スピンオフ“戦戯嘘はどこにも存在しないと私だけが知っている”
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そのころ。
少し離れたこの場所では、アイドルたちが「ありがとうを伝えるライブ」を始める準備が整っていた。
真っ白い白紙の空間には、ゆうが描いたきわめてシンプルなステージとモブの観客たち。
観客席の最前列には、心細そうにゆうが座っている。
■感謝の歌(1)
一番最初にステージに上がったのは、空莉・ヴィルトールだった。
「私の大切な家族『飼い猫のエリオット』に、愛と感謝と祝福の演劇ライブをプレゼントするよ」
空莉は、ディバインドリーマーの力で不定形のステージを抑え付け、にっこり笑った。
~出会いの白
空莉は【美しきひととせ】で冬を表現。
ステージに、雪のようなスノードロップの白い花を降らせた。
それは真っ白い白紙の世界にぴったりだっ。
凍雪の彫刻を掻き崩し、あなたの体をそっとこの手に抱き留めたあの日
だけど、本当に手を差し伸べてくれていたのは、あなたの方だったんだね
セリフを口にする空莉の周りを、【粉雪のジュエル】がキラキラとふわふわと煌めく。
~色鮮やかな今
空莉は【超・背景描写】でエリオットのお散歩道の森を描く。
そこには猫の好きな上りやすそうな木、探検したくなる長い長い猫トンネル。
柔らかい緑の芝生、暖かい日なた。
ディバインドリーマーの力で、ステージを少し凸凹させ、森らしい起伏に富んだ地面を演出。
背景にはかわいい動物のモブも描き加える。
「実際のエリオットは室内飼いなんだけどね♪」
微笑む空莉からは、エリオットへの愛が溢れている。
「本当にそこにいるみたい」
ゆうが笑った。
ゆうの後ろに座っている観客も、幸せそうに目を細めて笑った。
確かに観客は、ゆうの心と繋がっているようだ。
空莉は心を込めて、口にする。
少し離れたこの場所では、アイドルたちが「ありがとうを伝えるライブ」を始める準備が整っていた。
真っ白い白紙の空間には、ゆうが描いたきわめてシンプルなステージとモブの観客たち。
観客席の最前列には、心細そうにゆうが座っている。
■感謝の歌(1)
一番最初にステージに上がったのは、空莉・ヴィルトールだった。
「私の大切な家族『飼い猫のエリオット』に、愛と感謝と祝福の演劇ライブをプレゼントするよ」
空莉は、ディバインドリーマーの力で不定形のステージを抑え付け、にっこり笑った。
~出会いの白
空莉は【美しきひととせ】で冬を表現。
ステージに、雪のようなスノードロップの白い花を降らせた。
それは真っ白い白紙の世界にぴったりだっ。
凍雪の彫刻を掻き崩し、あなたの体をそっとこの手に抱き留めたあの日
だけど、本当に手を差し伸べてくれていたのは、あなたの方だったんだね
セリフを口にする空莉の周りを、【粉雪のジュエル】がキラキラとふわふわと煌めく。
~色鮮やかな今
空莉は【超・背景描写】でエリオットのお散歩道の森を描く。
そこには猫の好きな上りやすそうな木、探検したくなる長い長い猫トンネル。
柔らかい緑の芝生、暖かい日なた。
ディバインドリーマーの力で、ステージを少し凸凹させ、森らしい起伏に富んだ地面を演出。
背景にはかわいい動物のモブも描き加える。
「実際のエリオットは室内飼いなんだけどね♪」
微笑む空莉からは、エリオットへの愛が溢れている。
「本当にそこにいるみたい」
ゆうが笑った。
ゆうの後ろに座っている観客も、幸せそうに目を細めて笑った。
確かに観客は、ゆうの心と繋がっているようだ。
空莉は心を込めて、口にする。
しっかり言葉に出して、言うよ
生まれてきてくれてありがとう
私と出会ってくれてありがとう
いつも私の隣にいてくれてありがとう
この先もずっとずっと一緒に歩いていこう
まだまだキミにしてあげたいことがたくさんあるよ
「エリオット! にゃ~ん♪」
空莉がすぐそこにエリオットがいるかのように呼ぶ。
その場は、あたたかく幸せな拍手に包まれた。
***
続いて、【アニソン:話題沸騰のポップ】が流れ出した。
川村 萌夏は【マネマネちゃん(創作物:歌って踊れる共演者)】を引き連れてステージへ。
ディバインドリーマーの萌夏は、マネマネちゃんと同じピンクの全身タイツを着用。
足元のステージの変化も、力でしっかりと抑えている。
マネマネちゃんと萌夏はにっこり笑ってコール。
「「観客のみんな、わたし達の感謝の気持ち、受け取って頂戴ッ!」」
萌夏とマネマネちゃんは背中合わせになって、腕を直角にして前に伸ばす。
「「 T 」」
二人のやりたいことを意図した客席から拍手が起きた。
続いて萌夏とマネマネちゃんは、左右に並び向き合ってそれぞれの片足を直角に上げて静止。
「「 H 」」
テンポよく向き合い、互いに身体を斜めに傾けた姿勢で、腕を直角に伸ばす。
少し慌ただしいが、そこがコミカルで、笑いが起きる。
「「 A 」」
2人は右を向き、萌夏は直立姿勢から腕を斜め下に向かって伸ばす。
マネマネちゃんは萌夏の足元に寝ころび、両足を揃え真っすぐ上に伸ばし、腕は斜め上にあげる。
「「 N 」」:
2人で右を向き身体を前屈。両手を床に着けるし、逆Vの字を2つ作る。
そのままくっつけば「M」になりそうな恰好だが、ここで萌夏は【ユメ浮遊】。
前屈しているマネマネちゃんの身体の上に浮かびあがり、その場に静止。
2人の尾てい骨と尾てい骨をこっつんと合わせれば……
「「 K 」」
普通ではありえない人文字に拍手が起こる中、2人はKの字を崩し身体をくねらせた。
全身でランドルド環(視力検査の環)のような形を作ると、再び萌夏の【ユメ浮遊】でドッキング。
「「 S 」」
おお!!!
