猫神バス=テトの誘い ~芸能界へご招待!?~
リアクション公開中!

リアクション
【1-1】
幾つもの細い鉄骨を組み合わせて作られたステージの周りは、どこか異様な雰囲気に包まれていた。
あちこちで飛び交う罵声と野次、些細な理由で取っ組み合いを始める者たち、それを制裁しようとして更に始まる小競り合い。
そして、後から訪れてくる威勢のいい観客たちが次々ともたらす混沌とした空気。
「こんにちは、皆さん!」
突如、鈴の音のように澄んだ声が響き渡る。
【ウルトラスマイル】のままステージに現れた空花 凛菜は、 【マイクパフォーマンス】で荒くれ者たちを一気に引きつけた。
桐山 撫子とPRESENT SMILEのメンバーたちも、凛菜と共にステージ上から観客たちに向かって手を振っている。
その様子を袖から見守るのは、黒子に徹したウィンダム・プロミスリング。
騒がしかった一帯はぴたりと静まり返り、全員が彼女たちに注目した。
「いきなり見知らぬ場所に集められ、混乱されているかと思います」
スポットライトが凛菜を照らし、遠くからでも凛菜の表情がはっきりと見えた。
「今回、皆さんをフェスタのサプライズ音楽イベントにご招待しました。驚かせてしまって本当に申し訳ありません」
真摯な気持ちをもって頭を下げた凛菜に向かって、怒号を浴びせる者は一人もいない。
凛菜の動作や話し方には気品が漂っており、誰もがいつまでも見つめていたいという気持ちになる。
「ご清聴くださり、ありがとうございます!」
不思議なことに、ここで拍手が沸き起こった。
あんなに暴れていた者たちは争いをやめ、その場に座り込んだりしながらもいつの間にかすっかり観客の一人になっている。
「ところで、皆さんは歌やダンスを観るのはお好きですか?」
嫌いじゃねーぞぉ、と言った好感触の反応が返ってきたことで、凛菜の緊張も少しほぐれた。
「フェスタの生徒は日夜、歌と演奏の腕前を磨いています。これから皆さんに披露する演目は、全て本日だけの特別な舞台。
どうか、存分にお楽しみいただけたら嬉しいです!!」
凛菜の声が大きくなるのと同時に、軽快なリズムの音楽がスタートした。
「さて、終業式の校長先生の挨拶と同じであまり前置きが長くなると不評かと思います。……あっ、ちなみに校長先生のお話が長いのは、実は共通のネタ本があるかららしいですよ?」
校長あるあるを【雑学披露】すると、観客席からはどっと笑いが起こる。
「お待たせしました。いよいよ、本日のサプライズライブを開始します!」
【ハイパーバトンタッチ】で撫子にマイクを託し、凛菜は退場していった。
「……よしっ、みんなで!『ヒロイック・ソングス!』を創ろう! テトさんに、認めて頂く事で! 芸能界の扉を開こう♪」
撫子が出した手に、 莉緒、いろは、彩もそれぞれの手を重ねていく。
「私達は、「プレスマ」を芸能界へ推し上げる事が真意よ。 光凛ちゃん、莉緒ちゃん、いろはちゃん、彩ちゃん…無理は、厳禁だからね。
それじゃ、準備はOK?」
ウィンダムが用意していたバナナや栄養ゼリーを全員に手渡していく。
「タオルも忘れずに、ね」
掛け声で気合を入れた撫子たちは、しばし暗転したステージ上でそれぞれの立ち位置についた。
撫子は、自分が目立ちたいというよりもむしろ、PRESENT SMILEのメンバーたちにここで活躍してもらいたかった。
自分たちがどこまで観客たちに受け入れてもらえるかは分からないが、今は撫子ができる精一杯の力を披露する以外に道はない。
「テトさん……「ヒロイック・ソングス!」が迫ってるよ……!」
撫子が意を決したように呟くと同時に、曲のオープニングが流れ出す。
観客席から聞こえてくるのは「な・で・し・こ!」「プ・レ・ス・マ!」という歓声。
「皆様! ゲリラライブの開演だよ♪ 聞いてください、曲は『傷だらけの愛でも』」
……傷だらけの愛でも 君の元へ飛べるよ
トキメキは 胸の鼓動
外見からは想像もつかないほどの撫子の力強い歌声に、PRESENT SMILEのメンバーたちも思わずごくりと唾を飲み込む。
まさにリードボーカルと呼ぶに相応しい、伸びやかな音域。
撫子はいつの間にこんな実力を身に付けていたのだろうか……負けられない戦いに挑むかのごとく、いろはは撫子と背中合わせになって歌詞をリズムに乗せた。
……一粒の種から 花言葉
朝 澄みわたってく 蒼空を
大地を潤す願い 想い描いたら
セピアに残した 初まりの
撫子が提供してくれた楽曲に感謝をこめて、光凛や彩も手に汗握る渾身のパフォーマンスを見せた。
(孤独)贈る音色(夜明け)輝かせて
(明日の)未来描く(希望)陽射し微睡む
心の鍵 拓く扉 真理貫いて
BEAN!BEAN!BEAN!
