を動かし始める萌夏──。
ノリに乗った男のボルテージが上がってくると、突然、マイクがワイングラスに変わり割れてしまった。
「おおお?」
「怪我はしてないね? じゃあ今度は何か楽器を弾いてみて?」
「お、おう──でも何も弾けんぞ?」
クラリネットを渡された男は、戸惑いながらも大きく息を吸い込んだ。
なぜかトランペットの美しい音色が飛び出し、ファンファーレのように響き渡る。
観客席はいつの間にか大勢の人々で埋め尽くされ、男の様子に大笑いしながら拍手が送られる。
「ありがとな。ちょっとでも夢を見させてくれてよぉ」
ステージから降りる時、男が愛想のない声で言った。
「いい気分だったぜ」
「──それはわたしの方だよ。協力してくれてありがとう」
萌夏は男と握手をかわして、アウェーのステージでも見事に観客たちを自分のファンにしてしまったのである。
特別な演出がなくても、その場ですぐに音楽を楽しむことができる萌夏の才能が垣間見えた瞬間だった。
大衆心理というものは時として、予想だにしない出来事を生むことがある。
個人では抑制されていた深層心理のトリガーが解除され、大勢の誰かがいるという安心感は常識を逸脱した行動に駆り立てる。
白波 桃葉、矢野 音羽、そして藤崎 圭の前で大暴れする観客たちが今まさに、その状態にあると言えた。
「訳も分からないまま勝手に連れてこられたら、誰だって怒りたくもなるんじゃないかな。彼らが悪いわけじゃないから、ここで怪我をしてほしくないな」
ステージ脇から観客たちの様子を確認した圭が苦笑する。
「まぁ、良くも悪くもこっちに気を引かせたら私の勝ちよね」
桃葉は【爛漫のクロスコード】を使ってより華やかになった【デラックスシャドウ】で自分に注目を集める。
【ダスクレイヴン】を振り回しながら魅惑のダンスを披露すると、その色気に早速大勢の男たちが引っかかった。
「おさわりは……ルール違反!」
念のため、【シャドウスケート】で不特定多数の観客に接触されるのを回避できるように警戒しておいたため、どんなに手を伸ばしても桃葉に触れることはできない。
その様子を音羽は心配そうに見守っていたが、【冷然のクロスコード】で落ち着きを取り戻し、気を引き締めた。
「私、たとえ何があっても桃葉を信じてるからね──」
ステージ外からゆっくりと進んできた桃葉は観客の視線を集めながら、やがて【鋼鉄樞翼】で空を飛び回り、ステージに降り立つ。
音羽がライブの音をより遠くまで届くように【フェアリースピーカー】を使った。
「時間稼ぎしてくれたおかげで、奴らもストレス発散できたんじゃないか? おかげでこっちは演出に集中できる」
【白煉のリフレクション】で神聖な雰囲気のステージを作り出した圭は、【≪聖具≫サンダルフォン・オルガン】を弾き始める。
繊細な音は【風雅のクロスコード】と共に観客へと届けられ、圭は音羽と二人で歌い出す。
【英雄の品格】を使って、音羽の声を引き立たせるように歌う圭。
「ありがと圭くん♪ ほら……ゆきみも」
【≪星獣≫ミーティアステージ】を発動した音羽が、星獣のゆきみを呼び出して一緒に歌う。
決して派手な音楽ではなかったが、音羽の【クリアボイス】は観客を穏やかな気持ちにさせた。
「相手が誰であろうと、感情がある一人の人間であることに変わりはない。私たちは、私たちの思いを伝えるライブをするだけよね……」。
心をこめて歌い上げる音羽の歌声は伸びやかで、耳に優しい。
そして観客も気がつけば、二人の歌に合わせて歌詞を口ずさんでいたのだった。
心地よい「音」というのもは、歌そのものを知らなくてもリズムが自然と体に入り込めば、誰でも楽しむことができる。
「突然ですけど、ライブはまだまだ続きます! 頑張って楽しませるんで、良ければ一緒にノっていきましょー!」
三人とは異色のパフォーマーである狛込 めじろが飛び出し、【夢妖の宴技】により、両手に持った【春秋花鳥紙吹雪】と【夏冬風月紙吹雪】を使って揺らめく炎と賑やかな宴席の雰囲気を作り上げて更に場を温める。
持っていた半紙を紙吹雪に変え、その中から【≪式神≫大折鳥】を飛び立たせた。
観客たちが感嘆の声を上げた途端、めじろはニッと笑う。
そして圭と音羽の歌に合わせて、桃葉が華やかながらも静寂の舞を披露した。
音羽による【シト・ラウス】の音は桃葉の舞に華やかな彩りを添え、観客たちからは大きな声援。
対をなすようにして、めじろが【蛇子六駆】に合わせ、文化の全く異なる異世界の大衆から生まれた【大桜の舞】を踊ってみせた。
【ボディーパーカッション】も織り交ぜ、観客たちをうまく煽っている。
ライブと観客とステージがひとつになるこの瞬間が、めじろにとっては何物にも代えがたいものだ。
「皆で同じリズムに合わせて動けば、教えられずとも音楽の楽しさは……もう、わかってますよね?」