どよめきの中、萌夏はディバインドリーマーの力でステージの床を左右に並んだボールのような形に変化させた。
その上に二人で飛び乗り、静止する。
「「 !! 」」
「「観客のみんな、わたし達の感謝の気持ち、受け取って頂戴ッ! でした!」」
ゆうも観客も目を輝かせ拍手をしている。
何もないところから形を作ることの楽しさを、ほんの少し思い出していた。
思わずポケットにしまってあるペンにこっそり触れる。
でもまだ勇気がなくて、触れるだけ……。
***
何の記念日やイベントでもないのに、いきなり改まって「感謝を伝える」のはちょっと照れ臭いものだ。
そこで橘 樹は、この機会にこの場を借りてある人に感謝を伝えたいと考えた。
もちろんオーバーラップのことも心配している。一石二鳥だ。
樹は【星影の奏で】を持ってステージに立つと、感謝の手紙をイメージした判りやすい、直球の一人芝居を始めた。
このまま大して動かないので、ステージの変化はあまり心配ないようだ。
拝啓……挨拶は別にいいか、回りくどいよね。
大切なあなたへ、普段伝えきれてない感謝の気持ちを伝えます。
手紙を読むように語りながら、樹は【星空の奏で】で【超・背景描写】を描き始める。
あなたと出会う前の僕は、基本的に見える景色をそのまま受け取っていたと思います。
例えばここみたいにシンプルなステージなら、
それ以外のものには見えない……当たり前といえば当たり前で、
別にそれに不満はなかったんだけど、いつからか僕に見える世界は、
樹がステージに描き終えたのは、花が咲き乱れる桃源郷のような風景。
こんな感じに!なってしまいました。
【星空の奏で】の力で【超・背景描写】の世界にクリエイション効果の蝶が、ひらひらと舞い飛ぶ。
***
ゆうはポケットの中の自分のペンに触れる。
(……なんだろうこのキリキリする気持ち。
もしかして私、思ったままをあんな風に描いているあの人が、うらやましいのかな?)
***
あなたのせいで頭がお花畑になって、世界ごとすごく鮮やかに見えて、随分重症です。
何ならご機嫌なBGMまで聞こえるよ、こんな感じで
樹は【楽譜作成】で、ピアノの音を響かせる。
出会ってからずっと、僕は夢と現の境界をふらふらしてる気がして……
それが世間的にどうなのかは分からないけど、そんなことはどうでもいいんだ。
僕の世界をこんなに鮮やかにしてくれて、ありがとう
樹は【星空の奏で】で、句点のような〇を宙に描くと指先でそれに触れる。
シャン、と鈴のような音が鳴り、余韻を残しながら樹は舞台を降りた。
***
始まったばかりのライブに、ゆうは夢中だった。
クリエイターなのだから、このステージが楽しくないわけがない。
しかし、ふと我に返ると自分の現状が思い出される。
「……」
真っ白い白紙の世界を見渡し、ため息をついたゆうの前。
「ゆうさん、何か食べた? 大変だったよね、ういろう持ってきたんだ、食べる?」
元気な声とともに目の前ににょきっと【ういろう】が差し出された。
「どうぞ!」
「ほへ」
反射的にそれを受け取ったゆうの前には、にっこり笑う深郷 由希菜。
「あ、俺の分はあるからいいよ! 甘いものは心の栄養分だよね!」
そして由希菜は、ステージにあがった。
***
♪ ♪
前奏が始まる。
由希菜は【楽譜作成】で【ありがとうを笑顔で】奏で、歌う。
独りでは 何も手にできなくても 一緒なら
やれば違うかもしれない それに気づかせてくれたのは
きっとみんなが教えてくれるから ありがとう
突然ステージに坂道ができたが、
「ほいっ!」
とっさに【ユメ浮遊】で回避すると、一斉に拍手が起きた。
今自分がいられるのは 誰かじゃなくてみんなと出会えたから
その中の 1人である君がいること 感謝
素敵な笑顔で言える ありがとう
由希菜はステージの上からゆうに笑いかける。
ゆうは【ういろう】の包装をはがし、小さく口をつけた。
「おいしい……ナゴヤの味だね」
***
歌い終わった由希菜に、ゆうが少し恥ずかしそうに声をかけた。
「甘くておいしい【ういろう】を……その……」
ゆうは深呼吸して、ポケットからペンを取り出す。