ウィンダムは小さな声で歌い、ステージ再度でリズムを刻む。
ステージに上がらずとも、撫子やPRESENT SMILEとの一体感を感じることができた。
「ちゃんと、ここでつながってるからね」
握り拳で胸をトンと小突いて、ウィンダムはそのまま歌い続けた。
マイクやライトがなくても、どこにいてもステージであることに変わりはない。
傷だらけの愛でも 君の元へ飛べるよ
情熱は燃える胸の鼓動 羽ばたける
凍てついてる感覚 包み込める温もり
生まれたまま ありのままにも 生きてゆく
もう 泣いても 笑って これから
観客の歓声が、ステージで“真剣勝負”に挑む彼女たちを包む……。
ライブを楽しむ荒くれた観客たちが騒ぐ中、クロティア・ライハとナレッジ・ディアが両サイドの脇から交互に登場した。
同時に、音楽も趣向を変える。
流れているのは、【アンセムゲームソング】。
ステージ奥にライトが当たったかと思うと、元気よくステップを踏むいろはが走り込んできた。
ナレッジは【ナレッジギター】を使って、アップテンポなリズムでセッションをスタートさせる。
客層を見て思わずひるみそうになったクロティアだったが、
「……バス=テトが望んでる影響力……私がどれだけ期待に応えられるかわからないけど」
ごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
そして、【タッチ&フィーバー】の後に【ダンスゲームシューズ】を使ってステージ上に非日常空間を作り出す。
曲に合わせて聞こえてくるのは、よく響くナレッジの歌声だ。
「楽器が弾けて、歌も歌えるなんて……」
そんなことは最初から分かっていたはずだったが、改めていろはは目を丸くする。
「アイドルって何でもできなきゃだめなんだなって、今更思うわね」
誰彼ともなく呟くいろはの言葉は、ナレッジに届いたかどうかは分からない。
ナレッジはステージのテンションを落とさないよう、ひたすら歌い続けていた。
(せっかくフェスタに来たんです。一年ちょっとで終わるのもなんだか嫌ですし……私だって、あがいて見せますよ!!)
クロティアもいろはと一緒にステージを目一杯使い、【アンセムゲームソング】が収録された音楽ゲームを効果的に宣伝した。
照明と効果音をうまく生かしながら、意外性を演出することも忘れない。
遊んでみたい、作り手の思惑をうまく引き出しつつ、いかに自然に買い手にそう思わせるか。
遊び尽くされた音楽ゲームの中で、ただ一つの輝きを放っているように見せるためには、印象的な宣伝かが不可欠だ。
きっとどこまで追求しても、終わりは見えてこないだろう。
ナレッジが【グリッターバルーン】を打ち上げると、ステージは更に幻想的な空間へと変化する。
「これは遊ばないと、絶対に損をするわね……」
ゲームの宣伝を込めたいろはの台詞は、映画のワンシーンを切り取って集めた予告編さながらに観客の評判も上々だった。
クロティアとナレッジ、そしていろはが加わることで音楽ゲームの売り上げが伸びると期待して。
「売りたいものをどんなふうにアピールするか、、宣伝というものはなかなか奥が深いものなのニャ」
バス=テトは目を細めて、クロティアとナレッジのパフォーマンスを満足そうに見ていた。
やがてライトが切り替わり、死 雲人とPRESENT SMILEの西宮彩がステージサイドから現れる。
≪星獣≫オルガンゾウもゆっくりと登場し、観客たちの視線はたちまち彼らに釘付けとなった。
「落ち着いて聞いてくれ」
雲人は言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。
誰を諌めるでもなく、遠くにいてもすぐ近くに存在を感じることができるような深みのある優しい声。
「突然のこの不明な状況に怒る気持ちは分かるし、俺もそうなれば怒るだろう」
そして、口にくわえていた花を手にたずさえる。
最前列で巨漢の男たちに挟まれたていた女性に近づき、そっと手渡すと、
「美しい女性たちの口から聞きたいのは、罵声ではなくやはり愛の告白かな」
甘い声でそう囁いた。