めじろが桃葉、音羽、圭と手をつないで声援に応える。
和と洋が見事なまでに織りなす究極のライブ。
まばゆい光と神聖な雰囲気に包まれて、『cat’s tail』とめじろのステージは大成功を収めた。
いい意味での大衆心理が働き、屈強な男たちは涙を浮かべた状態で拍手喝采。
「何も音楽は、楽器を演奏することだけではありません。声を出して、手を叩いて、ステップを踏んで。いつだって望めば音楽はわたし達のそばにあり、一緒に楽しんだり、悲しんだりしてくれるものです」
「──もう、そこまで分かっているなら何も言うことはないニャ」
バス=テトは、自分をまっすぐ見つめるめじろに向かって言った。
「鬼の目に涙を流させたのは、なかなかのものニャ」
屈強な男たちが流す涙を見て吹き出しそうになったバス=テトだったが、彼らのステージを台無しにしてはいけないと冷静さを保つのに必死だった模様──。
「訳わかんなくてムカついてるとは思うけどさ、とにかく見てってくれよ!」
別のステージでは、狩屋 海翔が【ワンウィングスケボ】に足をかけ、螺旋を描くように滑空している真っ最中だった。
着地と同時にまた声を上げた海翔は、【BREAK!!!】をスタートさせる。
「見せてやるよ──わだかまりも性別も国境も、下らねーもん何もかも全部ぶっ壊す、ブレイクダンスってやつをさ!!」
海翔のパフォーマンスに、最初は毒づいていた観客たちも気づけば釘付けになっている。
序盤のエントリーからトップロック、アップロックなど、地味に見える立ち踊りでも、海翔はアクロバティックな見せ方を知っていた。
【タンブルファイア】でステージ全体を飛び回り、サビに入る手前で足を前後に開く。
腕だけで体を支えてその場でフリーズし、指をパチンと鳴らした。
「お前ら、ついてこれるかぁ!?」
【シルフィードダンス】を発動し、風の分身達と共にステージ上で次々と技を披露する。
キックアウト、6歩等からのウィンドミルにエアートラックス。
海翔は軽やかな足取りで、やがて大きく回転する技へと着実に繋げていった。
曲の終わりで近付いたところで【ワンウィングスケボ】を使い、再び滑空する。
《ボム》という、背中から落ちる技を頂点から繰り出すと、観客席からは大きな歓声が上がった。
高所からの落下中に【ムーン・グラヴィティ】を発動させる。
そのまま低速落下をしてから、着地後にもう一度《ボム》背を地につけて着地。
バネのようにしならせた体をひねって、足先を空へ向けた《チェアー》でラストを決めると、地の底から湧き立つような叫び声が観客席から次々と巻き起こった。
「へへっ……とりあえずまぁ、成功みたいな?」
このステージの後、海翔に弟子入りしたいという荒くれ者たちが殺到し、ブレイクダンス部なるものが結成された。
これもまた、バス=テトの狙いだったのだろうか?
満足そうにティータイムを楽しんでいた彼女は、猫舌であることをすっかり忘れていたのか、口に含んだお茶を吹きこぼしそうになっていた。
バス=テトの視界には、ちょっぴりアダルトな雰囲気のバニーガール衣装に身を包んだ川村 萌夏が現れる。
それまで殺伐とした空気の中にいた観客たちが、吸い寄せられるようにして集まり始めた。
【音曲噺】を用いたレトロで陽気なメロディーとノリの良い話術で、
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」
と手招きをする萌夏。
【ロールアクト】を使って、人相の悪そうな観客の一人をステージ上に呼び出し、自分をミュージシャンだと思い込ませる暗示をかけた。
「何か歌を唄ってみて」
「……きゃ、きゃりお うぇいわぁ~そぉ~おお~ん」
男の音程はひどいものだったが、どこかで聴いたことがある曲のワンフレーズだ。
「ふふふ、上出来だよ♪」
【プチマジック】で何やら手を動かし始める萌夏──。
ノリに乗った男のボルテージが上がってくると、突然、マイクがワイングラスに変わり割れてしまった。
「おおお?」
「怪我はしてないね? じゃあ今度は何か楽器を弾いてみて?」
「お、おう──でも何も弾けんぞ?」
クラリネットを渡された男は、戸惑いながらも大きく息を吸い込んだ。
なぜかトランペットの美しい音色が飛び出し、ファンファーレのように響き渡る。
観客席はいつの間にか大勢の人々で埋め尽くされ、男の様子に大笑いしながら拍手が送られる。
「ありがとな。ちょっとでも夢を見させてくれてよぉ」
ステージから降りる時、男が愛想のない声で言った。
「いい気分だったぜ」
「──それはわたしの方だよ。協力してくれてありがとう」
萌夏は男と握手をかわして、アウェーのステージでも見事に観客たちを自分のファンにしてしまったのである。
