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シナリオは、複数のユーザーが参加した結果を描写される小説形式のコンテンツです。
「ヒロイックソングス!」の世界で起こった事件やイベントに関わることができます。

スピンオフ“戦戯嘘はどこにも存在しないと私だけが知っている”

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スピンオフ“戦戯嘘はどこにも存在しないと私だけが知っている”

リアクション

■ありがとうをあなたに。

 ステージの突然の変化に対応するため、龍造寺 八玖斗が【オルトルイング】で飛びながら【月下香のニブ・ランス】を振って登場した。
 
「よろしくなのよ、八玖斗」
 八玖斗は、自分は語りをするので、嘘には歌を歌って欲しいとお願いしてあった。
 
***
 
 すぐに八玖斗は【二次元キャラ:森を往く勇者】を召喚する。
 歌は【感謝の歌(アニソン:話題沸騰のロック)】
 「不死のラ・フォレ」の世界の中で助けられた人達をイメージして作られた曲だ。
 勇者がオカリナを奏で始め、嘘がそれを歌い始めた。


貴方の一歩が 僕の道を作った 
貴方の思いが 僕の足を進めた 
貴方が居たから 僕が生きれたんだ 
ありがとう 
本当にありがとう 


 それを嘘に歌うよう頼んだ八玖斗には、狙いがあった。
 今歌ってみて、その狙いに嘘は気づく。

「八玖斗は案外、意地悪なのよ」
 嘘が目に涙をためて、隣りの八玖斗をにらみあげる。


忘れないで 貴方の心が その頑張りが 
新しい物語を紡いだんだ 
道を進んだ事を 後悔はしないで 
貴方のおかげで 笑えるんだから 

ありがとう 本当にありがとう 
だから笑って
 

「うぅぅ、ひぃっく」
「なんだ、そんなに共感しちまったのか?」

 嘘の頭をぽんぽんして、八玖斗が韻を踏んで語る。


 何か物足りない それは仕方ない だって物語はまだ途中 鋭意製作中
 確かに悩む時はある 無数に考えた設定やキャラクター達
 生み出しては消していく それでも作り続ける これは作家のエゴか業か
 でも消したって残り続ける だって頭の中で物語は続いている
 その関係はまるで親子か なら子の気持ちも聞かないとな
 

 語り終えた八玖斗が【あなたに贈る白昼夢】。
 まずは【二次元キャラ:森を往く勇者】がやって来た。
 よく見れば、彼は誰かの手を引いている。
 『ラ・フォレ』で封印された魔王ライにそっくりな【偽装魔王少女】だ。
 これは八玖斗の【創作物:歌って踊れる共演者】。
 その【偽装魔王少女】は、ゆうに向かってこう告げる。

「来たくても来れなかったあの子の代わりに言うね、誰かの心に残そうとしてくれてありがとう」

 そして白昼夢が醒め……
 
 と、ここまでは八玖斗の予定通りのライブだったが。

「さ……作者さんはもう、私なんて、いらないの!?」

 ――なら、子の気持ちも聞かないとな
 
「偽装じゃないホンモノ魔王にしか言えないことを、言うんだ」
 八玖斗が、嘘の頭をぽんぽんする。

「作者さん。私、幸せなのよ。楽しいのよ。
 作者さんも見たでしょう? いっぱいお仲間が出来たのよ。色んなコト、体験したのよ。
 生んでくれてありがとうって思ってるのよ。
 でも作者さん、私は、私はあなたにとって、失敗作なのよね?」
「そ……そんなことないよ!」

 ゆうの作り上げた観客は、ゆうの心と繋がっている。
 ステージは、そして観客は今、しんと静まり返っている。

***

 静寂を破ったのは【ホワイトルナ】の2人だった。
「嘘ちゃん。一緒に歌おう?」
 仮想体『ルナ・ドリームパレス』の姿をした氷華 愛唯が、嘘に手をさし伸ばす。
 相方の小鈴木 あえかは、嘘とゆうを心配そうに見つめている。

「もちろんよ。共演は大歓迎なのよ」
 涙をふいてうなずくと、嘘は果敢にステージにのぼった。
「作者さん、私を見てて?」

 ♪ ♪
 
 並んだルナと嘘が『それは氷の華のように』を歌い始める。

 ディバインドリーマーのルナが、その力を使ってステージの地面をほんの少し操作し、凹凸を作る。
 裏方での演出に徹しているあえかが、【スノウインク】も使っての【超・背景描写】。
 ステージには、リアルな白い氷の景色が作られた。