不意打ちの気遣いに、思わず歓喜の声を上げた女性。
雲人の神がかった対応を、彩も笑顔で見つめていた。
「その愛に、俺も精一杯の思いを込めて応えよう。お前たちのためにうたう歌……最後まで聞いてくれるか?」
女性の観客たちは、すっかり雲人のペースに呑まれてしまっている。
「俺のステージは、お前たちと共にある」
オルガンゾウの伴奏が始まり、雲人は彩とテンポを取りながら観客席へと降り立ってゆっくりと歌い始めた。
雲人が【みんないっしょに!】を使うと、ステージに歌詞が現れ、観客たちもぽつぽつとフレーズを口ずさむ。
更に【欲張りなユートピア・ユーフォリア】で、彩と観客の服装をおそろいにするというささやかな魔法をかけてやった。
音符の形の風船が観客席に降り注ぎ、あんなに殺伐としていた観客席は今やメルヘンワールドのようだ。
「見てください! みんなのあの顔……」
観客たちを見つめる彩の穏やかな表情に、雲人も満足そうな笑みを浮かべた。
ステージのラストは、【エンディングパーティ】で彩る。
雲人と彩の名前が舞台に流れ始め、観客たちは互いに手をつないでいることにふと気づく。
慌てて手を振り払う者もいれば、そのままでいる者、肩を組み合う者たちなど反応は様々だ。
「彩。俺は世界を変えれる男になるぞ。そして彩を守る。だから、俺を信じてついて来てくれるか?」
「さぁ……どうしましょうかね……?」
彩は、雲人に意味ありげな表情を見せた。
幾つもの細い鉄骨を組み合わせて作られたステージの周りは、どこか異様な雰囲気に包まれていた。
あちこちで飛び交う罵声と野次、些細な理由で取っ組み合いを始める者たち、それを制裁しようとして更に始まる小競り合い。
そして、後から訪れてくる威勢のいい観客たちが次々ともたらす混沌とした空気。
「こんにちは、皆さん!」
突如、鈴の音のように澄んだ声が響き渡る。
【ウルトラスマイル】のままステージに現れた空花 凛菜は、 【マイクパフォーマンス】で荒くれ者たちを一気に引きつけた。
桐山 撫子とPRESENT SMILEのメンバーたちも、凛菜と共にステージ上から観客たちに向かって手を振っている。
その様子を袖から見守るのは、黒子に徹したウィンダム・プロミスリング。
騒がしかった一帯はぴたりと静まり返り、全員が彼女たちに注目した。
「いきなり見知らぬ場所に集められ、混乱されているかと思います」
スポットライトが凛菜を照らし、遠くからでも凛菜の表情がはっきりと見えた。
「今回、皆さんをフェスタのサプライズ音楽イベントにご招待しました。驚かせてしまって本当に申し訳ありません」
真摯な気持ちをもって頭を下げた凛菜に向かって、怒号を浴びせる者は一人もいない。
凛菜の動作や話し方には気品が漂っており、誰もがいつまでも見つめていたいという気持ちになる。
「ご清聴くださり、ありがとうございます!」
不思議なことに、ここで拍手が沸き起こった。
あんなに暴れていた者たちは争いをやめ、その場に座り込んだりしながらもいつの間にかすっかり観客の一人になっている。
「ところで、皆さんは歌やダンスを観るのはお好きですか?」
嫌いじゃねーぞぉ、と言った好感触の反応が返ってきたことで、凛菜の緊張も少しほぐれた。
「フェスタの生徒は日夜、歌と演奏の腕前を磨いています。これから皆さんに披露する演目は、全て本日だけの特別な舞台。
どうか、存分にお楽しみいただけたら嬉しいです!!」
凛菜の声が大きくなるのと同時に、軽快なリズムの音楽がスタートした。
「さて、終業式の校長先生の挨拶と同じであまり前置きが長くなると不評かと思います。……あっ、ちなみに校長先生のお話が長いのは、実は共通のネタ本があるかららしいですよ?」
校長あるあるを【雑学披露】すると、観客席からはどっと笑いが起こる。
「お待たせしました。いよいよ、本日のサプライズライブを開始します!」
【ハイパーバトンタッチ】で撫子にマイクを託し、凛菜は退場していった。
「……よしっ、みんなで!『ヒロイック・ソングス!』を創ろう! テトさんに、認めて頂く事で! 芸能界の扉を開こう♪」