特別な演出がなくても、その場ですぐに音楽を楽しむことができる萌夏の才能が垣間見えた瞬間だった。
大衆心理というものは時として、予想だにしない出来事を生むことがある。
個人では抑制されていた深層心理のトリガーが解除され、大勢の誰かがいるという安心感は常識を逸脱した行動に駆り立てる。
白波 桃葉、矢野 音羽、そして藤崎 圭の前で大暴れする観客たちが今まさに、その状態にあると言えた。
「訳も分からないまま勝手に連れてこられたら、誰だって怒りたくもなるんじゃないかな。彼らが悪いわけじゃないから、ここで怪我をしてほしくないな」
ステージ脇から観客たちの様子を確認した圭が苦笑する。
「まぁ、良くも悪くもこっちに気を引かせたら私の勝ちよね」
桃葉は【爛漫のクロスコード】を使ってより華やかになった【デラックスシャドウ】で自分に注目を集める。
【ダスクレイヴン】を振り回しながら魅惑のダンスを披露すると、その色気に早速大勢の男たちが引っかかった。
「おさわりは……ルール違反!」
念のため、【シャドウスケート】で不特定多数の観客に接触されるのを回避できるように警戒しておいたため、どんなに手を伸ばしても桃葉に触れることはできない。
その様子を音羽は心配そうに見守っていたが、【冷然のクロスコード】で落ち着きを取り戻し、気を引き締めた。
「私、たとえ何があっても桃葉を信じてるからね──」
ステージ外からゆっくりと進んできた桃葉は観客の視線を集めながら、やがて【鋼鉄樞翼】で空を飛び回り、ステージに降り立つ。
音羽がライブの音をより遠くまで届くように【フェアリースピーカー】を使った。
「時間稼ぎしてくれたおかげで、奴らもストレス発散できたんじゃないか? おかげでこっちは演出に集中できる」
【白煉のリフレクション】で神聖な雰囲気のステージを作り出した圭は、【≪聖具≫サンダルフォン・オルガン】を弾き始める。
繊細な音は【風雅のクロスコード】と共に観客へと届けられ、圭は音羽と二人で歌い出す。
【英雄の品格】を使って、音羽の声を引き立たせるように歌う圭。
「ありがと圭くん♪ ほら……ゆきみも」
【≪星獣≫ミーティアステージ】を発動した音羽が、星獣のゆきみを呼び出して一緒に歌う。
決して派手な音楽ではなかったが、音羽の【クリアボイス】は観客を穏やかな気持ちにさせた。
「相手が誰であろうと、感情がある一人の人間であることに変わりはない。私たちは、私たちの思いを伝えるライブをするだけよね……」。
心をこめて歌い上げる音羽の歌声は伸びやかで、耳に優しい。
そして観客も気がつけば、二人の歌に合わせて歌詞を口ずさんでいたのだった。
心地よい「音」というのもは、歌そのものを知らなくてもリズムが自然と体に入り込めば、誰でも楽しむことができる。
「突然ですけど、ライブはまだまだ続きます! 頑張って楽しませるんで、良ければ一緒にノっていきましょー!」
三人とは異色のパフォーマーである狛込 めじろが飛び出し、【夢妖の宴技】により、両手に持った【春秋花鳥紙吹雪】と【夏冬風月紙吹雪】を使って揺らめく炎と賑やかな宴席の雰囲気を作り上げて更に場を温める。
持っていた半紙を紙吹雪に変え、その中から【≪式神≫大折鳥】を飛び立たせた。
観客たちが感嘆の声を上げた途端、めじろはニッと笑う。
そして圭と音羽の歌に合わせて、桃葉が華やかながらも静寂の舞を披露した。
音羽による【シト・ラウス】の音は桃葉の舞に華やかな彩りを添え、観客たちからは大きな声援。
対をなすようにして、めじろが【蛇子六駆】に合わせ、文化の全く異なる異世界の大衆から生まれた【大桜の舞】を踊ってみせた。
【ボディーパーカッション】も織り交ぜ、観客たちをうまく煽っている。
ライブと観客とステージがひとつになるこの瞬間が、めじろにとっては何物にも代えがたいものだ。
「皆で同じリズムに合わせて動けば、教えられずとも音楽の楽しさは……もう、わかってますよね?」
めじろが桃葉、音羽、圭と手をつないで声援に応える。
和と洋が見事なまでに織りなす究極のライブ。
まばゆい光と神聖な雰囲気に包まれて、『cat’s tail』とめじろのステージは大成功を収めた。
いい意味での大衆心理が働き、屈強な男たちは涙を浮かべた状態で拍手喝采。
「何も音楽は、楽器を演奏することだけではありません。声を出して、手を叩いて、ステップを踏んで。いつだって望めば音楽はわたし達のそばにあり、一緒に楽しんだり、悲しんだりしてくれるものです」
「──もう、そこまで分かっているなら何も言うことはないニャ」
バス=テトは、自分をまっすぐ見つめるめじろに向かって言った。
「鬼の目に涙を流させたのは、なかなかのものニャ」
屈強な男たちが流す涙を見て吹き出しそうになったバス=テトだったが、彼らのステージを台無しにしてはいけないと冷静さを保つのに必死だった模様──。