 ♪ ♪

 ゆっくり包むように優く歌うルナは、【チェンジカラードレス】を着用。
 歌が始まった今は、雪の白を基本にしている。

***

(みんながハッピーエンドになるにはどうすればいいのでしょう)
 ステージの目立たない場所で、裏方に徹しているあえかは、ハッピーエンドに想いをはせる。
 何気なく見ると、客席のゆうと運命のように目が合った。
「……あ」
 2人はぎこちなく会釈を交わす。
 そこであえかは何かを決心すると、
「ハッピーエンドを逃すなんて、できない」
 静かにそっと、ステージを降りた。

***

 ゆうの横に座ると、あえかは単刀直入に問いかけていた。
「ゆうさんが『全部全部消して、破り捨てたお話』というのは【まじかる嘘ちゃんの冒険物語】ではありませんか?」
「えっ……!?」
 ゆうが、秘密の日記を見られた少女のように絶句する。
「嘘さんが唯一覚えていたのは『生き別れのお兄ちゃんを探す』という目的です。
 その冒険物語には、ゆうさん自身の『お兄ちゃんに会いたい』という気持ちがこめられていたのではありませんか」

(あえかは、作者さんとなんの話をしてるのよ)
 嘘は、ゆうとあえかのことが気になるようだ。

「嘘ちゃん」
 ルナは優しく、嘘の手を握った。
「わたしたちは、楽しく歌おう?」

 ♪ ♪

「ですが、ゆうさんは左脳さんに会う事が叶わず
 嘘ちゃんの物語も行き詰まってしまい
 仕方なくラフォレの魔王という封印設定のキャラに気持ちごと預けたのではないでしょうか」

 ♪ ♪

 さらにあえかが語っていった推察に、ゆうは神妙に耳を傾けた。
 そして……
「つまりゆうさんが本当の本当に描きたいのは………………」

 あえかの話を最後まで聞くと、ゆうは、ゆっくりとうなずいた。

***

 心配そうな嘘の隣で、ルナは歌い続ける。
 ルナは自分がこの場で出来ることは、心をこめて歌うことだと判っている。
 相方のあえかのことも、信じている。

 ♪ ♪
 ――わたしの歌は癒しの歌

 あえかの計らいで、ステージに【お兄ちゃん子の世界(創作物:貴方だけの世界)】が出現。
 その創作物は、お兄ちゃんの事を想う妹達のためのメルヘンな世界。
 嘘とゆうが、恥ずかしそうにそこにおさまった。

 ♪ ♪
 ――氷に包まれた物体は、永い時を超えることもできる
 ――永く眠って目覚めたとき、それは変化の始まり

「作者さんにとって、私は迷惑な存在なの?」
「嘘ちゃん。そんなこと……そんなこと全然ないの」
「ほんとなの?」
「嘘ちゃんはね、ちょっとだけ私自身を重ねて作ったキャラなの。
 だからとってもとっても愛着があった……」

 ♪ ♪
 ――大きく揺れることもあるかもしれない。
 ――大きく歪むコトもあるかもしれない。

 歌は佳境に入り、ルナの【マジカルドレス】が、雪の白から、春の息吹を感じさせる緑に変化していく。

「でも、だから……あなたを破いちゃってごめんなさい」
「ほんと? 私のこと顔も見たくないとか思ってるわけじゃないの?」
「私……こんな作者、絶対いけないと思う。今も、嘘ちゃんに合わせる顔がないの。
 恥ずかしくて……申し訳なくて、しょうがないの」
「……」
「あなたの物語を破いちゃったこと、棚に上げて、言うね?
 私のところへ来てくれて、ありがとう。
 まだここに、残っててくれて、ありがとう」

 ♪ ♪
 ――きっとそれが変化の始まり。
 ――それを受け入れて、新しい世界へとつないでいくの。
 
「作者さんこそ……私を作ってくれて、ありがとう」

 あえかが【“w”の芽吹き】。
 ステージを緑を溢れさせると、クリエイション効果で花も開く。
 さらに【美しきひととせ】で芽吹きを寿ぐ季節を表現すれば、春らしいカラフルな花々が舞い落ちてくる。
 ステージはすっかり春の雰囲気に変わっていた。
 青い空、そよぐ風、春の日差し、全てが祈りを祝福する舞台が整っていく。

 ハッピーエンドが始まった。
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