撫子が出した手に、 莉緒、いろは、彩もそれぞれの手を重ねていく。
「私達は、「プレスマ」を芸能界へ推し上げる事が真意よ。 光凛ちゃん、莉緒ちゃん、いろはちゃん、彩ちゃん…無理は、厳禁だからね。
それじゃ、準備はOK?」
ウィンダムが用意していたバナナや栄養ゼリーを全員に手渡していく。
「タオルも忘れずに、ね」
掛け声で気合を入れた撫子たちは、しばし暗転したステージ上でそれぞれの立ち位置についた。
撫子は、自分が目立ちたいというよりもむしろ、PRESENT SMILEのメンバーたちにここで活躍してもらいたかった。
自分たちがどこまで観客たちに受け入れてもらえるかは分からないが、今は撫子ができる精一杯の力を披露する以外に道はない。
「テトさん……「ヒロイック・ソングス!」が迫ってるよ……!」
撫子が意を決したように呟くと同時に、曲のオープニングが流れ出す。
観客席から聞こえてくるのは「な・で・し・こ!」「プ・レ・ス・マ!」という歓声。
「皆様! ゲリラライブの開演だよ♪ 聞いてください、曲は『傷だらけの愛でも』」
……傷だらけの愛でも 君の元へ飛べるよ
トキメキは 胸の鼓動
外見からは想像もつかないほどの撫子の力強い歌声に、PRESENT SMILEのメンバーたちも思わずごくりと唾を飲み込む。
まさにリードボーカルと呼ぶに相応しい、伸びやかな音域。
撫子はいつの間にこんな実力を身に付けていたのだろうか……負けられない戦いに挑むかのごとく、いろはは撫子と背中合わせになって歌詞をリズムに乗せた。
……一粒の種から 花言葉
朝 澄みわたってく 蒼空を
大地を潤す願い 想い描いたら
セピアに残した 初まりの
撫子が提供してくれた楽曲に感謝をこめて、光凛や彩も手に汗握る渾身のパフォーマンスを見せた。
(孤独)贈る音色(夜明け)輝かせて
(明日の)未来描く(希望)陽射し微睡む
心の鍵 拓く扉 真理貫いて
BEAN!BEAN!BEAN!
ウィンダムは小さな声で歌い、ステージ再度でリズムを刻む。
ステージに上がらずとも、撫子やPRESENT SMILEとの一体感を感じることができた。
「ちゃんと、ここでつながってるからね」
握り拳で胸をトンと小突いて、ウィンダムはそのまま歌い続けた。
マイクやライトがなくても、どこにいてもステージであることに変わりはない。
傷だらけの愛でも 君の元へ飛べるよ
情熱は燃える胸の鼓動 羽ばたける
凍てついてる感覚 包み込める温もり
生まれたまま ありのままにも 生きてゆく
もう 泣いても 笑って これから
観客の歓声が、ステージで“真剣勝負”に挑む彼女たちを包む……。
ライブを楽しむ荒くれた観客たちが騒ぐ中、クロティア・ライハとナレッジ・ディアが両サイドの脇から交互に登場した。
同時に、音楽も趣向を変える。
流れているのは、【アンセムゲームソング】。
ステージ奥にライトが当たったかと思うと、元気よくステップを踏むいろはが走り込んできた。
ナレッジは【ナレッジギター】を使って、アップテンポなリズムでセッションをスタートさせる。
客層を見て思わずひるみそうになったクロティアだったが、
「……バス=テトが望んでる影響力……私がどれだけ期待に応えられるかわからないけど」
ごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
そして、【タッチ&フィーバー】の後に【ダンスゲームシューズ】を使ってステージ上に非日常空間を作り出す。
曲に合わせて聞こえてくるのは、よく響くナレッジの歌声だ。
「楽器が弾けて、歌も歌えるなんて……」
そんなことは最初から分かっていたはずだったが、改めていろはは目を丸くする。
「アイドルって何でもできなきゃだめなんだなって、今更思うわね」
誰彼ともなく呟くいろはの言葉は、ナレッジに届いたかどうかは分からない。
ナレッジはステージのテンションを落とさないよう、ひたすら歌い続けていた。
(せっかくフェスタに来たんです。一年ちょっとで終わるのもなんだか嫌ですし……私だって、あがいて見せますよ!!)