あ り が と う
由希菜の目の前には、ゆうが書いた文字が、ふわふわしている。
「ありがとう……って改めて向き合うと、とってもいい言葉だね」
ゆうはしみじみとつぶやいた。
***
――今まで出会って来た人たち全てに感謝を伝える
ノーラ・レツェルとロレッタ・ファーレンハイナーは同じ思いを胸にステージへ立った。
♪ ♪~
(色々あったこの一年半、出会いがあった。……別れもあった)
(でもそこに後悔なんて一つもなくて、全てがぼくにとって輝く宝物)
ノーラは目に見えない心と歌で、それを伝える。
君に届いているかな、この歌が
時に同じ舞台で
時に違う場所で
出来ることを為したあの日々
傍に居ることで力になりました
傍に居なくても力が湧きました
(過去の何1つ変わっても、アイドルのわたくしは存在しなかったですわ)
(今こうしていられることを。全ての出会いに感謝を込めて踊りましょう)
ロレッタは目に見える形とダンスで、それを伝える。
ロレッタの衣装【ラブエプロン】は、無の状態でありのままの自分の姿を表現。
【マイクロッド】をバトンにしてのダンストワール。
そして2人の隣りには、良き仲間である【真実(創作物:歌って踊れる共演者)】。
***
ノーラは【美しきひととせ】で、出会いと別れの春を表現する。
過去は少しずつ色褪せていくけれど、鮮やかだった思い出はいつまでも残っている。
今日、ノーラが感謝をこめて示すその「鮮やかさ」が、見た者の思い出になって残ることを願いつつ。
~春うらら、白の世界に彩りを~
真っ白い白紙の世界にのステージに、鮮やかなスイートピーの花々が舞い落ちる。
花言葉は『別離、優しい思い出』
真実とロレッタとのライブの思い出を胸に、さらに歌う。
ロレッタは【万世大漁】で魚の幻影達を呼ぶ。
今、自分達は多くの仲間に支えられ、かけがえのないライバルが沢山いる。
個性的で、暖かくて、素敵な皆……。
そんな彼らとの出会いや別れの思い出を、魚の幻影達と共に、ダンストワールで表現する。
***
「きゃっ」
突然ステージが傾斜し、ロレッタが転倒した。
ロレッタはステージの不定地形については敢えて対策をしていなかった。
転んだら起き上がる。何度失敗しても、挫けそうになっても進む。
それは出会った人々や、応援してくれる人々に応える唯一の行動だと考えていた。
ロレッタは【マイクロッド】を拾ってすぐに立ち上がり、再び踊る。
(段々と地形変化にも慣れて、失敗も自然と減っていくでしょう)
(そんな力強さを【オルトポテンシャル】、可能性の力でお見せしましょう!)
***
ロレッタは【マイクロッド】を空高くに投げ上げ、【オルトウィング】で飛行して空中でキャッチ。
飛翔しながら、ノーラと真実と共に歌う。
ありがとう
一緒にいてくれて
ノーラは皆に【あなたに贈る白昼夢】を送る。
真っ白い白紙の世界は、色鮮やかな世界に変化する中で、【言葉のコーラス】。
力強い文字で書き、合唱を盛り上げる
白昼夢の中、ゆうは驚きの目で、ノーラ達を見つめている。
ばっちりと目があったノーラは、思わず声に出していた。
「ここまでのライブをぼくは仲間のお蔭で出来るようになったんだよぉ」
ノーラがえへへと笑うと、ロレッタと真実が笑い返した。
ありがとう
話を聞いてくれて
そして白昼夢は醒め。
ライブは、今一度の【美しきひととせ】へ。
白い白紙の世界の舞台には、白のダリアが降ってくる。
花言葉は『感謝』
~秋うらら、白くても 存在感を忘れない花を 君に~
色んな想いを込めて
ありがとう
***
唐突に立ち上がったゆうは、ポケットから取り出したペンを虚空に走らせ。
一心不乱で、真っ白い白紙の世界に線画を描いていく。
描いているのは、今ライブをした4人のアイドルを姿だった。
まだ色もなく動かない線画だったが、今にも歌い踊り出しそうなほど活き活きと描かれている。
「ごめんなさい。つい……」
自分でも驚きを隠せないゆうに、ロレッタが優しく問いかける。
「ゆう様の葛藤や苦悩。それは感謝に正面からぶつかってきた証。
もうあなたにも翼はありますわ。さぁ、共に参りましょう?」