クロティアもいろはと一緒にステージを目一杯使い、【アンセムゲームソング】が収録された音楽ゲームを効果的に宣伝した。
照明と効果音をうまく生かしながら、意外性を演出することも忘れない。
遊んでみたい、作り手の思惑をうまく引き出しつつ、いかに自然に買い手にそう思わせるか。
遊び尽くされた音楽ゲームの中で、ただ一つの輝きを放っているように見せるためには、印象的な宣伝かが不可欠だ。
きっとどこまで追求しても、終わりは見えてこないだろう。
ナレッジが【グリッターバルーン】を打ち上げると、ステージは更に幻想的な空間へと変化する。
「これは遊ばないと、絶対に損をするわね……」
ゲームの宣伝を込めたいろはの台詞は、映画のワンシーンを切り取って集めた予告編さながらに観客の評判も上々だった。
クロティアとナレッジ、そしていろはが加わることで音楽ゲームの売り上げが伸びると期待して。
「売りたいものをどんなふうにアピールするか、、宣伝というものはなかなか奥が深いものなのニャ」
バス=テトは目を細めて、クロティアとナレッジのパフォーマンスを満足そうに見ていた。
やがてライトが切り替わり、死 雲人とPRESENT SMILEの西宮彩がステージサイドから現れる。
≪星獣≫オルガンゾウもゆっくりと登場し、観客たちの視線はたちまち彼らに釘付けとなった。
「落ち着いて聞いてくれ」
雲人は言葉を選びながら、ゆっくりと話し始めた。
誰を諌めるでもなく、遠くにいてもすぐ近くに存在を感じることができるような深みのある優しい声。
「突然のこの不明な状況に怒る気持ちは分かるし、俺もそうなれば怒るだろう」
そして、口にくわえていた花を手にたずさえる。
最前列で巨漢の男たちに挟まれたていた女性に近づき、そっと手渡すと、
「美しい女性たちの口から聞きたいのは、罵声ではなくやはり愛の告白かな」
甘い声でそう囁いた。
不意打ちの気遣いに、思わず歓喜の声を上げた女性。
雲人の神がかった対応を、彩も笑顔で見つめていた。
「その愛に、俺も精一杯の思いを込めて応えよう。お前たちのためにうたう歌……最後まで聞いてくれるか?」
女性の観客たちは、すっかり雲人のペースに呑まれてしまっている。
「俺のステージは、お前たちと共にある」
オルガンゾウの伴奏が始まり、雲人は彩とテンポを取りながら観客席へと降り立ってゆっくりと歌い始めた。
雲人が【みんないっしょに!】を使うと、ステージに歌詞が現れ、観客たちもぽつぽつとフレーズを口ずさむ。
更に【欲張りなユートピア・ユーフォリア】で、彩と観客の服装をおそろいにするというささやかな魔法をかけてやった。
音符の形の風船が観客席に降り注ぎ、あんなに殺伐としていた観客席は今やメルヘンワールドのようだ。
「見てください! みんなのあの顔……」
観客たちを見つめる彩の穏やかな表情に、雲人も満足そうな笑みを浮かべた。
ステージのラストは、【エンディングパーティ】で彩る。
雲人と彩の名前が舞台に流れ始め、観客たちは互いに手をつないでいることにふと気づく。
慌てて手を振り払う者もいれば、そのままでいる者、肩を組み合う者たちなど反応は様々だ。
「彩。俺は世界を変えれる男になるぞ。そして彩を守る。だから、俺を信じてついて来てくれるか?」
「さぁ……どうしましょうかね……?」
彩は、雲人に意味ありげな表情を見せた。


